#うちの子(ここ重要)のSSを投げる場所

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glacial nymph
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アサリ界隈エアプ同然の人のオリリィです。
設定が変な所が多々あると思いますが、
温かい目で見守っていただければ幸いです。

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クリスティーナ・トゥーリ・リュティ【設定】

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【クリスティーナ・トゥーリ・リュティ】設定

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2046年12月19日。
世界史に残る惨劇の日の朝は、なんてことない普通の朝だった。
お父さん、お母さん、お姉ちゃんと一緒に朝ごはんを食べて、テレビを見ながらのんびりして、皆で笑って過ごしてた。そんな日常が、ずっと続くと思ってた。
____でも、私の「日常」は突如として崩れ去った。
私の目の前に広がるのは、一面の血の海。そして、ニュースでしか見た事のない化け物がいた。村にいる2人のリリィのうち、1人は太刀打ち出来ずに殺された。もう1人も最早動ける状況じゃない。死にたくないのに、逃げなきゃいけないのに、身体が動かない。ああ、私はここで死ぬんだな。そう覚悟を決めた瞬間、生きていたリリィの人が叫んだ。
「逃げて、助けを求めて」と。
その瞬間、私は弾かれたように走り出した。後ろで骨の折れる音がしたような気がしたが、私は振り返らなかった。振り返ったら、化け物に捕まるんじゃないかと思えたから。逃げて、逃げて、どれだけ走ったか分からない。気づけば、首都・ヘルシンキの外れにまで来ていた。…私はこれからどうすればいいんだろう。地面にへなへなと座り込むと、自然と涙腺が緩んでしまった。1粒、2粒と涙は際限なく溢れ出る。終いには大声をあげて泣き出したもんだから、通行人に警察を呼ばれてしまった。
警察署に連行された私は、「親戚の叔母さんを呼んでほしい」とだけ言った。
…それからのことは、正直あまり覚えていない。親戚の叔母さんが来て、私を家に迎え入れてくれたらしいが、どんな道を通ったのか、どんな会話をしたのか。
何も覚えていない。ただ1つわかる事は、「私の故郷が消えた」というあまりに信じられない残酷な現実だけだった。

それから1年ほど叔母さんの家に居候させてもらったのだが、どうやら私と叔母さんは馬が合わなかったようで、私が13歳になる頃には日本に住んでいる叔母さんの知り合いの女性に引き取ってもらうことになったのだった。家族の2回忌が終わっても、私は家から出れずにいた。外に出れば、その間に化け物が襲ってきておばさんが殺されちゃうんじゃないか?そんな不安がとめどなく襲ってくるため、私はおばさんから離れられなかった。
そんなことを繰り返しているうちに年が明け、桜が散り、葉桜になった頃のことだ。私は唐突におばさんに「大事な話がある」と言われたのだ。なんだろう、また追い出されるんだろうか?ビクビクしながらおばさんの口が開くのを待っていた私に
かけられた言葉は、予想外のものだった。
「あのね、リュティちゃん…家族を喪って悲しいのは私も分かるわ。私もヒュージに家族を殺されたから。でも、『悲しい』で立ち止まってちゃ前には進めないわ。悲しさを乗り越えて、遺された人は生きなきゃいけないの。たとえそれがどんなに茨の道だとしてもね」
知らなかった。おばさんも私と同じ境遇だったなんて。驚きで声が出てこない私の顔を見つつ、おばさんはこう続けた。
「リュティちゃん、来年から本当なら高校生でしょう?私の勝手なんだけど、百合ヶ丘女学院ってところを受験してみたらいいんじゃないかな、って思うの」
ゆりがおかじょがくいん…?と首を傾げる私を見て、おばさんが言葉を紡ぐ。
「リュティちゃんは『ヒュージをこの世から消したい』、『私のような思いをする人を少しでも減らしたい』って前に言ってたわよね?それでピンと来たの!リュティちゃんはリリィになって、皆を救うヒロインになればいいんじゃない?それに、亡くなった家族の方への恩返しにもなるかもしれないし…ね」
あまりに突然で、突拍子のない話に驚いた。だが、考えてみれば妥当だ。私のような思いをする人を減らしたいなら、あの日私を逃がしてくれた人のようなリリィになればいい。私はおばさんの話を聞いてから5分も経たずに百合ヶ丘女学院の選抜試験の受験を決めた。

合格発表日、私はおばさんと泣きながら抱き合って喜んだ。それもそのはず、私の受験番号が合格者一覧にあったのだから。
こうして私は無事百合ヶ丘女学院への入学を果たしたのだった。ただ、入学後に色々問題を起こしておばさんを悩ませたのはまた別の話…

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クリスティーナ・トゥーリ・アレクサンドラ
(Kristiina Tuuli Aleksandra)
ロシア名は
イリーナ・ポルフィリエヴナ・スペシフツェヴァ
(Ирина Порфирьевна Спесивцева)…キリル綴り
(Irina Porfirevna Spesivtseva)…アルファベット綴り

クリスティーナ家の長女。
親ゲヘナ主義であり、家族を殺害し、
ヒュージを使って農村を壊滅させた張本人。
フィンランド側の公式記録では行方不明扱いだが、
血の水曜日事件の後にロシアに亡命。
現在はGEHENA日本支部で管理職に就いており、
殺し損ねた妹を殺そうと企んでいる。

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【何気ない日常と背負う覚悟】
私は、温かい春の陽射しが好きだ。
ぽかぽかと私を包みこんでくれるような気がするから。
でも、そんな陽射しを味わえないのが授業中だ。
授業中の睡眠は評価と点数に直結するため、できる限り
寝ないようにしなければならない。
しかし私の席は窓側のため、春の間は絶好のお昼寝タイムが
登校から下校まで続くのである。
そんなある日のある授業中のこと、私は案の定
優しい陽射しに包まれて惰眠を貪りかけていたのだが、
隣の席の子に揺さぶられて何とか眠らずに耐えていた。
しかし、それも午前中で限界だった。
昼食を摂り、満腹になってからの午後の授業では
眠気と陽射しにKOされ惰眠を貪ってしまった。
放課後にクラス委員長の壱さんからノートを貸してもらい、
必死に写していると、壱さんが独り言のように呟いた。
「あなた、午後はいつも寝ているけど…
そんなに寝心地がいいのかしら?」
私は苦笑しながらその質問に答える。
「そうですね…お日様が私を包んでくれる感じなので
頑張ってもつい寝てしまうんです…」
壱さんはそれを聞き、呆れたような表情を私に向けた後で、
ふっと顔を弛めて笑った。
「私も、それくらい気楽に生きれたらいいのだけどね…」
何気ない一言。でも、その顔は確かにアールヴヘイムの一員としての
「覚悟」が垣間見えた。
私も、そんな覚悟を背負えるような人間になりたい。
そう思った1日だった。

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【惰眠と課題と代償と】
____いつの間にか、寝ていたようだ。
部屋の中は暗く、もう夜なのだと
視覚の情報が寝ぼけた頭に伝えてくる。
眠い目を擦りながら部屋のカーテンを閉め、灯りをつける。
そして時計を見た所で、私の目は一気に覚めた。
深夜2時だ。そして私は部屋に帰ってきてから
課題に一切手をつけていないのである。
そしてそれらの課題の締切は今日の1限目
幸いにも、まだ時間はある。そう思いカフェラテを胃に流し込み
課題と向き合う覚悟を決めた。

30分後、私の眠気は既に限界を超えていた。
当たり前と言えば当たり前だが、深夜2時に起きて課題をやろう
もんなら眠気が大群で襲ってきても文句は言えないだろう。
部屋に帰ってくるなり眠ってしまった数時間前の自分を恨みつつ、
それでも少しづつ、着実に課題の山を片付けていく。
そうして全ての課題が片付いた頃には、朝日が昇らんとしていた。
「あ〜…やっと終わった…」
椅子に座りながら伸びをして、達成感を噛み締めた。

ドンドンドン!!!と部屋の扉を勢いよく叩く音がする。
「クリスティーナ・トゥーリ・リュティ!起きているの!?
始業時間はとっくに過ぎているわよ!」
壱さんの声だ。…今なんて?「始業時間はとっくに過ぎている」?
時計を見ると、1限目が既に終わらんとしていた。
私は急いで壱さんに返事をし、共に教室へ向かったのだった。
道中では壱さんに、教室では科目担当の先生に
それぞれこってりと叱られてしまったのは言うまでもない。

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メモ
姉と妹の邂逅(任務中)
ヒュージを倒していると、聞きなれた声がした
→声のする方を向くと、死んだはずの姉が
→どうしてヒュージと一緒にいるの?
→なんでって、GEHENAで働いているからだよ
→その場を通りかかった一般人をヒュージで殺害する
→その場に蹲るリュティ、それを嘲るアレクサンドラ
→アレクサンドラが指を鳴らすとスモール級ヒュージが沢山現れる
→泣いて混乱しながらヒュージを倒しきる
→今日のところはこの辺で勘弁してあげるよ
→私は!貴方を絶対に許さない!(リュティ)
→アレクサンドラ、振り返らずに立ち去る
→リュティ、百合ヶ丘に帰還
→憔悴しきった様子を心配されるも何も言わず部屋にとじこもる

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外征任務中、ヒュージが出現したとの一報を受けて現場に向かうと、そこにはスモール級ヒュージがうじゃうじゃと湧いていた。舌打ちをしつつcharmで1体1体斬り伏せていく。
____何体倒しただろうか。数えるのも億劫になった頃、私の耳にここ数年聞いていない、でも聞き覚えのある声が届いた。
「あーその子私の妹だから攻撃しちゃダメだよ〜」
ヒュージに向かって呼びかけたその声は、紛れもなく数年前にヒュージに襲撃されて死んだはずのアレクサンドラ姉さんの声だったのだ。
「姉…さん…?」
手が震える。信じたくない現実を、信じられない現実を、まざまざと見せつけられている。聞いたら私は絶望を知るだろう。それでも、リリィとして、聞かなければならない問いがある。
「姉さん、どうして…どうしてヒュージを引き連れてるのッ!?姉さんはそんな事する人じゃない…でしょ…?」
最後の方は、信じたくないという気持ちで掠れ声になってしまった。だが、そんな私の期待は一瞬で砕かれた。姉さんは鼻で笑い、こう言った。
「私がヒュージを引き連れてる理由〜?そんなの簡単でしょ?私がGEHENAにいるから。それ以外に理由がいるかな?」
屈託のない笑みで告げられた残酷な真実。
「嘘…姉さんが…GEHENAの一員だったなんて…」
私はショックでその場に蹲ってしまう。そんな私を嘲るように、姉さんは私の耳元で囁いた。
百合ヶ丘女学院のリリィがこんな事でへばってていいのかな〜?君がここで止めなかったら、街に被害が出ちゃうよ〜?そしたらリュティちゃんは世間の笑い者だ。怖いかな?辛いかな?お姉さんにその顔をもっとよく見せ____」
そのねっとりとした煽り声に私は弾かれたように立ち上がり、姉さんの頬を全力で殴り飛ばした。
「絶対にさせない。私が街やここに住んでる人々を守る!」
姉さんはぶたれた頬を擦りながら、ぱちんと指を鳴らした。すると、動きを止めていたヒュージ達が一斉に私の方を目掛けて襲いかかってきた。

____涙が止まらない。姉さんがGEHENAにいる。姉さんが人殺しに加担している。その事実を知っただけで、弱く脆い私の心はどうにかなってしまいそうだった。それでも何とか最後のヒュージを倒し切り、姉さんにcharmを向ける。だけど、姉さんは飄々とした様子で笑う。
「全部倒しちゃったかぁ…ま、今日はこの辺で勘弁してあげるよ。それじゃーね、また逢う日まで」
……身体が動かない。追って今すぐにでも殺さなきゃいけないのに。ならば、せめて呪詛の1つでも吐いてやろうじゃないか。
「私は!貴女を!絶対に許さない!地の果てまで追い詰めて!絶対に!この世から葬ってやる!」
姉さんは、振り返らなかった。私に出来たことは、ただ姉さんが立ち去るのを見ることだけだった。……そこからどうやって百合ヶ丘に帰ったのか覚えていない。
クラスメート達に心配されたような気もするが、どう返答したのか覚えていない。ただ、今は信じられない現実から目を背けていたかった。

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それから3日、私は授業を休み続けていた。
姉さんがGEHENAの職員で人殺しに加担していたなんて
信じられなかった。信じたくなかった。
しかし、現実は私の身体に重くのしかかってきた。
1日中布団を被り、得体の知れない不安から逃げるように
叫んだり部屋の中を暴れ回ったりもした。
そのせいで教師を呼ばれ、現在事情聴取中である。
「リュティさん、最近どうしたの?授業にも出ていないようだし…」
私だって出来ることなら今すぐ授業に出たいし
こんな狂人じみた真似はしたくないのである。
それでも、姉がGEHENAに所属しているという現実が私を狂わせる。
「あ、あ、あぁ…」
声にならない叫びに反して出たのは情けない声だけ。
「リュティさん?…リュティさん!?どうしたの!?返事をしなさい!」
あぁ、視界が白く染まる____

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赤羽さんとそういうことをしかける話。

赤羽「お、クリスちゃんじゃーん!ちょっとからかっちゃお〜」
スタスタと歩み寄り、後ろから肩に手を回す
赤羽「おーいクリスちゃーん、今からイイコトしなーい?」
異界の門を開きながらニコニコと笑う
リュティ「あ、赤羽さん…?」
戸惑いながら肩に回された手を解こうとする
赤羽「オレの誘いを断ろうとしてんの?いい度胸じゃん。
前は知らなかったから見逃してやったけど、今回は
もう知ってンだろ?今回こそは食い散らかすからな? 」
不敵な笑みでリュティの目を見据える
リュティ「い、嫌…です…ッ!」
赤羽から目を逸らしながら言う
赤羽「ふーん…そんな態度取っていいんだ?」
ニヤニヤと笑う赤羽
リュティ「ど、どういうことですか…?」
赤羽「ん〜?今断ったらもっとヒドイことするよ?ってだけ 」
あくどい笑みを浮かべるその様子はさながら悪魔である
リュティ「ひ、卑怯ですよ…きゃッ!?むぐー!」
痺れを切らした赤羽に口を塞がれ異界の門に連行されかけたその時…
千咲「ちょっと、うちのシルトを襲わないでくれるかな?
これ以上酷い事をしようもんなら私も手段は選ばないぞ」
赤羽「うげ…まーためんどくさいのが…」
千咲の出現に顔を顰める赤羽
千咲「それで?うちのシルトを返してくれるかな?
1年椿組の赤羽花梨さん」
赤羽「へいへーい…」
リュティの肩に回していた手をほどき、千咲の方へ向けてポンと押し出す
赤羽「じゃーなクリスちゃん」
振り向かず手をヒラヒラ振ってその場から立ち去る
リュティ「お姉様…ありがとうございます!」
千咲「いいんだよ。可愛い可愛い私のシルトが襲われかけているのに
助けないのはシュッツエンゲルとして失格だからね。
いつだってリュティの事は私が守るから」
リュティ「お姉様…!大好きです!」
千咲にギュッと抱きつく
千咲「こら、人前であんまり抱きつくんじゃないよ。
他の人達が見ているだろう?」
困りげに諭すも顔は満面の笑みである

こうしてリュティの貞操(?)は今日も千咲によって守られたのであった。
その後千咲が若干ヤンデレ気味になったのはまた別の話…

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オリキャラのSS投げる場所

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オリリィのSS投げる場所

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____放課後、千咲に呼び出されたリュティ。
不思議そうに首をかしげ千咲に問う。
「千咲お姉様…今日はどうしたんですか?こんな所に呼び出して…」
「最近私のシルトとしての自覚が足りないようだから、
もう1回私の愛情を教えこんでおこうかなぁと思ってね」
ニコニコと笑いながらリュティを壁際に追い詰めていく千咲。
「お、お姉様…?」
「だーめ。逃がさないよ?今日はじっくり私の部屋で
私のリュティへの愛情を教えこんであげる日だからね」
「で、でも…魅咲様も同じお部屋でしょう…?それなら
無理なんじゃないですか…?」
見え見えの穴を突かれ、待ってましたとばかりに顔が綻ぶ千咲。
「大丈夫だよ?魅咲はちょっと用事があって今日はいないんだ。
それとも…リュティは誰かに見られていた方が興奮するのかい?」
変態さんだねぇ、とニヤニヤ揶揄う千咲に対し、
リュティは頬を膨らませて抗議した。
「そ、そんなはず無いでしょう!?」
ただ、顔を真っ赤にして抗議しても説得力があるはずもなく。
リュティは為す術なくベッドに連行され、押し倒され…

翌朝、同じベッドですやすや寝ている2人を見た魅咲が
2人(主に千咲)を叱りつけたのであった。

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頬を流れる涙で目が覚めた。何か嫌な夢でも見ていたんだろうか?
そんな下らない思考を抑えつけ、未だに爆睡している
妹の千咲の頭を叩き、起こす。数発叩いた頃、ようやく
千咲の瞼が開いた。
「なんだい魅咲、今日も早いね。自主練かい?」
寝起きだと言うのになんだ、この王子様ムーブは。
「ええ、そうよ。貴方もたまには自主練の1つや2つ
したらどうかしら、『孤高の王子様』?」
嫌味ったらしく渾名で呼んだつもりだったのだが
逆効果だったようで、ぎゅっと抱きしめられ
おまけに頭をわしゃわしゃされてしまった。
私の魅咲は相変わらず可愛いな!食べちゃいたいくらいだよ」
チクリ、と心臓を何かが刺す音がした。
姉妹なのに。
こんなこと思っちゃいけないのに。
この感情は何だろう____

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強く、強く憧れていた。
強烈なカリスマ性に。誰も辿り着けない頭脳に。
決して諦めない反骨心や不屈さに。
私には、決して辿り着けないその領域に。
強く憧れ、また強く嫉妬する。
どう頑張っても、どう足掻いても。
私はその領域には辿り着けそうもないから。
後輩達より能力が劣っていて、
リーダーシップがある訳でもない。
こんな惨めな思いをするくらいなら、いっそ____

「はぁ…」
深く大きな溜息を吐く私を見て、ルームメイトの
凛華が心配そうにこちらを見る。
「どーしたの海里、そんなに大きな溜息吐いて。
また後輩ちゃん達より劣ってる〜とでも考えてたの?」
鋭い。どころかドンピシャだ。
やはり2年以上ルームメイトだとある程度
考えは読まれるらしい。
私は苦笑しながら返事を返す。
「そうよ…だって私にはリーダーシップも
不屈さも明晰な頭脳もないのよ!?
1個だけでも優れてる所を見つけたいじゃない…」
凛華は苦笑し、私の頭を撫でる。
「海里のいい所は、その貪欲さだと思うよ。
『誰にも負けたくない』。その心だけで
やさぐれずここまで来れたのは、本当に
海里の努力の賜物だし、才能だと私は思うよ」
「あ、ありがとう…」
赤面した顔を見られたくないがために
顔を逸らしたが、むしろ逆効果だったようで、
海里は可愛いなぁともっと撫でられてしまった。

いつか、『私がリリィに生まれてよかった』
って思える日が来たりするのかな…
そんな事を考えながら、凛華と共に眠りについた。

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「麗花、イルム、大丈夫…?」
リュティが心配そうに冷たいタオルを
私とイルムの首筋に当ててくれる。
なんでこんな事してるのか。
それは当然考査があるからに他ならない。
レギオンの皆と違って、私達は座学の点数が
著しく低いため、このままでは赤点を取って
補習授業に出席しかねないと見込まれたために
千咲様が「勉強しなさい^^」と直々に圧…いえ、
発破をかけてくださったのだ。
その期待に応えないと!と意気込んだはいいものの…
普段授業中寝てばかりの私とイルムにとっては
異次元の内容ばかりで、始まって10分も経っていないのに
既に呻き声をあげ机に突っ伏す始末。
イルムに関してはもう声すら出していない。
死んだように眠っている。
どうにかしたいのはやまやまだが、いい解決案もなければ
勉強内容が効率的に頭に入ってくるわけでもない。
どうしたらいいんだろう、と焦りを感じ始めていたその時、
部屋のドアをコンコン、と優しくノックする音がした。
「誰だろう…私、見てくるね!」
リュティが扉を開けると、そこにいたのは魅咲様だった。
「勉強は捗っていますか?と聞こうと思ったのだけど、
案の定進捗は芳しくないようね…」
苦言を呈する魅咲様に、私達は俯くしかできなかった。
「仕方ありません。もう考査まで時間も無いことですし、
私が直々に勉強を教えましょう」
メガネをクイッとあげ、不敵な笑みを浮かべる魅咲様。
もしかして、これ…スパルタ授業ってやつ…?

「「終わった(ね)ー…」」
最後の考査科目が終わり、廊下で合流した私とイルムは
返却後、互いにどうだったか報告しあうことにしたのだ。
その結果は____
「「せーの、」」

「「赤点回避!!」」
私とイルムは驚きながら目を合わせ、
泣きながら抱き合って喜んだのだった。

「魅咲様のおかげで2人とも赤点回避出来ました!
本当にありがとうございます!」
自慢げに私達の答案を見せると、魅咲様の顔がどんどん
曇っていき、終いには濁った笑顔になってしまった。
「次の考査前は…もっと厳しい勉強が必要みたいね?」
「「えぇーっ!?」」

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メモ
魅咲様がメイド服を渋々着る話。
千咲が冗談で「魅咲がメイド服を着たら可愛いだろうなあ」と言う
魅咲、本気で迷い始める
魅咲、メイド服姿をレギメンの前で披露する

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私は今、頭を抱えていた。
千咲が「魅咲のメイド服姿が見たいなぁ」なんて
レギオンのみんなの前で言ったせいで、
本当に着る羽目になってしまったのだ。
「う゛ぅ゛ぅ゛…」
恨めしそうに千咲の方を睨むも、当の本人は
「どうかしたのかい?魅咲」
なんて聞いてくる始末。
…こうなったら誰よりも可愛く着こなしてみせるんだから!

数日後。
私は、一柳隊に所属している王雨嘉さんの部屋に来ていた。
「魅咲様…どうしたんですか?相談があると仰ってましたが…」
「その…メイド服の着方を教えてもらえないかしら…」
最後の方は自分でも聞き取れない程の
小さな声になってしまった。
雨嘉さんは驚いたように目を見開き、
その後がっしりと私の手を掴み、
「魅咲様、私のレギオンのメンバーが
しっかりと教えてくれますよ!」
と言った。
…え?

さらに数日後。
「なんでこんな事になってるのよ…!」
何故か一柳隊の面々も私達の部屋に集っているのだ。
「ちょっと千咲、どういうこと!?」
と問い詰めるも、千咲は飄々と
「人が沢山いた方が魅咲の美しさや可愛さが引き立つだろう?」
と言ってニコニコ笑うだけだった。
「ほら、下級生が期待の目で見てるぞ?いい所見せなきゃね」
と言い残して千咲は元の場所へ戻っていった。

はぁ…

ガチャリと部屋の扉を開けると、方々から感嘆の声が上がった。
正直羞恥心で消えてしまいたいくらいだ。
「王道のメイド服に猫ポーズ…!
『氷の女王』の新たな一面ですね〜!」
一柳隊の二川さんが私にカメラを向けて連写している。
大方明日のリリィ新聞にでも載せるつもりなのだろう。
そんな事を考えていると、千咲がこっちに歩いてきた。
どうしたんだろう、と思っていると千咲は私の耳元で
「とっても可愛いよ、魅咲。惚れちゃいそうだ」
と囁いた。
「〜〜〜!?///」
私は真っ赤になった顔面を隠すように手で覆い、
その場に蹲ってしまった。

翌日のリリィ新聞の一面が案の定
メイド服姿の私に囁く千咲であったことは言うまでもない。

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最近芽生えたこのモヤモヤは何なのだろうか。
嫉妬?羨望?独占欲?
それとも____

私のシルトに近づく有象無象が多すぎるせいか、
最近の私はイライラが止まらない。
クラスやレギオンにいる時は何とか抑えてはいるが、
姉の魅咲には隠し通せなかった。
「千咲、最近リュティさんと話せてないせいか
イライラしてるようね。リュティさんも
最近寂しそうにしてたから、明日は2人で一緒に
デートでもしたらどう?」
デート、か…確かに最近リュティと話せてないし
いい機会かもしれない。誘ってみようかな…
そう思ってウキウキしながら私はリュティに電話をかけた。
「お姉様、こんな夜遅くにどうしたんですか?」
「夜遅くにすまないね。最近あまり話せてなかったから、
明日はリュティとデートに行きたくてね。リュティさえ
良ければ色んな所に行こうと思ってるんだけど、どう?」
「で、でででででデート…ッ!?」
「そ、デート。シュッツエンゲルとして、私がリュティを
しっかり守ってあげるから。私とデートに行かないかい?」
「行きます…!」
リュティの返答は消え入りそうなほど小さな声だったが、
それでも確かに嬉しさを含んでいた。

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お姉様とデート。
まだ約束の日まで数日あるのに、その事実だけで
舞い上がって天まで昇ってしまいそうだ。
勉強なんて手につかない。
早くお姉様とデート…!

「やぁ、待ったかい?」
そんな声と共に現れたお姉様は、
いつもの制服とは違うボーイッシュな服装で
とってもかっこよくて、もっと好きになってしまいそうだ。
「いえ、全然待ってないです!」
そんな決まり文句を返し、お姉様と手を繋ぎ歩き出した。
____後ろをつける人影がいた事に気づかずに。

デートはとても楽しく、夢のような時間だった。
お姉様とパフェを食べたり、アクセサリーを選んで頂いたり。
この時間が永遠に続けばいいのに…なんて
まるで恋愛小説の主人公みたいなことを思っていた。
本当に夢のように楽しい時間だった。
ずっと続けばいいのにな…

「嬢ちゃん、ちょっとこっちに来てくれないか?」
と言われるが早いか私は路地裏に連れ込まれた。
「嬢ちゃん、百合ヶ丘のリリィだろ?
俺の所に来ればもっと楽な暮らしができるぞ?」
とドスの効いた声で尋ねられた。
いや、拒否権なんて無かった。
笑顔で私の爪先を踏みつけて圧をかけてきた。
助けを呼ぼうにも吐息がかかる距離にまで
詰められてしまって呼べない。
どうしよう…そう思った時、路地裏に
聞き覚えのある声が響いた。
「私のシルトに手を出すなッッッ!」
「お姉様…!」
男は舌打ちをするとお姉様の方へ向かい、
「クソガキが…しゃしゃり出てくんじゃねえよ!」
と言い殴りかかった。
危ない…!と言おうとした瞬間には、男がその場に蹲っていた。
唖然とする私の手を引っ張り、お姉様は走り出した。

逃げ切ったあと、お姉様が私の肩を叩き
「リュティ、すまないね。私がついていながら
危ない目にあわせてしまって…」
と申し訳なさそうに謝ってきた。
「いえ、お姉様は悪くないんです!私が不注意だったせいで…」
責任の被り合いになりかけたその時、お姉様が
私の首に何かをかけた。
「危ない目にあわせたお詫び…と言ってはなんだけど、
私がリュティの為だけに選んだネックレスだ。
リュティの目の色と同じ、青い宝石が埋まっているんだ。
受け取ってくれるかい?」
お姉様にそんな事を言われたら、
私の選択肢なんて1つだけだ。
言わされる訳ではない、心の底からの感謝。
「はい、お姉様!勿論です!ありがとうございます!」
私の返事を聞いて、嬉しそうにお姉様は笑ってくれた。

「お姉様、また『デート』しましょうね!」
そう私が満面の笑みで言うと、
お姉様は顔を真っ赤にしながら
私を抱きしめ
「リュティのお願いならなんでも叶えてあげるよ」
と言ってくれた。

glacial nymph
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報われない努力は嫌いだ。
誰かより下にいるのが嫌だから。
血の滲むような努力をして、
必ず報われるように努力してきた。
それでも敵わない相手がいる。
私は、どうすればいいんだろう。
教えてよ、凛華…

「あーあ…やんなっちゃうなぁ」
うーっと伸びをして椅子から立ち上がると、
ちょうど起きたらしい凛華と目が合った。
凛華は眠い目を擦りながら
「どしたの海里、また負けず嫌い発動しちゃった?」
とにこやかに聞いてきた。
凛華はエスパーの類の超能力でもあるんだろうか。
それとも私の思考回路はそんなにわかりやすいんだろうか。
「海里は負けず嫌いだもんね。その性格、いいと思うよ」
私は凛華の雰囲気に飲まれ、何も言えなかった。

…それが果たして称賛か、皮肉だったのかは分からない。
凛華と離れ離れになってしまった今も。
私は凛華を探し続けている。
生死も分からない、どこにいるかも分からない。
あの時の言葉の真意を確かめるために。
そして、1人の友人として「ごめんなさい」を言う為に。
もし見つけられたのなら、私は地獄にでも堕ちてみせよう。
それほど凛華は私の大事な親友であり、心の拠り所なのだ。
だから____
「早く私の前に出てきてよ、凛華」

glacial nymph
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メモ
千咲→リュティ ヤンデレ

glacial nymph
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可愛い可愛い私のシルト。大事な大事な私だけのシルト。
目に入れても痛くないくらい可愛いし、リュティのことは
私が一生を賭けてでも守り抜こうと思えた。
私の愛を、リュティは受け止めてくれるだろうか?
私の歪な愛情を、リュティは受け入れてくれるだろうか?
私の飢えた欲求を、リュティは満たしてくれるだろうか?

____結果から言うと、リュティは私の愛情を拒絶した。
だから私はリュティが私の愛を受け入れるまで彼女を
私の家に閉じ込めることにした。泣いても叫んでも
どんなに許しを乞うたとしても、私に堕ちるまでは
絶対にあの部屋からは出してあげないのだ。

いつになったら私の愛を受け入れてくれるんだい?
泣いても叫んでも助けなんて来ないさ。
いい加減に諦めて私の元に堕ちたらどうかな、リュティ。

glacial nymph
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はぁ…まだ私に堕ちてはくれないのかい?リュティ。
ここにいるのは私とリュティだけだと言うのに、
どうして他の有象無象の名前を呼ぶんだい?
リュティが呼ぶべき名前は私以外にないだろう?
「千咲様、一生私を傍に置いてください」って。
言えよ。言えってば。言えっつってんだろうが!

…あぁ、怖がらせてしまったみたいだね。
ついでに私の本性もバレちゃったか。
尚更、ここから出す訳にはいかなくなっちゃったなぁ。
全部全部、リュティが悪いんだよ?
私の愛を拒絶して、他の有象無象の名前を呼んで、
私にちっとも振り向いてくれないからさ。
恨むなら、私じゃなくて過去の自分を恨んでくれたまえ。
それじゃあ、また暫くリュティとはお別れだ。
次に会う時は、千咲様のモノになりますって言わせてみせるよ。
シルト
じゃあね、私の可愛い「人 形」。

glacial nymph
#

最近、リュティの姿を見ない。
授業にも出ていないし、教室にも姿を見せない。
レギオンの皆も見ていないみたいだし、
リュティは一体全体どこにいるんだろうか。
そう思いながら歩き始めた時、
視界の端に1番事情を知っていそうな人が通るのが見えた。
私は走ってその人に駆け寄ると、周りの取り巻きの視線を
気にすることなく人の少ない所までその人
もとい千咲様を引っ張っていった。

「痛いじゃないか、イルム。そんなに焦らなくたって、私達は
同じレギオンなんだから、いつでも話せるだろう?」
平常を装っている千咲様だ。

「それとも…私と2人きりじゃなきゃ話せない事でもあるのかい?
例えば____リュティが今どこにいるのか、とか」
僅かに私の顔に浮かんだ動揺を見抜いたのか、
千咲様は意地悪く笑う。
「リュティの居場所なら、残念だけど教えてあげられないな。
あの子は今、私のモノになろうと必死なんだ。
それを邪魔される訳にはいかないんでね」
最早隠す気すら無いらしい。それなら…!
私は千咲様の胸ぐらを掴み、全力で殴ろうとした。

だがその拳は、千咲様に届かなかった。
さっき撒いたはずの千咲様の取り巻き達が、
私を取り囲んでいるのだ。
どうして…!と唇を噛む私を見下しながら、
千咲様は笑みを浮かべ、取り巻き達に何かを告げる。
そしてそのまま立ち去っていった。
千咲様を追いかけようとする私を、
取り巻き達が強引に輪の中に引きずり込んだ。
その後は身体を押さえつけられてひたすら殴られた。
罵詈雑言を吐かれ、存在価値を否定される。
GEHENAにいた時程ではないけれど、
久々にこんな辛い時間を味わった。
ごめんね、リュティ。
私がもう少し気をつけていれば____

glacial nymph
#

この暗い部屋に閉じ込められて、何日が経ったのだろうか。
三日?一週間?一ヶ月?…もう分からない。
いっそ、お姉様のモノになってしまおうか。
そしたら、こんな所から出してくれるんだろうか。
それなら、いっそ…

今日もまた、暗闇に光が差し込む。
その眩しさに一瞬目が眩むが、すぐにお姉様が
ご飯を差し入れに来たのだと分かった。
そして、笑顔のお姉様はまた決まり文句で
私に問いかける。
「どうかな、リュティ。そろそろ私に堕ちる気になったかい?」
もう、考える気力すらない。一刻も早く、ここから出たい。
その思考が、私の判断を狂わせる。
「はい。『お姉様のモノ』になります…♡」
その返答を聞いたお姉様は、勝ち誇ったように笑った。
「あぁ、可愛いよリュティ。私だけの可愛い可愛いお人形さん…
ずっとずーっと、君を私だけのものにしたいと思っていた。
その願いが叶って私は嬉しいよ!
これからはずっとずっと一緒に暮らそう!」
ずっとお姉様と一緒…♡
もうこのままでいいかも…

glacial nymph
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お姉様と一緒に過ごしてから1ヶ月くらいが経った。お姉様は沢山の愛情を私に注いでくれた。私が「欲しい」と言ったものはなんでも買ってくれた。それでも、ひとつだけ許してくれなかった事がある。「部屋の外に出ること」だ。
外に出たいと懇願しても、お姉様は
「君には外の穢れた世界を見てほしくないんだ。分かってくれるかい?リュティ」としか言わなかった。
いつしか、私も「外は怖いものなのだ」と思うようになっていた。ただ、それでも私の中の欲望は「外に出たい」と渇望していた。

お姉様、もう寝たよね…?

音を立てないように部屋の扉に触れた瞬間、私の身体に強い電流が流れた。
「…ッ!?」
身体が痺れ、その場に崩れ落ちる。それと同時に部屋の扉が開く。扉を開けたのは、勿論お姉様だ。
「ダメじゃないか、リュティ。勝手に外に出ようとしたりするなんて。リュティが逃げないようにするために、余計な事をするこの手足を切ってしまおうか?それともいっそ、心臓にこの刃を突き立てようか?」
ニコニコ笑いながら恐ろしい事を喋るお姉様に戦慄しながら、少しでも距離を取ろうと試みる。だが、それは無駄な足掻きだったようで、身体を動かす前にお姉様に捕まえられてしまった。次の瞬間、お姉様は私にナイフを向けた。
「私の言う事を聞かないリュティなんてニセモノだ……ホンモノのリュティをどこに隠した…?出せよッ!」

誰か、助けて____!

glacial nymph
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私は、周りから忌避されてきた。
捨て子でその上GEHENAで人体実験をされたと聞けば
私だってそんな人とは積極的に関わろうとは思わない。
人殺し、GEHENAの手先、非人道的組織の奴隷。
心無い悪口なんて、何度吐かれたか。
そうして私は、いつしか他人を信用しなくなっていた。
百合ヶ丘女学院にスカウトされた時も、
入学してからもずっと。
誰とも関わらずに1人で過ごしてきた。
クラスの人達も私を腫れ物扱いしてたし、
よっぽどの事が無ければ関わろうとはしなかった。
ただ、リュティだけは違った。
私の境遇に思う所があったのか、
知り合ってから毎日話しに私のクラスに来るようになった。
クラスメートに私の悪評を伝えられようとも、
リュティは1日も欠かさず私の元に来た。

それからというもの、
私達は時々お昼ご飯を一緒に食べるようになった。
他愛のない世間話や学校での勉強の話とか。
後者に関してはいつも授業を寝て過ごしてる私には
よく分からなかったが、それでも
リュティと一緒にいることはとても楽しかった。
この人となら、一緒にいても辛い思いしないし、
私もこの人に辛い思いはさせないだろう。
そう思っていた。あの日までは____

glacial nymph
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私立秋田心理臨床科女子中学・高等学校中等部入学当時から
将来を嘱望されていた少女・天ヶ瀬陽。
その類稀なる才能は留まる事を知らず、彼女の出向いた戦闘は連戦連勝。
男鹿半島に点在するケイブに巣食うヒュージを一網打尽にする。
だが、あまりにも恵まれすぎた才能は、周囲との軋轢を産んでしまった。
いつしか陽が戦闘に出ても上級生はまともに戦わなくなり、
対ヒュージ戦闘で苦戦することも増えていった。
とある戦闘から帰投した日、陽は上級生相手に激昂した。
「何故全力を出さないのか。無様に死にたいのかこの愚図共」と。
それ以降陽の悪い噂がでっち上げられ、いつしか陽には
『冷酷無情の人でなし』のあだ名がついて回るようになった。
下級生には忌避され、上級生には嘲笑される。
そんな酷い現実に耐えられなくなった陽は、
遂に出撃することをやめた。
それから2ヶ月ほど経ったある日、突如岩城地区に
無数のミドル級ヒュージが出現し、当時トップレギオンだった
ハイリヒトゥームのメンバーが出撃するも全く歯が立たず
全員瀕死(その後1人を除き死亡)の状態で帰投。
皮肉にもそのメンバーは陽を嘲笑した上級生で構成されていたのだ。
打つ手が無くなった秋女上層部は、
状況を打破できるかもしれないという一縷の望みに賭けて
当時14歳(中等部2年)の天ヶ瀬陽を単騎で岩城地区に送り込む。
それから7時間後、陽はほぼ無傷で秋女へ帰投したのだった。
それ以降陽には「どんな厳しい状況でも打破する力がある」
という尊敬の念を込めて『Silver Bullet』の二つ名が付くようになった。

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6年前の8月。暑い暑い夏の日のことだった。
いつものように生意気な下級生の悪口を吐いていると、
ヒュージ襲来を告げるサイレンが響き渡った。
どうせ雑魚狩りだろう、と当時の私達は思っていた。
その油断でほぼ全員が命を落とすとは知らずに。

現場は学校から40kmくらい離れた羽後本荘駅跡地。
事実上廃線となってから10年以上経った廃墟は、
今にも崩れ落ちそうなほど劣化していた。
そんな廃墟を取り囲むように、
無数のミドル級ヒュージがワラワラと湧いていた。

1時間経っても全くヒュージの数が減る様子が見えず、
レギオンの皆の顔にも疲れが見え始めてきた。
私達のスタミナの無さを嘲笑うようにヒュージの数が増え、
完全に取り囲まれてしまった。
「あぁ、こんな廃墟で無様に私は死ぬんだなぁ」
そう思った時、隊長が叫んだ。「絶対に全員生きて帰るんだ」と。
尽きかけのマギを振り絞り、撤退に十分なだけの道を切り開き、
全員が深い傷を負いながらも何とか学校まで辿り着いた。
その後すぐさま秋田総合病院に駆け込んだが、治療の甲斐無く
私を除くハイリヒトゥームのメンバー全員が死亡した。
隊長も、副隊長も、仲が良かった同級生も。
みんなみんな、死んでしまった。
私は泣くことすら忘れ、遺族の方々に「ごめんなさい」と
謝り続けることしか出来なかった。

その日の夜の星空は、不気味なほど綺麗だった。
まるで、散っていった同胞が星となっていったかのように。

それから暫くは地獄だった。
レギオンは解散し、学校中で人殺し呼ばわりされた。
いっそ死んでやろうかとすら思った。
そんな時、あの生意気な下級生が私達が倒し損ねた
羽後本荘ケイブの群生ヒュージを倒したと聞いた。
正直、もう何もやる気がしなかった。

glacial nymph
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去る3月に私立秋田心理臨床科女子中学・高等学校(以下秋女)の
高等課程を無事卒業した私は、教導官の方からの強い推薦もあり、
そのままこの秋女の教導官として、私の持っているノウハウを
次世代のリリィ達に伝えていくこととなった。

…やはりいつになっても大勢の視線というものは慣れない。
あの時のせいだろうか____
そんな濁った考えを打ち消すように首を振り、ひとつ息を吸った。
「知っている人も多いかと思いますが、昨年度まで生徒会長として
この秋女高等部に在籍していた天ヶ瀬陽です。今年度からは
教導官として私の持つ経験やノウハウの全てを皆さんに
伝えていきたいと思っています。改めて、よろしくお願いします」
自己紹介を終えると、先輩の教導官の方から
一通り私についての紹介があり、生徒が私に質問する時間となった。
誰も手を挙げない中、1人おずおずと躊躇いがちに挙手をした生徒がいた。
席順表と座席を照らし合わせながら「牧川さん、どうぞ」と言うと
その生徒____牧川さんは挙手の時とは正反対の
ハキハキとした口調で私についてこう問いかけた。
「何故天ヶ瀬教導官は、高校を卒業してすぐに教導官になる道を
選んだのですか?教導官になった理由を教えていただけますか?」
挑戦的な口調と眼差しに応えるように、私もこう答えた。
「私の高校時代の戦績は生徒の皆さんもご存知だと思いますが、
その戦績を買われて先輩教導官の方からスカウトを受けました。
それと、私の持つ技術を次世代のリリィとなりうる皆さんに
継承させなければ私達の故郷である秋田を守れないと感じたからです。
貴女達には、私のような悲しい思いなんてしてほしくありませんから」
そう私が答えると、牧川さんは少し俯きながら
ありがとうございますとお礼を言い、席に着いた。
その後は今年度の行事予定やレギオン創設・勧誘についての
諸注意などでその日は終わった。

初日ということもあって、この仕事に慣れてないのは
自分でもわかっている。
それでも、この先こんな調子でやっていけるんだろうか。
そんな不安が胸をよぎった。

glacial nymph
#

考え事をしていると、唐突に声をかけられた。
「よォ、陽!いや、今は『天ヶ瀬教導官』だっけ?」
ニヤニヤしながら私の肩をバンバンと叩くこの人は、
第27期対特務部隊・ヴァールハイトの主将にして、
私の1学年先輩である
月夜野快(つきよの こころ)教導官だ。
この人も戦績を買われて高等部を卒業後、すぐに教導官になった。
そこまではいいのだが、いかんせんこの人は生徒の自主性とやらを
信頼しすぎる節がある。
教導官になってから何度も大きな喧嘩をしたし、
不仲になった時期なんて何度あるか数え切れない。
それでも結局こうやって話しているのだから、
腐れ縁とはこういうことなんだろうかと思ってしまう。
「高等部時代と全く変わりませんね、『月夜野教導官』。
そろそろ教導官としての自覚を持ったらどうですか?」
嫌味ったらしくつっけんどんに私が言い放てば、
「そっちこそ変わってねーじゃねーか、陽?そろそろ
そんな堅苦しい「キャラ」外したらどうだ?」
と返してくる始末。手に負えないのである。

「結局私達は高等部の頃から変われないんですから、
せめて、教え子達にはそうならないように
してもらわないといけませんね」
「ははっ!違いない!」
そうして私達はそれぞれの歩むべき道へと足を踏み出した。

glacial nymph
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メモ 東北六魂祭を秋女で復活させる

glacial nymph
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私は今、にわかには信じがたいような情報を知らされた。
目の前にいる百合ヶ丘女学院のリリィから
「秋女が複数の特務レギオンに狙われている」
と言われたのだ。
何故そのような事態になったのか、予想はついている。敷地内にはGEHENAの研究所があるし、治療法や症例のデータを得る為に情報提供料を支払っているという事実もある。
それを曲解して「GEHENAと癒着しているガーデンがある」と誤解されたとしてもそれは仕方ない事なのかもしれない。
しかし、この目の前の少女は紛うことなき百合ヶ丘のリリィだ。反GEHENA筆頭ガーデンの百合ヶ丘のリリィが何故ここへ…?
そんな気の迷いを打ち消すように首を振り、目の前の相手を見据えた。目の前の少女は優雅な立ち振る舞いで
「これがその証拠の資料ですわ」
と私に証拠となる資料を差し出してきた。
その資料に掲載されたレギオンの数の多さに私は思わず頭を抱えそうになった。
その中には反GEHENA過激派筆頭のロスヴァイセの名もあった。
あの手段を選ばない傲慢暴力集団なんぞに屈してなるものか。
そう強く憤る私の手は無意識に強く握られ、渡された資料の一部がぐちゃぐちゃになってしまった。
先方に軽く謝罪を入れ、席に着くように促す。そこで軽く自己紹介を受けたが、「リリアンデ」という名前らしい。本人は
「長い名前ですから、リリアでいいですわ」
と言っていたが、依頼する立場である以上失礼な真似はできない。私は一貫して「リリアンデさん」と呼ぶことにした。

そもそもGEHENAが無ければヒュージへの対処法なぞ無かったというのに、どうしてこう…都合の良い頭をした馬鹿が多いのだろうか。

などと少し考え事をしていると、リリアンデさんが
「どうかしましたの?」
と不思議そうに尋ねてきたので
「いえ、少々今後について考え事を」
と言って誤魔化した。席に着いた私は、リリアンデさんが来た当初から気になっていたことを質問することにした。
「私達を護衛するということは、百合ヶ丘女学院への背信行為となる可能性が大いにあります。それでも護衛をすると仰るのですか?」
するとリリアンデさんはひとつ息を吐き、これ以上ない笑顔で
「妾達は百合ヶ丘の外れ者、ハナから百合ヶ丘に忠誠など誓っておりませんわ。ソレに技術そのものには罪がありません、全ては使い手次第ですもの。その点アナタは素晴らしき人材、アナタの論文は目を通しましたが感涙に咽び泣きそうでしたわ」
と言い放った。
やるな、と思いつつ負けじと私も貼り付けた満面の笑みで
「お褒めにあずかり恐縮です。ですが、あの技術に関しては私1人の力では成功はしなかったでしょう。秋女の生徒の献身的な協力があってこそです」
と言った。
するとリリアンデさんは畳み掛けるように
「ふふ、献身的な人材を確保できるなんて、学を尊ぶ同士として少々羨ましい限りですわ。では、契約の方はこれでOKという事で、大丈夫でしょうか?」
と最後に念押しをしてきた。
今更断る理由も無い、と私は一通り契約書に目を通しサインをし
「スヴァルフヘイムの皆さん、これから宜しくお願いしますね」
と言い案の定貼り付けた笑顔で形式的な握手を交わした。
リリアンデさんも
「うっふっふ。こちらこそ、
末永くよろしくお願いいたしますわ。天ヶ瀬陽様♪」
と(私から見れば)貼り付けた笑顔で握手に応じた。

こうして、LGスヴァルトアルフヘイムによる異例の秋女防衛に関する契約が締結された。

その後
「あそうそう、今後契約外のお願いをする事も御座いますが、その時はお手柔らかにお願いしますわね♪」
と去り際に告げられ、思わず頭を抱えてしまった。

その数日後、契約外のお願いとして
「私達が救出した強化リリィ達を匿ってくださいません?」
と言われてしまい、遂に私は床に崩れ落ちてしまったのだった。

glacial nymph
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メモ 蔑称…白い死神

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私の生きる価値なんて、もう存在しないんだ。そう思ってしまった。そこからは、よく覚えていない。
あの日以来殺伐とした雰囲気が消えない家を飛び出し
行くあてもなく片道きっぷの旅に出た。秋田から大曲へ向かい湯沢、新庄、鶴岡、新発田……山の中をぐるっと大回りして新潟まで来てしまった。適当に買ったきっぷの行先は福井、有効期間は5日間だ。「どうせ帰るあてなんてないんだ」と思うと、両親に連絡する気など失せてしまった。

次の日、私は昨日買ったきっぷを持って、新潟からさらに西を目指すことにした。長岡経由の方が速いらしい(私はよくわからない)のだが、今日は運悪く小規模なケイブが近くに出来たらしく、運休しているそうだ。他に西の方へ向かう列車は無いのか、と駅員に訊くと「越後線という路線が長岡を迂回して柏崎まで走っている」と親切に教えてくれた。
なので、その列車を使ってまずは途中の吉田という駅まで行くことにした。来た電車に乗り、小一時間電車に揺られた後、吉田駅に着いた。駅に着いた私は改札を出て、そこにあった時刻表を見て愕然とする。
「嘘でしょ…」
吉田から柏崎まで行く列車は1時間半後まで無いらしい。さてどうしようか、と思ったその瞬間、「ぐううううう…」と盛大に腹の虫が鳴った。駅員さんにこちらをガン見され、若干顔を赤くしながら駅を出た。空腹になったはいいものの、この辺に何があるのか分からない。一旦駅に戻り、窓口に座っていた駅員さんに「この辺でおすすめの食堂はどこか」と聞いたところ、「すぐ近くに隠れた名店がある」と地図まで頂いた。
これ幸いと駅員さんにお礼を言い、食堂に入る。
そこは素朴な雰囲気の昔からある食堂だった。素朴な雰囲気の食堂に来たら中華そばを頼むのが私の中のマイルールだ。
20分ほど待った後、店主さんが元気に中華そばを運んできた。店主さんにお礼を言い、割り箸をふたつに割り、ふぅふぅと息で湯気立つ麺を少し冷まし、一気に啜る。中細ちぢれ麺とあっさりした醤油スープがマッチしていて今まで食べたどの中華そばよりも美味しいと感じた。お金を支払い、ご馳走様でしたと店主に告げ、店を出る。
駅に戻ると、ちょうど柏崎へ向かう列車が待機していた。先程の駅員さんに教えてくれたことへのお礼を言い、きっぷを見せて列車に乗り込んだ。
調べたところによると、乗り込んだ列車は2020年代からもう30年以上走っているベテランらしい。
その割に車内は綺麗で座り心地も良いので、「チープな見た目の割にコスパはいいんだなぁ」などと呑気に考えていたら、ファーンと汽笛を鳴らし列車は一路柏崎へと動き出した。
最初の方は住宅も多かったのだが、2駅目の粟生津(あおうづ)を過ぎると住宅よりも田んぼの方が多くなってきた。
流石お米の国新潟県、米作りには余念が無いようだ。
そんな事をぼけーっと考えつつ車窓を眺めていると、あっという間に柏崎に到着してしまった。
時刻は既に15時半を回っており、このまま先へ進むか少し迷い始める時間帯になりかけていた。
さて、どこに行こうかな…

気づけば、港まで歩いてきていた。
フラフラと歩いていたら何故か見知らぬ港にいた。
まるで海に吸い寄せられるかのように。
友達が、仲間が、隊長が、
「貴女もこっちにおいで」と呼んでいる気がした。

____あっ

「おい!今女の子が飛び込んだぞ!」
「警察と海保に連絡しろ!」

数週間後____
『柏崎港沖で見つかった遺体は、行方不明届が出されていた少女のものであると確認されました。警察は____』ブチッ
「零…なんで何も相談してくれなかったの…ッ!」

glacial nymph
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【嶽きみ、どうしよう】
宮地浅妃は、目の前の箱を見て絶望していた。送り主は実家の母。大方親戚から送られてきたものをそのまま仕送りとして送ってきたのだろう。そこまでならいつも通りで普通のことなのだが、今回はいかんせん量が多すぎた。
「こったに多いきみ(とうもろこし)、どせばええんだべ…」
箱いっぱいに詰められたブランド物のとうもろこしを見てどう食べるべきか思案していると、コンコンと扉が叩かれた。扉を開けると、そこには幼馴染の楢木侑李が何かが大量に入ったレジ袋を持って立っていた。侑李は
「やっほー浅妃、ボクのお母さんから嶽きみ送られてきたんだけどいr…」
まで言ったところで、部屋の奥に置かれた箱からのぞく大量のとうもろこしを見て、困ったように私の顔を見た。
「もしかして…浅妃の所は箱で送られてきたの…?」
諦めの境地に達し、コクリと頷くと、侑李も困ったような顔で袋に入ったとうもろこしを見つめた。困っている度合いで言えば私の方が遥かに上だと思うのだが、犬のように泣きついてくる侑李を見ると、見捨てる気にはどうしてもなれなかった。

2人で10分ほど考えた結果、調理室のおばさん達も巻き込んでプチとうもろこしパーティーを開くことにした。

グツグツと煮立つお湯に塩をひと振り入れ、主役のとうもろこしを7本ほど茹でてみた。
「とっても甘くて美味しいわ〜!」
「確かに!こんなに甘いとうもろこしなんて久しぶりねぇ」
調理室のおばさん達には概ね好評で、7本のとうもろこしはすぐ片付いてしまった。それでもとうもろこしは箱いっぱいに残ったままだ。
さてどうしよう…と2人で悩みに悩んでいると、突如部屋を出ていった侑李を心配したのか、侑李の同室の酒々井さんが私の部屋を覗きに来たのだ。すると、酒々井さんは驚いたように例の箱を見て
「学年の皆でとうもろこしパーティーを開こうよ!そしたら宮地さんも侑李もとうもろこしを捨てずに済むんじゃない?」
と提案してくれた。だが、侑李の顔は険しかった。
「侑李おめどしたんずな、きみパーティー開げば全部解決だべさ」
と私が聞くと侑李はチッチッチと人差し指を振りつつ
「考えてみてよ浅妃、学年でとうもろこしパーティーを開くとなるとあのお固くてこわーい生徒会長さんに許可取らなきゃなんだよ?あの人がボク達の提案を通してくれるとは思えないけどなぁ…」
と不安げに言った。言われてみればそりゃそうだ。生徒会長の天ヶ瀬陽は学校行事以外で生徒が集うようなパーティーとやらを毛嫌いしている節がある。そこを抱き込むのは難しいか…なんて考えているとLGヴァールハイトが主将の月夜野快先輩が通りかかった。
「お前ら3人とも辛気臭いツラして何考えてんだ?良ければ私今暇だし悩み聞かせてくれよ!」
と快活な笑顔で言い放った。これ幸いと私は
「わのかっちゃがらきみばたんげ送られできでまってよ…どせばいいんだがなもわがねくて困ってらったんず。快先輩の力ば貸してけろじゃ〜」
と言ってしまった。気がゆるんでいたのか、方言全開で。
快先輩は案の定
「悪ぃ、何もわかんなかったから誰か通訳してくれねえか?」
と困ったような顔で周りを見た。すると侑李が元気に手を挙げて
「快先輩、お任せ下さい!浅妃は『私のお母さんからとうもろこしが大量に送られてきてしまって、どうすればいいのか分からずに困っていたんです。是非快先輩の力を貸してください!』って言ってたんですよ!」
と言いドヤ顔をした。…別にそこまでドヤ顔しなくてもいいじゃないか。快先輩は侑李の説明を聞き、数刻悩んだ後、清々しい程の笑顔で
「とうもろこしパーティーは多分陽の立場上許可は出ない。だから各レギオンにそれぞれ「差し入れ」すればいいんじゃないか?」
と言った。目から鱗だった。確かに3レギオン全てに差し入れすればあとは私達が楽しんで食べれるくらいの本数が残る。名案以外の何物でもなかった。

そこからの動きは早かった。生徒会長にアポを取り、「アヴニールの皆さんでどうぞ」と10本ほどを押し付け差し入れた。ヴァールハイトの控室には快先輩が持っていってくれたそうだ。後日聞いたところによると、
「『また食べたい』と希望するメンバーも多かったし、いつでも持ってきてくれていいぞ!」
との事だった。コンコルディアの控室には私と侑李で持っていくことにした。塩茹でと焼きタレの2種類を用意し持っていくと、皆が目を輝かせながら食べてくれた。自分が作ったわけではないのだが、こうも美味しそうに食べてもらえると嬉しさが込み上げてくるものなんだな、と思った。

こうして私達のとうもろこし問題は無事解決したのであった。とっつぱれ。

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#

私が目を覚ました時、私の愛しい恋人、もとい元シルトはまだ寝ていた。
彼女を起こさぬようにそっとベッドから抜け出し、身支度を始める。シャワーを浴び、パジャマから私服に着替え、髪を乾かす。
一連の身支度を終わらせた頃には、時計の針は午前7時半を指そうとしていた。部屋に戻ると、彼女は眠い目を擦りながら起きたところだった。
私は「爽やかな王子様スマイル」で彼女に話しかける。
「おはようリュティ、目覚めはどうだい?」
するとリュティは眠そうに私の服の袖を掴み
「まだ寝たいです…」
と言いながらベッドに寝転がろうとするが、私はそんな可愛い恋人を寝かせないように抱きしめる。
「ダメだよリュティ、君の可愛い寝顔を見てしまったら…私が襲いたくなってしまうだろう?」
我慢できずに私はかぷり、とリュティの首筋に噛み付く。するとリュティは可愛く「ひゃっ!?」と叫び、顔を赤らめながら私を軽く睨む。
「お姉様、『急に襲うのはやめてください』って
いつも言ってるでしょう!?驚かせないでください!」
その可愛さと健気さに、私の嗜虐心は刺激されてしまう。
「ごめんよリュティ、私は今獰猛な獣なんだ」
そう言いながら、彼女の頭を優しく撫でると、 リュティは諦めたのか大人しくなる。そして彼女は上目遣いでこちらを見ながら呟く。
「……朝ごはんまでなら良いですよ?」
ああもう本当にこの子は!
私は理性を保つために必死に堪えたが、結局負けてしまい、そのまま彼女を押し倒した。
──────
「お姉様、起きて下さい」
リュティの声が聞こえたので、ゆっくりと目を開ける。目の前には私の恋人であるリュティの姿があった。しかしリュティの顔は赤く染まっており、息も荒かった。風邪でも引いたのではないかと心配になり、慌てて飛び起きる。
「大丈夫かい、リュティ?どこか具合が悪いんじゃないのかい?」
するとリュティは恥ずかしそうにモジモジしながら答えた。
「えっと……昨日の夜のことを思い出したら、身体が熱くて……。……だから、その……」
そこまで言うとリュティは更に顔を真っ赤にして俯いてしまう。
しかし意を決したかのように勢いよく顔を上げ、上目遣いでこう言った。
「今日1日、一緒に居てくれませんか……?」
私は一瞬固まった後、笑顔で答える。
「勿論だとも、私の愛しい姫君」
そうして2人で手を繋ぎ、リビングへと向かった。
その後、朝食を食べ終えた私たちはソファに座ってゆっくり過ごしていた。
そんな中、不意にリュティがこんなことを言ってきた。
「お姉様、膝枕してくれませんか?」
突然の要求に戸惑っていると、リュティは続けて話す。
「昨日の晩に、お姉様に頭ナデナデされたのが凄く気持ち良かったんです。なのでまたして欲しいなって思って」
そんな風に言われてしまったら断れないじゃないか…。
それに何より、"恋人からの頼み"だ。断る理由なんて無い。
「分かったよ、おいで」
そう言って膝を差し出すと、リュティは嬉しそうな表情を浮かべながらそこに横になった。そして私の太腿の上に頭を預けてくる。しばらく無言の時間が続く。しかしその沈黙は決して不快ではなく、寧ろ心地の良いものだった。ふと、リュティの方を見ると目が合った。するとリュティは照れ臭そうに微笑みながら口を開く。
「お姉様の手、大きくて暖かいですね」
そう言って私の手を取り、自分の頬に当てる。リュティの温もりが直接伝わってきて少しドキッとする。そのまま見つめ合っているとリュティが静かに目を閉じた。
……これはキスをしても良いということだろうか? そんなことを考えていると、彼女が再び目を開け、私の唇を見ていることに気付いた。そこで私は悪戯心から彼女の顎に手を当て、クイっと持ち上げる。そしてそのままゆっくりと顔を近づけていく。あと数センチというところでリュティの吐息を感じ、思わず動きを止める。
……やはりまだ早かったか。私は苦笑しながらリュティから離れようとする。
すると次の瞬間、私は柔らかい何かに包まれていた。それがリュティに抱きしめられていると理解するのに時間は掛からなかった。
「お姉様、大好きです!」
満面の笑みで言うリュティを見て、私もつられて笑う。
「私もだよ、リュティ」
そう言って私からも強く抱きしめ返す。
…………そういえば、今日はまだ一度もキスをしていないな。そんな事を考えながら、私は彼女との幸せなひと時を過ごした。

glacial nymph
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多分存在しない世界線

「____でさ、その時浅妃が快先輩に方言丸出しで喋っちゃってさ…って、陽さん大丈夫?顔色悪いよ?」
と心配そうに陽の顔を伺う侑李。
それに対し
「ええ、大丈夫よ。この程度で疲れてたら、生徒会長なんて務まらないもの」
と平静を装う陽。しかし、見るからに顔色は悪く、体調を崩しているのは目に見えて明らかだった。
「はぁ…陽さんって1年生の頃から変わらないよね。全部自分で抱え込んで、誰にも頼らない。」
その通りだ、と俯く陽の頭を撫でながら、侑李はこう続けた。
「____ボクは陽さんに何があったのか知らないし聞くつもりも無いけど、たまには他の人を頼った方がいいよ?全部自分で抱えてたら壊れちゃう。だから、辛くなったらボクを頼ってよ。話し相手にはなれるからさ」
その言葉を聞いた瞬間、陽は侑李に抱きついて泣いた。今までの取り繕った天ヶ瀬陽ではなく、素の天ヶ瀬陽として。辛かった事、嫌だった事、悲しかった事も全て侑李に話した。その間、侑李は陽の頭を撫で続けた。泣きじゃくる我が子をあやす母親のように。

「楢木さん、ありがとう…」
数十分後、目を赤く腫らした陽はずっと話を聞いてくれた侑李に心からの感謝の言葉を述べた。
それを聞いた侑李は、
「ボクに出来るのはこれくらいだから!また辛くなったらいつでも呼んでくださいね、陽さん!」
と笑顔で応えた。

その後、侑李と談笑する陽の姿が見られるようになったとか…?

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【憧れの先輩と2人きり!? Date1】
(※現パロ。成人済)
私、火浦京(ひうら みやこ)は今とても緊張しています。何故かと言うと、私の憧れの先輩で、なおかつ私が好意を向けている月夜野快(つきよの こころ)さんと一緒に旅行に行くことになったからなんです!いつも皆から慕われていて、なかなか2人きりになる時間が無かったけど、今日からの数日間は私と快さんだけの時間なんです!これで緊張しない人が一体どこにいましょうか!?
などと心の中で激論を繰り広げていると、快さんが私を見つけて駆け寄ってきました。いつものボーイッシュな快さんの雰囲気そのままのとってもクールな服装で、私はもう幸せで倒れてしまいそうです…!
「よォ京、待たせて悪かったな。暑かったろ?」
やっぱり快さんはイケメンです…!さり気ない心遣い、たまりません…!
「いえ…!私もさっき来たばっかりなので…」
とお決まりの返しを入れると、快さんが私の手を握ってくれました!好きな人から手を握ってもらえるなんて、私はもう天にも登りそうなほどです…!
「それじゃ、北海道に向けて出発…だな!」
快さんと私は一緒に秋田駅の改札を通り、北海道へ向けて歩みを進めるのでした…
to be continued…

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↑火浦京ちゃんのオリリィ紹介リンク
#1131543712707645450 message
↑月夜野快さんのオリリィ紹介リンク

glacial nymph
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【憧れの先輩と2人きり!? Date2】
※注意書きは前回と同様

私は快さんに引っ張られるようにして新幹線の改札を通り、きっぷに指定された号車に向かおうとしたのですが…
「快さん…この先ってグリーン車ですけど…?」
「おう!折角京と2人きりでの旅行だからな!奮発してグリーン車にしてみた。区間は短いけど、ちょっぴりセレブな気分を味わおうぜ?」
(サラッと言ってますけど、グリーン車って結構なお値段するのでは…!?)と私が驚きで固まっていると、快さんが
「どうしたんだ?具合でも悪いのか…?」
と視線を私に合わせて心配してくれました。その事実だけで私は卒倒したかったくらい嬉しいのですが、まだ旅行は始まってすらいません。スタートラインに立ったばかりです。何とか倒れるのを堪え、快さんに「大丈夫」と伝えます。
ようやくグリーン車に入り、2人が席に座った瞬間、新幹線はゆっくりと動き出しました。慣性をまるで感じさせないほど滑らかな加速と、体験した事がないほどの座り心地の良さに感動していると、隣の席の快さんが
「な?グリーン車にして正解だっただろ?」
と耳元で囁き、ニカッと笑いました。私は嬉しさと恥ずかしさで思わず顔を覆ってしまいました。
そんなイチャつきを1時間以上繰り広げ、グリーン車の空気が甘ったるくなり、私の心臓が限界を迎えようとした時、新幹線のアナウンスで「まもなく盛岡です」と放送が入りました。すると快さんはおもむろに荷物を持ち、降りる準備を始めました。快さんによると、どうも盛岡で別の新幹線に乗り換える必要があるらしいです。私も快さんに倣い、降りる準備をすることにしました。
盛岡に着くと、秋田とは少し違うカラッとした空気が、私達を包みこみました。
盛岡で20分ほど待ったのち、別の新幹線に乗り換えました。快さんから渡されたきっぷをよく見ると、今度もグリーン車のようです。案の定快さんは
「京と一緒だから奮発しちまった!」
と言ってました。私は
「せめて自分の分の経費くらいは払わせてほしい」
と懇願したのですが、快さんは頑なに
「私が誘ったんだ、私がお金を出すのは当然だろう?」
とお金を受け取ろうとしませんでした。
申し訳なさと共に受け取ったこのきっぷで向かう先が、"試される大地"こと北海道…!私は北海道に行ったことがないので、一体何が待ち受けているのかとても楽しみです!

glacial nymph
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【憧れの先輩と2人きり!? Date2.5】

盛岡で新幹線を乗り換えた私達は、しばらくの間無言で過ごしました。ですが、その無言は決して重苦しいものではなく、心地よいものでした。
岩手県を抜けて、青森県は八戸駅に止まろうかという時、快さんと目が合いました。快さんはいつも以上に格好いい笑顔で私に笑いかけてくれました。まだ秋田を出て3時間くらいしか経ってないはずなのですが、既に寿命が半年ほど縮んだ気すらします。いえ、もっと縮んでいるかもしれません。
そんなイチャつきを2時間以上繰り広げ、グリーン車の空気が砂糖で満杯になりかけた頃、「まもなく終点です」とアナウンスがありました。快さんと私は降りる支度をして、北の大地に降りる準備を済ませます。
数刻の後、私達は人生初の北海道に降り立ちました。本州とは違う引き締まった空気に、思わず背筋が伸びてしまいます。そんな私を見た快さんは、ケラケラ笑いながら
「そんな緊張しなくても北海道は京を襲わねぇよ」
と優しく諭してくれました。もう、快さんったら…///

そういえば、北海道に着いたはいいのですが、快さんは行き先を一切教えてくれません。ミステリーツアーってやつなのでしょうか…?

glacial nymph
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分断された日本でリリィが戦闘の矢面に立ってる世界線if

「忘れられた土地、17万3000km²あまり。忘れられた人々、2000万人以上。北日本には、多くの人々が暮らし、また多くの未開の土地g____」
そんな南日本政府・統一庁からのプロパガンダ放送を途中でブチ切り、快は不機嫌そうに机に肘をついた。
「何が"忘れられた人々"だ、何が"忘れられた土地"だ。勝手に見捨てたのは南日本のクズ共じゃないか!それをどの面下げて今更統一などと…!」
そう苛立つ快を宥めるように、由希奈がお茶を出す。
「まぁまぁ快、そうイライラしなくても…南北日本が統一されれば、私達の戦いだって終わるし、"普通の女の子"として暮らせるんだよ?」
それを聞いた快は、少し不満そうにお茶を受け取り、一口飲むと、こう返した。
「でもよ、私らが生きていける保証はどこにも無いんだぞ?私らはあくまで北日本の戦闘員。そんな見え透いた反逆分子を南日本が生かしておくと思うか?」
由希奈は不安そうな表情を浮かべ、言葉を詰まらせる。
「それは…そうだけど…」
「だから、私ら北日本主導で統一を果たさなきゃいけないってことよ。その為には、首都である東京を陥落させなきゃならない」
そこまで快が言った時、由希奈は弾かれた様に立ち上がり、快の方を向いた。
「待って快、今その話をするって事は、まさか…」
快は諦めたように取り繕った笑みを浮かべ、
「あぁ。そのまさかだ。私は明日から栃木自治州の沿境界地域に駆り出される事になった」
と乾いた笑いを零しながら伝えた。
「ダメだよ快、行っちゃダメ…!快が帰ってこなくなっちゃう…!」
由希奈は泣きじゃくりながら快の服の袖にしがみついた。
「なーに、そんな不安がる事はねェよ。3ヶ月ばかし兵役で会えねえけど、それが終わったらすぐ帰ってくるから」
こうして快は、栃木自治州にある南日本との沿境界地域での兵役に駆り出されていったのだった。

設定の元ネタ…https://youtu.be/F9K_pnmb8GQ?si=T6GDCzlYTJFoCgF-
登場したオリリィ
(快さん↓)
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(由希奈さん↓)
#1131543712707645450 message

「日本が太平洋戦争後にアメリカとソ連によって南北に分割されたIF世界で、南日本政府が南北日本の統一を目指すために設置した政府機関「統一庁」が統一活動について周知する目的で公開した広報動画」という設定です。

◇おすすめ動画
統一は未来への責任 - 統一庁【政府広報】
https://youtu.be/u7E4OrsD1M0
南北日本のエンディング集
https://youtu.be/RGyANokqB6k

◇Twitter
https://twitter.com/KasouSekai_PR

◇画像、音楽
Nostalgic Melody [Cover] CC BY 3.0
https://www.youtube.com/watch?v=8ZQbI9fOSD0
Sei F CC BY...

▶ Play video
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9月のとある日、生徒会室にて、月夜野快は苦悩していた。何に苦悩していたのかと言うと、快達3年生が卒業した後のレギオンメンバーの補充に、である。少子高齢化が叫ばれ久しい日本で、僻地と揶揄される東北のそのまた僻地に籍を置く秋女が影響を受けないはずもなかった。現1年でレギオンに入隊し活躍している生徒もごく僅かに存在している。だが、ほとんどの生徒は仮想戦闘訓練を受けているだけの一般人に毛が生えた程度の存在だ。それなら現2年はどうか。しかし、現2年も比較的練度の高い生徒が少なく、来年以降の秋女を背負わせるにはやや難があるのであった。
「だぁーっ!埒が明かねぇよ!」
盛大に台パンをかまして叫ぶ快を中心に、一瞬生徒会室の空気が凍る。しかし、生徒会長の天ヶ瀬陽がその静寂を破る。
「どうしたんですか、快さん。そんなに大きな声で怒鳴って。怒っても事態は好転しませんよ」
と言われた快は不機嫌そうに陽を睨み、椅子に座り直す。
「どうもこうも無ぇよ。来年以降の秋女を担う面子がいねえんだ。多少レアスキルの練度が低くても、今から指名して鍛えれば卒業までには多少マシになるんじゃねえの?」
その快の提案を、陽は溜息と共に一蹴する。
「規則では、年度内のレギオンメンバーの補充は特別な事情がない限り禁止されています。我々が規則を破ってしまえば、今後の生徒会活動に影響が出るかと思うのですが?」
それに対し、快も負けじと口を開く。
「規則規則と言うけどな、規則を守って故郷を守れる余裕なんて秋女には無ぇよ。そりゃ百合ヶ丘とかそういうデカいガーデンなら出来るかもしれねぇけど、秋女はそんな贅沢言ってらんねえんだ。理想なら秋田が平和になってから語ってくれ」
最後の一言が切っ掛けになったのかは分からないが、陽は読んでいた資料を机に置き立ち上がり、そしてツカツカと快に歩み寄った。
「そこまで言うのであれば、今回は特別な事情として全レギオンにレギオンメンバーの補充を認めます。今後は4月の勧誘期間中にしっかりと勧誘するよう、後輩の方々に伝えておいて下さいね」
それを聞いた快は顰め面を一転させ笑顔になり、
「流石生徒会長!そう言うと思ってたぜ!」
と陽の肩をバンバン叩いて嬉しそうに生徒会室を去っていった。

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「ふーん、妹ちゃん彼氏出来たんだ…面白そうだし、ちょっかいかけに行こ〜っと!主任、ちょっと私外回り行ってきまーす!」
そう言うと、アレクサンドラは白衣を羽織り鎌倉へと向かうのだった____

一方その頃、リュティと千咲は2人で鎌倉を散策していた。
「お姉様、今日はどこに行きましょうか?」
「リュティが行きたい所ならどこだって良いさ。リュティの行きたい場所こそが、私の行きたい場所なのだからね」
そんな砂糖すらもその甘さに吐き気を催すレベルのイチャつきをぶった斬るように、アレクサンドラは2人の前に現れる。
「やあやあ妹ちゃん…と、そのカレシさん」
ニマニマと下品な笑みを浮かべ現れたアレクサンドラに、リュティはcharmを持ち警戒感を示す。ただならぬ擬妹の雰囲気につられ、千咲もアレクサンドラにcharmを向ける。
「君は一体リュティの何なんだい?『妹ちゃん』と呼んでいた…という事は、リュティの姉なのかい?」
訝しげにアレクサンドラに向けて問う千咲を、問われた張本人は嘲笑うように見つめ返し、軽快に返答する。
「そうだよ?私がそこのリュティちゃんのお姉ちゃんでーっす!リュティちゃんったらお姉ちゃんの事嫌いみたいでさ〜?全然連絡取ってくれないの!だから少ーし野暮だけど、ストーカーしてたってワケ!ごめんね?デートの邪魔しちゃって」
飄々と語るアレクサンドラとは対照的に、リュティはcharmを握る手の力を強め、怒りを顕にした。
「姉さん、いえ…親の仇にストーカーされるなんて、屈辱です。今すぐにでも亡き者にしてあげたいくらいですよ」
それを聞いたアレクサンドラは、鼻で笑い嘲笑した。
「ハッ!スモール級数十体ごときで疲れるざこざこよわよわリリィちゃんが私を亡き者に?冗談ならそこのカレシさんに言いな?私とは違って優しく受け止めてくれるよ〜?」
そんなただならぬ場の雰囲気を察してか、千咲がアレクサンドラの首筋にcharmを突き付ける。
「私のシルトを傷つける者は、何人たりとも許しはしない。例え、それがリュティの実姉だとしてもだ」
千咲にcharmを突きつけられたアレクサンドラは、ゆっくりと両手を上げ、投降のポーズを取った。
「はーい、降参降参。縮地持ちに鬼ごっこで勝てる訳ないしね〜」
と気だるげに愚痴りながら捕縛された。
もう安心だ…と千咲が気を緩めた次の瞬間、アレクサンドラは素早く拘束を解き、近くにあった彼女の車で走り去った。
やられた…!と悔しがる千咲とリュティに出来ることは、何も無かった。失意の内に寮に引き返す2人を、遠くから誰かが見つめていたが、2人は視線に気づくことなくその場を立ち去った。

「あ〜!楽しかったぁ〜!」
ラボに帰ってきたアレクサンドラ。ひと仕事終えたと言った感じでご満悦である。そんな彼女の脳内は、次なる実妹へのイタズラで占められていた。

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メモ
京→陽→呉羽

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2052年10月某日、秋女は混乱の渦中にあった。想定していなかった小規模特務レギオンの研究所への急襲を受け、防衛ラインが整わぬまま敷地内への侵入を許してしまったからだ。その中で、LGヴァールハイトの火浦京も召集命令を受け現場へ向かった。

『敵は少人数だが精鋭揃い、油断するなよ!』「了解!」
なんてやり取りを古風なトランシーバーで交わし、charmを構えながら敵のいるであろう位置に向かう。向かった先に居たのは、小柄な体躯に似つかぬ長いcharmを持った1人のリリィだった。
____ユニーク機だろうか?
僅かに考え込んだ次の瞬間、京の太腿に大きな断裂傷が入る。
「…ッ!?」
動揺は隠せなかったが、辛うじて2撃目は躱すことに成功する。小柄な少女は、さぞ残念そうに京を睨み据えた。
「あーあ、殺り損ねちゃったか。強化リリィなんて生きる価値無いよ?あぁ、もう人間じゃなくて"バケモノ"だから人権とか無いんだっけ?そうでしょ、火浦京ちゃん」
相手が自分の名前を知っていた事に怯みつつ、リジェネレーターの回復力に足の治癒を任せ、京も相手を睨み据える。
いきなり人の足切るような非常識な馬鹿には言われたくないかな。倫理観だけで言えば、貴方の方がよっぽどバケモノだよ?」
小柄な少女は、京の精一杯の挑発を鼻で笑ってあしらった。
「そんな怯えながら挑発されても何も怖くないし、何も刺さらないよ?ビビってるのが透けて見えた。それと、私の名前は戸塚みなと。…あ、覚えなくていいよ!京ちゃんは"私が始末する手筈になってる"から」
みなとは不敵な笑みを浮かべつつ「その場から姿を消した」。
刹那、困惑する京を嘲笑うように首筋に深い切り傷が生まれる。
「京ちゃん、おっそいなぁ!こんなんじゃ私が君の事を切り刻んでバラバラにしちゃうよ?」
姿を見せずにそう嘲笑の言葉を掛けるみなとに対し、京はcharmを構えながらこう返す。
「戸塚さんは無神経で唐変木で単細胞生物だから知らないかもしれませんがね、『痛み』ってなかなか消えないんですよ?それが精神的なものでも、身体的なものでも。だから____!」
次の瞬間、京は目を瞑り愛機を思い切り振り抜いた!すると、呻き声と共にみなとが姿を現す。
「どうして…!?さっきまで、全然私の攻撃に対応できてなかったのに…!」
その場に倒れ込みながらも混乱を隠せないと言った様子のみなとに、京は笑ってこう返答した。
「ん〜…『女の勘』ってやつ?」

その後____みなとは京に拘束され、秋女の拘置室で数日間尋問を受け百合ヶ丘へ帰っていったのだった。

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別にSSと呼ぶほどでもないけどなんか書きたかったから供養

「陽、今お前のやるべき事は何だ?秋田が危急存亡の秋を迎えている今、お前が下すべき判断はどれだ?頼む、時間が無いんだ」
焦りを隠せない快に、陽も言葉を詰まらせる。言葉を詰まらせた陽を見て、快は申し訳なさそうに頭を深々と下げる。
「こんな役回りを押し付けて本当にすまない。私ら3年が2年のお前に責任を負わせている事を、心苦しく思う。だが、今この場の指揮を執れるのはお前しかいないんだ!頼む、秋田を…いや、私達の故郷を守る為の、指示をくれないか」
喉の奥から絞り出した快の声は、とても小さかった。不安と恐怖を押し殺した表情で顔を上げ、陽を見る。
陽は覚悟を決めたように快を見据え、清々しい笑顔でこう言った。
「…分かりました。作戦『Z』です。私達の秋田を守る為に、反転攻勢に打って出ましょう。『故郷の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ』です」
陽の発言を聞いた快は一瞬虚を突かれたような表情を浮かべた後、覚悟を決めたように陽の肩に手を置いた。
「了解。私は放送室に行って作戦の内容を全校生徒に伝達してくる。お前は戦闘に向けて準備しておいてくれ」
そう言い残して快は生徒会室から走って出ていった。

生徒会室を出た快は放送室に駆け込み、マイクに向けて叫んだ。
「高等部の生徒に通達する!我々秋女生はこれより作戦『Z』を実行する!総員配置に着き、司令部の指示を待つように!繰り返す、我々は作戦『Z』を実行する!総員配置に着け!この戦いが、私達の故郷の興廃を決める一戦となるだろう!故郷を守る為に、総員一層奮励努力せよ!中等部の生徒に通達する。未来ある君達には、本校校舎の防衛を頼みたい!秋女生の居場所を守る、とても重要な任務だ!心細い者も当然いるだろう。だが、君達なら必ず秋女の誇りと帰るべき場所を守ってくれると確信している!」
一瞬の沈黙の後、割れんばかりの拍手が校舎内を包んだ。それと共に、陰鬱だった空気が徐々に慌ただしいものへと変貌していく。マイクを切った快は、自分を勇気づけるように頬を両手で2度叩き、放送室を後にした。

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小さな頃から、私の前には「一ノ瀬向葵」という越えられない壁があった。何かと引き合いに出されては貶され、蔑まれ、下に見られるのが嫌だった。そんな奴らを見返してやろうと、才能を伸ばす為に血の滲むような努力を重ねていった。だが、向葵は涼しい顔で私の積み上げた努力を全て崩していった。何をしてもアイツには勝てない。絶望からか、私はいつの間にか自暴自棄な行動をするようになった。ストレスで向精神薬を乱用し、幻覚や幻聴に苛まれたりもした。そのせいで、両親を酷く痛めつけてしまい、高校1年の終わりには勘当されてしまった。学費が支払えなくなった私は、自主退学する旨を学校に伝えたのだが、学校側は「君の様な才ある人間が『お金が無い』、『精神疾患を患っている』という理由だけで埋もれてしまうのは勿体ない。提携校の1つで、秋田に精神疾患の治療に秀でたガーデンがあるから、そこで治療を受けてみてはどうか」と伝えられた。私は勿論了承し、学校側からも秋田への転学が認められた。こうして私は鞍馬山環境女子高等学校から、私立秋田心理臨床科女子中学・高等学校へ転入することになったのだった。
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glacial nymph
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秋女3階の空き教室にて

三春「あの…内海爽様ですよね…?少しお話があるのですが…」
爽「君は確か…1年の三春クン、だったかな?こんな所に呼び出して、ボクに何の用だい?」
三春「私の友達が、爽様のお部屋に連れていかれた日から爽様のことしか話さなくなっちゃって…爽様なら何か事情をご存知なのかなと思って…」
爽「友達…?あぁ、3日前に"お話"した椿クンか。椿クンならもう私の魅力に染まってしまったようでね。ちょうど君も次の標的にしようかと思ってた所なんだ」
三春「標的って…どういうことですか…?」
爽「『三春クンを食べちゃいたいなぁ…』ってことだよ。君はとてもボク好みの性格と風貌をしているからね」
三春「こ、来ないで…!近寄らないで…!」
爽「そんなに怖がらなくたっていいだろう?三春クンが食べられることは、ここの教室にボクを呼び出した時点で決定事項だったんだよ。取り巻きにバレたくないと思ったんだろうけど、それが裏目に出ちゃったみたいだね?」
三春「ひっ…だ、誰か助けて…!」
爽「そんなか弱い姿をボクに見せるなんて『襲ってください』って言ってるようなものだよ?…もう我慢できないや、ボクの紅い目を見て?すぐに楽にしてあげるから」
三春「嫌です…!私の友達を返してください…!」
爽「あんまりこの手段は使いたくなかったんだけど…君があまりにも聞きわけのない『悪い子』だからね。さよなら、今までの三春クン」

三春「ん…ここは…?」
爽「目が覚めたようだね、三春クン。急に倒れたから心配して救護室に連れて行って正解だったよ」
三春「そ、爽様…!?爽様のお手を煩わせてしまってすみません…!私はもう大丈夫ですから…!」
爽「大丈夫なら良かった。それじゃあボクはこれで失礼するよ」
三春「(なんで私救護室にいるんだろう…?でも爽様と至近距離で話せたしどーでもいいや…♡)」

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『リリィどうしでの交流で心身の回復を図る』だなんて、心底ふざけた話だと思ってたし、「そんなんでメンタルケア名乗んなボケ」と捨て台詞を吐いた時もあった。秋女に来てから、ただでさえ酷かったウチのPTSDはさらに悪化していった。出撃することもままならず、控え室で体を小さく丸めて必死に見えない恐怖と戦う自分の姿は、『情けない』を通り越して最早『惨め』とすら思えた。夜中に突然目が覚めたと思えば過呼吸を起こして向葵に救護室に運ばれたり、仮想訓練中に突如動きが止まったと思えばその場で嘔吐したりということを繰り返していた。
そんな事が続き、すっかり萎縮しきったウチの元に訪ねてきたのは、対特務部隊LGヴァールハイトの隊長で3年楓組の月夜野快だった。快はウチに
「辛いことがあったんなら体を動かして発散するに限る!お前、剣道やってたんだろ!?私に少し教えてくれよ!」
と笑顔で言ってきた。でも、その時のウチは他人も自分も信用出来ないほど心が荒んでたから冷たく断った。
「無理。ウチより向葵の方が上手いからそっちを当たってや」
って。それでも快が諦めずに
「お前の太刀筋が綺麗だから、お前に習いたいと思ったんだ。頼む!」
と土下座までするもんだから、ウチは仕方なく快のために剣術を教えることにした。
とは決めたものの、数週間触っていなかった竹刀は酷く冷たく感じた。「今更私に何の用だ、お前は一度私を捨てただろ」と言わんばかりに。それでも、30分ほど素振りをしていると徐々に感覚も戻り始めた。すると、ウチの素振りをじっと見ていた快が
「なぁ、私にも綺麗な素振りの方法教えてくれよ!お前みたいに綺麗な太刀筋で振れるようになりたいんだ!」
と我慢できない様子で聞いてきた。ウチは(仕方ないなぁ…)という雰囲気を出しながら快の後ろに回り、両手で竹刀を握らせた。
「竹刀はな、無心で振らなあかんねん。少しでも雑念があるとそれがバレて『綺麗な太刀筋』で振らせてくれへん。『綺麗に振りたい』も『ウチの真似をしたい』も1回忘れて『無』の状態になりや、快」
快は少し寂しそうな顔で
「『無』か…私にはだいぶ難しい注文だなぁ…でもお前が教えてくれたんなら従うしかないな…」
と肩をすぼめた。ウチはそれがどうにも申し訳なくなって
「あぁもう!ウチが見本見せたるから真似して振りんさい!」
とヤケ気味に竹刀を持った。

ふぅ____と息を1つ吐き、目の前の竹刀に集中する。
快の前で見せたその一振りは、ウチ史上最高の一振りやった。
「すげぇぇぇぇぇぇ!!!!!お前すげぇな!!!!!」
肩をバンバンと叩く快に向かってあっかんべと舌を突き出し、ウチは嫌味混じりにこう言い返す。
「ウチは『お前』って名前やないねん。ちゃんと『佐久蓮』って名前があんねん。『お前』やのうてちゃんと『蓮』って呼ばんかい」
すると目を輝かせていた快は少し驚いた顔をして
「すまん、蓮!蓮の太刀筋に惚れて名前を聞くの忘れてた!でも今聞いたからこれからはちゃんと『蓮』って呼ぶからな!」
とウチが見た中で1番明るい笑顔で言った。

快がレギオンの後輩に呼び出されて帰った後、ウチは1人道場で『リリィどうしでの交流で心身の回復を図る』という秋女の教育理念も、案外悪いものやないんかなぁ…なんて思ってしまった。

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「みーちゃん、今度私と『デート』に行きませんか?」
笑顔ではる姉から告げられたその一言は、私を赤面させるには十分すぎた。
「え、え、はる姉と…デート…???」
落ち着かずにあわあわしてしまう私の両手を握り、はる姉が私の耳元でこう囁いた。
「みーちゃんのカッコイイところ、ちゃーんと見せてくださいね?」
はる姉はそれだけ告げて校舎の方へ帰っていってしまった。残された私は、恥ずかしさと嬉しさで顔を覆って悶えることしか出来なかったのであった。

〜〜〜〜〜〜〜〜数日後〜〜〜〜〜〜〜〜
「みーちゃーん!こっちでーすよー!」
ブンブンと手を大きく振るはる姉は、まるで友達との外出を楽しみにしてる小さな子供のようで少しとても可愛かった。
「はる姉…!恥ずかしいからそういうのやめてってば…!」
急いで駆け寄ると、はる姉は不思議そうに
「どうしてですか?みーちゃんを見つけたんですから、声をかけるのは当たり前でしょう?」
と答えた。盟約を結んだ頃からこういう所は変わらないなぁ…と思いながらボーッとしていると、はる姉が私の頭を優しくペシっと叩いた。
「みーちゃん、私以外のことを考えてたでしょう?めっ、ですよ!」
少し怒り気味のはる姉に、私は慌てて
「違うよはる姉、はる姉が盟約を結んだ頃から変わらないなぁ…って思ってただけだって!」
と弁明した。それでもはる姉は少し疑わしそうに私を見つめていたが、ふぅと息を1つ吐き
「それじゃ、今日はよろしくお願いしますね、『私の彼氏さん』♡」
と私に囁いた。
…私の顔が茹でダコよりも赤くなってしまったのは不可抗力だろう。

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「今年度Wunder選出者を発表する。中等部からは1年葵組・坂町玲、2年葵組・三条燕、3年梓組・黒井朱里。高等部からは1年桐組・館山千歳、2年蓮組・佐原旭、3年桐組・市川眞。以上6名が今年度のWunder選出者となる。選出された6名は任命式を行うため、指定された日時に2号棟に来るように」
Wunderに選ばれた生徒が親友と抱き合って喜んでいる姿が視界に入り、憐憫と嘲笑が入り交じった表情を浮かべてしまった。
Wunder____「奇跡」なんて呼ばれているが、その実態は「奇跡」とはかけ離れた「地獄」だ。デュアルスキラーを人工的に生み出す為に、作為的に選出された6名の生徒に過剰な投薬やそれ以上に危険な実験を行っている。勿論私はその実態を知っているが、その上で実験を黙認し、被験体をGEHENAに差し出している。この学校で私に並びそうな生徒はいても、明確に"私より強い生徒"は存在しない。だからこそ私は「Wunderについて私に疑いをかけてきた生徒」を屠り、殉職者として嘘の戦果をでっち上げ、Wunderについての疑いがそもそも起きない様に仕向けてきた。その方が秋女にとって都合が良いし、GEHENAとの関係も維持できるからだ。今年こそはデュアルスキラーが生まれるんだろうか…なんて考えながら、私はその場を後にした。

数日後、2号棟に呼び出された生徒のうちの1人である館山千歳は不安そうに私の方を見て、問いかけた。
「あの、生徒会長さん…ここで本当にWunderが行われるんですか…?」
私はニセモノの笑顔を貼り付けて、安心させる為にこう嘘を吐く。
「大丈夫ですよ、館山さん。____貴方の役割は既に果たされているのですから」
私が言い終わるが速いか、GEHENAラボの研究員が館山さん____もとい被験体Aを羽交い締めにしながら睡眠薬を注射する。彼女がもがいていた時間が時間が5分か10分かは分からないが、徐々に抵抗が弱々しくなり、彼女は完全に寝てしまった。
「それでは研究員の皆さん、被験体をよろしくお願いします」
ズリズリと被験体を引きずる研究員に深々と一礼をし、私は2号棟を去った。

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私は憂鬱な気分で理事長室の扉を2度ノックした。
「入っていいよ」
そう声が聞こえ、心の中で大きく溜息を吐きながらドアを開ける。そこには椅子に座りながら頬杖をつく理事長がいた。
「あぁ、月島クンか。よく来てくれた…と言いたい所だが、君は先の羽後本荘ケイブでの戦闘を境に全く授業にも出てないらしいじゃないか。仲間を失ったのが辛いのは分かるが、いつまでも立ち直れないようだと今後のキャリアにも影響が出るよ」
入るや否やトラウマを抉られ、心臓が激しく動悸を打つ。しかし、ここで言い出せなくては決意した意味が無い。私は意を決して口を開いた。
「その件なんですが、本日はこれを提出しに来ました」
私は理事長の机に『退学届』と書かれた封筒を気持ち強めに叩きつけた。理事長は驚いたように目を見開き、封筒の中身を確認し、失望したような目で私を見つめた。
「月島クン、君には心底失望した。たかだか1回の失敗でへこたれるような生徒だとは思ってもいなかった。君には素質もあるし、今度結成されるだろう天ヶ瀬のレギオンでも活躍できると思っていたのだがね。月島クンの今回の選択を非常に残念に思うよ」
グサグサと心の傷を滅多刺しにされ、私が過去の辛さで泣きそうになっていると、急に理事長のお小言が止まった。私の不甲斐なさに呆れてものも言えなくなってしまったかと思って顔を上げると、理事長が深々と私に向かって頭を下げていた。
「…すまない。私の軽率な指示で君の大切な仲間を失い、君には一生残る自責の念を負わせてしまった。こんな軽い謝罪の言葉で許されるとは到底思っていないが、これが私の精一杯の謝罪の気持ちだ。本当に…申し訳ない」
私がどう返答すべきか迷っていると、理事長は顔を上げてこう続けた。
「君に今回退学届を出すという決断をさせてしまったことを、大変申し訳なく思う。今度は『1人のリリィ』ではなく『理事長の個人的な知り合い』として、たまにでもまたここに顔を出してくれることを祈っているよ。それじゃあ、またどこかで」
私が一礼して理事長室から出ていく時の理事長の笑顔は、今まで見たこともないほど穏やかだった。

||____結論から言えば、私が秋女に再び行くことは無かったのだが。||
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メモ 教導官ズの酒飲み

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メモ
||※陽さんと快さんが寮の同じ部屋で過ごしてる&付き合ってる前提
京ちゃんは「仲のいい友達」として快さんと仲良くしてる
快さんがヴァールハイトの任務でクタクタになってしまい、部屋に帰ってくるなりすぐに寝てしまう。一方陽さんは沢山甘えたかったのに快さんが構う暇もなく寝てしまったので少し不機嫌。イタズラ心が芽生えた陽さんは快さんの頬をツンツンしたりしていたが、全く起きる気配がない。(起きないのなら…)と頬にキスをしようとした瞬間、快さんの目が開く。動揺する快さんに陽さんは「残念でしたね、あと数秒起きるのが遅ければキスできていたのですが」とイタズラっ子のように微笑む。それを見た快さんはゆでダコのように赤面する____||

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私が目を覚ました時、私の大事な大事な恋人はおそらく私にしか見せないであろうレベルの間抜け面を晒して幸せそうに寝ていた。幸せそうだな、なんて思いながら眺めていると、彼女も目を覚ましたようだ。
「おはよぉ陽…」
いつもの元気いっぱいな彼女からは想像もできないほどか細く弱々しい声を残して、私の彼女は再び眠りに落ちてしまった。私はため息を吐きつつ起こしにかかる。
「快さん、起きてください。…1分以内に起きなければ今夜は寝かせませんよ?」
まぁまぁな脅しだと思ったのだが、それでも彼女は起きてくれない。それどころか口から幸せそうな寝言が漏れている。
「んへへ…はる、すきぃ…」だの「わたし、はるといっしょがいい…」だの、私の前では絶対に言わないような台詞が次から次へと溢れてくる。言ってる方はいいかもしれないが、言われてる私はたまったものではない。見る間に顔が赤くなってしまい、手で顔を覆わざるを得なくなってしまった。仕方ないだろう、彼女が普段絶対言ってくれない台詞を不意打ちで言われたのだから。彼女の寝言は、起床直後の私の脳にはあまりにも甘すぎた。

…今日くらいは、二度寝しても許されるだろう。でも、言われっぱなしは癪だから、お返しに一言くらいは言ってやらねば気が済まない。
「ずーっと離しませんから、覚悟しておいてくださいね?私の彼女さん」
それだけ彼女の耳元で囁いて、私も再び眠りについた。

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"かっこいいリリィ"を目指して秋女の門を叩いたはいいものの、スキラー数値が叩きつけた現実は残酷だった。辛うじてcharmを起動できる程度の数値しかない上に、レアスキルも覚醒していない。合格通知にも「補欠合格」と大きく書いてあった上に、配属は秋田本校ではなく酒田にある鳥海分校のリリィ総合学科らしい。そこはリリィとしては未熟だがcharmを起動出来るような『伸び代の見込まれる』人達が集まる学科なんだとか。…私からすれば「『出来損ないだけどcharmを起動できる使えないリリィもどき』をとりあえず左遷しておく場所」にしか見えないのだが。(どうせなら"Silver Bullet"がどんな人なのか見たかったなぁ…)と思いつつ入学式の会場である第一体育館へと向かった。

うっかりこのガーデンに入れてしまったばっかりに波瀾万丈の4年間が幕を開けるなんてつゆ知らず、当時の私は(もう少しスキラー数値が高ければ秋田本校で学べたのかなぁ…)と自身の才能の無さを悔いていた。||だってここから希少なレアスキルに覚醒して庄内地方の防衛と柳都女学館との防衛線交渉を任されるとは思わないじゃん?うーん、下手に地位が上になると面倒だよねー…||

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※ifです。正史はちゃんと「快の大切な後輩」として可愛がられてます

____憧れの先輩には、もう好きな人がいた。
1年生からレギオンに入れて、クラスの皆からは何度も称賛された。称賛を得るのは不思議と悪い気はしなかったし、レギオンの隊長の快先輩はいつも皆から慕われててとてもかっこよく感じた。
いつからだろう、「羨望」が「恋慕」に変わっていったのは。
いつからだろう、「羨望」が「嫉妬」に変わっていったのは。
私は、いつからか先輩に話しかける人を「うざったい」と感じるようになっていった。必要以上に先輩にくっつき、いつでも「好き」という気持ちを伝えることで「先輩は私のモノなんだぞ」と暗にアピールしている…つもりだった。
そんなある日、快先輩が生徒会長さんと楽しそうに話しているのを目撃してしまった。
(なんで、なんで私じゃないの。
なんでその笑顔を向ける先が私じゃないの。
なんで先輩が私以外に笑顔を向けてるの。
なんで私にはそんな笑顔を見せてくれないの。
なんで私の愛情は笑ってあしらうのにあの女にはデレデレしてるの…!
許せない、許せない、許せない…!!!!!)
「快センパイッッッ!!!」
嫉妬と憎悪を堪えきれず、私は2人の前に出て叫んでしまった。快センパイは驚いたように私を見て、その後困惑したような表情を浮かべた。
「火浦じゃないか、どうしたんだ?そんな大きな声を出して…あんまり他人様の迷惑になることをしたらダメだって言ってるだろ?」
(…誤魔化すつもりだ。私の愛情から目を背けて、他の女に現を抜かしてることを。この悪女からセンパイを正しい道に戻してあげなきゃ…!)
「快センパイ、生徒会長さんと楽しそうにお話されてましたよね。私の愛は受け取らないくせに、そこの女誑しとは随分楽しそうに話すんですね。もしかして弱みでも____」
私が滔々と感情を語っていると、耐えきれないといったように快センパイが私を怒鳴りつけた。
「火浦ッッッ!!!お前、言っていいことと悪いことがあるだろう!!!今すぐ陽に謝れ!!!」
(…あぁ、やっぱりそうなんだ。快センパイはこの女に誑かされてるんだ。助け出してあげなきゃ。)

そこからのことは、よく覚えていない。ふっと意識が戻った時には快センパイと生徒会長さんがcharmを構え、とても怖い表情でこちらを睨んでいた。その瞬間、私はようやく理解したのだ。「私の初恋は終わったのだ」と。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
||「芽夢先生、私…好きなセンパイに嫌われちゃった…」
「そう、それは辛かったわね…"嫌な事を忘れられるお薬"なら、ここ併設の研究所に行って私の名前を出せば貰えるわ。『どうしても辛くて耐えられない、この思い出を忘れたい!』って時には、貰いに行ってみてもいいかもしれないわ」
「ありがとう、芽夢先生…辛くて耐えられそうにないので、お薬もらってきますね」||

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メモ 楽々浦 パフェ

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「はる姉って、"彼女"より"お姉ちゃん"って感じだよね」
何気なく漏らしたその一言が、はる姉をあらぬ方向に駆り立ててしまったらしい。
次の日から、はる姉が少しおかしくなっていった。

「見てくださいみーちゃん、朝ごはん作っておきましたよ!」
自信満々にドヤ顔するはる姉の指差す皿の上にはダークマターが広がっていた。…食べたら死ぬかそれに近しい状態に陥る気がするが、折角はる姉が限りなく低い家事スキルを振り絞って作ってくれた朝食なのだ。食べない訳にはいかないだろう。覚悟を決めてスプーンで掬い、口に運ぶ。
「ゴフッ」
口に入れた途端、この世ならざる景色が脳内に流れ、味覚は「このままでは死ぬぞ、吐き出せ」と危険信号でぶん殴ってくる。しかし、期待の目で見られている以上下手な真似はできない。何とか飲み込み、精一杯の笑顔を作る。
「みーちゃん、私の朝ごはんは美味しいですか〜?」
…正直に言うなら食べれたものではない。というか常人に食べさせたら待っているのは逃れられない死だろう。が、そんな事を言った日には報復として虫を食べさせられる予感がするので下手なことは言えない。
「お゛…美味しいよ…?ゲホッゴホッ」
むせながら言ったので、説得力は皆無だ。当然のようにはる姉は疑いの眼差しを私に向ける。
「あんまり美味しそうに見えませんね…?本当は美味しくないんじゃないですか〜?」
ギクリとしてはる姉の方を見ると、悲しそうに目を伏せていた。
「みーちゃん、美味しくないなら『美味しくない』って言っていいんですよ…?皆の前みたいに嘘でごまかすのはやめてください。私の前でくらい…『"素のみーちゃん"でいてほしい』というのは、贅沢なお願いですか?」
いつものほわほわしたはる姉とは別の、真剣な眼差し。…あぁもう、この人には敵わないや。
「はる姉、この朝ごはん美味しくないです。これからは私が2人分の朝ごはんを作るので、はる姉はゆっくり寝ててください。朝ごはんが出来たら私が起こしに行くので」
私が恥ずかしさを隠すようにぶっきらぼうに言い放つと、はる姉は嬉々としてダークマターを片付け始めた。
「それじゃ…今日から朝ごはん作り、よろしくお願いしますね!」
…この笑顔、いつまでも守りたい。この人と生涯を共にしたい。まぁ、恥ずかしいから言わないんだけどさ。

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深夜の新屋ラボの薄暗い廊下にカツカツと規則正しく響く靴音。その正体は、秋田心理女子中高・高等部生徒会長の天ヶ瀬陽だ。陽はある部屋の前で立ち止まり、慣れた手付きでパスコードと指紋認証を済ませ部屋の中に立ち入った。
「あら、天ヶ瀬さんじゃない。こんな夜更けにどうしたのかしら?」
部屋の主はゲーミングチェアを回転させ、陽の方を向いてこう問うた。それに対し陽は
「こんばんは、神捨先生||。…いえ、桐生研究員||。この"器"に代わる肉体を生み出す実験の経過はどのような感じか、気になってしまいまして」
と貼り付けた笑顔で応じた。"神捨先生"は1つ溜息を吐き、こう嘆いた。
「そう急かされても…今の器に匹敵するレベルの子なんてなかなかいないのよ?死体を引き取って強化したりはしてるけど、どれも適合しないか適合してもその身体ほどにはならないのよねぇ…」
それを聞いた陽は苦笑しながら頬を掻いた。
「でしょうね。この身体は今までで1番動きやすいと思います。これほどまでに合致する身体を作れる確率も低そうなのは理解しています。ですが…これに並ぶ身体を、いえ…これ以上の身体を欲しいと思ってしまうのです」

____陽の目が見据える先は輝かしい栄光か、はたまた絶望の暗黒か。

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ここ数年で一番の冬晴れとなった某年1月某日、LGコンコルディア隊長の神水由希奈は、同室で同じレギオンに所属している羽咋有栖の朝の弱さに業を煮やしていた。
「あーりーすー!!!起きなさーい!!!もう9時どころか10時よ!!!有栖が起きなきゃ下級生に示しがつかないでしょ!?!?」
そこそこ大きな声で怒鳴られたにも関わらず、有栖は布団を被りなおして徹底抗戦の構えを見せる。
「やだ…休日の時間の使い方は自由…由希奈が言ってた…」
布団の四隅を押さえながらもごもごと反論し、有栖は布団から出てこようとしない。由希奈は我慢の限界に達したのか、2段ベッドの下の空間で抵抗する有栖の布団を強引に剥ぎ取り、寒さに震える有栖の耳元でこう呟いた。
「有栖があと5分以内にベッドから出てこないなら、そこにあるミステリー小説安く買い叩いちゃおうかな〜?実は前から気になってたんだよなぁ〜…」
有栖にとってその一言は効果抜群だったようで、光より少し遅いくらいの速度でベッドから飛び起き、自分の机を由希奈から守るように身体を広げた。
「ちゃんと起きれるんなら最初から起きなさいよ…侑李とか浅妃とか古賀っちが部屋の前で待ってるから早く支度してね?」
それを聞いた有栖は目を擦りながら着替えや洗顔を済ませ、遅くとも15分後には支度を済ませていた。
「由希奈、支度出来ましたよ。行きましょう」
部屋の内と外でここまで性質が変わるのは有栖くらいよね…などと考えながら、由希奈は今日の予定を話そうと控室に向かうのだった。

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____冷たい床の感触で目が覚めた。そうだ、私は…このガーデンの内部機密を持ち出そうとして…

||まとまらない思考を必死で1つにしようとした矢先、コツコツと乾いた靴音が薄暗い廊下に響きわたる。その足音は私の牢の前でピタリと止み、"背の高い影"が話しかけてきた。
『こんにちは、可愛いお嬢さん。ようやく目を覚ましたと看守から伺ったので、早速会いに来てしまいました!少々効果の強い睡眠薬を打ってしまいましたが、体調はどうですか?変わりはありませんか?』
私は警戒心を顕にしながら、素っ気なく返事をする。
「ご丁寧にどうも、おかげで健康そのものですよ。流石、GEHENAのラボを併設してるだけあって、その辺の研究はバッチリなんですね」
多少の嫌味を交えた返答は、相手には刺さらなかったようだ。にっこりと笑うような気配の後、こちらを心底馬鹿にしたような声で自己紹介をされた。相手は「GEHENA秋田新屋ラボ『科学技術部第4課』」に所属する「桐生陸帆(キリュウ リクホ)」と名乗り、自分が「『高機動人型戦闘機』の調整をする部署の主任」で「高機動人型戦闘機プロジェクトのリーダーである」と私に告げた。

…ちょっと待て。戦闘をした"彼女ら"は"リリィではない**"ということなのか…?確かに異様な強さを見せた者が何人もいたが…流石にそこまで人に酷似した戦闘機、もとい戦闘ロボットなんて作れるはずが…

知ってはいけない"恐ろしい事実"に触れた気がして、桐生研究員の方を向くと、悪どい笑みを浮かべて私にこう告げたのだ。
『"侵入者さん"は随分察しが良いんですねぇ…まだ私は何も言ってないのに、"自分の未来まで視えてしまう"なんて』
この瞬間、私は自分の命に差し迫る危機を察知したが、もう手遅れだった。
刹那、牢と廊下が分厚い金属によって遮断され、通気口を通じて透明なガスが牢の中に漏れ出し始めた。"私"の最後の記憶は、朦朧とした意識の中で最後まで映り続けた、牢の無機質な床だった。||

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メモ
誤解を産む天ヶ瀬Part2(近日執筆)

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※キャラ崩壊してます。独自解釈も(ほぼ確実に)あります。
そして案の定設定もセキュリティも超ガバです。
そういうのが地雷なら読まない方がいいです。

||「アンタらが非人道的な実験を繰り返しているのは分かっているのよ!いい加減事実を認めて処罰を受けなさい!」
バァンとテーブルを叩き憤りを顕にしたのは、エレンスゲ女学園・LGクエレブレ所属の松村優珂。しかし、陽も黙ってはいない。
「弁論は随分立派ですが…その文言を宣うのが"エレンスゲの"松村優珂さんですか。一度ご自身の所属するガーデンがどのような事をしているのかお確かめになられては?」
ぐっと言葉に詰まる優珂に、陽が更なる口撃を加える。
「それに…弊校にはカウンセリングルームはあれども、実験用の部屋なんて存在しません。なんなら案内して差し上げましょうか?」
にっこり微笑む陽に、今度は苅谷緋紅が苛立たしげに問いかける。
「じゃあどこで実験してんだよ。早く答えろ」
有無を言わさぬ緋紅の圧にも陽は笑みを崩さず、こう返した。
「ですから…『実験はしていない』と何度も申し上げているでしょう?私はこんな押し問答をする為にわざわざ貴女達に時間を割いた訳ではないのですよ。嘘ならもう少し上手について下さいね」
嘲るような返しに、クエレブレの面々は何も言い返せなかった。失意の内に生徒会室を去り、秋女の前に止めていたSUV車に乗ろうとしたその時、優珂の目にGEHENAラボが目に入った。
そうだ、GEHENAラボだ____!
優珂は弾かれたようにラボに向けて走り出した。美岳や緋紅の制止も聞かず。

ラボに潜入した優珂は、片っ端から人のいない部屋を漁り回った。目ぼしい資料や実験の痕跡はないかと探したが、どこにも見つからなかった。バレない内に帰らねば…と研究室を出た瞬間、背の高い人間にぶつかった。研究者か…!?と身構えたが、どうも違うようだ。青い着物に紺色の袴、右手にはcharmを持っている。なんだ、リリィか…と安堵する優珂だが、すぐにこのガーデンの実態を暴くチャンスだと気づく。
「あの…!このガーデンのリリィですよね!?」
ここで不当な人体実験が行われているんですが____と言おうとした所で、肩にポンと手を置かれた。
振り返ると、背の高い水色の髪をした和装の女。恐らく彼女もリリィだろう。
「アンタ、ここのモンやないよなぁ、なんでここにおるん?しかもご丁寧にcharmまで持ってはるし…蓮も何しとるん?こんなん見たらさっさと始末せなあかんやん」
"始末"という物騒な単語にすぐさま逃げようとするも、両側を塞がれてはどうしようもない。万事休すか…?と優珂が死ぬ覚悟を決めたその時、水色の髪のリリィが盛大に笑いだした。
「アンタ、エレンスゲのクエレブレやろ。なんでここに来たんか知らんけど、アンタが望むようなモンはここには無いで?分かったら生徒会室でぶぶ漬けでも食べてきや」
その言葉を聞き、優珂は渋々ラボを後にした。

残されたクエレブレの面々は、優珂が秋女のリリィに付き添われて戻ってきたことにとても驚いていた。そして、目ぼしい収穫がなかったことに落胆した。しかし、彼女らの中での疑念は深まっていた。
必ずあのガーデンの闇を暴いてみせる____!
クエレブレの面々はそう決意して東京へ帰っていったのだった。

「やっと帰っていきましたね…全く、歪んだ正義感で動かれると面倒なものですよ。そうでしょう?北浦理事長」
「そうだね。彼女らは全員が強化リリィだから、そのせいもあって我が校への疑念を深めたのかもしれないね」||

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SSに値しない文章を投げる場所

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クソ手抜き自己満文章もどきのゴミを投げる場所

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文章っぽい何かを投げる場所

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オリリィのSSを投げる場所

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メモ
フルング Wunder 実情

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メモ
ヘラる内海爽

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2051年・山形県鶴岡市温海町鼠ヶ関にて____

「ふざけるのも大概にしろ上山(かみのやま)!今我々インヴェルノが撤退したら、防衛線の維持はどうなる!?それとも数名のマディックだけで防衛線を維持出来るとでも思っているのか!?」
ヒュージ防衛の最前線である鼠ヶ関近辺で戦っている楯山千歳は、"撤退せよ"と指示を下した生徒会長の上山相手に激昂した。しかし、上山は冷静に後退の指示を下した。
「楯山、君の言いたいことは分かる。私だってこんな指示はしたくないさ。今後退すれば、奪還には多くの労力を必要とするだろう。だが…今は態勢を整えて反撃の機を窺うべき局面じゃないか?…これは"命令"だ。すぐに五十川(いらがわ)まで後退しろ。そして龍ヶ崎と楯山は防衛線の構築を確認したら即座に帰投するように」
有無を言わさぬ上山の語調に、楯山らインヴェルノの面々は失意のまま五十川地区まで後退した。また、龍ヶ崎と楯山の2人は防衛線の構築を確認したのち、渋々鳥海分校へと帰投した。
血だらけで帰投した2人を見た上山は血相を変えて緊急救護室へ連れ込むと、「最低2週間の出撃禁止」を言い渡した。当然2人は納得出来るはずもなく、精一杯の反論を繰り出したが上山の前には無力だった。
「君らが負傷したまま戦闘で足を引っ張ったらどうする?そのせいで無駄に死んでいった同胞に向ける顔があるほど君らも無神経じゃないだろう、わかったら大人しく2週間は寝てるんだな」
不満たらたらといった様子の2人に若干呆れつつ、上山は救護室を出ていった。

上山が救護室を出ていってからというもの、救護室には重苦しい空気が充満していた。その中で、龍ヶ崎が心底悔しそうに小さく楯山を呼んだ。
「…聞こえるか、楯山」
「なんだ、龍ヶ崎」
「私は、悔しい。鳥海の皆が前線で命を賭しているというのに、この期に及んで怪我でしばらく出撃できないのが死ぬ程悔しい!!!」
龍ヶ崎は、廊下にまで響き渡る程の大声で叫んだ。
「私もだ、龍ヶ崎。この故郷を今この身で守れないのが、言葉では表せない程悔しい」
楯山がそう悔しさを滲ませた時、校内にヒュージ出現のサイレンが響き渡った。
それを聞くなり楯山は枕元に置いてあった自身のcharmを持ち、
「休んでいる暇はないぞ海里、今すぐ出撃だ!」
と言い放って救護室を抜け出した。
弾かれるように龍ヶ崎も跳ね起き、charmを持ち救護室を出ていった。
「よし行くぞ千歳、すぐさま出撃だ!今すぐにでもヒュージ共を砂塵にしてやる!」
廊下ですれ違った上山の制止も聞かず、2人は五十川の防衛線へと舞い戻っていったのであった。

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※このSSは、苗穂の赤磐朔さんの過去の回想です

生前の曾祖父は、自分の若い頃の事をとても楽しそうに私に語ってくれた。
"寝台列車を運転して道内各地や青森や東京に行ったし、大阪にも行ったことがあったんだぞ"とか、"北海道に来てからはエゾシカの処理が大変だった"とか。
まだ小さかった頃の私の知らない世界を教えてくれた曾祖父は、私が「苗穂に行きたい」と思わせてくれた大切な人だ。
そんな曾祖父は私が5歳の頃に他界した。学校から帰ってくると、家で悲しみに暮れていた私をいつも慰めてくれたのが『ちほく高原鉄道』という会社で運転士をしていた祖父だ。祖父も元々は国鉄職員だったそうだが、「地元の鉄路を守りたい」という一心でちほく高原鉄道への無期限出向を志願したのだそうだ。池田から足寄や陸別や訓子府へ、果ては北見まで全線通しで運転することもあったそうだが、祖父は生前"あの時が1番楽しかった。鉄路が消えてからは生き甲斐が無くなってしまった"と嘆いていた。
そんな祖父を元気づけたい一心で、小さい頃の私は祖父と一緒に広い農場で遊び回っていた。私と遊んでいる時の祖父は、普段の悲しそうな顔から楽しそうな顔に変わっていた。私は、楽しそうな顔をしている祖父を見るのが好きだったのだ。
その後、小学校に上がる頃には3日ほどかけて祖父と一緒にトラクターを分解したのち、再度組み立てたりしていた。思えば、生業の機械いじりはこの頃に培った経験が生きているのだろう。色々変な改造もしたし、少々の無茶もしてきた。両親に怒られたのも1度や2度ではない。それでも、その度に祖父は私を庇って"俺が朔を誘ったんだ。怒るなら俺にしてくれないか"と頭を下げていた。
そんなこんなで中学2年に上がった矢先、屈斜路湖にネストが形成されてしまう。弟子屈町は全町放棄を宣言し、札幌市への即時疎開を決定した。その他近隣市町村も、札幌近郊、帯広、旭川への疎開を順次決定していった。ネスト形成から数日後、陸別町民も札幌への疎開が決まった。しかし、私の祖父だけは"俺はもう老い先も長くねえし、ここで人生を終わらせちゃダメか?なぁに、札幌のリリィさん達がすぐに片付けてくれるさ"と頑なに陸別を離れようとしなかった。私の両親(特に母親)は猛反対したが、最後は祖父の意志に折れたようだ。『私達が戻ってくるまで必ず元気でいること』を条件に、「陸別町に残ってもいいよ」と言ったらしい。その日の夜、私達の乗る最後の疎開バスが町を出発した。1人残ることを決意した祖父の姿は、酷く寂しく見えた。
数週の間、私は勉強も何も手につかなかった。本当に祖父を置いてきて良かったのだろうか?無理にでも連れてくるべきだったんじゃないのか?と思考が堂々巡りを始めてしまい、朝起きたら枕は涙で濡れていたということが多々あった。
それでも、祖父とした機械いじりの楽しさが忘れられなかった。"自分の『好き』をより深く学びたい"と思うようになっていった。そんな時、苗穂運輸工務高校の話を聞き、「ここだ!ここなら自分の好きを深めることが出来る!」と思った。
それからは無心で受験勉強に励み、スキラー数値の検査も受けた。数値の方は「何とかリリィになれるレベルだ」と言われたので、成績の維持に必死だった。
待ちに待った合格発表の日、私は恐る恐る会場に向かった。受験の結果は辛うじてではあるが合格で、私は夢への扉を開くことに成功したのだった。

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「うーん…頭たんげいでくて熱も出てまって…こいだばまいねじゃ…」
パジャマ姿で布団に潜り、苦しそうにしている浅妃。心配そうに見守る侑李は、オロオロと浅妃の周りで狼狽えている。
「ゆうり…わの"まんま"作ってけねが…?なも面倒んたもん作んねぐでいいはんでろ、わがかへれるもん作ってけれ…」
か細い声で頼まれた侑李は、張り切って部屋を出ていった。さて、侑李は何を作るのだろうか…

共用の調理場に着いた侑李は、冷蔵庫からりんごとパイナップルを取り出して一口大のサイズにカットし始めた。
「浅妃も、一口大のフルーツなら食べやすいんじゃないかな…。これ届けたらおかゆかそうめんでも作ってあげよ…」
考え事をしながらも、侑李の包丁さばきは見事なもの。ものの10分そこらでうさぎのりんごが3つ、カットパイナップルが10切れ出来た。
侑李が部屋に戻ると、浅妃は布団からゆっくりと身体を起こし、カットフルーツを受け取った。
「侑李、めやぐかげてまってすまねし…熱治ったらおめ行きてって言ってらとごさ行ぐべ」
それを聞いた侑李は一瞬嬉しそうな表情を浮かべるも、すぐに表情を引き締めた。
「ダメだよ浅妃、今は風邪を治すことに専念しなきゃ。楽しいことは風邪が治ってから一緒に考えよ、ね?ボクとの約束!」
にっこり笑って侑李が小指を差し出すと、浅妃もゆっくりとではあるがそれに応えた。
「んだな、今は風邪治さねばまいねな。治ったら一緒に考えるべ」
「うん!」

数日後、レギオン控室の片隅で楽しそうにお出かけの計画を考えている2人の姿が目撃されたとか。

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わなわなと震える少女と、その場にドサッと倒れ込む少女。彼女の隣に、死体がひとつ増えてしまった。
「う、嘘…そんなつもりじゃ…!私は、元同級生を殺めるつもりなんて…!」
ニヤニヤと見つめる向葵と蓮に、千種は怯えた表情を浮かべる。
「あーあ、千種が殺ってもうたなぁ」
「千種ぁ、『コイツらは殺ったらアカン』って言うたやろ?殺るのはあの猿以下の知恵もないアホ共に任せとけばええんや。ウチらがわざわざ汚れ仕事なんて背負う必要ないんやで?な、向葵」
そこまで言って、蓮は向葵の方に視線を向ける。
「せやでー、千種。ちなみにな?」
と言葉を切り、千種の耳元でこう囁いた。
「…リリィの死体って、結構高く売れんねんで?小遣いの足しにしたいんやったら____わかるやろ?」
唖然とする千種から少し距離を取り、蓮が言葉を継ぐ。
「ラボに行って、死体を研究材料として売りつけるんや。今回は"特別に"今すぐここに呼びつけて事情説明もしたるから、今の内に銭稼ぎの算段付けとくんやで?」
ニヤニヤと笑いながら携帯を操作し、研究員を呼びつける2人の先輩を、千種は恐怖に戦きながら見ていることしか出来なかった。

「…生徒会長さんに報せなきゃ」
千種の口から不意に零れた言葉は、先輩____もとい2人の悪人に更に残虐さを加える。
千種の動揺を嘲るように蓮が口を開く。
「アカンで?千種。アンタが殺ったんやから、ちゃーんと最期まで見届けてやらな。それに…これ柳都の元同級生やろ?ホーンマ、あのカオナシも酷い事させるわ。スパイを黙認した上で元同級生を手にかけさせるなんて。常人じゃ考えつかんやろなぁ」
驚きを隠せない千種は、思わずその場に崩れ落ちてしまった。向葵は崩れ落ちた千種の肩に手を置き、ネットリとした声でこう囁く。
「これでアンタも犯罪者の仲間入り。めでたいなぁ?今更逃げた所で誰も助けてくれん、誰も守ってくれん。アンタが頼れるのはウチらだけや。覚悟決めて地獄に堕ちよ、な?」

その後、千種は人が変わったように生徒会長に心酔するようになった。何があったのかは、本人を除いて誰も知らない。

参考↓
||https://twitter.com/jirohq/status/1750430457664315693?t=ZzsGqE32AeYOSlztSRorvg&s=19||

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フルングか楽々浦・姫羅でなんか書く

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※言い出しっぺの法則には従うのが私です。
キャラ崩壊してたらごめんなさい。でも書くの楽しかった!

____雫さ、今度の金曜日一緒にお酒飲まない?
そう夏弥から誘われたのが今週の火曜日。双方共に少しワクワクしながら数日間を過ごし、迎えた金曜日の夜。部屋のテーブルにはチューハイと貝ひも、柿の種やチーズおかきなどが並んでいる。
「なんか思ったより普通なんだな…」
少し腑に落ちない顔をする夏弥に、雫は少し呆れつつ肩をすくめる。
「『普通なんだな』って言われても…。その『普通』で前回酔っぱっぱになって私に介抱されたのはどこの誰でしたっけね…?」
にっこりやんわりと(少し圧をかけられつつ)たしなめられ、夏弥は慌てて雫に座るように促す。当然のように隣に座ってくる雫に夏弥は若干の気恥ずかしさを覚えつつ、それを悟られんとするようにチューハイを手に取り、蓋を開けた。そんな夏弥の心中を透かして見たように雫がふふふと笑う。
「そんなに照れなくても私は逃げませんよ、夏弥。今日は金曜日の夜で、明日は食堂もお休みなんですからゆっくり飲みましょうよ」
心の内を読まれた夏弥は顔を真っ赤にして俯き、ゆっくりと頷いた。
雫もチューハイの蓋を開け、2人でコツンと缶を優しくぶつけ、乾杯の合図とした。雫は少しづつゆっくりと、夏弥は一気にチューハイを飲んでいく。
「ふぅ…やっぱり2人で飲むお酒は美味しいですね、夏弥。…夏弥?」
返答が来ない事を訝しんだ雫が隣を見ると、既に出来上がった夏弥が顔を真っ赤にしながらチューハイをゴクゴクと一気飲みしていた。
「まったく、夏弥ったら…!」
雫は半ば強引にチューハイ缶を奪い取り、コップに注いできた水をゆっくりと夏弥に飲ませる。
「しずく〜…まだおさけのむ〜…うぅ…」
「ダメですよ夏弥、今日はもう寝てください」
結局また夏弥を介抱する羽目になるのね…と溜息をつく雫だったが、その後の夏弥の一言でそんな考えは全て吹っ飛んでしまった。
「しずく〜、いっしょにねよ〜?」
「一緒に、寝ッ…!?」
バクバクする心臓の鼓動を抑えつつ、雫は夏弥と共に眠りについたのだった。

雫さんのwiki
https://w.atwiki.jp/orily/?cmd=word&word=雫&pageid=712
夏弥さんのwiki
https://w.atwiki.jp/orily/?cmd=word&word=雫&pageid=718

glacial nymph
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秋女旧校舎の3階、誰も来ないであろう空き教室に人影が2つ。人影の正体は、生徒会長の天ヶ瀬陽と風紀委員長の下水流昴だ。
天ヶ瀬は乱雑に置かれた机に腰掛け、下水流は天ヶ瀬の前で跪いている。
「下水流、今週の風紀委員の活動について何か報告は?」
「はっ。今週は2名ほどWunderへの不信感を抱く生徒が確認されましたので、生徒指導室にて"思想の矯正"を行いました。その他は特に異常ありません」
下水流が差し出したリストを見て、天ヶ瀬はぴくりと眉を動かしたが、一瞥するとすぐに下水流に突き返した。
「よろしい。今後も風紀の維持に励むように」
「天ヶ瀬様の仰せの通りに」

天ヶ瀬が去った後、下水流は1人空き教室で愚痴を吐く。
「Wunderは本当に素晴らしい実験だ!デュアルスキラーが完成すれば、天ヶ瀬様の名声は世界をも凌駕するだろう!…だと言うのに、広瀬青葉山の白痴共と来たら!天ヶ瀬様の崇高な理念を理解せずに特務部隊を幾度も幾度も送り込んでくる…!」
怒りが抑えきれなくなったのか、下水流は二度三度と机を殴る。下水流の怒りが収まる頃には、机の天板はグチャグチャに破壊されてしまっていた。
"私も少し天ヶ瀬様に躾を教えこんで頂くべきだろうか…"と苦笑しつつ、下水流も空き教室を去った。

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メモ
#👤オリジナルリリィ雑談 message

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「ねぇねぇかむちゃん、今度の土曜日暇?」
そう問いかけてくる生徒に、冠依は若干の呆れを覚えつつぺしりと軽く頭をはたく。
「今度の土曜は來夢との大事な用事があるから暇じゃねェよ。あと『かむちゃん』って呼ぶな。ちゃんと『冠依先生』と呼べ、神浜」
神浜と呼ばれた生徒は少し不満げな表情を浮かべつつ、冠依の耳元でこう囁いた。
「かむちゃんさぁ、土曜日にらいむちゃんに告白するんでしょ?余裕ぶるのはいいけど、あんまり余裕こいてると他の人に取られちゃうかもよ?」
神浜に若干の苛立ちを覚えつつも冠依はそれを表情に出さないようにやや適当にあしらった。

(來夢と2人で酒飲みなんていつぶりだろうな…久々にあの酒も飲むか…それから…)
「____いちゃん、ちょっとむいちゃん聞いてる〜?」
深い深い考え事の沼から冠依を引き上げたのは、想い人の声だった。
「ンだよ來夢…今週末の飲み会の話だろ?」
「それもそうだけど…!『今週末はバレンタインだからチョコの交換会もしない?』って今言ったじゃん…!むいちゃん、本当は私の話聞いてなかったでしょ〜」
"らいむちゃんはお見通しなのだ!"と言いながら腰に両手を当てて威張るような格好をする來夢に、(來夢が好きなチョコと洋酒でも買っておくか…)と思う冠依だった。

迎えた土曜日の夜、2人は冠依の部屋にいた。2人で飲むのは久しぶりということもあり、少し高そうなワインやブランデーを数本、それにおつまみでチーズや生ハムを添え、本題のチョコもテーブルの真ん中に置いてあった。

駄弁りつつも酒を2本空け、つまみも半分以上平らげた頃、唐突に來夢が話を切り出した。
「いや〜〜〜…むいちゃんと2人で飲むの、久しぶりだね〜…」
「最近は忙しかったもんなぁ…どっちかが暇な時はほぼ確実にどっちかが忙しかったし。まるで呪いみたいだったな」
"こんな呪い捨てちまいたいくらいだよ"と冠依が零すと、來夢は儚げな表情を浮かべて
「むいちゃんはさ、好きな人とならどんな呪いだって乗り越えられるんじゃない?」
と少し寂しげに呟いた。
「そうだな…來夢と一緒なら、どんな呪いも乗り越えられる気がする。…そもそも私の大事な來夢に呪いなんて付与させないけどな」
冠依が無意識に零したその言葉は、來夢を赤面させるには十分だった。
「〜〜〜ッッッ!?!?!?///…むいちゃんって、天然の人たらしだよね」
赤面しながらもムスッとした來夢の発言の意図に冠依が気づき、"もう少しかっこよく告白しようと思ってたのに…"と落ち込んで來夢に慰められるのは、また別の話。

元ネタというかこの作品の元になった発言↓
#👤オリジナルリリィ雑談 message
へゲロさんネタ提供ありがとうございました。

らいむちゃん先生へのリンク
#1123389060031975444 message
"むいちゃん"こと冠依先生へのリンク
#1123389060031975444 message

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メモ
さくらまつり
出店(射的で姫羅と浅妃が活躍するのは書きたい)
花見(ここはる…?夜の方がムードある気がする)
おばけ屋敷(向葵が柄にもなく怖がって蓮に慰められるのとか)

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「この偽善者どもが…!Wunderなどというふざけた実験の為に一体何人の同胞を犠牲にしたんだ!答えろッ!」
自らを柳都女学館の"セキヤ"と名乗る少女は、苛立ちを隠せない様子で応接室のテーブルをドンと叩いた。
「Wunderなんて実験は弊学では行っておりませんよ。弊学は心身に傷を負ったリリィに適切な治療を施す場所なのですから。苛立ちが抑えられないのであれば、お茶でも飲んで少し落ち着かれては?」
一方、秋女生徒会長の天ヶ瀬陽は至って落ち着いた様子で飄々と詰問を受け流す。その様子にセキヤはますます苛立ち、テーブルをバンと叩きつけて立ち上がり、天ヶ瀬の顔に指を突きつけた。
「喧しいッ!…こんな奴等と話が通じると思った私が馬鹿だった!交渉は打ち切りだ!今すぐにでもこの校舎ごと爆破してやりたいが、我々柳都には貴様らと違って慈悲の心がある。3日後までに我々へ実験内容を全て公開し、上層部と生徒会役員を交代させたら今回の件は見逃す!わかったな!」
「それがあなた方からの最後通牒という訳ですか?」
「それ以外に何があると言うんだ?」
それを聞いた天ヶ瀬はひとつ溜息を吐き、飲みかけのお茶をテーブルに置いた。そして、少し呆れたような表情でこう言い放った。
「わかりました。そのような戯言が最後通牒であるならば、我々も同様に交渉の席に着きません。交渉など結構です。当方話の通じない猿と会話する趣味は持ち合わせておりませんので、早急にお帰り願えますか?」
菩薩のような笑みを浮かべ嫌味を放った天ヶ瀬に、セキヤは悪魔のような笑みで返す。
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。後悔しないように遺書くらいは書いておくことだな」
それだけ吐き捨てて、セキヤは応接室を出ていった。

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メモ
フルング?
#👤オリジナルリリィ雑談 message

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メモ
はるみずR18…?

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ここから
#👤オリジナルリリィ雑談 message

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※はるみず。
現実と違って八景島に観覧車があるよ。
そして名前が変わっているよ(設備はほぼ一緒)。
中の人は八景島の記憶がリヴァイアサンしかないから描写が雑だよ。
宙女にないものが登場している可能性があるよ。
許せる人だけGo

||「みーちゃん、来週の土曜日にでも『遊園地デート』しませんか?」
はる姉は、ここ最近決まってこの誘い文句から会話を始める。以前は適当に流していたんだけど、こう何回も「デート」と言われるとどうも気恥ずかしくてならない。どうにもこの恥ずかしさに耐えられなくなりそうだったので、今回は誘いに乗ってみることにした。
「…わかった。はる姉とのデート、楽しみにしてるから」
図らずも赤面してしまった私とは反対に、はる姉は心底嬉しそうに「約束ですよ〜!」って言いながらどこかへと走っていってしまった。…はる姉、どこに行くんだろう?||

||そして迎えた土曜日、事務室に外出届を出したはる姉と私は、三鷹から2時間半をかけて八景島の遊園地に来ていた。
「見てくださいみーちゃん!ここが遊園地ですよ〜!!!」
私よりも明らかにはしゃいでいるはる姉を見て、私は苦笑しながら宥める。
「はる姉落ち着いて、まだ10時だよ?この調子じゃすぐに疲れちゃうから、まずは落ち着こ?」
と私が言うと、はる姉は不満気に頬を膨らませつつも私の手を引っ張ってチケット売り場に向かった。
「1日フリーパス、リリィ2枚お願いします」
「かしこまりました。学生証や生徒手帳はお持ちですか?」
係の人に聞かれ、2人とも財布の中から学生証を見せる。それを確認した係の人は、数回機械のボタンを叩いてフリーパスを発券した。
"ごゆっくりどうぞ〜"なんて係の人の声を背に、私達は八景島遊園地へと足を踏み入れた。||

||「みーちゃん、八景島遊園地に来たんだったらジェットコースター乗りましょう!!!ここの名物ですよ!!!」
遊園地に足を踏み入れるなり、はる姉がグイグイと私に迫るものだから、私はついうっかり「いいよ、ジェットコースター乗ろ!」と言ってしまった。____そのジェットコースターが恐ろしいものであるとは知らずに。||

||「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛死゛に゛た゛く゛な゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛い゛い゛い゛!!!!!」
「きゃー!みーちゃん見てください〜!綺麗な海ですよ〜!!!」||

||ジェットコースターを5回乗り終わった頃には、私は涙目ではる姉にしがみついていた。
「は、はる姉のばかぁ…もうジェットコースター乗らないぃ…」
「…ちょっとはしゃぎすぎましたかね?」||

||その後は水族館でイルカショーを見たり、お土産屋さんのイルカのぬいぐるみくじではる姉が特賞を当てたりでとっても楽しかった。
16時半かぁ、そろそろ閉園時間だな…と思った時、はる姉がいつになく真面目な表情で観覧車に誘ってきた。
私は二つ返事で了承し、2人でガラガラの観覧車に乗った。||

||ゆっくりと高度が上がっていく観覧車の中で、はる姉が私の手を優しく握った。
「みーちゃん、好きです。盟約としての姉妹じゃなくて、みーちゃんと"恋人"になりたいです。…私の想い、受け取ってくれますか?」
突然の告白に驚いて顔を上げると、はる姉の顔はまるで秋の紅葉かと思うくらい真っ赤だった。
「…受け取らないわけないじゃん、はる姉のばか」
「みーちゃんっ…!!!」
私の返事を聞いた時のはる姉の顔は、多分この世界で誰よりも可愛くて綺麗だった。||

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ありえない何か

純「…そこのお方、隠れてないで出てきたらどうですの?」
蓮「なんや、バレとったんかいな。流石"狂乱の姫巫女"やなぁ。で、こんな夜更けに秋田の山ン中お台場のレギオンの隊長が何してるん?わざわざ東京からこんな所まで来るってことは、何か理由があるんやろ?」
純「仮に理由があろうとも、貴女にお話する義務はありませんの」
蓮「ほんま京都に来てた時から変わらんなぁ、アンタは。あの時は燈に傷つけられてたみたいやけど」
純「…ッ!?何故それを…」
蓮「さぁ、なんでやろなぁ?おっと…そろそろ雑談は終いや。今引き返せば何も見んかったことにしといたる。悪い事は言わん、早よ東京に帰り」
純「それは出来ませんわ。私達ロネスネスは今回貴女の所属するガーデンの"破壊"を命じられておりますの。今頃姉様達が強襲している頃ではなくて?」
蓮「…!」
純「そう簡単には逃がしませんわよ?折角出てきてくれたのですから、私とお手合わせ願いたいですわ」
蓮「しゃーない、付き合うたるわ。ウチの太刀捌きが"姫巫女"にどこまで通じるんか気になるしな。いっちょ勝負といこうや」

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「夏蝶姉様、今日は久しぶりにお寿司屋さんに行きませんか…?」
ふと"お寿司が食べたいなぁ"なんて思ってしまったものだから、姉様を誘ってみた。でも、姉様は思ったより渋い顔をしている。私とお寿司を食べに行きたくないのでしょうか…?
「『久しぶり』…?景、そう言って先週も寿司屋に行ったでしょう。少しくらい我慢を覚えたらどうですか?」
うっ…流石に2週連続でお寿司屋さんは厳しいのかな…
でも、私には姉様特攻のこのワードが…!
「私、姉様と一緒にお寿司食べたくて…だって姉様、最近怖い顔ばっかりでしたから…」
いじらしい顔で姉様を見つめれば完璧____って、あれ…?姉様、笑顔で私の肩に手を置いて…
「いだだだだだだっっっっっ!姉様、何するんですかっ!?」
「景…いくら私が貴女を甘やかしているからといっても、同じ手を何度も食らうほど私も馬鹿ではありません。今日のお寿司屋さんは無しです」
それだけ言うと、姉様は部屋を出ていった。
「えーっっっっっ!?そんなぁ…」
残された私がしゅん…と項垂れながら落ち込んでいると、姉様が仕方ないなと言った様子で私の前にスーパーで買ってきたのであろうお寿司のパックを置いた。
「何もお寿司屋さんばかりでなくてもいいでしょう、景。たまにはこうやって私達のお部屋でお寿司を食べる日を作りましょうか」
「…うんっ!」
姉様と笑い合いながら食べたお寿司は、今までのどんなものよりも美味しく感じた。

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不老エンドは誰も幸せにならない。

「景さん、貴女は夏蝶さんと永久の時を過ごしてみたいとは思わない?人生を共にしてきた誰よりも大切な存在と、世界が滅びるその時まで過ごしたいとは思わないかしら?」
その誘惑はとても甘美で、脳髄が溶けてしまいそうなほど魅力的な提案だった。
「お姉様と、ずっと一緒に…?」
"お姉様とずっと一緒"という言葉の耽美な響きに、私はすっかり籠絡されてしまっていた。
「えぇ、そうよ。景さんのいい返事を期待しているわ。それじゃ、私はこの辺で」

数日後、お風呂上がりの姉様にその内容を打ち明けると、姉様は猛烈に反対してきた。
「絶対にいけません!そんな上手い話なんてあるはずないでしょう!?それに…私は景に私のような苦しい思いをしてほしくないのです。景なら、分かってくれますよね…?」
普段の私なら姉様の言う事は全て受け入れることができるのに、この時だけは何故かできなかった。
「姉様の馬鹿っ!わからずや!もう知らないですっ!」
それだけ言い残して、私は部屋を出た。姉様が何か言っていたような気もしたが、私の耳に残ることは無かった。

数日後、某所にあるGEHENAラボを訪れた私は、研究所の所長である各務さんと"お話"をするに至った。
「今回は我が研究所でノスフェ ラトゥの被験体になって頂く事をご決断頂き、心から感謝申し上げます。しかし、この施術は成功する確率はお世辞にも高いとは言えません。最愛の方と今生の別れになってしまうかもしれませんが…よろしいのですか?」
各務さんの問いかけに、私は満面の笑みを浮かべて首を縦に振った。
「勿論大丈夫ですわ。姉様と共にいる時間が長くなる可能性が少しでも高くなるのであれば、私はそれに賭けたいと思っていますの」
各務さんは少し心配そうな表情を浮かべた後、契約書へのサインを促した。私は一通り目を通した後、契約書へサインをし、契約書を各務さんへ返した。
「ありがとうございます。では此方にお越しください」
各務さんに手招きされるまま私は薄暗い実験室へと通された。
____しかし、実験室に入った途端猛烈な眠気に襲われた私はその場で眠りに落ちてしまった。

…頭が割れる様に痛い。施術は、どうなったの…?
「あぁ、目を覚ましましたか。安心してください、施術は成功しましたよ。貴女は不老の存在になりました。代償として髪は脱色し、目の色が赤になってしまいましたがね。この報告は、今すぐ最愛の人にしに行くべきではありませんか?」
促すような各務さんの言葉に弾かれるように私は研究所を飛び出した。内側から響くような頭痛と強烈な目眩を堪えながら。

秋女に帰る道中、偶然見慣れた背中を見かけたので思わず声をかけてしまった。
「おやおや、姉様ではありませんか。そんなに項垂れてどうしたんですかぁ?」
「景っ!?…その、姿は」
嬉しそうに振り返った姉様は、次の瞬間絶望に染まりきった表情を浮かべていた。行方不明だった私が強化施術を受けて帰ってきたなんて夢にも思ってなかっただろうから。
「見てくださいよ姉様ぁ、不老不死になった私ですよぉ?どうですかぁ、美しいでしょう?」
愉悦に浸ったような笑みが零れてしまう私とは対照的に、姉様は静かに怒りに震えていた。
「景ェェェェェッッッッッ!!!お前は、もう私の妹なんかじゃないッッッ!ただの化け物だ!!!」
姉様に"化け物"呼ばわりされたことに一抹の悲しさを覚えつつ、"バケモノ"な私はヘラヘラと笑う。
「"化け物"だなんて酷いじゃないですか姉様ぁ…私、姉様からそんな冷たい言葉を投げられるとは思いませんでしたわぁ」
「景、あの時私が何と言ったか覚えてるかしら?…覚えていたら、こんな事にはなっていなかったのかもしれないのだけど」
姉様ったら、ほんとバカ。なーんにもわかってない。分からせてあげなきゃダメなのかなぁ…♡
「覚えてる訳ないじゃないですかぁ…♡今の私を構成しているのは"姉様への愛"、それだけですもの♪姉様も私と一緒に老いる事の無い体になりましょう?」
姉様は強い憎しみと共にcharmを私に向け、私は快楽と愛情を求めて姉様にcharmを向け、向かい合って戦闘態勢に入ったのだった。

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レヴァントゥリか美里視点

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メモ
Wunder
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超絶今更だけどバレンタインデーの話。

2月14日、世の乙女が想い人に贈り物を贈る日である。
ここ秋女でも、そんな少女達の会話に花が咲いていた。

1 月夜野快と天ヶ瀬陽の場合
昼休みに快に「陽いるかー?」と唐突に呼び出された陽は、快と共に陽の昼休みの居場所である生徒会室に来ていた。
「ほい陽、私からのバレンタイン!いっつも色々世話になってるしな!卒業前の最後の贈り物と思って、受け取ってくんねーか?」
そう述べながら快が陽に渡したのは、可愛くラッピングされた小袋。その場で開けようとした陽を制するように快は左手を突き出し、頬をポリポリと掻く。
「何故ですか?どうせ部屋も一緒なのですから、ここで開けようが部屋で開けようが変わらないでしょう」
「や、それは、その…やっぱ寮の部屋にいる時に見てほしいっていうか…」
露骨に赤面して俯く快を視界の片隅に置きつつ、陽は素早く袋の封を解いた。陽が中身を取り出してみると、恐らく手作りなのであろうマカロンが数個と市販のキャラメルが数粒。それを見た陽は赤面している快の耳元でこう囁いた。
「愛なら私がいつもあれだけ囁いているのに、まだ足りなかったのですか?それなら、今夜ありったけの時間を持って貴女に教えてあげましょう。私がどれだけ貴女を愛しているかを」
「〜〜〜ッッッ!?!?///」
まるで爆発しそうなほど赤面した快を見て満足そうな笑みを浮かべ、陽は生徒会室を去っていった。

2 楢木侑李と宮地浅妃の場合
「浅妃、ハッピーバレンタイン!」
寮から校舎に向かって登校している途中、侑李が浅妃に市販のチョコ菓子を申し訳なさそうに数個渡した。
「ごめんね浅妃、本当は手作りしたかったんだけど、テストとかで忙しくて…」
すると、チョコ菓子を受け取った浅妃も同様にバッグから同じチョコ菓子を取り出し侑李に手渡した。
「なもなも!わもおめさ手作りすべーと思ってらったんだばって、わもたんげ忙しかったはんでなも作れねくてらし…」
2人とも互いに手作りのお菓子を贈れなかったことに少し落ち込んでいたが、侑李がポンと手を叩いて浅妃の方を向いた。
「ねぇ浅妃、次の土曜日にお菓子作りしない?バレンタインの代わりって訳でもないけど、最近お菓子作り出来てなかったし!」
その提案を聞いた浅妃は嬉しそうに目を輝かせ
「そいだばいいな!んだば来週やるべ!」
と楽しそうに何を作るか考え始めた。
そんな浅妃を見た侑李は、少し寂しそうにマドレーヌの入った小袋をバッグの中にしまい込むのだった。

3 月岡夏蝶と月岡景の場合(※不老√ではない)
夏蝶と景が寮での夕食を済ませ、自室に帰ってきた。すると、景がおもむろに袋から何かを取り出した。
「姉様、ハッピーバレンタインですっ!」
景の両手にはキャンディが溢れるほど乗せられており、夏蝶は一瞬困惑するも、すぐにその意味を理解したのか嬉しそうに両手いっぱいのキャンディを受け取った。
「景は、私の事をこんなにも想ってくれていたのですね…これは私も何かお返しをしなければいけません」
それを聞いた景は慌てたように両手を振り、夏蝶がキッチンに向かうのを止めた。
「姉様、そんな事しなくても姉様からの『愛情』というプレゼントを私は常日頃からもらっています。姉様からの愛情という最高のプレゼントをもらっておきながら、これ以上を望むわけがないでしょう?」
それを聞いた夏蝶は嬉しそうに景の頭を撫でつつ、それに応えるようにこう返した。
「その気持ちはとても嬉しいですよ、景。ですが、もらったら返すのは人として当然の事です。あげたりもらったりして関係を維持し、一生の付き合いとすることが出来たらそれはとても素敵な事だと思いませんか?」
夏蝶の返答を聞いた景は目を輝かせ、夏蝶への愛情を示すかのように抱きついた。
「姉様、今日は一緒に寝ましょ!ね!」
「仕方ないですね…今日だけですよ?」
姉妹は揃って同じベッドに入り、電気を消して眠りについた。

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・Wunder
・入学式…???(未定)
・卒業式(同上)

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ガチャリという部屋のドアが開く音と共に、快がフラフラとおぼつかない足取りでベッドに倒れ込む。それを見た陽は苦笑しながら快の元へと歩み寄る。
「おかえりなさい、快。疲れているでしょうが、まずはお風呂に入ってきてください。このまま寝ては翌日の生活に差し支えます」
そこまで言っても何も返答がないのを訝しんだ陽が顔を覗き込むと、恋人はすぅすぅと可愛い寝息を立てながら夢の世界に沈んでいた。陽はそんな恋人の様子に頬を膨らませ、不満そうに独り言ちる。
「快の馬鹿…今日帰ってきたらいっぱい甘えさせてくれる約束だったじゃないですか…!明日起きたら朝一番にだいすきのぎゅーしてもらいますからね…!」
一通り不満を吐き出した陽は、再度恋人の寝顔を見つめていた。そんな陽だったが、突如として悪戯心が芽生えてきたのだ。恋人が疲労困憊で眠りに落ちた今だからこそ、キスをしてもバレないのではないかと。

「本当に起きませんね…よっぽど疲れていたのでしょう…」
恋人の頬をつんつんとつつきながら陽は少し嬉しそうに呟く。自分の名前を呼びながら蕩けきった顔で幸せそうに眠っている恋人を見た陽は、キスマークをつけようと首筋に顔を近づける。
陽がキスをしようとした瞬間、恋人は眠そうに目を開いた。そしてしばし状況を飲み込めずに目をしぱしぱさせた後、まるで収穫期のりんごかのように顔を赤くした。
「は、陽…!?なんで私のベッドに…!?」
「何故って、快が私との約束をすっぽかして寝てしまうからですよ?…とは言っても、快があと10秒長く寝ていたら私は快にキスできていたんですけどね?」
凛々しく微笑む陽を前に、快は気恥ずかしさで俯くことしか出来なかった。
#👤オリジナルリリィ雑談 message

glacial nymph
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「やだ…!もう、こっちに来ないで…!」
此処に意気揚々と乗り込んできたはずのリリィが、今では無様に醜態を晒しながら許しを乞うている。…惨めだ。
「駄目です。貴女が何故ここに来たのか喋るまで、この空間からは出れません。このままでは私の学業にも影響が出るので、さっさと喋ってくれると助かるのですが」
はぁ、と溜息を吐きながら私は怯える彼女に触れる。
「…ッッッ!!!い゛た゛い゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛!!!」
激痛に悶え苦しむ目の前の少女は、とても哀れだ。襲撃先がここじゃなかったら、生きて帰れたかもしれないのに。
そんな事をぼーっと考えながら悶え苦しむ彼女を見ていると、ぎいいと重い音がして扉が開く。誰だろう、と思ってそちらを振り向くと、天ヶ瀬会長だった。会長は特務部隊の少女をまるでゴミを見るような目で一瞬見た後、私の方を向いた。
「蒲原さん、何か情報は聞き出せましたか?」
「すみません天ヶ瀬会長、有益な情報は何も聞き出せていません。このゴミは案の定広瀬の人間だったようですが」
"ゴミ"という単語に反論しようとするのが見えたが、先程の激痛でそんな気力も残っていないようだった。
天ヶ瀬会長は三日三晩尋問した私を労うように肩を二三度叩き、退室するように促した。出口には同じレギオンの神薙さんが立っていたので、この後どんな惨劇が繰り広げられるかは想像に難くなかった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「それでは、貴女にはいずれかを選んで実戦をしていただきます。お世辞抜きでここの最高戦力である私と戦うか、私より僅かに劣る神薙さんと戦うか、はたまたその両方か。どれでも好きな選択肢を選んで下さって結構ですよ」
目の前の少女は怯えながら神薙さんの方を指さす。それが死に直結することなど露知らず。
「では神薙さん、憂さ晴らしを堪能して下さいね」
私がにっこり微笑みつつ神薙さんの方を向くと、彼女は獰猛な瞳に残虐さを湛えながら自身のユニーク機である"ニーズヘッグ"を持ち上げた。
「天ヶ瀬の姉御、今回俺に『手加減しろ』って言わねぇって事は…そういう事で良いんだよなァ?」
「えぇ。存分に破壊し尽くしてくださって結構ですよ」
"期待してますよ"という意味も込めて神薙さんの肩をやや背伸びしつつポンポンと叩くと、一瞬だけ主人に懐く犬のような可愛らしい笑みを浮かべていた。
私は神薙さんと広瀬のゴミを一瞥し、ヒラヒラと手を振りながらその場を後にした。
「それではお2人とも、ごゆっくりどうぞ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ッたく…コイツも俺の期待を裏切りやがった。やっぱり天ヶ瀬の姉御じゃなきゃ俺とは対等に戦えねえ」
顔についた返り血を拭いつつ、独り言ちる綾華。獰猛な瞳の見据える先には、一体何があるのか。

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メモ
カケタライイナ…+体制転換後
#👤オリジナルリリィ雑談 message

glacial nymph
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「会長!これ以上は無理です!後退しましょう!」
「馬鹿な事言わないで!ここで私達が後退したら、湯沢や横手の街にも被害が出るのよ!?」
悲痛そうな後輩からの叫びに、無線で怒鳴り散らす私の姿は酷く惨めに映っただろう。現状、戦況は圧倒的に劣勢だ。手数は多くなくとも私達の倍以上いるミドル級やラージ級、うようよと湧いてくるスモール級相手に、私達は防戦一方の戦いを強いられていた。
私は増援が来る前に討死か…せめて後輩達だけでも____なんて考えていたせいか、私はヒュージの攻撃が迫っていることに気づけなかった。スローモーションで迫るヒュージの腕にせめて一矢報いて死のうとアステリオンを振ろうとした瞬間、眼前のヒュージが跡形もなく爆ぜた。何事かと思って辺りを見渡すと、Silver Bullet____天ヶ瀬陽が斧型のcharmを振り抜いていた。
「すみません、遅くなりました。アヴニール、これよりラスヴェートの援護に入ります。皆さんは疲れているでしょうから、安全圏からの援護をお願いします」
彼女はそれだけ言い残し、私が礼を言う前に目にも止まらぬ速さで最前線へと舞い戻って行った。
「援護をお願いします」とは言われたものの、結果として私達が援護することは無かった。天ヶ瀬は5体ものラージ級を1人で捌き切り、他の面々もミドル級やスモール級を協力して撃破し、何事も無かったかのように帰還してきたのだから。見惚れてしまいそうなほど美しい動きに、何一つとして無駄のないcharm捌き。そして何より身体を操るセンスが私達とは段違いだ。「これが東北随一のリリィが統べる集団か…」と恐怖を覚える反面、自分もあの高みに挑戦してみたいと思う気持ちが芽生えてきていた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
"やっぱすごいよね、天ヶ瀬さん"
"私達凡人とは次元が違うって感じ?努力じゃどうにもならないってこういうことだよねー"
そんな称賛に見せかけた倦厭はもう聞き飽きた。「すごい」と思うなら何故努力をしない?何故少しでも天ヶ瀬に追いつこうとしない?
固く握り締めた拳を知ってか知らずか、後輩が心配そうに見つめてくる。
「会長…?」
「あぁ、ちょっと考え事をしてたの。皆疲れてるだろうし、一旦学校に帰りましょ?今日はゆっくり休まなきゃ!」
私はわざと明るく笑顔を作り、ラスヴェートの皆に帰還するように促した。

雰囲気を参考にした曲
https://youtu.be/43RngsPIUuU?si=c9kNdXfzkAxSIdPl

こちらのBGMは【商用・非商用】どんな用途でもご使用可能ですのでお気軽に!
................................................................................
楽曲のダウンロードは下のリンクから出来ます!
Downloading Songs

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.......

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「陽〜…この課題教えてくれよ〜…」
と天ヶ瀬陽の肩に寄りかかるのはLGヴァールハイト隊長で3年の月夜野快。彼女の手には少なくともJTB時刻表くらいの厚さの量の課題が握られていた。

陽は快を一瞥すると仕事に目を落とし、
「私は3年の履修範囲までの予習はしていません。私ではなく砺波さんに聞く方が早いかと」
と冷たくあしらい、再び仕事に取り掛かる。
諦めきれない様子の快は、陽の肩を掴みゆっさゆっさと揺さぶり
「たーのーむーよー…頼れるのお前しかいないんだよ〜…」
とダル絡みを続ける。
無視を決め込む陽に対して快がダル絡みを続けること10分、遂に陽が折れた。
「あぁもう!手伝えばいいんでしょう!?その代わり、あとで私の食べたいものを奢ってもらいますからね!」
と言うと快の課題の山を強奪するが早いか鬼神のような表情で快を見つめる鬼教官がいたのであった。

2時間半後____
そこには解き終わった課題の山と泣きながら机に倒れ込む快、菩薩のような笑みを浮かべる陽がいた。
「も、もう陽に課題手伝わせない…ひぐっ」
と泣いている快に対して、陽は
「残念ですね、私は楽しかったのですが…」
と笑っていた。

その後、快が陽に対して「課題を手伝って」と頼む事は無くなったそうだ。

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ある日、突如生徒会室に来るように呼び出された快。
(またなんかやっちまったんかなぁ…)
と思い、沈んだ気持ちで生徒会室の扉を開けると、案の定そこには冷たい眼差しで自分を見つめる陽がいた。
陽は快を見るや否や
「約束、覚えていますか?」
と単刀直入に切り出した。快が虚を突かれたような表情を浮かべると、陽は溜息を吐きこう言った。
「以前課題を手伝った際に、『あとで私の食べたいものを奢ってもらいますからね』と私が言ったのを忘れたんですか?私から言うのは図々しい女と思われそうで嫌だったのですが、貴女があまりにも話を切り出さないので忘れたのかと思いまして」
つらつらと毒を吐く陽に快が慌てて
「もちろん覚えてる!でもお前いっつも忙しそうだし、いつ誘おうかな〜って迷ってただけだ!」
と言い訳がましく発言を遮った。
「では今日私は暇なので、約束を果たしてもらえますか?」
にっこりと笑みを浮かべる陽に対して、快は頷くことしか出来なかった。

#

____では今日私は暇なので、約束を果たしてもらえますか?

陽のその言葉から30分後、陽と快は校門前に集合した。のだが____
「陽、お前なんで制服なんだ…?」
私服をスポーティーに着こなす快と対照的に、陽は30分前と同様制服を規則通りに着ている。快が訝しむのも無理はなかった。
「別に私がどんな服を選んでここに来たっていいでしょう?それに、ヒュージが出る可能性を考えれば最適なのは制服で外出することです」
陽のいつも通りツンケンした受け答えに快は若干呆れつつ、
「おうそうか、じゃあイオン行くぞ」
と言い歩き出した。少し虚をつかれつつ、陽も快についていった。

快と陽が向かった先は、奥羽本線・新屋支線の終点である新屋駅だ。ここから秋田駅まで電車に乗り、秋田駅からイオンまでバスで行くのである。古めかしい駅舎の残る新屋駅ではあるが、既に無人化されて10年以上が経っている。布の降ろされた窓口跡に哀愁を感じつつ、ちゃちな券売機で秋田までのきっぷを買い、止まっていた電車に乗り込む。電車はまるで陽達が乗るのを見計らったかのように、秋田へと向けて短い旅路についた。

秋田駅に着いた2人は駅を出て、バス乗り場へと向かった。
「これ、どれに乗ればいいんだ…?」
と快が辺りを見渡していると、陽が
「13番乗り場からイオンへのバスが出ています。13番乗り場は左前方向ですよ、行きましょう」
と快の服を引っ張って13番乗り場へ向かった。
快は(これじゃまるで私が妹みたいだな…)と思い、服を引っ張られながら13番乗り場へ向かった。

#

イオンに着いた2人は、他のエリアには目もくれずフードコートへ向かった。____陽が早足で向かったせいで、快もそれに合わせざるを得なかったというのが正しいところだが。
陽が指差した先には、安くて美味しい緑と赤のレストランがあった。意表を突かれた快は、思わず陽とレストランの看板とを交互に二回ずつ見つめ、陽にこう問いかけた。
「陽、お前ここでいいのか…?もっと美味い所とかあるぞ…?」
恐る恐る問いかけた快に、陽は「何を聞いてるんだ」と言った様子でこう返す。
「はい、ここで大丈夫です。たまには肩の力を抜きたいので」
「そうか…?それならいいんだが。ともかくまずは受付を済ませてておかないとな」
快は不思議に思いながらも受付を済ませ、2人は案内された席に着いた。興味深そうにメニューを眺める陽は、まるで5歳か6歳くらいの小さな子供の様だった。ここ3年は確実に期待と重圧で押しつぶされそうだったであろう陽にも、こんな可愛いところがあるんだな____快がそう思っていると、陽が少し怒り気味にメニュー表を突きつけてきた。
「さっきからボーッとしてどうしたんですか?私は決めてしまいましたので、月夜野さんも早く決めてしまってください」
いつもの様なその言葉に苦笑しつつ、快も注文するメニューを決めた。
「すいませーん!注文いいですかー」
快が手を上げ店員を呼ぶと、笑顔を浮かべた店員が駆け寄ってきた。
「ご注文は何になさいますか?」
快が陽に目配せすると、陽が少しソワソワしながら
「この『チーズたっぷりドリア』と『モッツァレラチーズピザ』をお願いします」
と注文した。店員はそれを機械にメモすると、今度は快の方を向いた。
「じゃあ私は『カルボナーラ』と『まろやかコーンスープ』でお願いします」
と快も注文を済ませると、店員は同様に機械にメモをし、2人の注文したメニューの確認をして裏へと戻っていった。

待つこと20分、2人の前に料理が運ばれてきた。料理を目の前にした陽は目を輝かせながらスマホで何枚も写真を撮っていた。快が温かい眼差しでそれを見つめていると、陽は撮るのをやめて少し顔を赤くして
「…なんですか。私がこういう事してたら変ですか?」
と睨み据えた。快は苦笑しながら
「そんな事ないぞ?お前も年相応の反応するんだなぁ…と思って嬉しくなっただけだ」
と答え、陽に冷めない内に料理を食べるように促した。
____「「いただきます」」

#

ふぅふぅと息を吹きかけてドリアを少し冷ます陽は、さながら可愛い子供のようだ。スプーンいっぱいに掬ったドリアを嬉しそうに口に含み、美味しそうに頬張る。
「おいひぃ〜…ふふ」
肩の力抜けた陽は、高校生らしい快活な笑顔を浮かべていた。食べ始めてから少しして、快が一口も食べていないことに気づいた陽はドリアを食べる手を止めた。
「どうしたんですか?月夜野さん。早くしないと冷めてしまいますよ?」
問いかけられた快は少し言いにくそうに切り出した。
「私ら3年が陽に頼りっきりなせいで、陽にずっと辛い思いをさせちまってすまなかった。これはせめてもの償いなんだ。…せめて『普通の高校生らしいこと』をお前に体験してほしくてな。ヒュージ討伐に追われるだけじゃない高校時代を、お前に過ごしてほしいんだ」
快の懺悔を聞いた陽は、深くため息を吐くとスプーンを置き、こう答えた。
「私は頼られて普段以上のポテンシャルを発揮出来るタイプですし、辛い思いをした覚えもありません。むしろ皆さんに辛い思いをさせずに済むのなら、私は進んで心を痛めつけに行くでしょう。ですが…その心遣いは感謝します。私1人では、いつか心も身体も壊れてしまっていたでしょうから」
その言葉を聞いた快は、嬉しそうに笑顔を浮かべ、陽の頭をポンポンと叩いた。
「ありがとな、陽。頼りない先輩で申し訳ないが、これからもよろしく頼むぜ!」
「勿論ですよ、月夜野さん。こちらこそよろしくお願いしますね」
言葉を交わしあった2人は、それぞれの食事に戻っていった。

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「んぅ…」
いつもは広いはずのベッドがやけに狭く感じたので目を開くと、そこにはこの学校の生徒会長であり、私の恋人である陽が、小動物の様に体を丸めてスヤスヤと眠っていた。
驚いて思わず声を出しそうになったが、咄嗟に口に手を当てたことで何とか陽を起こすことは回避出来た。

でも、なんで陽が私のベッドに…?
グルグルと思考を巡らせた結果、私はひとつの可能性にたどり着いた。昨夜は陽と一緒に過ごす約束だったのだが、特務部隊の襲撃があったこともあり、私は疲れてそのまま寝てしまったのだ。そしてそれに腹を立てた陽は、せめてもの仕返しとして何か私にイタズラをした後、私のベッドで一緒に寝ることにしたのだろう。
「それにしたって、わざわざ私のベッドで寝なくたって…」
ボソリと呟いたその声が陽の耳に届いたのか、陽が眠そうに体を起こす。
「こころぉ…だいすきのぎゅー、して…?」
なんだこの生き物は。普段の凛々しく美しい姿からは想像もできないくらい可愛いじゃないか。こんな可愛い陽は、誰にも見せたくない。私だけの秘密にしておきたい

そんな事を考えていると、陽が少し怒ったように両手を私の方に向け、ハグしてもらいたいと言った様子でこちらを見つめてくる。
「こころ、だいすきのぎゅー。して」
有無を言わさないその圧に負け、私は陽を恐る恐る抱きしめた。
「快、なんで私が少し怒っているか。分かりますよね?」
「昨日帰ってきて、陽と話さないでそのまま寝たから…かな」
私が観念して自分の犯した罪を白状すると、陽は満足そうに私のことを抱き返してきた。それもとても優しく、まるで母親が我が子を抱擁するかのように。
「次からは気をつけてくださいね?もしまた同じ事があったら、快が私に堕ちても愛撫し続けて私だけの可愛い可愛い所有物に仕立てあげてしまうかもしれません」
「ちょ、それって…!?というか、私はもう陽のものだし…」
「おや、嬉しいことを言ってくれますね。それでは後で沢山可愛がってあげるとしましょうか」
その時の陽は、声色がいつもの陽ではなく私を可愛がる時の陽になっていた。私はこれから何をされてしまうのかをおぼろげながらに理解し、そして期待してしまったのだった。

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メモ
月岡ツインズお出かけデート
フレデリカの過去の話

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突如山中に響き渡った通信希望の音に一瞬目を見開き、即座に通信機を取り出した天ヶ瀬だったが、相手方から聞かされた内容に呆れたような表情を浮かべた。
「…GEHENAラボ側が武装蜂起、ですか。」
ある程度予想通りだ、といった顔で天ヶ瀬は今後のやるべき事について思考を巡らせる。生徒会長としての立ち回りや尋問時の最適な弁解については帰ってから考えても遅くはないだろう。
幸いにもラボ側が放ったのであろう特型の処理については粗方終わっていたため、校舎に急行して暴徒鎮圧に当たっても何ら支障はない。しかし、"偶然"秋女居合わせたスヴァルトアルフヘイムに任せるのもまた一興だろうと思い、彼女は手元にあった通信機を手に取る。
「天ヶ瀬ですが、そちらの指揮はリリアンデさんに一任します。どうにも、我々が戻るまで貴女方にお待ち頂いては馬鹿共が暴徒と化してしまいそうですから。」
それだけ言うと一度通信を切り、隊員達から少し離れた位置で今度は別の人物へと指示を飛ばす。
「篠崎さん、フェアツヴァイフルングに対して生徒会長としての命令です。新屋研究所の最深部に突入し、これまでの実験に関するデータを完膚なきまでに破壊し尽くしてください。幸い、罪を擦り付ける相手は何人もいますからね。貴女方が多少研究所内で破壊活動をしたとて、"武装蜂起の鎮圧"という御旗には逆らえません。存分に破壊して頂いて結構です。」
「了解しました。」という感情の見出せない声と共に通信が途切れたのを確認すると、天ヶ瀬は一つ息を吐いて隊員達の元へと戻っていった。

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明るく輝く北東北の一等星・天ヶ瀬陽独占インタビュー!
以下本文

取材を希望している方、というのは……貴方でしょうか。……今更ですが、本当に私の取材をするのですか?

▶「はい!ぜひ天ヶ瀬さんの事を取材させて頂きたくて!」

……そうですか。それでは、先に私から1つ質問させてください。貴方は、私のことをどこまで知っているのですか?

▶「多くの生徒をまとめあげる高いカリスマ性、北日本随一と謳われる隙のない戦いぶりはワールドリリィグラフィックで何度も見ています。その天ヶ瀬さんの活躍をより多くの人に伝えたいと思い、取材の依頼をさせていただきました」

なるほど、私の事はある程度調べあげている……という訳ですね。それだけでは満足出来ずに取材に来てしまった、と……。あいにく急に生徒会の仕事が入ってしまったので、仕事の片手間ではありますが、できる限りお答えしようと思います。それでは、今日はよろしくお願いします。

▶「はい!こちらこそよろしくお願いします!」

▶「それでは、まずは自己紹介をお願い出来ますか?」

私は私立秋田心理臨床科女子中学・高等学校2年、生徒会長の天ヶ瀬陽です。レギオンは対ヒュージ専門のアヴニールで、隊長も務めています。

▶「自己紹介ありがとうございます!生徒会長だけでなく、レギオンの隊長まで務めていらっしゃるなんて多才ですね……!では弊誌の読者さんからの1つ目の質問なのですが、『何故天ヶ瀬さんは百合ヶ丘等の名門ガーデンではなく、地元のガーデンを選んだんですか?天ヶ瀬さんの戦績なら引く手数多だったと思いますが……』だそうです。理由、教えていただけますか?」

何故秋女を選んだか、ですか……。そんなの、『故郷を守りたいから』に決まっています。私の故郷を……いえ、私達の故郷を、ヒュージごときに奪われたくはありませんでしたから。

▶「なるほど、『故郷を守りたい』という強い思いで秋女への入学を決めたんですね。それでは次の質問なんですが、天ヶ瀬さんは中等部時代から数多のヒュージを倒してきたと聞いています。ご自身で思う『強さの秘訣』があれば教えて頂けますか?」

強さの秘訣、ですか……?私には、これといって秘訣は無いのですが……。訓練も他の人と同じか少ないくらいですし。特段人と違う訓練を積んだということはありません。||……無断出撃を繰り返したりはしましたが。||

▶「周囲と同じかそれよりも少ない訓練時数であれだけの戦果を挙げているとは、まさに『天賦の才』という言葉がピッタリですね(最後の一言は聞かなかったことにしておきましょう……。怨嗟が一瞬だけ膨れ上がってましたし)!それでは3つ目の質問です。『生徒会長として心がけている事があれば教えてほしいです』との事ですが、どのような事を心がけていらっしゃいますか?」

生徒会長として心がけていることは、『生徒の模範となるような戦果を挙げる』、『後輩の育成に尽力する』、『公私混同を避ける』ですかね。生徒会長が率先して戦果を挙げなければ、私達の故郷は守る事が出来ません。また、私だけがノウハウを持っていても意味がありませんので、後輩達へ技術の継承をしていく事も大事だと思っています。それと、最後についてですが……私には血盟を結んだ擬似の姉がいるのです。彼女とはプライベートでも仲良くさせていただいているのですが、『直接的な愛情表現は嬉しいけど、公私混同は避けよう』と彼女の方から言われてしまいまして……(苦笑) それ以降は、できるだけ寮の部屋で仲良くするようにしています。

▶「なるほど、色々な事に気をつけながら生徒会長としての任を務めているのですね!血盟についての話が出てきましたが、これについても質問が来てましてですね。『擬似姉様(おねえさま)と血盟を結んだ経緯について教えて下さい』って質問が来てますが……」

ッ、それは……/// 少し、恥ずかしいですね……。まぁ……隠すものでもないですし、話しましょうか。私、中等部3年の頃にちょっとしたイジメを受けていたんです。そうして人間不信になりかけていた私の心を、彼女は優しく包み込んでくれました。その後、役員選挙で副会長に当選した彼女と共に生徒会の仕事をこなしていく内に、彼女の事がとても大切な人であると思えるようになっていったのです。そうして私は彼女に血盟の申し入れをし、無事に受理されたという訳です。

▶「心の支えとなった年上の先輩との素敵なエピソードがあったんですね〜!私も、そんな先輩と出会ってみたかったなぁ……。おっと、つい私情が……苦笑 では、質問は以上となります。本日はお忙しい中貴重な時間を割いて頂き、誠にありがとうございました!」

こちらこそ、ありがとうございました。

断片スレと同じ文章です。再掲。

glacial nymph
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凍雨がガシガシと頭を掻きながら向葵の元へと歩み寄り、「来い来い」とジェスチャーで示す。それに気づいた向葵は(またか……)と半ば呆れたような表情を浮かべながら凍雨の元へと向かった。
「言いづれェんだが、また千冬を怒らせちまって____」
「あーわかったわかった。で、今度は何やらかしたんや?話くらいは聞くけん、ウチの部屋に来いや」
「お、おう……」
(こいつ言動の割には優しいんだよな……)と思いながら凍雨は向葵の後ろをゆっくり着いて行った。

「で、今日は何やらかしたんや。どうせまた千冬の琴線に触れるような事言うたんやろ?」
呆れた様子で問いかける向葵に、凍雨は必死に両手を振って弁明しようとする。
「違ェよ!今日はアイツに誕生日プレゼント何が欲しいか聞いただけだっつの!俺が何欲しいか聞いたらアイツが勝手に怒ってきただけで……!」
それを聞いた向葵は千冬に同情するような表情を浮かべ、凍雨の肩をポンポンと叩いた。
「あのな、姉からもらうプレゼントなら妹はなんでも嬉しいんや。それがサプライズなら尚更な。多分千冬もそれを期待してたんやと思う。でも凍雨、アンタはそれを自分からぶち壊してしもた。千冬が怒るのもウチはわかるけどな」
それを聞いた凍雨は一瞬驚いたような表情を浮かべ、千冬のことを考えたのか少し悲しそうに俯いた。そんな凍雨を励ますように向葵はわざと明るい声で
「さー千冬の所行くで!謝るなら早い方がええって言うしな!ウチも付き合うたるけん、一緒に謝ろや!」
と二度手を叩きながら言った。凍雨もそれにつられて顔を上げ、どこか晴れ晴れとした表情で一歩を踏み出した。

その後、仲直りした凍雨と千冬が仲良くイオンでお買い物をしたお土産話を耳にタコができるほど聞かされて向葵がうんざりすることになるのはまた別の話。

glacial nymph
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「陽、ロネスネスの人達が来たらしいんだけど、時間空いてるか?流石に出迎えなしは失礼だし……」
快が生徒会室のドアを開けるなり息を切らして用件を述べると、陽は(またか……)といった様子で珍しく表情を歪ませる。いくら秋女が反GEHENAに鞍替えしたとはいえ、Sランク相当のレギオンにこう何度も非公式に何度も訪問されると、こちらとて神経を消耗させられる。陽は内心苦々しく思いながら席を立った。

「ようこそ、ロネスネスの皆さん。こんな僻地まで御足労頂きありがとうございます。本来であれば私達から出向かないといけないのですが____」
陽の口からつらつらと述べられる社交辞令に快が舌を巻いていると、"船田ツインズ"の妹の方である純が耐えきれないといった様子で口を開いた。
「美辞麗句は要りませんから、早く燈を案内してくれませんこと?」
苛立ちを隠せない妹に追随するように、姉の初も
「社交辞令は嬉しいのですが……燈ちゃんのためにも早く案内してくれると嬉しいですわね」
と苦言を呈した。船田ツインズ双方から苦言を呈された陽は表情一つ変えずに「失礼しました」とだけ言い残し、踵を返して歩き出した。

「おい天ヶ瀬……陽先輩、なんでコイツら……ロネスネス?の人達がここにいるんだ……ですか」
生徒会室に呼び出された亜蓮は、慣れない敬語に途中つっかえつっかえしたりロネスネスに無礼を働いたりしつつ、陽に「何故ロネスネスが秋女にいるのか」と問うた。それに対し、陽は一切表情を変えず、亜蓮の方すら見ずにこう答えた。
「氷室さん、他校の方々に『コイツら』呼ばわりは感心しませんね。あとで敬語の指導を受けてもらいます。それと、ロネスネスの方々がここに来た理由ですが……司馬さんが『どうしても亜蓮に逢いたいのですわぁ』と仰っていたからだと聞かされています」
それを聞いていた赤髪の少女____司馬燈が動揺した様子で陽に「『亜蓮には言わない』って言ったでしょう……!」と赤面しながらやや憤った様子を見せるも、『憧れの人の前』であることを思い出したのか、咳払いをして取り繕ってみせた。陽から理由を聞かされた亜蓮が燈の方を向くと、燈らしくないしおらしさでモジモジと手を小さく動かすばかりだ。それを見かねたのか、やや心配そうに初が燈に声をかける。
「ほら燈、皆さんを待たせるのは良くないでしょう?用件は手早く伝えないとダメですよ」
その言葉でようやく踏ん切りがついたのか、燈は亜蓮の方を向いた。
「亜蓮、私と模擬戦をしてくれませんことぉ?最近腕が鈍ってしまって仕方がありませんの」
こら、燈____初がそう口を開く前に、亜蓮が口を開いていた。
「おう、いいぜ。言っとくけど負ける気なんてさらさら無ェからな?お前も本気でかかってこい」
それだけ言い残し、亜蓮は意気揚々と生徒会室を出ていった。それを追うように燈が出ていき、最終的には船田ツインズと陽だけが残された。
「天ヶ瀬さん、私達も貴女に模擬戦を申し込んで宜しいかしら?"Silver Bullet"の実力、是非お目にかかりたいですもの」
「えぇ、勿論です。此方としてもあの船田ツインズと模擬戦をさせてもらえるなんて願ったり叶ったりですから」
____闘志の炎が五つ、それぞれの心の内で燃え盛る。

glacial nymph
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ぐ!の世界線です。その割に言動が不穏とか言わないでなんでもしますから
解釈違いがあったら遠慮なくぶん殴りに来てください

天ヶ瀬様は素晴らしい方です。どんなに相手と表面上親しかろうと、不要とわかれば直ぐに切り捨てられる鋭い判断力を持っています。類稀なる観察眼に、北日本随一と称される戦闘能力の高さ。この方を完璧と呼ばずして、誰を完璧と呼ぶのでしょうか。
失礼、話が逸れました。私の全ては、私が敬愛してやまない天ヶ瀬様に捧げるのです。敬愛する天ヶ瀬様の為ならば、私は喜んで自らの手を穢すでしょう。

____私は今日も天ヶ瀬様から仰せつかった任務をこなすべく、校舎内を歩いていた。すると、見たこともない俗物が2匹、視界内に入り込んでしまった。両方とも幸せそうな色をしていたので、あそこに神薙さんを呼び出したら面白いことになるんだろうな。などと不躾な考えを抱いてしまった。
「……あんな俗物共と天ヶ瀬様は違う」
ふと自らの口から零れ落ちた言葉を耳が捉え、自分に少し驚いてしまった。いつの間に私はここまで天ヶ瀬様に心を絆されていたというのだろう。あの赤髪に目をつけられた時?それとも、血盟を結んだ時?何れにせよ、私の心は随分と天ヶ瀬様に染まってしまったようだ。苦笑しながら天ヶ瀬様に集合場所として指定された生徒会室へと向かった。

生徒会室の扉を開けようとすると、中から天ヶ瀬様と月夜野様の会話が聞こえてきた。大方、来月にある体育大会に向けての打ち合わせでもしているのだろう。そう思って扉を開けると、案の定天ヶ瀬様と月夜野様が熱心に体育大会の計画を練っていた。例え月夜野様が相手であろうとも、『表向き』の天ヶ瀬様だ。……いや、違う。何かが、おかしい。
「……色が、違う」
今の天ヶ瀬様の色は、他の俗物を相手にしている時の冷徹で寒冷な色ではなく、温かく柔らかい愛情に包まれたような色をしている。
……いつも笑顔であっても、心の底が冷徹であることが天ヶ瀬様の凄い所だと思っていたのですが、まだまだ理解が足りなかったようですね。より天ヶ瀬様への理解を深めていかねば……

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柊華の過去を書くのに1ヶ月かかりました。書きたい書きたいとは思ってたんですが、なかなか文章が思い浮かばず難産でした。原作リリィの口調崩壊が地雷ならそっ閉じしてあげてください。

||殺伐とした空気が漂うGEHENAの研究所に、「侵入者あり」を知らせるブザーが響き渡る。すると、1人の研究員が舌打ちをしながら少女を檻から引きずり出す。
「おい、柊華だったか。仕事の時間だぞ。お前は実験してもろくに成果が出ねえんだから、せめてこの時くらいはまともに働け」
柊華と呼ばれた少女は震えながら首を小さく横に振ったが、研究員に数発殴られると怯えるように走って部屋を出ていった。
「チッ……あのクソガキ、無駄な知恵つけやがって。後で帰ってきたら首輪に爆弾でも仕込むかね」
研究員がそう独り言ちると同時に、部屋のドアが轟音と共に破壊された。
「あんッのクソガキ……何も出来てないじゃねえか……!」
もっと早く成績不良を生贄に捧げておくべきだったと思う研究員だったが、その判断は既に手遅れ。抵抗の甲斐なく全員が捕縛されたのだった。

~~~~~~~~~~~~~~~
「うぅ…こわいよぉ…」
泣きべそをかきながら研究所の薄暗い廊下を小走りで駆ける柊華の前に、大きな武器を構えた見知らぬ2人の少女が立ち塞がった。
「う、うぅ……!おねーさんたち、とおっちゃ……だめーっ!」
「何、この子……この場にいるだけで目が吸い寄せられる感じがする……!」
「碧妃、この子のことは気にしないで一旦奥に行こう。皆と合流しなきゃいけないしね」
その会話を聞いた柊華は、金髪の少女の服をぎゅっと掴んで先に行かせまいとする。
「だめー!おねーさんたち、いっちゃだめなの!」
服を掴まれた金髪の少女は身長差を活かして凄むような笑みを浮かべ、柊華を壁際に追い込みつつ問いかけた。
「どうしてだい?君はここの人達に酷いことをされているんだろう?現に今だって血が至る所から出ているじゃないか。なら、その支配から抜け出そうとは思わないのかい?」
「で、でも……けんきゅうしゃのおじさんに『従わないと痛いことするぞ』っていわれたから……!もう、いたいのはいやなのッ……!」
柊華が金髪の少女から目を逸らしながら答えると、今まで黙っていた碧い髪をした少女が研究員のいる方へと走っていった。それを見た柊華が碧い髪の少女を追わんと動こうとするも、金髪の少女に至近距離で圧をかけられては動けるはずもなかった。
「そうか……君はここの人達に随分酷いことをされてきたんだね。でも、それも今日で終わりだ。ここは今から危なくなるから、私と一緒に散歩でもしないかい?」
「おそとにでれるの……!?」
柊華は目を輝かせて金髪の少女についていった。しばらくすると、目の前には無残に壊された研究所のドアがあった。金髪の少女は優しく柊華を抱き上げ、研究所から1歩外に踏み出した。外はもう暗く、ここがどこなのかを今すぐ知る術は無かったが、さざなみの音が聞こえることから海の近くなのであろうことは柊華にもわかった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
柊華達が研究所を脱出してから少し経った頃、ぽつりと柊華が呟いた。
「おねーさん、わたし、これからどこにいくの……?」
「君かい?君は……私達の通う学院で保護することになるかな。安心してくれ、もう君を危ない目に遭わせないと約束するよ」
すると、柊華は目を輝かせて金髪の少女に抱きついた。抱きつかれた金髪の少女は照れつつも、柊華を安心させるように優しく抱き返した。
「そんなに褒められると、照れちゃうな。……そういえば、まだ名前を教えていなかったね。私はロザリンデ。名前が長いから『ロザお姉さん』とでも呼んでくれたら嬉しいな」
「ロザおねーさん……!かっこいい……!」
「それじゃ、『新しいお家』に行こっか!きっと、皆喜んでくれるよ」
こうして柊華は百合ヶ丘女学院に保護されたのだった。めでたしめでたし。||
#1219600967679610931 message

glacial nymph
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コンコン、と部屋の扉を叩く音がした。こんな朝早くに誰カナ……と思いながら眠い目を擦って扉を開けてみると、笑顔の中に怒りを隠しきれないアラヤお姉様が立っていた。
「ミカエラ?貴女、前回のテストで赤点があったそうじゃない」
ギクリ、と思わず目線を逸らしてしまう。隠蔽は完璧だったはずなのに、どこから漏れたんだろう。アラヤお姉様を慕っている同じクラスのあの子かな……なんて考えるも、「赤点を取ってしまった」という事実は消えるはずもなかった。

「ゔぅ……」
「全く、普段からあれだけ『毎日コツコツ勉強しなさい』と言い聞かせていたと言うのに。私の忠告を無下にした罰は重いわよ?」
「ハイ……」
ドア前での一悶着を経て、アールヴヘイム控え室に連行され、全教科の点数を開示させられた私は、アラヤお姉様と一緒に勉強に取り組んでいる。元々勉強より体を動かす方が得意なワタシにとっては、1時間が5時間に感じるほどの苦痛だった。特に古典なんてモウ……!単語の意味を調べるだけでも大変なのに、「活用形」とか「助動詞」とか意味のワカラナイことを一気に言われて頭がパンクしてしまいそうデシタ!!!

「ツ、ツカレタ……」
「よく頑張ったわね、ミカエラ。あとは追試の日まで私特製の単語帳を見て復習すれば、満点とは言わずとも9割は取れるはずよ?」
「ウゥ……頑張リマス……」
ぐったり机に突っ伏すワタシとは対照的に、アラヤお姉様はマリア様のような優しい笑みを浮かべていた。
コレは……満点取らないと、アラヤお姉様に怒られる……!?

「アラヤお姉様、見てクダサイ!93点です!」
「流石私のシルトね、やればできるじゃない。あれだけやっても赤点だったら、3日間勉強漬けにしてたところだったわ。よかったわね、ミカエラ?」
「ハ、ハイ……」
次からは、もっとちゃんとテスト勉強しようと思イマシタ……。あんな勉強漬けなんて、モウ懲り懲り……。

glacial nymph
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月夜野快生誕記念SS

今日は快先輩の誕生日!好きって思いは……伝える前に、届けられなくなっちゃったけど。それでも、いつもお世話になってるんだし、お菓子くらいなら作っても不自然じゃないはず!よーし、頑張るぞー!

……お菓子のレシピって、どれもざっくりしすぎじゃない?「さっくり混ぜる」とか、「生地がもったりしてくる」とか、抽象的な表現が多すぎてなんにもわかんないよ……!でも、快先輩に喜んでもらうためだし頑張らなきゃ!まずは、料理とか得意そうな剣城ちゃんに連絡をとって、と____
「もしもし剣城ちゃん、ちょっといい?」
「京ちゃんじゃん、珍しいね!いきなりどうしたの?」
「えっと、ちょっと困っている事案があってね。折り入ってご相談したく……」
「なーに、急に堅苦しくなっちゃってどうしたの?京ちゃんのことだから、きっと快様のことでしょ?」
「うぐ……」
電話越しから聞こえてきた剣城ちゃんの指摘に、私は思わず声を詰まらせた。図星すぎる。そんなにわかりやすい声色だったのかなぁ……。そんな私の心中を知ってか知らずか、剣城ちゃんは電話越しに快活な笑い声を聞かせてくる。
「そんなのすぐわかるよ。京ちゃん、快様のことをすっごく大切に思ってるのがよくわかるもん。だから、快様のお誕生日に何かお返しがしたいんでしょ?」
「え゛っ゛!?」
剣城ちゃんに電話をかけた目的どころかその先まで見透かされた私は、思わず自室で大きな声を出してしまった。
「あぁ、そういえば今日って快様の誕生b」
「わー!!!わーーー!!!!!違うの!!!快先輩にお菓子作ってプレゼントしたいなとか日頃の感謝を伝えたいなとかじゃなくてね!?!?……あ」
「……京ちゃん、混乱しすぎじゃない?まぁいいや、京ちゃんの部屋行くからちょっと待っててね!」
苦笑気味に剣城ちゃんが発した一言と共に通話が切られ、後には放心状態の私が残されるだけだった。

「なるほどね、快様が誕生日だから手作りのお菓子で感謝の意を伝えたいと」
「そうなんだけど、レシピがどれも難しくて……」
「なるほどね、京ちゃんはどれ作りたいとかある?」
「食べてもらいやすそうだし、クッキーかな……」
いじいじしながら言い訳する私とは正反対に、剣城ちゃんはてきぱきとお菓子作りの準備を始めていた。
「よし、それじゃ私と一緒にクッキー作ろっか!今ならまだ間に合うはずだよ!」
「……うん!」
それからというもの、私は剣城ちゃんに手伝ってもらいながらなんとかクッキーの生地を作り、焼き上げることができた。袋詰めもやったし、あとは渡すだけ……!

「快先輩、どこだろ……」
「うーん、いないねぇ。この時間なら控え室にいるって聞いたんだけど」
時間が過ぎるにつれて、私の心の中を焦りが覆い始める。校舎内のどこを探しても、快先輩は見つからない。手分けして探してみたけど、やっぱりどこにもいない。あと探してないのは____
「生徒会室だけ、か……。どうしよう……剣城ちゃんにいっぱい手伝ってもらったのに、これじゃ合わせる顔がないよ……」
ふと歩みを止めた私の瞳からは、涙がぽろぽろ零れてきてしまった。一度決壊した涙腺は留まることを知らず、瞬く間に私の視界は涙で歪んでしまった。
「クッキー、渡したかったなぁ……」
そんな私の矮小な呟きは、誰に聞かれるともなく溶けていく……はずだった。
「京!こんな所で何してるんだ?暗い所にいたら危ないだろ?」
「快、センパイ……?」
聞き慣れた「憧れの人」の声に、私は泣いていたことも忘れて快先輩に駆け寄った。
「快センパイッ!!!」
「うわ!?京お前……顔ぐしょぐしょじゃないか!ほら、ティッシュやるからまずは顔拭け?それと、これは……クッキー、か?」
もらったティッシュで鼻をかみ、涙を拭い終わった私は、快先輩にこれまでの事情を説明することになった。
「……なるほどな!私の誕生日が祝いたくてクッキーを手作りしてくれたのか!ありがとうな、京!」
「でも!私だけじゃなくて剣城ちゃんも手伝ってくれたから……!」
「そっか、それじゃあこのクッキーは3人で食べないか?私も剣城にお礼が言いたいし!それと……ありがとうな、京。京からもらったクッキー、大事に食べるからな」
「……!はい!誕生日おめでとうございます、快先輩!」
きっと、その時の私は今年1番の笑顔だったと思う。だって、憧れの人に誕生日プレゼントを笑顔で渡すことができたんだから!

glacial nymph
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「誕生日おめでとうございます、快」
私の恋人である天ヶ瀬陽は、それだけ言うと視線を書類に戻してしまった。
「なんだよ陽、つれねーなー!恋人の誕生日だぞ〜?もっとこう祝う気持ちを全面に出してもいいんじゃねーのー?」
ゆっさゆっさと揺さぶると、陽は鬱陶しそうに顔を顰めた。
「私にはやらなければならない仕事があるんです。快もダル絡みする暇があるなら少し手伝うくらいしたらどうです?」
「お、おう……」
何故か今日は言葉の棘が一段と鋭い。何かやらかしちまったかなぁ……と考えつつも書類の整理を進めていると、陽が席を立ちつかつかとこちらへ歩いてきた。
「快、何故私がここまで不機嫌なのか解りますか?」
「……いや、わかんねえ。私の行動で不快にさせたのなら謝るし、償いはするつもりだ。だから、何が原因なのか教えてくれないか」
私が頭を下げてこう述べると、陽は不機嫌そうに頬を膨らませて
「……今日一日、私以外の人といっぱい話しましたよね?『今日は快の誕生日だから私が1番多くお祝いする』って言ったのに、それを忘れたかのように沢山の人に話しかけられて……!」
と不満を顕にした。そして陽は私の抵抗を意に介さないほど強い力で生徒会長用の机に押し倒し、強引に私の唇を奪った。
「!?!?!?」
私が目を白黒させながらじたばたともがく間も、陽は唇を離さなかった。永遠にも思える接吻が終わったのは、それから数刻後のことだった。
「急に何すんだよ!?酸欠で危うく天国行きになるところだったぞ!?」
「何って……『マーキング』、ですが?『快は私の恋人だ』と周囲にわからせなければ、どんな泥棒猫が出てくるやも解りませんから」
相変わらず感情の読めない陽から述べられた『重すぎる愛情』に、私は苦笑するしかなかった。
「大丈夫だ、私はどこにも行ったりしないさ。ずっと陽と一緒だよ」
私がそう言って抱きつくと、陽も安心したように抱き返してきた。ここだけ見れば年頃で可愛いんだけどな……なんて思いつつ、恋人と誕生日を迎えられたことに感謝しながら私達は寮の部屋に戻り、それぞれの布団で眠りについた。

glacial nymph
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「んぅ、もう朝……?って桜月妃様!?なんで隣に……!?」

「なんでって……由宇の寝顔を眺めていたかったから、かしら?それと、『桜月妃様』じゃなくて『桜月妃』でいいって何度も言っているでしょう?そこまで露骨に心の距離を感じるような発言をされると、私としても悲しいわ?」

「でも、桜月妃様の事を呼び捨てにするなんて私には……!」

「……そう。じゃあ『練習』が必要みたいね?」

「れ、れんしゅう……?」

「ほら、さ・つ・き。私の後に繰り返して言ってみなさい?」

「さ、さつき……サマ」

「また『様』がついたわね、やり直しよ」

「うぅぅ……桜月妃様、もう許してください……」

「駄目よ。由宇が『桜月妃』って呼んでくれるまでやめないわ。そうしないと意味がないでしょう?」

「じゃ、じゃあ!『桜月妃お姉さん』でどうですか!?」

「『桜月妃お姉さん』……少し違和感はあるけれど、悪くない響きね。姉妹みたいで由宇との心の距離が縮まった気がするわ♪それじゃあ、今度からは『桜月妃お姉さん』って呼ぶこと。いいわね?それか……」

「どうしました?」

「『さつきお姉ちゃん』でもいいわよ、『由宇ちゃん』♪」

「もう〜!!!揶揄わないでください〜!!!」

「ふふ、冗談よ♪」

glacial nymph
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「おぉー!ここがゆうちゃんの通ってる学校かぁ……。結構おっきいな……」

「ソラちゃん、あまりキョロキョロしないでくれる?いくらこの学校の仲のいい子達と戦うとはいえ、私達が挑むのは完全に未知のギガント級ヒュージなのよ」

「そうですね……。すみません、若菜様」

「大丈夫よ、ソラちゃんならきっとわかってくれるって思ってたもの。それじゃあ、まずは生徒会室に向かいましょうか。案内の子が来てくれるといいのだけど……」

「案内なんですけど、ゆうちゃ……私と仲のいい子が務めてくれるそうです。そろそろ来るって言ってたんですけど____」

「ソラちゃーん!!!!!……失礼、取り乱してしまいました。私が今回生徒会長から案内役を仰せつかった柳井です。アールヴヘイムの皆さんを、生徒会室……もとい緊急対策室へとご案内します」

「随分元気な子ね、ありがとう。案内をお願いするわ」

「勿論です。それでは、私の後ろについてきてください」

「失礼します。生徒会長、アールヴヘイムの皆さんをお連れしました」

「柳井さん、ありがとうございます。下がっていただいて結構ですよ」

「……わかりました」

「私は生徒会長の天ヶ瀬と申します。アールヴヘイムの皆さん、この度は遠路はるばるお越しくださりありがとうございます。手短に説明しますが、田沢湖に新種のギガント級ヒュージがネストを伴って出現しました。現在は大仙分校の生徒が総出でヒュージの襲撃を食い止めていますが、何日持つかわかりません。私達も精鋭を選抜して向かうつもりです」

「状況はわかりました。ですが、私達アールヴヘイムも長旅で疲労が溜まっています。コンディション調整を考えると、出撃は明日の早朝以降が最適かと思います」

「私もそう思う。今焦って出撃しても、却って被害を拡大させるだけじゃないかなって」

「……わかりました。番匠谷さんと天野さんがそう仰るのなら、出撃時間は明朝の会議にて決定することにしましょう。それでは、寮の空き部屋にご案内致します。私の後ろについてきてください」

「あのー……天ヶ瀬さん、ちょっといいかな?」

「天野さん、どうかしましたか?」

「案内が終わってからでいいんだけど、ゆうちゃんと一緒にご飯食べてもいいかな?こんな時とはいえ、久しぶりに会えたから色々話したくてさ」

「『ゆうちゃん』……?あぁ、柳井さんのことですか。私に天野さんが彼女と会う事を邪魔する権利はありませんので、ご自由にどうぞ。きっと彼女も喜ぶと思いますよ」

「やったぁ!ありがとう、天ヶ瀬さん!」

「別段感謝される事はしていません。ほら、行きますよ」

#

「____という訳で、ゆうちゃん!一緒にご飯食べよ!」

「ご飯食べるのはいいけど、ソラちゃんいっぱい食べるでしょ?作るの大変じゃない?」

「それについては大丈夫!私のシルトの樟美が料理上手だし、私も樟美程じゃないけど料理できるし!ゆうちゃんの分も作ろっか?」

「それは流石に申し訳ないから、私の分は自分で作るよ……!というか、むしろソラちゃんとか樟美ちゃん?の食べる分を作るの手伝ってあげたいくらい!」

「いいの!?助かる〜!それじゃ、キッチン行こ!」

「あら由宇、随分楽しそうだけど、どこに行くのかしら?それにそちらの人は……」

「アールヴヘイム主将、百合ヶ丘女学院2年の天野天葉です!今はゆうちゃんと一緒に私達の晩ご飯を作りに行くところでした!」

「あらあら、アールヴヘイムの主将さん……。由宇ったら、そんな凄い人とお友達だったのねぇ。天葉さん、ちょっとご相談があるのだけれど、いいかしら?」

「なんでしょう?」

「私もそのお料理に参加していいかしら?」

「桜月妃お姉様!?」

「由宇、どうしたの?もしかして、私がいると不満かしら?」

「いえ、そういうわけじゃなくて、お姉様がソラちゃんに積極的に話しかけに行ったことにびっくりしちゃって……」

「由宇……あなた、いつも私の事をどう思ってたのかしら?」

「あ、あの……!喧嘩はよくないと思います……!」

「ほら、樟美ちゃんがこう言ってるんだし、ソラちゃんも桜月妃お姉様も行きますよ!」

「少し納得はいかないけど、まぁいいわ。由宇のお友達なら、きっといい子だものね♪」

「ぷはー!食べた食べた!もう入らないよ……」

「ソラちゃん、よくそんなに食べれるね……」

「そう?ゆうちゃんも大概じゃない?リリィとはいえご飯5杯に樟美特製げんこつハンバーグを2つも食べれるリリィはあんまりいないよ?」

「そうかなぁ……」

「……2人とも楽しそうな時に悪いのだけど、明日か明後日には出撃でしょう?」

「詳しいことはまだわかりませんが、多分そうだと思います」

「由宇、天葉ちゃん。私達ヴァパウスの仕事が無い事を祈ってるわ。ヴァパウスの仕事は秋田市を守ること。つまり、私達に出撃命令が下されたら____」

「桜月妃お姉様!そんな事、ありませんから!ソラちゃんや樟美ちゃんのアールヴヘイムと、私達秋女の選抜部隊で戦って、必ず帰ってきます!だから、お姉様も安心して待っていてください!」

「由宇、約束よ?それと……天葉ちゃん、由宇を任せたわ」

「勿論です。ゆうちゃんは絶対に守り抜きます」

「さて、すっかり夜も遅くなったし片付けて寝ましょうか。あまり夜更かしが過ぎるとコンディションにも影響が出てしまうものね」

「「はーい」」

「あらあら、本当に仲がいいんだから……」

glacial nymph
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昨日のおまけ あすみんと綺更様と若菜様がわちゃわちゃする話

「うぅ、先輩達がどこかに行っちゃいました……。どうしましょう……」

「あら、周りを見回してどうしたの?誰かここの生徒に会いに来たの?それなら____」

「ちがいます!!!私はここの生徒です〜!!!」

「それは失礼しましたわ。とても可愛らしいからてっきり誰かの妹さんかと思ってしまって」

「わたしはかわいくないです!!!かっこいいリリィです〜!!!」

「ふぅん……?その割には、背も小さくて着ている服もお子様サイズに見えるのだけれど。それと……私、これでも百合ヶ丘の風紀委員長なの。そんなえらーい人そういう口のきき方をしていいのかしら?」

「……!ご、ごめんなさい……」

「よしよし、いい子いい子。すぐに謝れる優しい子は好きよ。……食べてしまいたくなるほどに、ね?」

「うそ……!わたし、たべられちゃうですか……?いたいの、いや……!」

「なーんて、冗談よ冗だ____」

「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!こわいおねえさんにたべられる〜〜〜!!!!!こわいよ〜〜〜!!!!!」

「ちょ、ちょっと……!そんなに怖がらなくてもいいじゃない……!」

「いきなり大きな泣き声が聞こえたと思ったら……綺更?貴女一体何をやらかしたのかしら?」

「若菜!?違うのよ、少し怖がらせたつもりが思った以上に怖がっちゃって……」

「むらさきのおねえさんたすけて……!このおねえさんにたべられちゃう……!」

「綺更ったら、こんなに怖がらせて……。よしよし、もう大丈夫よ。お姉さんがあとでこの人を叱っておいてあげますからね」

「だいじょうぶ……?たべられたりしない……?」

「ええ、大丈夫よ。……そういえば、まだ名前を聞いていなかったわね。教えてもらってもいいかしら?」

「わたしは浅海井明澄(あざむい あすみ)です!『かっこいいリリィ』になるために毎日頑張ってます!」

「明澄ちゃんね、ありがとう。私は槇若菜って言うの。明澄ちゃんがかっこいいリリィになれるように、私も応援してるわ」

「うん!ありがとう、若菜お姉さん!」

「綺更?貴女は後でお説教です。こんなに可愛い子を泣かせたのは流石に看過出来ません」

「うぅ、わかったわよ……。明澄ちゃん、さっきは怖がらせてしまってごめんなさい。今すぐは難しいかもしれないけれど、これからは仲良くしてくれると嬉しいわ」

「わかった!金髪のお姉さんとも仲良くする!」

「明澄ちゃん、この人は綺更って言うの。だからちゃんと名前で呼んであげてほしいな」

「わかった!綺更お姉さん、仲直り!」

「わかったわ。これからよろしくね、明澄ちゃん」

「うん!」

glacial nymph
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「浅芽さん、少しついてきてください」

「……どこへ連れていくのですか、天ヶ瀬様」

「決まっているでしょう?二条教導官の所へ、ですよ」

「……!いくら天ヶ瀬様のお願いだとしても、それだけは嫌です」

「では、命令にしなくてはいけませんね。私の擬妹が不出来では、私まで不出来に見られてしまいますから。行きますよ、浅芽さん」

「離して、下さい……ッ」

「そこまでだ!天ヶ瀬、浅芽から手を離せ」

「お断りします」

「オメーが断ったところで、こっちが実力行使に出るのは変わんねぇけどな!大人しく____って逃げんじゃねえ!待て!」

「神鳥谷教導官のことを待つ義理がありませんので。私は浅芽さんを二条教導官の元へと連れていくように仰せつかったまでです。それでは」

「クソ、並のゼノンパラドキサじゃ追いつけねぇ……!練度が違いすぎる!」

「あら、冠依はんやないの。そないに急いでどないしたん?」

「一ノ瀬!丁度いい、説明は後でするから天ヶ瀬を追ってくれ!現状追いつけるのはお前しかいないんだ!私もすぐ追いかける!」

「なーんかようわからんけど追えばええんやな?……赤羽とやった鬼ごっこの要領で追いかければ追いつきそうやな。ほな冠依はん、また後で」

「おう!……クソ!自分の手で生徒1人守れないなんて情けねぇ……」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「天ヶ瀬さん、浅芽さんを連れてきてくれてありがとう♪浅芽さんったら、私のことを避けてばっかりだったから『お話』がしたいな〜って思って連れてきてもらったの。それじゃあ、天ヶ瀬さんはもう帰っていいわよ〜」

「……失礼します」

「天ヶ瀬様ッ……」

「さて、浅芽さん。貴女とは一度ゆっくりお話したいと思っていたの。私のことを露骨に避けていたのも、何か怪しいと思っていたからなんでしょう?」

「それは____」

glacial nymph
#

10割捏造キャラ崩壊有
亜羅椰欲を満たすにはミカエラに限る
天葉様も出てくるよ

「その時、天葉様が私達のピンチに颯爽と駆けつけてくださって____」

「も〜!!!さっきから私がいるのにソラハ様、ソラハ様って!!!スゴイ人なのはわかりますけど、イマはワタシがいるんです!だから、過去じゃなくて今の話をしましょうよ!」

「あら、ミカエラったらヤキモチかしら?案外女の子らしい所もあるものね。まぁ、私としては嫉妬された方が喰い散らかし甲斐があるのだけれど♡」

「ふぇっ!?シットとか、そんなつもりじゃ……」

「そう遠慮しなくてもいいのよ?いつもみたいに、ミカエラが失神するまで私の深く重い愛情を注いであげるわ♪ほら、こっちに来なさい?」

「亜・羅・椰?まだなりふり構わず手を出してるの!?私が卒業する時の『むやみやたらに襲うのはやめます』ってのは嘘だったの?」

「そっ、天葉様!?違っ、この子は私のシルトで……!」

「……確かに、私がいた時は見たことがない顔かも。ねぇねぇ、本当に亜羅椰のシルトなの?実は亜羅椰に脅されて〜とかじゃないよね?」

「チガいますっ!ワタシとアラヤ先輩はシュッツエンゲルの契りを交わしたアイダガラなんです〜!!!たとえ『ブルームーン・プリンセス』のソラハ様だとしても、アラヤ先輩を悪く言うのは許せないです!」

「……亜羅椰、私ってそんな二つ名で呼ばれてたの?」

「いえ、ミカエラが勝手に呼んでるだけだと思いますけど……」

「そう……?それならいいんだけど。というか!『あの』亜羅椰がシュッツエンゲルの契りを交わすなんてね〜!私びっくりして百合ヶ丘まで来ちゃった!そうそう、ミカエラちゃん……だっけ?」

「は、はい……!」

「さっきは失礼なことを言ってごめんなさい。亜羅椰がちゃんとシルトの貴女を守れているか不安になっちゃって、試すような事を言っちゃった。でも、見た感じ仲も良さそうだし、ちゃんと亜羅椰の事も止められそうだし、現時点では言うことなしかな!亜羅椰のことで困ったら、私に連絡してね!すぐ行くから!」

「ソラハ様、ありがとうございます!クスミ先輩も呼んでくるので、イッショにご飯食べましょ〜!」

「いいねぇ!私も久々に樟美と話したいし、ご相伴にあずかろうかな!」

「全く、ミカエラったら元気過ぎるわね……」

「……勿論亜羅椰も一緒ね?ミカエラちゃんから亜羅椰が普段何してるのか聞かせてもらうから」

「わかりました……」

glacial nymph
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「蓮〜、今日暇になってもうたんやけど、どないしよ?」

「今日もえらい暑いし、たまには部屋でゆっくりするのもええんちゃう?無理して休日毎回出かけるのも変やし、今日くらいはゆっくりしよや」

「アオイ〜!レン〜!きょーひまなの!?あそぼあそぼ!ヴァルといっしょにあそんで〜!」

「ヴァル、ウチら今日どこにも行かへんで?」

「え〜!!!アオイ、レン、あそびにいこうよ〜!!!」

「嫌や、たまにはウチかて休みたいんや。な?蓮」

「レンは、ヴァルといっしょにあそんでくれるよね……?」

「あ、あはは……」

「レン、あそんでくれないの!?ヴァル、レンのこと、きらい!」

「ヴァル、それは言うたらアカン。蓮に謝りや」

「なんで!?レンがあそんでくれないのがヘンなの!ヴァルわるくない!」

「ヴァル……」

「ヴァル、蓮かていつでも暇な訳やないんやで。それでもヴァルがかわええから遊んでくれたんや。でもヴァルはどうや?蓮の都合、考えたことあったか?」

「つごう……?レンがひまかなってこと?」

「せや。ヴァル、これからは相手のことも考えていかなアカンねん。それに、今日は無理やけど、今度イオンのでっかいフードコート連れてったるから、それで我慢しーや」

「うん……。ヴァル、あいてのこともかんがえるこになる!」

「えらいえらい、それでこそヴァルや。ほな、今日は部屋でゆっくりしよか」

「うん!ねぇねぇ、アオイ、レン、いっしょにアイスたべよ!ヴァルね、カフェオレのソフトクリームがいい!」

「お、ええで〜。ウチはチョコ味食おかな?向葵は?」

「ウチはいつも通り抹茶でええわ。いつもの味が一番美味いしな」

「ほい、持ってきたで!一緒に食おか!」

「「「いただきます」」」

glacial nymph
#

「三春、今日は一緒にご飯食べない?たまには一緒に食べようよ〜!」

「う〜ん……気持ちは嬉しいんだけど……」

「三春様が困ってる、助けてあげなきゃ……!」

「三春様〜、お弁当持ってきましたよ〜!一緒に食べましょ〜!」

「は?何この子。ちょっと、今日は私らが三春と食べるの。1年のくせに生意気なこと言わないでくれる?」

「は?」

「氷妹ちゃん、それ以上は____」

「レギオンにも入れない『泥棒猫』風情が、私に話しかけないでくれますか?一応先輩ですから怪我はさせませんが、同級生なら殴り飛ばしてましたよ」

「コイツ……!」

「下級生相手に複数人でリンチですか?いいですよ、何人だろうと____」

「氷妹ちゃん、これ以上はダメ!ごめんねみんな、また今度一緒に食べよ!」

「氷妹ちゃん、いくら私と一緒にいたいからって、あんな事言っちゃダメでしょう!?」

「……だって、三春様が困ってたから。助けようと思って」

「私だって断る時はちゃんと断れるの。それとも、氷妹ちゃんは私がそういうお誘いを断れないって思ってたってこと?そしたら、私ちょっと悲しいな……」

「そういうことじゃないです……!私は、三春様のことが好きだからッ……!あ、」

「やっぱり、好きなんだね?私のこと。でも、今の氷妹ちゃんの想いには応えられない」

「やっぱり、そうですよね。こんな私なんか……」

「でも、氷妹ちゃんがちゃんといい子になったらその想いに応えてあげようかなって」

「ほんとですか!?」

「うん、約束。だから、これからはむやみに他の人を挑発したりしないで?私からのお願い。守ってくれる?」

「……わかりました。三春様からのお願いなら」

「うんうん、いい子いい子!それじゃあ、一緒にお昼ご飯食べよっか。私の好きな所、いっぱい聞かせてほしいな?」

ネタ提供元:blackさん
#👤オリジナルリリィ雑談 message

glacial nymph
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「みことせーんぱーい!今日もウチの選んだ服、着てくれますか!?今日のは絶対勅センパイに似合うと思って選んできたんで!」

「えー、またぁ……?いいけど、私この後用事だよ?あんまり時間かけられないからね?」

「だいじょーぶですっ!すぐ終わらせますから〜!」

「その服の量、『すぐ』で終わる量じゃないね!?」

「うっ……まぁまぁ、そこは置いといて!ほら1着目!フリフリのついたワンピースです!勅センパイ、あんまりこういうの着たがりませんけど、ウチは似合うと思うんですよね〜!だ・か・ら!着てみてほしいな〜って!」

「ワンピースは似合わないっていつも言ってるのに……しかもフリフリまでついちゃってさ。私、あんまりこういうの着たくないんだけどなぁ」

「何事もちょーせんですよ、みことセンパイっ!ほらほら、お着替えお着替え〜♪」

「ちょ、こらっ!勝手に脱がさないで!」

「え〜?だってみことセンパイが着替えてくれないんだもーん♪」

「あーもう!わかった!わかりました!着るから自分で脱がせて!」

「そう来なくっちゃ!それじゃあ、ワンピースはここに置いておきますね!それじゃ!」

「……はぁ。言ったはいいけど、やっぱり着るのは____」

「なーんだ、やっぱり恥ずかしいんじゃないですか!ほらシャツ脱いで!ウチが着せるから!」

「わー!わー!!!着るから!!!脱がさなくても大丈夫!!!」

「……じゃあウチここで待ちます。勅センパイが着てくれるまで、ここで待ってます」

「わかったわよ……服脱ぐから、ちょっとだけあっち向いてて?」

「はーい!」

「着てみたけど、似合ってる……?あんまりこういうワンピースとかを着ないから、似合ってるのかわからなくて……」

「センパイ、すっごく似合ってます!!!フリルも先輩の可愛さを引き立てるいいアクセントになってますよ!!!それじゃあ……ワンピースを脱いで次の服に____」

「え゛っ゛!?」

「あと10着はあるんですから、全部着てもらわないと困ります!」

「ひぇぇ……」

こうして、揺ちゃんによる勅着せ替え人形計画は続くのだった____
to be continued……

glacial nymph
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解釈違いがあったら詫び土下座します

「わかなおねーさん、きさらおねーさん、あかねおねーさん、はやくいきましょうよー!!!おまつりはじまってますよ〜!!!」

「あらあら、明澄ちゃんったら元気いっぱいね」

「若菜?明澄ちゃんが可愛いのはわかったけど、あまりお金を使いすぎないようにしなさいね?一応私達三人のお金でもあるんだから」

「綺更様、そんなに気を張り詰めなくてもいいじゃないですか。せっかくあの子が『かっこいいお姉さん達とお祭りに行きたいです!』って勇気を出して誘ってくれたのだから、何か少しくらい買ってあげないと失礼でしょう?」

「茜も茜で、少し明澄に対して甘すぎる気がするの。貴女達が買い与えすぎないように、私は心を鬼にして見張り役をするわ」

「あらあら、綺更ったら明澄ちゃんに『こわいおねえさんにたべられる〜!』って泣き叫ばれた時の仕返しかしら?仕返しなら秋女さんに戻ってから模擬戦で受け付けますから、今はお祭りを楽しみましょう?もう明澄ちゃんも我慢が出来ないようですし」

「……別に、そこまでは言ってないのだけれど」

「ふふ、綺更様ったら案外若菜様に弱いんですね♪」

「わぁ……!おいしそうなおみせがいっぱいです……!わかなおねーさん、わたしたこやきがたべたいです!」

「明澄ちゃん、今はまだ買う時じゃないわ。まずは屋台の端まで行って、どこのお店に寄るのかを決めてから巡るのが『かっこいいリリィ』のやり方よ」

「はい!!!『かっこいいリリィ』のめぐりかたをします!わかなおねーさん、おしえてくれてありがとうございます!」

「(明澄をノセるのが上手すぎるわ……)」

「(駄々をこねられそうなところを単語ひとつで……)」

「「((若菜(様)って、あの子のことが好きなのね……))」」

「わかなおねーさん、ぜんぶみました!」

「それじゃあ明澄ちゃん、何を食べたいか、どんなことをしたいか、教えてくれる?」

「はい!えーっと、たこやきと、やきそばと、りんごあめと……」

「少しいいかしら?」

「きさらおねーさん……?」

「食べたいものが沢山あるのは、色んな事に興味があってとてもいい事だと思うわ。でも、よく考えてごらんなさい?明澄がそれらを全て買ったとして、本当に全て食べ切れるのかしら?」

「それ、は……かんがえてなかった、です」

「そういう所も考えてお祭りを楽しむのが『かっこいいリリィ』よ、覚えておきなさい?」

「はい!きさらおねーさん、きをつけます!おしえてくれてありがとうございます!」

「(綺更様もなんだかんだ言って明澄ちゃんの事が好きなんですね……)」

「(綺更、案外明澄ちゃんの事を気に入っているのかしら……?)」

「明澄、改めて問うけど……何が食べたくて、何がしたいのかしら?」

「おねーさんたちといっしょにやきそばをたべて、ヨーヨーすくいをしたいです!」

「よく言えたわね、明澄。それじゃあ、焼きそばの屋台の所まで戻りましょうか。……若菜、茜、ボーッとしていると置いていくわよ?」

「わかなおねーさん、あかねおねーさん、はやくはやくー!」

こうして、少女達の夜は更けていく____

glacial nymph
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リハビリにはちょうどいいでしょう。たぶん。
かき氷を食べる描写を頑張りました(こなみかん)

190センチはあろうかという巨躯の女性が、大剣型のcharmを引っ提げながら鎌倉の街を歩いている。その様子は人々の視線を惹き付け、畏怖させるには十分だった。
女性の名前はイルマ・ウルスラ。ヴィープリ・レヴァントゥリ防衛学校の3年生で、学校一高身長なリリィだ。

「Pienet eläimet, pelkäätkö minua todella niin paljon?(小動物共め、そんなに私が怖いか?)」
そう毒づきながらも、イルマの目は本国では見かけない雑貨や食べ物に興味津々だ。
そんなイルマの目に留まったのは、まるで綿飴のようなかき氷。イルマはメニューの書かれたブラックボードの前に立ち、どの味を食べるべきかじっくりと吟味し始めた。何せ次はいつ来れるのかわからないのだ、適当に選んでは悔いが残ってしまうだろう。
「店主、いちご味を一つ。それと、練乳とやらをかけてくれ」
店の奥にそう声をかけると、"かしこまりました"と優しい声が返ってきた。イルマがしばらく店の前で待っていると、"お待たせしました〜"という声と共にかき氷が運ばれてきた。
軽く一礼して受け取ると、イルマは眼前のかき氷に目を輝かせた。屈強な見た目に似つかぬ純粋な好奇心は、スプーンをかき氷へと引き寄せる。小さなスプーン山盛りに掬った氷は、生命を持つかのようにふわふわと動いており、イルマに食べられることを望んでいるかのようだ。
イルマがワクワクしながら氷を口の中に運んでみると____ふんわりと削られた氷、イチゴ味のシロップ、それに甘い練乳が口の中で天使の囁きのような甘い甘いハーモニーを奏でる。イルマはかき氷の魅力に取り憑かれたかのように一口、また一口とかき氷を頬張り、あっという間に食べ終わってしまった。
「美味かった。また来る」
食べ終わった器を渡すついでにチップを渡し、イルマはかき氷屋を立ち去った。

かき氷屋を後にしたイルマ。次はどこに行こうか……なんて考えながら歩いていると、いつの間にか海の方まで出てきていた。母国フィンランドの海とは違う、広い広い海。地平線すら見通せるほどの広い広い海。その「海」に、イルマの視線は釘付けになっていた。雄大な自然だけならば、フィンランドで飽きるほど見た。しかし、それらは全て森林や湖沼といった「陸地の自然」だった。対して、こちらは全く未知な「海洋の自然」。好奇心旺盛なイルマが見入ってしまうのも無理はなかった。
「Kuinka kaunista(なんて美しいんだ)……」
不意に零れたその一言は、イルマの感動を表すには十分すぎた。

glacial nymph
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Phantom dystopia Phase0
【二条麗華の独り言】

そろそろ実験を始めようかしら?なんて思いながら私は自室の椅子に寄りかかる。
目下最大の懸念である『心を読める異能』の子____浅芽鏡月の対策は出来ていないが、今の所目立った動きはされていない。まぁ当然と言えば当然だろう。時間をかけて少しずつ全校生徒に洗脳を施し、浅芽鏡月の味方を減らしてきたのだから。
しかし、懸念が払拭出来た訳でもない。神薙綾華、岩宿聖といった一部の生徒には未だ洗脳が効く気配がない。このプロジェクトを遂行するにあたって大きな障害となりうる不確定要素は排除しておきたいものだが____
そこまで考えを至らせた時、私はある事を思いついた。||天ヶ瀬陽を強く洗脳し、手駒にしてしまえばいい||のだ、と。彼女が味方になれば、いくら猟奇的な人間と校内随一の実力者が相手だろうと敵うまい。そう確信した私は、||天ヶ瀬陽||に出会う度に少しずつ少しずつ私や周囲に対する認識を改変し、私に従うように仕向けたのだ。
そうして数ヶ月が経った頃、秋女のほぼ全員が私の支配下に堕ちた。やはり神薙綾華や浅芽鏡月、岩宿聖といった面々は洗脳できなかったが、これだけの人数が私の側に立つならば何も怖くはない。私の口角は自然と上がっていく。
さぁ、実験を始めましょう?私の口から放たれ虚空に消えていったその言葉は、輝かしい未来を描くには十分すぎた。

glacial nymph
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七色の感情操る虹の使い手・速水咲里那独占インタビュー!
以下本文

私のことを取材したいのって、貴方で合ってる?

▶「はい!ぜひ咲里那さんの事を取材させて頂きたくて!」

ホントですか〜?私なんかより天ヶ瀬さんの方がよっぽど取材ネタになるんじゃないです?

▶「いえいえ、咲里那さんも十分魅力的ですよ?そのレアスキルは世界でたった1人、咲里那さんしか覚醒してないそうじゃないですか!」

えへへ……そんなことないですよ……。それじゃ、取材をお願いします!

▶「はい!こちらこそよろしくお願いします!」

▶「それでは、まずは自己紹介をお願い出来ますか?」

はい!秋女2年、速水咲里那です!所属レギオンはヴァパウス、レアスキルはラルクアンシエル!

▶「自己紹介ありがとうございます!『ヴァパウス』といえば、秋田市の防衛を主な任務とするレギオンですよね。その選出は基本的に生徒会長に一任されているそうですが、咲里那さんは史上唯一現隊長からの推薦でヴァパウスへの入隊が決まったそうですね。入隊が決まった時の気持ち、聞かせてもらってもいいですか?」

最初はすごいビックリしました。「こんな私じゃなくて、もっと他に人がいるんじゃない?」って思って辞退しようと思ったほどですから。そしたら、隊長さんに「君のセンスは眠らせておくには非常に惜しい、私達に力を貸してくれないか」って深々とお願いされてしまって。そこまでされたのに断るのは流石にダメだよな……と半ば流され気味に入隊を決めました。でも、今では隊長さんに感謝しています。あの人がいなければ、私は今以上に感情を制御出来ていなかったでしょうから。

▶「そういえば、咲里那さんのレアスキルである『ラルクアンシエル』は感情によって効果が変化するスキルでしたよね。少々不躾かもしれませんが、感情を制御できていなかった時期はかなり苦労されたのではないですか?」

……そう、ですね。入りたての頃は戦闘時に感情のコントロールが出来ず、ヴァパウスの皆に沢山迷惑をかけました。私を庇って亡くなった先輩もいます。自分の存在意義がわからず、リリィなんて辞めてしまおうと思った時期もありました。それでも今ここに立っているのは、間違いなくこんな私を支えてくれた仲間のおかげです。

▶「私が言えることではありませんが……辛い思いをされたんですね。ですが、それでもなお立ち上がり前を向く咲里那さんのことを素晴らしいと思います!それでは、次の質問に行きますね!『普段生活している時もレアスキルって発動しちゃうんですか?』だそうです。これは私も気になっていたんですが、実際のところはどうなんでしょう?」

やっぱり気になっちゃうところではありますよね、そこ。結論から言うと、常時発動しています。嬉しい気分になると、周りの人が不思議そうに身体を確認しているのをよく見かけますし、楽しい気分になると驚いたような仕草を見せる人をよく見かけます。怒ったり悲しい気分の時は戦闘の時くらいしかないのでそこはいいんですけどね……苦笑 周りがいきなりびっくりした様子でキョロキョロ周囲を見回したら怖いじゃないですか、ねぇ?

▶「あはは、確かにそれは怖いですね……。私だったらつられて声が出ちゃうかも?あともう一つだけ個人的な質問があるので、お疲れかと思いますがもう少しだけお付き合い頂けますか?」

全然大丈夫ですよ〜!ところで、個人的な質問ってなんですか……?

▶「||……副隊長さんとの馴れ初めって、なんですか?||」

な、なんでそれを……!?誰にも言ってないはずなのに……!

▶「先程柳井さんの取材を済ませまして、その時に耳打ちされたんです。『咲里那にはこのネタがあるんで最後に素知らぬ顔で尋ねてあげてください』と!……まぁ、これは尋ねるのもあれなんで咲里那さんだけの秘密にしておいてください。そうそう、ここの部分は記事にしないのでご安心を!」

それなら、いいんですけどね……?

▶「随分長くなっちゃいましたね、長い間お付き合い頂きありがとうございました!」

いえいえ!こちらこそ、ありがとうございました〜!

取材先:速水咲里那
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glacial nymph
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||※若干のヤンデレ要素あり。糖分はある。太るくらいには。||

冬も近づいた11月の某日、秋女の生徒会長である天ヶ瀬陽と副会長である月夜野快は、2人に割り当てられた特別寮の部屋で久々にのんびりとした時間を過ごしていた。9月中旬に田沢湖ネストが形成され、10月はほぼそちらにかかりっきりで2人の時間など全く取れていなかったのだ。それだけに、2人でどこか出かけようかという話にもなったのだが、快が珍しく「久々の休日は陽と一緒に部屋でゆっくりしたい」と言い出したこともあり、こうして2人でのんびりと過ごしているのだ。
「それにしても、珍しいですね?快が『部屋でのんびりしたい』だなんて。いつもなら『どこかに遊びに行こう』と喜び勇んで誘っているのに」
不思議そうに陽が椅子ごと快の方に身体を向けると、快はやや歯切れ悪そうに後頭部をポリポリ掻きながらこう答えた。
「いや、出かけたいっちゃ出かけたかったんだけどな?最近陽も疲れてたみたいだし、私の我儘で毎回振り回すのもよくないなと思って……」
すると、それを聞いた陽は椅子から立ち上がり、少し不機嫌そうに快の方へ詰め寄った。そして半ば強引に快のことをベッドに放り込み、快の腰の上に馬乗りで跨った。状況が飲み込めず混乱している快とは対照的に、陽は余裕綽々といった様子で快を見下ろしている。
「は、陽……?いきなりどうしたんだ……?」
「どうしたもこうしたも……恋人に遠慮されたから理解らせる、ただそれだけの事ですよ?快が誰のもので、私が誰のものか。その身体にきっちり刻み込んであげるので、覚悟してくださいね?」
悪魔のような笑みを浮かべる陽に、快は戦慄しながらも受け入れることしか出来なかった。

||「はむ、はむ、はむ……」
快をベッドに押し倒したのち、その上に覆いかぶさった陽は、快の首筋を優しく噛んで赤い噛み跡を付ける。『月夜野快は天ヶ瀬陽のものだ』という証拠を刻みつけるために。そして、自らの醜い独占欲を満たすために。
「なぁ陽、もういいだろ……?私が悪かったって……!」
薔薇よりも赤く頬を染めた快が陽の拘束から抜け出そうとするも、陽の身体がそれを許さない。快がジタバタと暴れる度に少し強めに噛むということを繰り返した陽だったが、あるタイミングでふと動きを止めた。
「お、終わった……か?」
ホッと一息吐く快だったが、いつまでも陽が自分の上からどかない事を訝しむ。
「……理解らせは、まだ終わっていませんよ?次は、私の『すき』を快に沢山伝えるんですから」
陽はそう言うとにっこり微笑み、再び快の上に覆い被さる。そして、快の耳元に口を寄せ、優しく息を吹きかける。
「すき、すき、す〜き……♡すき、すき、すき……♡」
「……♡♡♡わたしも、はるのことすき……♡もっとすきっていってぇ……♡」
陽の甘美で蠱惑的な愛の囁きに、快はとうとう耐えられなくなってしまった。自ら陽のことを強く抱き締め、愛情を懇願し始めたのだ。"思惑通り"と悪どい笑みを浮かべた陽は、そのまま快の耳元で愛を囁き続けた。恋人に絶対逃げられない枷を嵌めるために。そして、可愛い小鳥を鳥籠の中に閉じ込めておくために。||

glacial nymph
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「さて、と」
レギオン控室の一角、簡単なキッチンでお菓子を配膳した私は、通信端末で北杜様にメッセージを飛ばす。すると、五分と経たない内に北杜様は控室にいらっしゃった。
「うぅ……ごめんね陽海。すぐ来ようと思ったんだけど、途中で友達が話しかけてきちゃって……!」
そう申し訳なさそうに謝る北杜様に対して、私は「大丈夫ですよ」の意味も込めて首を横に振り、こう返す。
「北杜様の非ではないのですから、気にする事はございません。それよりも、今日の勉強を始めましょう。本日の学習範囲は第一次世界大戦です」
学習範囲を告げた途端、目に見えてわかるほど北杜様の顔が歪んだ。それもそのはず、北杜様は基本的にそこそこの成績なのだが、社会科……それも歴史分野は著しく点数が低いのだ。おそらく休学していたせいもあるだろうが、元来持っていた本人の歴史分野への苦手意識と相まって余計に知識として身についてないような印象を持った。

「そんなに嫌な顔をされましても、本日はそういうスケジュールで組んでしまっているのですから。逃げ道はありませんよ?」
「うぅ……」
ガックリと肩を落として項垂れる北杜様を前に、今日のご褒美を伝えていなかったことを思い出す。これを伝えればきっと元気に取り組んでくれるでしょう……と思いながら北杜様の肩に手を置く。
「北杜様、今日のご褒美はパッキンプリンです。カップの底をパキッと出来る、北杜様が大好きなあのプリンです。苦手な歴史分野に取り組んでいただくのですから、これくらいのご褒美があって然るべきだと思いまして」
それを聞くが早いか、北杜様は目を輝かせてこちらに満面の笑みを向けた。
「……!パッキンプリンのためなら、歴史の勉強も頑張れる気がする……!陽海、私頑張る……!」
むん!と意気込みやる気を見せてくださった北杜様を前に、私も頑張らねばなと思いながらホワイトボードの前に立つ。
「いいですか北杜様、歴史というのは小さなストーリーが多数存在する小説作品のようなものなのです。一つずつ物事を捉えていけば、決して怖がることはありません」
キュッキュッとペンの擦れる音だけが部屋に響く。
「小説……!そういう捉え方はなかったかも……!ありがとう陽海、第一次世界大戦ってどんなストーリーなの……?」
「えぇ、第一次世界大戦というのは____」

「本日の特別講義はこれで終了です。北杜様、お疲れ様でした」
「おわったぁ〜……!」
それを聞いた瞬間、北杜様は「んーっ」と伸びをして、勉強で凝り固まった肩をほぐすような仕草を見せた。
「では、パッキンプリンを持ってきます。北杜様はそこで少しお待ちください」
最近の北杜様は本当によく頑張っていらっしゃるな……と思っていると、気づけば私はパッキンプリンの他にカステラと煎茶も用意していた。お出しするか少し迷ったが、苦手な分野で諦めることなく講義に参加してくださったのだと思うと、カステラを冷蔵庫にしまう気にはなれなかった。

「北杜様、今日のご褒美をお持ちしました。パッキンプリンとカステラ、そして本日お茶は煎茶です。お疲れ様でした」
ことり、とプリンのパックやカステラをテーブルに置き、私は急須からお茶を注ぐ。
「パッキンプリンだぁ……!陽海、パキッてしてもいい!?」
小さな子供のように目を輝かせる北杜様に可愛さを感じつつ、悟られぬよう平静を装って「勿論どうぞ、北杜様のプリンですからね」と返す。
ペリリ……パキッ!____ぽとん。
その一瞬、北杜様の瞳はプリンだけをじっと見つめていた。北杜様は本当にこのプリンが好きなのだな……と実感しつつ、私はお茶をすする。すると、パッキンプリンの醍醐味を味わい終えたのだろう北杜様がこちらの方を向き、にっこりと微笑みながらこう仰った。
「……陽海、ありがとね!……私だけじゃ、きっと皆と一緒にいれなかったと思う。でも……!陽海がいたから、私は皆と一緒に……!」
「そこまでです。それ以上は、私達が卒業した時に聞かせてください。教育係からのささやかなお願い、聞き入れてくださりますか?」
「……!うん!陽海との、約束だね……!」
静かな夜、私達2人の穏やかな笑い声だけが控室に響いていた。

ネタ提供元:へゲロさん
この場を借りて御礼申し上げます。

glacial nymph
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【旧友との邂逅】
登場人物:長沢雪様、クラウディア=セラフィノ=カミシロ
※雪様にキャラ崩壊の可能性しかありません。
あくまでもifです。
一応海苔は貼るので、剥がしたことによる苦情は棄却します。

||「ユキ、久しぶりだな。調子はどうだ?私は……情けないことにこの有様だが」

「情けなくなどない、カミシロは自分を責めすぎだ。むしろ急造部隊で援護が来るまで持ちこたえたのだから充分すぎる働きだろう」

「……ユキ、その話は」

「っと、すまない。不用意に触れるべき話ではなかったな。そうだ、折角カミシロの後輩が気を使って控え室を貸してくれたことだし……カミシロが普段何をしているのか、教えてくれないか?」

「私か?私は……毎日ミクル先生に体調のチェックと軽い問診を受けてから授業に行ってるよ。とはいえ、今でも保健室にはかなりお世話になってしまっているが。それでも勉強は楽しいし、サツキやユウのような仲間もいる。人殺しの私なんかには、充分すぎるほど幸せな時間だよ」

「……カミシロ、その『人殺し』とやらにいつまで縛られているつもりだ。まず事実として、お前は確かにあの7人を助けることは出来なかった」

「……」

「だが、だが……!だからといって、カミシロまで罪の意識に囚われる必要は無い!お前が後悔し続けることは、間違っている!」

「ユキ、黙って聞いていれば……!」

「落ち着けカミシロ!私にはまだ言いたいことがあるんだ!……怒るなら、その後にしてくれないか」

「……わかった。話は聞こう。怒るのはそれからだ」

「カミシロ、私は何も『後悔するな』と言っている訳じゃないんだ。人間誰しも失敗はあるし、その失敗を悔しく思う日だって当然あるだろう。だがな……失敗をいつまでも抱えていると、本来お前が掴むはずだった成功さえも来なくなるんだ」

「……ッ、何が言いたい」

「……もっと私を頼ってくれ、カミシロ。私だって、お前の辛さを知らないわけじゃない。もっとも、辛さを肩代わりすることは出来ないかもしれん。しかし、カミシロの話を聞き、一緒に考え、共に悩むことはできる!だから、私をもっと頼ってくれないか……?」

「……わかった。私が間違っていたよ、ユキ。私には、『他人を頼る』ということが欠けていたんだな。多忙なユキにこんなことを頼むのは申し訳ないんだが……一緒に、悩んでくれないか?」

「……!あぁ、勿論だとも!それでカミシロが楽になるのなら、いつまでだって一緒に悩むし、解決策だって考えるさ!」

「ユキ、これからも、よろしく頼む」

「任せてくれ。私に出来ることはそれくらいだからな。あと……その、なんだ。おかえり、カミシロ」

「……!ユキ、ただいま!」||

glacial nymph
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ハロウィンドタバタハプニング!?
登場人物:岡田綺更様、槇若菜様、渡邉茜様、あすみんこと浅海井明澄

「わかなおねーさん、きさらおねーさん、あかねおねーさん!トリックオアトリートです!おかしをくれなきゃ、イタズラしちゃいますよ〜!」

「「「ッ……!!!」」」

「明澄ちゃん、可愛いわ……!」

「明澄ちゃんったら、こんな可愛い仕草でおねだりできるなんて……!」

「明澄っ……!そんなあざとくおねだりするなんて……!お菓子をあげない理由がないじゃない……!」

「綺更?」

「綺更様?」

「……なんでもないわ。ほら、イタズラされないようにお菓子をあげるわよ」

「わーい!おねーさんたちからのおかし〜!」

「(……たまにはイタズラの仕返しでもしようかしら)」

「明澄、ハロウィンにまつわるこんな伝承を知っているかしら?『お菓子をもらったリリィは、お菓子をあげた人にイタズラされなければならない』というものよ。そして、明澄は今私達からお菓子をもらった。つまり……どういうことかわかるわね?」

「「(合わせた方がいいのかしら(でしょうか)……?)」」

「(合わせないとどうなるかわかるわよね……!)」

「う、うそです……!今までそんなこと……!」

「明澄ちゃん、残念だけどこれは本当の言い伝えなのよ。だから……えいっ!」

「ひゃっ!?あひゃひゃ……!わ、わかなおねーさん……!こちょこちょはっ、こちょこちょはだめですーッッッ!や、やめてください〜っ!!!」

「(若菜様がイタズラした……!?こ、これは私もイタズラしなければ……!)」

「ごめんね明澄ちゃん、これも言い伝えだから……!」

「(明澄ちゃんのマギに私のマギを練り合わせるイメージで……!)」

「あかねおねーさん、おててつないでどうしたんですか?」

「茜、それって____」

「うーん、なんかへんなかんじがします……」

「……んぇ?むきゅ〜……」

「「明澄ちゃん!?」」

「明澄!?ちょっと茜、貴女一体何をしたの!?」

「私は、イタズラのつもりで自分のマギを明澄ちゃんのマギに絡めたんです。そしたら、明澄ちゃんが急に倒れて……!」

「茜ちゃん、急にマギ交感なんてしたら大抵の人間は倒れるわよ……!いくら焦っていたとはいえ、流石にこれはまずいわね……」

「まずいわね、呼吸が浅くなってるわ」

「……綺更様、若菜様。すみません……!」

「……あれ、わかなおねーさん?なんでぇ……?」

「明澄ちゃん、よかったっ……!ごめんね……!」

「あかねおねーさん……?なんでないてるんですか……?」

「私のっ、私のイタズラでっ、明澄ちゃんが……!」

「えーっっっっっっっっっっっっ!?!?!?!?あすみ、てんごくにいきそうだったんですか!?」

「そう、ね……」

「明澄ちゃん、本当にごめんなさい……!」

「明澄ちゃん、今回は私達のイタズラで迷惑をかけてごめんなさい。お詫びになるのかはわからないけれど、明澄ちゃんは『かっこいいリリィ』になるのが目標だったわよね?」

「はい!せいとかいちょーさんみたいな『かっこいいリリィ』になりたいです!」

「だからね?私達に明澄ちゃんが『かっこいいリリィ』になるためのお手伝いをさせてほしいなって」

「ほんとですかっ!?あすみが『かっこいいリリィ』になるために、すごいおねーさんたちがおてつだいしてくれるんですか!?」

「勿論よ。だから大舟に乗ったつもりでかかってきなさい?」

「明澄ちゃん、私も全力で相手をするよ……!」

「おねーさんたち、ありがとうございます!」

「それじゃあ明澄ちゃん、訓練場に向かいましょう?」

「行くわよ、明澄。時間は有限なのだから」

「明澄ちゃん、一緒に行こう?もっと明澄ちゃんのこと、知りたいな」

「……はいっ!」

glacial nymph
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※オメガバースが地雷なら海苔を剥がさないでください。
||※陽……‪α‬(攻め)、快……Ω(受け)

すっかり夜も更けた12時頃、陽が家に帰ると、部屋の中には陽の衣服が至る所に散乱していた。それと共に漂う甘い匂いが、陽の中の欲求を刺激する。陽は平静を装いつつ、散らかった衣服を掻き分けて"巣の主"の元へと向かう。
「快、帰りましたよ」
「ん、はる……?」
"自分の巣穴"を作って眠ってしまったのだろう快を起こしてしまったことに罪悪感を覚えつつも、「無事でよかった」と陽は胸を撫で下ろす。
Ωである快は、陽のものを使った巣穴を作らないと寂しさで破壊衝動に走ってしまうのだ。それを防ぐためにも、常日頃から陽が快の傍にいなければならないのだが、α‬である陽が働かないと収入が得られない。それに、Ωの快を働かせようものならどこの馬の骨かもしれない‪α‬に奪われるかもわからない。そういった事情もあり、陽は快に「私が働きに行ってる間に苦しくなったら巣穴を作ってもいいよ」と言いつけてある。
快はどうやら今日も苦しさからは逃れられなかったようで、陽の服や上着、布団で作られた巣の中に縮こまっていた。
「快、もう大丈夫ですよ。いっぱい私に抱きついて楽になってください」
「はるっ……!」
陽の身体をぎゅうっと抱きしめる快は、まるで小さな子供のようだ。優しく、それでいて拙い抱擁から来る愛情に、陽は首筋への甘噛みで返す。「番である私とずっと一緒に居てね」という醜い感情と共に、上っ面だけの愛を注ぐ。所詮この恋人も壊れるまでの繋ぎでしかないのだから。そう割り切ろうとするも、何故か抱擁をやめることは出来なかった。

____くらくらとする程の甘い匂い、恋人の身体から香る馨しいフェロモン。発情期を迎えているのであろう快が発する物質は、普段冷静な陽と言えども耐えられなかった。散らかった衣服の中に快を押し倒し、ギラギラとした獣のような目を隠すことなく快を見つめる。そして、マーキングするかのように自分の身体を快の服に擦り付ける。
「そんなに私を誘惑して……!ぐちゃぐちゃにされたいんですか!?いいえ、ぐちゃぐちゃにします……!快が『やめて』と何度懇願しても私が満足するまでやめませんからね……!」
「はるとちゅーする……♡わたしのこと、ぐちゃぐちゃにして……♡」
____その言葉を聞くが早いか、陽は快の唇を勢いよく奪った。汚く穢らわしい接吻の音が部屋中に響き渡る。……何分接吻しただろう、苦しくなった陽が唇を離す。しかし、一度掘り起こされた欲求は接吻程度では収まるはずもなかった。

「はるっ♡もっとぉっ♡もっときもちよくさせてぇ……!」
「いい、ですよっ……!私の愛情、身体でしっかりと受け止めてくださいね……♡」
かぷっ!びくんびくん……♡
双方がビクンビクンと身体を震わせ、快楽に溺れる。
2人が少し余韻に浸った後、陽が快の首筋に噛み付く。かぷり、かぷりと痕が残るように。それに呼応するように快の身体は再びビクンビクンと跳ねる。
「ん゛っ♡はるぅっ♡」
「ふーっ♡ふーっ♡」

____2人の愛情表現も、秋の長い夜も。まだまだ終わりそうにないようだ。||

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レナ様とレイヤちゃん(友人のオリリィ)のお話(レイヤちゃん視点)
レイヤちゃんはレナ様に片想いしてます。

レナ様は、私の命の恩人だ。「銀狼」とまで呼ばれ、他を寄せ付けない圧倒的な実力でもってヒュージを蹂躙するあの方が、私の命を救ってくださった。例えレナ様が覚えていなかろうと、私は死ぬまで忘れない。できる限り、このご恩を返していくために。

「レナ様、治療致しますので少しじっとしていてください」
「あぁ、頼む」
……この僅かな時間が、私にとっての幸せ。すぐ戦場に戻らなければいけない「エース」のレナ様に対して、私は初戦闘で戦闘不能に陥った「出来損ない」。彼女と私の間の埋まりそうもない差から目を逸らし、治療に集中しようと試みる。……しかし、今日は何故か回復魔法の調子が悪い。それに焦れば焦るほど、魔力が逃げていく。
「早くしろ、私には時間が無いんだ」
レナ様の苛立つ声と共に、他の看護婦が私を脇に寄せ、素早く回復魔法をかける。
「すみません!ほらレイヤも早く謝罪なさい!」
「すみ、ませっ……」
たどたどしい謝罪は、レナ様に届いただろうか。冷たく私を睨み据えるその目は、きっと軽蔑の感情を向けている。私達看護婦は、エースであるレナ様にとって「道具」でしかないのだから。

「レイヤ、レナ様にはちゃんと謝罪しなきゃダメでしょう!?上から見切られた貴女がこうやって部隊にいられるだけでも奇跡なんだから、せめて"リリィ"の人達の機嫌を損ねないように……!」
そんなの、わかってる。私が出来損ないなことくらい、嫌というほどわかってる。きっと今日の一件でレナ様から「使えない道具」だと思われたに違いないと思うと、逃げ出してしまいたかった。
目に涙を溜めながら小さな声で謝罪すると、先輩の看護婦が殊更大きな声で私を呼んだ。また怒られるんだろうな……と思って向かった私を待ち受けていたのは、意外な一言だった。
「レイヤ、今回のことは気にしちゃダメよ?誰だって失敗はあるもの、挫けずに次からまた成功を繰り返していけばいいの。それに、多分レナはそんな怒ってないわ。素直に謝ればきっと許してくれるわよ?」
にかっと笑った先輩は、とても頼もしく見えた。
ふと視線を上げると、その先にはいつも通り無愛想な顔のレナ様がいた。私があたふたしていると、先程の先輩がレナ様に何か耳打ちをして去っていった。その場に残されたレナ様と私は、互いに気まずそうな顔で見つめ合う。重苦しい雰囲気の中、レナ様が口を開く。
「レイヤ……だったか。先程はすまなかった。私も前線の仲間を救おうと思って余裕が無かったものでな。先程お前の先輩に少し叱られてしまったよ、『自分を想ってくれている子にはもう少し優しく接してやれ』とな」
レナ様はそこまで言うと一度言葉を切り、再び気まずそうに目を逸らす。
「その、なんだ。八つ当たりして……すまなかった。これからも、よろしく頼む」
「……はい!お任せ下さい、レナ様!」
"命の恩人"から銃後を任された嬉しさは、格別のものだった。

しかし、最後に予想外のことが待ち受けていた。
「……言うか迷ったが、お前が私に対して恩義を感じているのは知っていた。だからこそ、どう接していいのか分からなかった。お前が嫌じゃなければ、だが……『レナ』と呼んでもいいんだぞ」
「!?!?!?!?」
『想い人からの呼び捨て許可』という衝撃的すぎる出来事に、一瞬心臓が止まった。それはそうだ、相手から一気に距離を詰めてくるなんて誰が想像できようか。とはいえ、返答しなければ千載一遇のチャンスを逃してしまう。
「……はい!『レナ』って呼ばせてもらいますね、レナ様!……あ」
「フッ、お前も案外面白い所があるのだな。気に入った、私の手当ては今後レイヤに一任する。せいぜい『切り札』を死なせないよう励むがいい。それと……敬語も外していいぞ。レイヤの敬語はどうにもむず痒くて敵わん」
「もちろんだよ、レナ!……って、それどういう意味?」
「言葉通りの意味だが?」
「も〜、レナったら!」
……つい数時間前が、夢みたいだ。憧れの人とこんなに仲良くなれるなんて。あの先輩には、後で美味しいご飯屋さんにでも連れてかなきゃね。

glacial nymph
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※原作キャラのキャラ崩壊注意
登場人物:天野天葉、天ヶ瀬陽

||「……天ヶ瀬さん、ちょっといい?」
日本最高峰のレギオンと名高いアールヴヘイムの主将・天野天葉さんから呼び出されたのが15分前。11月も下旬になり寒風吹きすさぶ中、私と天野さんはこうして屋上の金網にもたれかかっている。
「天ヶ瀬さんとこうして2人で話すのは初めてだったよね。お互いのメンバーがずっと一緒にいるからなかなか2人で話す時間がなくてさ、ちょっと強引だけどこういう感じになっちゃった。『屋上に連れて行ってほしい』なんて無理言っちゃってごめんね」
静かに話す天野さんからは普段のような堂々とした姿は欠片も感じられない。むしろ少し寂しさを覚えているような錯覚すら覚える。
「それで、私をここに呼び出した理由というのは?貴女の事ですから、余程何か話したい事情があって呼び出したのでしょう?」
そう私が問うと、やや気まずそうに天野さんが口を開く。
「そんな重い話がしたかった訳じゃないの。でも、全国的に名の知れたレギオンの主将どうし積もる話がしたいな〜って。ダメ……かな?」
私は周囲に視線を巡らせ誰もいないのを確認すると、生徒会長の天ヶ瀬陽から秋女生の天ヶ瀬陽に戻る。
「いいよ、別に断る理由もないし。それに、私もたまには息抜きしないと疲れて仕方がない。あと……ソラも私のこと普通に呼んでいいよ?」
私は堅苦しい口調を崩し、高校生らしい立ち振る舞いで天葉の方に向き直る。
「よかった、はるちゃんもそういう笑顔できるんだね。私、少し安心したよ」
天葉はそう言って私の方に歩み寄り、私のすぐ隣の金網に寄りかかった。
「はるちゃんには言えるけどさ、私達ってどんなに相対するヒュージが怖くても顔に出せないじゃん?だからさ、似たような立場のはるちゃんになら話せるかなって思って相談したんだ。情けないよね、アールヴヘイムの主将なのにさ」
独り言ちるソラの横顔はトップレギオンの主将とは思えないほど寂し気で、自分自身への悔しさや情けなさに対する怒りさえ感じられた。「ソラ、そこまで気負わなくていいんだよ。もっと周りの人に相談しなよ」そう言いかけて、踏みとどまった。ここで安易な言葉をかけるのはソラのためにならないのではないか、そう思ったのだ。
「……人が自然に抱く感情を『情けない』と糾弾する人が、一体どこにいるのかな。ましてや相手は未知の怪物。私達には『怖い』と思う権利があるよ。そんな中で立ち向かっているソラはとてもえらいと思うし、勿論弱みを見せちゃいけないと思うソラの考えも理解できる。だからこそ、辛くなったら柳井さんや私に悩みを吐き出してほしい。自分の心が壊れる前に、ね」
『嘘臭い』と言われても仕方ないな、なんて思いながらもぽつりぽつりと自分の想いをソラに伝えた。
____ふと視線をソラの方に向けると、満面の笑みを浮かべていた。「はるちゃんも面白いこと言うじゃん?」といった類の、弱みを握ったような顔をしていた。
「……今のは忘れてください。ちょっとした戯言ですから」
私は照れ隠しのようにソラから顔を背け、すっかり夕闇が迫った屋上から秋田市街地を見下ろす。夜の帳が降り始めた北の空には、一番星がきらりと光っていた。||

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普段はいつも何かに怯えてばかりの柊華が、珍しく意気揚々と私に提案してきた。「ロザリンデ様と一緒に料理がしたいんです!」って。そんなこと言うけど、私には一緒に料理を作るルームメイトがいる。「私のルームメイトは下級生に厳しいから、柊華が出しゃばると反感を買うよ」と何度も伝えた。それでも、柊華は諦めることなく「ロザリンデ様と料理がしたい」と何度も熱意を伝えてきた。
……そこまでされたら、折れるしかないね。
ふと零れ落ちたその一言に、彼女は酷く喜んでいた。そこまで来てようやく、私は気づいた。あぁ、この子は純粋に料理が好きなんだと。だとしたら、私は随分と酷い仕打ちをしてしまっていたのかもしれない。……今度からはレギオンの仲間達と一緒に料理させてみてもいいかも?なんて思いつつ、私達は調理室へと向かった。

「少し失礼するよ」
かちゃりと調理室の扉を開け、そこにいたリリィ達に声をかける。すると、同学年のリリィ達が一斉にこちらを向いた。
「ごきげんよう」
「あぁ、皆ごきげんよう」
見知らぬリリィである柊華が気になるのだろうか、同学年たちの視線は柊華1人に注がれている。大勢に見つめられる恐怖心からか、柊華は私の後ろに隠れてしまった。
「皆、そんなに柊華ばかり見つめるのはやめてくれないか?柊華が怖がって隠れてしまったじゃないか」
と説明すると、その中でも一際後輩嫌いで知られた私のルームメイトが怒ったような目で柊華を睨み据える。「青二才が多忙なロザリンデ様に頼み事をするなんて厚かましい」とでも言いたいのだろう、と思いながら露骨に大きな溜息を吐く。
「もし不満があるのなら、柊華を睨むんじゃなくて私に直接言ってくれるかい?柊華と料理をすると決めたのは私なんだからね」
威圧感を醸し出しながら怒ったような声色でルームメイトへ声をかけると、流石に事の重大さに気がついたのか顔面蒼白で「ごめんなさい!」と謝罪してきた。「気持ちを押し留めるのも人間関係を円滑に運ぶコツだよ、覚えておいた方がいい」と一声かけたのち、本題に入る。
「私はこれから柊華と料理をするから、しばらく席を外しておいてくれると助かる。それと、この件についての文句は柊華じゃなくて私に言うように。OK?」
そう伝えると、リリィ達は皆やや不満気な表情を浮かべながらも「わかりました、失礼します」とキッチンを出ていった。

同学年のリリィ達が出ていってからしばらくして柊華の方を見ると、目に涙を浮かべていた。
「ロザリンデ様ッ、ごめんなさい……!私が出しゃばったせいで……!」
涙を零して泣きじゃくる柊華の背中をさすり、諭すように言い聞かせる。
「柊華は何も気にしなくていいんだよ?柊華と一緒に料理をするって決めたのは私なんだから、君が気にする必要は無い。だから、何を作るか教えてくれるかい?」
料理なんて滅多にしないから、上手くできる気はしないけどね。そう言って微笑むと、柊華もいつの間にか笑顔になっていた。
「任せてください!必ずロザリンデ様と一緒に美味しい料理を作ってみせます!」
そう胸を張る柊華の姿は、いつもより随分頼もしく見えた。

「それじゃあロザリンデ様、今日はカレーライスを作りますよ!」
久しく食べていない料理名に、私は思わず喉を鳴らす。早く食べたいなー……という私の焦燥を感じとったのか、柊華が口を開く。
「そんなに焦ってると怪我しちゃいますよ?ほら、まずは手を洗いましょう!」
咳払いで誤魔化そうとするも、柊華にはバレバレだったようだ。
「まずは野菜を切りましょう!切る野菜はじゃがいも、にんじん、たまねぎです!にんじんとたまねぎは私がやっておくので、ロザリンデ様はじゃがいもの皮をむいて、包丁で食べやすい大きさに切ってください!」
柊華に言われた通り、私はじゃがいもを持って皮をむこうとした。しかし、ゴツゴツしたじゃがいものせいで手を滑らせ、包丁で指の先を切ってしまった。
「っ……!」
私が顔を顰めるが早いか、柊華がこちらに駆け寄って私の指を咥えた。
「ろひゃりんひぇしゃま、すぉしまっへくらひゃい……!」
指をぺろぺろと舐められ、柊華の口から私の指が引き抜かれる頃にはすっかり血が止まっていた。

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……これ、消毒して絆創膏を貼った方が良かったんじゃないかい?そういう疑念も込めて柊華の方をちろりと睨むと、誤魔化すような苦笑いが返ってきた。別に責める気もないんだけどさ。その後も四苦八苦しながらなんとかじゃがいもを切り終わり、他の野菜やお肉と共にカレールゥを鍋に入れて煮込み始めた。煮込み始めて10分ほど経っただろうか、キッチンには食欲をそそるいい匂いが充満していた。
「柊華、もういいんじゃないか?よそって食べよう?」
とワクワクする私とは対照的に、柊華は冷静に
「ロザリンデ様 、もう少しです」
と鍋の中身ををかき混ぜ続ける。
そうして待つこと数分、ついに「2人で作ったカレーライス」が完成した。
「ロザリンデ様、できましたよ!カレーライスです!」
差し出された皿の上には、輝くほど白い炊きたてのご飯とゴロゴロの野菜が印象的なカレールゥが綺麗な調和を見せていた。
私は久しぶりに食べる「カレーライス」に目を輝かせながら、柊華が自分の分を盛り付けるのを待つ。
「柊華、今回は誘ってくれてありがとう。久しぶりに料理の楽しさを思い出したよ」
「それは良かったです!私もロザリンデ様と一緒に作れて良かったと思ってますよ!」
2人で一緒に手を合わせ、ふぅふぅと冷ましながら出来たてのカレーを頬張る。柊華と一緒に作った料理は、より一層「手作りの温かみ」を感じられ、いつもよりも更に美味しく食べることが出来た。

「ロザリンデ様、どうでしたか?2人で料理するのも、案外悪くないでしょ!?」
「……そうだね。たまになら付き合ってあげてもいいかな」
「本当ですか!?約束ですよ〜!」

glacial nymph
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【ココアと過去と現在と】
登場人物:西川御巴留、日比野羽来、長洲聖那

秋も深まった11月のある日のこと、イルマ女子から秋女の大館分校に短期留学している西川御巴留は、秋女の3年生である長洲聖那から「用事があるから会議室に来てね」と呼び出されていた。差し当たって呼び出されるような案件が思い浮かばなかった御巴留は、首を傾げながら会議室へと向かった。

会議室の前では既に聖那が待機しており、先輩を待たせてしまった事を詫びつつ部屋の扉を開ける。すると、そこには予想外の人物が待っていた。
「みはる〜!せな〜!ひさしぶり〜!」
御巴留と同じレギオン・イルミンシャイネスのメンバーである日比野羽来だ。羽来はほんわかとした雰囲気を漂わせながら2人に手を振っている。
「な、羽来……!?」
それを見た御巴留は驚いたように聖那の方を見る。すると、聖那は「してやったり」と言わんばかりの笑みを浮かべながら羽来の方へ駆け寄り、よしよしと頭を撫でた。
「お〜、羽来ちゃーん!久しぶりだねぇ〜」
「聖那様まで……!?というか、ご存知だったのですか!?」
「そりゃあ勿論!御巴留を驚かせようと思って黙ってたワケだし?」
いたずらっ子のような笑みを浮かべる聖那につられたのか、羽来もにへらと悪い笑みを浮かべる。……もっとも、その"悪い笑み"は傍から見れば"子供の悪巧み"くらいの悪い笑みでしかないのだが。
「えへへ……せなに『御巴留には秘密だよ』って言われたから秘密で来ちゃった〜」
そんな悪い笑みもどこへやら、羽来は両手いっぱいに持ったお菓子の袋を差し出しながら悪びれもなくそう述べる。そんな羽来の様子を見てしまっては、自分にも他人にも厳しい御巴留と言えど、流石に怒れなかったようだ。
「……はぁ」
ため息とは裏腹に、御巴留の表情はどこか嬉しそうだ。久しぶりに"戦友"に会えた嬉しさからか、完全には喜びを隠しきれていなかった。
「そんな溜息ついちゃって〜、顔は嬉しそうだけど?」
「まぁ、嬉しいのは否定できないですが……」
そんな御巴留を見逃す聖那のわけがない。うりうりと御巴留の脇を小突き、これみよがしにちょっかいをかける。本校でならやれ懲戒処分だのやれ訓告処分だのと言われそうだが、ここは大館分校だ。まったりとした雰囲気の3人を咎める人間など、いるはずもなかった。
「なら良かった!ほら、羽来ちゃんの持ってきたお菓子並べるよ〜!」
てきぱきと羽来が持ってきた袋からお菓子を取り出し人数分並べ始める聖那を見て、御巴留の表情は思わず綻んだ。仲間たちとこんな風に楽しい時間を過ごすなど、いつぶりだろうか。羽来やルド女に転校していった日葵と共に『イルマ四天王』と呼ばれ、一緒に切磋琢磨していた時以来か____などと、御巴留はふと過去に思いを馳せる。ぼーっとその場に突っ立っていた御巴留を心配したのか、羽来が御巴留の元へてちてちと歩み寄る。
「みはる〜?ぼーっとして、どうしたの?嫌なことでもあった?」
お菓子を並べていた聖那もふと動きを止め、普段とは違う真剣な目つきで御巴留を見つめる。
「別に大したことではないですよ。過去を少し思い出していただけです。お菓子も並んだことですし、私は飲み物を淹れてきますね」
2人の視線から逃れるように、御巴留は会議室の脇のポットの方へと向かう。

「せな〜……みはる、なんかさみしそうだった……」
しょんぼりとする羽来を見て、聖那は慰めるように背中をさする。
「大丈夫だよ、羽来ちゃん。御巴留は羽来ちゃんが来て嬉しかったんじゃないかな?あの子、顔に出さないだけで実は寂しがり屋さんだからさ」
聖那に優しく宥められた羽来は、ふと立ち上がると御巴留の元へと駆け出した。
「わく、みはるのこと元気にしてくる!」
「ちょ、ちょっと羽来ちゃーん!?」

「みはるーっ!!!」
はぁ、と深いため息を吐く御巴留の背中に、聖那に慰められた羽来が勢いよく抱きつく。
「……羽来か。心配させてすまなかった、羽来のおかげで私はもう元気だよ」
ほら、と御巴留は心からの笑顔を羽来に見せる。それを見た羽来もつられて笑顔になり、御巴留にぎゅっと抱きついた。
「わく、みはるがここにいる間もレギオンのみんなといっぱいヒュージ倒したんだ〜!だからね、みはるは戻ってくるまでわく達のしんぱいしなくてもだいじょーぶ!わく達、つよいもん!」
ふんす!と胸を張って自分を安心させようとする羽来の健気さに、御巴留は思わずくすくすと笑ってしまった。
「すまない。羽来があまりにも可愛かったものだから、つい笑ってしまった。羽来の好きなココアも丁度淹れ終わったところだし、3人でおやつパーティーとでも洒落込もうじゃないか。たまには息抜きしたって怒られないさ」
それを聞いた羽来はその場でぴょんぴょんと飛び跳ね、普段厳しい御巴留と一緒におやつが食べれると喜んでいた。

「さーて!それじゃあおやつパーティー始めるよ〜!」
聖那の一声で、のんびりまったりとおやつパーティーが始まった。3人とも思い思いのお菓子に手を伸ばし、幸せそうに頬張っている。その空間には、普段の苛烈な戦闘から解放された普通の少女達の姿があった。
【ココアと過去と現在と】[完]

glacial nymph
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【私と姉とその姉と】
(元ネタ blackさんの【3人でデート】)
※この文章には私なりの解釈や改変が含まれています。

「これなんか似合うんじゃないか?」
「いえ、鏡月には此方の方が……」
 
私、浅芽鏡月は何故か仲良く私の服を選んでいる擬似姉のお二人の間に立たされている。……何故こうなったか説明する為には、少しだけ時を遡る必要がある。

「陽様、今週末は快様とお出かけでしたよね?」
「鏡月も行きたいですか?」
「いえいえ、とんでもないです。折角の休日なんですから、お二人で楽しんで下さい」
そう私が辞退すると、陽様が私の服をちろりと見たのち快様に声をかける。どうやら私には秘密のようで、色を見ても何をされるのかはわからなかった。ただ、穏やかな色合いであることから「楽しいこと」であるのは明白だった。
「どうでしょう?私にしては名案だと思うのですが」
「良いんじゃないか?鏡月にも楽しんでもらえそうだし」

……私はお二人の時間を邪魔せんと固辞しましたが、あれよあれよという間に一緒についていく事になったのでした。
 
 
服を手に取り笑い合うお二人の姿は私の眼じゃなくても幸せそうなことが一目瞭然。今浮かべている笑顔も、映し出した暖かい色も、快様にだけ向けられるもの。その事に浅ましくも嫉妬していた時期があったが、陽様と血盟を交わした今はお二人の関係が良いことをとても喜ばしいと思える。

「「鏡月はどっちが良いと思うんだ?(思いますか?)」」
 
お二人の手には毛色の違う服が。陽様か、はたまた快様の服でしょうか。私には判断がつかず返答しかねていると、陽様が呆れたように口を開く。
 
「何故呆けた顔をしてるのですか?鏡月、貴女の服ですよ」
 
「……はい?」
思いがけない言葉につい首をかしげてしまった。今日、私はお二人のデートに同行するだけでは無いのでしょうか。私はお二人を見守る壁、観葉植物。ただこうやってお二人を見ているだけで満足なのですが。
 
「ほら鏡月、試着室に行きますよ」
「鏡月に似合いそうな服は色々見繕ってきたからな、沢山着て貰うぞ」

「疲れた……」
 
数時間に渡ったお姉様達の着せ替え人形から解放された私の前には、労いのジュースとケーキが置かれていた。
「少し休憩しよう」と言われて連れられたのは落ち着いたお洒落なカフェではなく、何処にでもあるファミレスだった。
 
ファミレスに連れてこられた真意を探ろうと快様の顔を伺っていると、こちらの視線に気付いた快様が笑いかけてくる。なるほど、これは後輩達に人気があるのも分かる笑顔ですね。
そう私が考え事に耽っていると、快様が口を開きながら何やら私の背中の方をを指している。指された方向を見れば、楽しげな陽様がドリンクバーでジュースを選んでいるお姿があった。
 
……うん?
 
後ろで何やら笑いを堪える雰囲気が視えたが、気にする余裕は無い。……このお出かけが始まってから陽様の色は常に楽しげだった。ひとえに快様が居るからだろう。だが、今のお姿はなんだ?快様と一緒じゃなくても楽しいのだろうか……?

「くくくっ」
 
視線を戻せば快先輩が何やら笑っている。何か私に不手際でもあっただろうか。
 
「悪い悪い。鏡月の反応が思ってたより面白くてさ。アイツ、学校であれだけ堅苦しい雰囲気出してるけどこういう場所に来るのが大好きなんだ。家が厳格でファミレスとかに来れなかった分、全寮制の秋女に来てから……と言うよりは私と血盟を交わしてからだな。たまーにこうしてファミレスに行くようになった。最初は私から陽への贖罪だったんだが、だんだん陽の方からファミレスに行きたいと言い出すようになってな。それで今でもたまに通ってるってこった」

快様の快活な笑みには、陽様の過去に対する憐憫などは感じられなかった。むしろ、今の陽様に素直に向き合っていこうという前向きな感情で占められていた。
……あぁ、やっぱりこのお二人の擬妹でよかった。このお二人の前でなら、素直な自分でいられるだろうから。

元リンク
#1185893202620842155 message

glacial nymph
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はるみづASMR風SS(解釈がアレ)

鏡月、たまには私と2人でご飯に行きませんか?……これは、普段から頑張っている鏡月へのご褒美です。

は、陽様が私をご飯にお誘いして……!?

ふふ、そんなに驚かれてしまうと私も考えた甲斐がありますね。日時を先に決めてしまっていたのは申し訳ないのですが、これが私なりの姉として出来る恩返しなのです。受け取ってくれますか……?

陽様が、私のために……?はい、喜んで同行させていただきます……!

よかった、そう言ってくれると私も考えた甲斐があるというものです。……その、急かすようで申し訳ないのですが、今から着替えてもらえますか?私としたことが、予約の時間を1時間勘違いしていて……

……!!!天ヶ瀬様に恥をかかせる訳にはいきません。すぐに着替えてきます。

すみません、よろしくお願いします。

天ヶ瀬様、お待たせしました。時間はまだ大丈夫でしょうか……?

えぇ、鏡月が素早く着替えてくれたおかげで余裕が生まれました。普通に歩いても十分間に合うと思います。

それなら安心しました。私が着替えに手間取ったせいで天ヶ瀬様が恥をかく事態になったら、私はどうしたらよいかと……

悲観しすぎですよ、鏡月。遅れたら私が謝ればいいだけのことです。それに……私にも人間味があると知ってもらえた方が、街の人々も少しは私に親しみやすいでしょう?

天ヶ瀬様、流石です……!やはり天ヶ瀬様は私よりも数歩先の視点で物事を見ていますね……!

鏡月、私を呼ぶ時は「陽様」でしょう?それと、別に私は特別なことをしている訳じゃありません。ただ自分の出来る最善手を打っている、それだけの事です。……おや、話している間に着いてしまいましたね。では、この話はまた後でにしましょうか。

わかりました、陽様。

鏡月、なんでも好きなものを頼んでくださいね。

しかし、陽様のお財布に負担をかける訳には……

心配いりませんよ、鏡月。自慢ではありませんが、それなりに稼ぎはありますから。ですので、今日は値段を気にせず食べてください。

では、遠慮なくいただきます。えーと……「季節のビッグスイーツパフェ」を食べたいのですが、よろしいですか?

勿論ですよ。……と言いたいのですが、鏡月1人で食べるには些か大きすぎやしませんか?余してしまったら、お店の人に失礼でしょう。あまりこういうことは言いたくありませんが、何か別のものを____

陽様。陽様は先程「普段から頑張っている鏡月へのご褒美です」、そうおっしゃいましたよね?ですから、私はご褒美として『陽様と一緒に同じパフェを食べること』を要望します。

……ッッッ!

陽様……?やはり、私の要望は出過ぎたものだったのでしょうか……

そんな事はありませんよ、鏡月。ただ、貴女が私に対してきちんと自分の意見を向けてくれるようになったことが嬉しくて……

は、陽様!?そんな涙ぐまずとも……

な、泣いてなどいませんよ……!?ほら鏡月、注文しましょう?

陽様がそうおっしゃるのなら、泣いてないってことにしておきます。……私と陽様だけの秘密ですからね?

……そうしてくれると助かりますね。秋女の生徒会長が泣いたことを知ったら、いの一番にからかいに来るであろう人を何人も思い浮かべてしまったので……

やっぱり、快様にだけは報告しておきますね。デートの様子は擬姉へ報告するように、と仰せつかっていますので。

こ、快へ……!?それだけはどうか……!

ふふ、冗談ですよ陽様。私が最も敬愛するのは陽様ですから。ほら、パフェも届きましたし一緒に食べましょう?

そ、そうですね。ほら鏡月、あーん……

……!?!?!?!?

そんなに驚かないでくださいよ。私だって恥ずかしいんですから、早く食べてください……

い、いただきます……(陽様が、陽様が私に「あーん」を……!?これは夢でしょうか?これが夢なら覚めないでほしいものです……!)

____づき、鏡月。起きてください。もう夕方ですよ?

……陽様?あれ、季節のパフェは……?

随分幸せそうに寝ているものですから、どんな幸せな夢を見ているのかと思ったら……パフェを食べていたんですね。

夢、かぁ……

そんなにしょんぼりして、どうしたんですか?

実は、陽様が私と一緒にパフェを食べる夢を見ていたんです……

それなら、明日にでも行きましょうか。丁度明日は暇でしたし、いい喫茶店でも見繕っておきますね。

陽様……!!!

そんなに嬉しそうにされると、こっちが照れてしまいます。楽しみにしていてくださいね?鏡月。

勿論です……!

glacial nymph
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【猫になった私と大切な擬姉】

ぴょこぴょこ、むずむず。……何やら頭の方で変な感覚がする。その異物は、まるで身体の一部であるかのようにピクピクと動いている。私____天ヶ瀬陽は起きたばかりの眠い身体を動かし、違和感の正体を確かめるべく洗面所へ向かった。
……私の視線の先には、頭に生えた猫耳が2つ。廊下から聞こえるパタパタ……といった小さな足音を拾い、その度にピクピクと小刻みに動いていた。
「ど、どうしましょう……!?このままでは、生徒会長としての威厳が……!」
私が焦りながら部屋と洗面所を行き来していると、同室の擬姉____月夜野快が眠たげな目を擦りながら洗面所にやってきた。
「なんだよ陽~、わざわざ休日の朝から慌ただしく動き回らなくたっ……て……は?」
快の視線は私の頭で止まり、そこから暫し動かなくなってしまった。数刻の後、快は私の顔に視線を戻し、困惑した顔でこう告げた。
「陽、ハロウィンならとっくに終わってるぞ……?」
「生やしたくて生えた訳じゃないんですっ!」
私が快に向けて怒ると同時に「ふしゃー!」と毛を逆立てるような感覚があり、私は思わず快に泣きついてしまった。
「こころ……にゃ~ん……」
この少しの間にもどんどん私の猫化が進んでしまっているが、もうそんなのはどうでも良かった。何も言わずに静かに私の背中を撫でてくれる快の存在が、今はただただありがたかった。

「ごろごろ、ごろごろ……」
時は過ぎて、午後2時頃。私はベッドの上で丸くなりながら快に顎を撫でられていた。お昼ご飯は快に食べさせてもらって何とか食べたが、猫らしく熱いものが食べられなくなっていたので、食事には随分と時間を要してしまった。今の時間帯は、猫にとっておひるねタイムだ。暖房とこたつによって適度に暖かい部屋の中で、快に背中を撫でられながら私は眠りに落ちていったのだった。

とんとんとん……という音で目が覚めた。部屋の窓から入る光は既になく、夜空には星が煌めき始めていた。しかし先程まで私を撫でていたはずの快の姿は無く、代わりにキッチンからいい匂いが漂ってきていた。
「ふにゃ……?」
快はどこだろう?と首を傾げる私は、身体に生じた更なる異変に気づく。身体が小さく、そして軽いのだ。更に視線もかなり低い。まさか……!と思って手を見ると、私の手はぷにぷにの肉球が備わった足になっていたのだ。
「ふにゃーっっっっっ!?!?!?」
私はショックのあまり一目散にキッチンへと走り、快を見つけるや否や左足にすり寄った。
「にゃー、にゃーにゃー、にゃー……!」
私がどれだけ頑張っても、私の声帯は人の声を出してくれなかった。出るのは哀愁漂う猫の鳴き声だけ。せめて寂しさを紛らわせようと、ごろごろと喉を鳴らしながら快の左足にすり寄る。すると、私の不安を感じ取ってくれたのか、快がしゃがみこんで私に目線を合わせた。
「大丈夫だ。陽がどんな姿になったとしても私は陽を見捨てないし、ずっと陽の味方だ。不安もあるだろうけど、絶対私が支えてみせるからな」
「にゃー!」
はっきりと言い切った快は、猫になった私から見ても惚れてしまうほどのかっこよさだった。

【猫になった私と大切な擬姉】[完]

glacial nymph
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【『2人で1人』の擬似姉妹(1)】
「りく姉、たす、けて……」
ヒュージに不意討ちを喰らった由比の顔は青く、失血も酷い。この場に治療できる道具もなければ、今から学校に戻る時間もない。
「クソ、このままだと由比が死んじまう……!考えろ、俺……!」
とめどなく流れていく血とは裏腹に、俺の頭は何も有効な案を捻りだせない。そうこうしている間にも、由比の命の灯火は少しずつ消えていく。その時、由比を救えるかもしれない大博打を考えついた。俺の持つ「ユーバーザインS」を使い、俺の人格を由比の人格で上書きするしかない。そう思ってしまったのだ。落ち着いて考えればもっと他の選択肢もあったのかもしれないが、その時の俺は一筋の蜘蛛の糸に縋る他選択肢がなかった。
「すまん由比、俺にはこれしか……!」
今にも息絶えそうな由比の心臓に手を当て、レアスキルを使って俺を由比で上書きする。自分の中に異物が入ってくる、言葉には出来ない気持ち悪い感覚が俺を襲った。
「ぐぁっ……あ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛っ゛っ゛っ゛!!!!!」
灼けるような熱さに悶え苦しむ俺の声に反応して、ヒュージが迫る音が聞こえてきた。由比の身体を殺してしまったことからも、由比が目覚めた後の苦悩からも目を背けてしまいたくて、逃げるようにその場を後にした。

「はァ、はァ……!クソ……!耐えろ、俺の身体……!」
戦場を離れた俺は、由比が俺の身体に適合するまで実家に戻ることを考えた。深い理由なんてない。だけど、仲間に顔を見せたくなかったことだけは確かだった。

「た、ただいま……母さんいる……?」
ぱたぱたとスリッパが床に触れる音が聞こえるが、俺はもう既に限界を超えていた。
「はーい、いますよ〜……って麗徠!?そんな辛そうにしてどうしたの!?熱でも出て帰らされたの?」
「ごめん、そこは言えない。……しばらく自分の部屋に籠らせて。あと教導官とかが来ても『麗徠は来ていない』って言って」
母さんは困惑しながらも頷き、了承してくれた。それを見た俺はふらついた足取りで2階の自分の部屋へ向かい、ベッドに倒れ込んだ。
「とりあえず一段落、か……」
はぁ、と気の抜けた声が荒い呼吸と共に漏れる。
起きた時の由比はどんな反応をするんだろうかと考えたが、少なくとも感謝ではないことは容易に想像がついた。今この時だけは、由比と顔を合わせたくなかった。いや、合わせる顔がなかったというのが正しいだろうか。どちらにせよ、私の心は「由比が起きなければいいのに」という薄ら暗い願いを孕んでいた。そんな自分のドス黒い一面から目を背けるように、私は突然襲ってきた眠気に身を任せて眠りに落ちた。

「ここ、どこ……?」
私____黒姫由比は、知らない部屋で目を覚ました。身体も変だし、視点もなんだかおかしい。妙にズキズキと痛む頭を押さえ、誰かいないかと部屋を出てみることにした。
部屋の扉を開けると、そこには麗徠姉のお母さんが立っていた。私は頭が割れそうなほどの痛みを堪え、そして少し違和感も覚えつつ丁寧に挨拶をする。
「麗徠姉のお母さん、お邪魔してます!……え!?」
私が喋った途端、麗徠姉のお母さんと私は同時に目を見開いた。私が発したはずの声が、明らかに麗徠姉の声色だったからだ。
「今の挨拶、由比ちゃんよね……?麗徠、あの子何かとんでもないことをしでかしたんじゃないかしら……!?」
「私は大丈夫です」とか「麗徠姉はそんな酷いことしないですよ」とか、麗徠姉のお母さんを励ます言葉はいくらでもあるはずなのに。その全てが発されることなく口からこぼれ落ちていった。

私は、その場に崩れ落ちて泣き続ける麗徠姉のお母さんを黙って見ていることしか出来なかった。それが、どうにも悔しくてたまらなかった。(つづく)

glacial nymph
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ふと、陽や鏡月と一緒にいたくなった。別に、イオンに行くとかそごうに行くとかじゃなくていい。大切な人達と、クリスマスイヴを一緒に過ごしたくなった。2人とも、私の大事な妹だから。普段可愛がってやれない分、今日くらいは恩返ししなければと思ったのだ。

「快と一緒にいたいのはやまやまなんですが、今日は外せない会合がありまして……」
……私の計画は、初っ端から挫折してしまった。
「そっ……か。そうだよな!ごめんな、急に誘っちまって!」
しくじった。陽は前々から「今日は別のガーデンとの会合がある」と言っていたのに。私だけが浮かれて____
自然と涙腺が緩みそうになり、無理矢理笑顔を作ってその場を離れる。

「快のばか、あれじゃ私が泣かせたみたいじゃないですか」

「はぁ……」
当てが外れてガックリと肩を落とす私の前に、歩いてくる鏡月が見えた。鏡月は私を見つけると表情一つ変えずに歩み寄り、私の目の前で立ち止まった。
「快様、おはようございます。そんなに落ち込まれて、どうなさったのですか?」
鏡月は変わんねぇなー……と思いながら、先程あったことを話す。
「お言葉ですが、陽様はとても忙しいですから、当日にいきなり『今日は一緒にいよう』というのはいくら快様でも流石に無茶かと……」
わかってる。わかってるんだ、そんなこと。それでも、鏡月から突きつけられた言葉はあまりに鋭かった。
「……だよな、やっぱり無理だったよな!ごめんなー、こんなこと聞いてもらって。じゃ、私はこれで」
ばいばい、と鏡月に手を振って寮の自室へと向かう。

「はい、快様はまだ気づいていないご様子です。ですが____」

自室に帰ってきた私は、ぼふっとベッドに倒れ込む。さっきまであんなに意気揚々としていたのが嘘のようだ。
「陽や鏡月と、遊びたかったなぁ……」
その一言をきっかけに、ぽろぽろと涙がこぼれてきてしまった。私は枕に顔を埋め、声を堪えながら泣いた。
「バカだなぁ、私……!」

____いつの間にか眠ってしまっていたようだ。カーテンの外は暗くなっており、一番星が輝こうとしていた。泣き疲れて眠るなんて子供みたいだ、そう苦笑しながら立ち上がる。顔を洗い、髪を整えると、コンコンと扉が2度ノックされた。こんな時間に誰かが来る用事なんてあったか……?そう思いながら扉を開けると、陽と鏡月がそれそれクリスマスケーキとフライドチキンの箱を持って立っていた。
「「快(様)、メリークリスマス(です)」」
「陽、鏡月……!」
一日中寂しさが付きまとっていたこともあり、思わずドア先で2人のことを抱きしめてしまった。
「苦しいです、快。それに、早くケーキを置かなければ崩れてしまいます」
……バカだなぁ、私。私は十分幸せ者じゃないか。私の事を想ってくれる後輩達がいて、その後輩達はクリスマスを一緒に過ごそうとしてくれている。これ以上のクリスマスプレゼントなんてあるだろうか?
私は嬉しそうに2人を招き入れ、妹達と3人きりのクリスマスパーティーの準備を始めるのだった。

glacial nymph
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【ドーナツ屋さん探しの旅にれっつごー!】
「せな〜、わくドーナツ食べたい〜……」
羽来は座りながら地面に届かない脚をパタパタと動かし、向かいに座って書類仕事をこなしていた聖那にねだった。そのおねだりを聞いた聖那はひとつおおきく伸びをして、ペンをテーブルに置いた。
「そうだねぇ……羽来ちゃんには随分暇させちゃったし、ドーナツ屋さん行こっか!」
ニコッと羽来に笑いかけた聖那は、椅子から立ち上がると財布をカバンにしまい羽来の方に向き直った。それを聞いた羽来は嬉しそうに飛び跳ね、聖那に抱きついた。
「わく、せなのことすき〜!だからはやくドーナツ屋さんいこ?」
「はいはい、わかったわかった。でも羽来ちゃんが私に抱きついてると、いつまで経ってもドーナツ屋さん行けないぞ〜?」
羽来に抱きつかれた聖那はそう言って少し意地悪そうな笑みを浮かべ、自分が動けないことを羽来に伝える。それを聞いた羽来は慌てて聖那から離れ、少し寂しそうに右手を差し出す。手を繋ぎたいのだろう、と悟った聖那は優しく羽来の右手を握り、「行こっか、羽来ちゃん」と羽来に声をかけて一歩踏み出した。

二人で廊下を歩いていると、何やら考え事をしている御巴留が羽来の視界に入った。羽来は思わずと言った様子で御巴留の方へ駆け出し、それに引っ張られる形で聖那も彼女の元へ向かった。
「みはるーっ!」
「誰かと思えば、羽来と聖那様じゃないですか。二人でどこかにお出かけでもされるんですか?」
御巴留は聖那に向けて軽く一礼し、羽来も随分聖那様に懐いたものだ……と思いながら聖那に問いかける。
「わくね、せなと一緒にドーナツ屋さん行くの!みはるも一緒に行こ?」
ワクワクウキウキといった様子で誘う羽来を宥めるように、御巴留は羽来に視線を合わせる。
「羽来、年上の方を呼ぶ時はきちんと『様』をつけましょうね。相手の方に失礼です。それと、むやみに他校の方を連れ回すのもよくありません。羽来がドーナツ屋さんに行きたいのは構いませんが、聖那様を引き連れて行くのは迷惑でしょう?」
いつも通りの堅苦しいお説教でシュンとなった羽来を見かねてか、たまらず聖那が仲裁に入る。
「まぁまぁ、御巴留もそんな気にしないの!私は羽来ちゃんから呼び捨てされても全然気にしないし、むしろ羽来ちゃんからなら全然OK!だから御巴留もドーナツ食べに行くよ!」
聖那は御巴留に反論させる隙さえ与えず、おまけに羽来の目標だった「御巴留をドーナツ屋さんに連れていく」まで達成させてしまった。御巴留は半ば諦めの境地で考え事を放棄し、二人に着いていくことにしたのだった。

「ドーナツ屋さん、ついたー!!!」
歩き始めて二十分、ドーナツ屋を視界に入れた羽来が嬉しそうにぴょんぴょんと跳び跳ねる。
「こら羽来、他の人もいるのですからそんなに騒いではいけませんよ」
先程落ち込まれたことを気にしているのか、優しくたしなめる御巴留。あくまで冷静を装ってはいるが、視線はちらちらとドーナツが入ったショーケースの方へ向いている。なんだかんだ言いつつもドーナツ屋に来れて嬉しいようだ。

三人でお店の入口の近くで何を買うか話していたその時、五歳ほどの女の子と母親らしき女性が聖那の方へてとてと歩み寄ってきた。
「すみません、この子がどうしても貴女に伝えたいことがあるらしくて……少しだけお時間いただけますか?」
ぐっ、と母親に向けて親指を立てると、聖那は女の子の目線に合わせてしゃがみ、"話してごらん"と目線で伝える。
「せなおねーさん、いつもまもってくれてありがと!だからね、わたしがせなおねーさんにおかしあげる!」
女の子はそう言って小さなチョコレートを聖那に向けて差し出した。聖那は嬉しそうにそれを受け取り、女の子の頭を優しく撫でて感謝の言葉を述べた。
「ありがとうね、そう言ってくれると私も頑張れるよ!」
それを聞いた女の子は嬉しそうにジャンプし、「バイバーイ!」と言いながら母親の元へ戻って行った。

嬉しい想定外はあったものの、無事ドーナツ屋の店内に入った三人は所狭しと並べられたドーナツの中からお気に入りのドーナツをチョイスしていた。
「う〜〜〜〜〜……みはるー、わく決められないよ〜……」
呻き声をあげる羽来を見かねてか、御巴留がいちごチョコドーナツとチュロス、チョコリングを羽来の持つトレイに素早く置いた。
「羽来の好きそうなドーナツを選んでおきましたから、会計に行きましょう。ここでいつまでも悩んでいては他の人の迷惑になりますからね」
「みはる、ありがと〜……」
少し嬉しそうな表情に戻った羽来は、そのままショーケース前のレーンにトレイを滑らせて会計へ向かった。

#

「「「いただきます」」」
食前の挨拶をした三人はそれぞれ思い思いにドーナツを頬張った。いちごチョコリング、チョコファッション、フレンチクルーラー……思い思いのドーナツを頬張る三人は、『戦乙女の日常』と形容するに相応しい空間だった。

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タイトルと発案はblackさんにお力添えいただきました。
この場を借りて御礼申し上げます。

glacial nymph
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※おふざけです。真に受けないでください。

鬼天「ここちゃんいつものやったげて!」

快「お前本気か……?」

鬼天「そんな事言わないの!ほらいくよ!ここちゃんいつものやったげて!」

快「おう聞きたいか陽の武勇伝」

鬼天「そのスゴい武勇伝を言ったげて!」

快「陽の伝説ベスト10 レッツゴー!」

快「入学してから史上初尽くし」

鬼天「すごい前人未到のアンタッチャブル!」

「「武勇伝武勇伝武勇デンデンデデンデン」」

鬼天「レッツゴー!」

快「討伐数なら世界で1位、出撃の数もおそらく1位!」

鬼天「すごい誰にも負けない偉大な記録!」

「「武勇伝武勇伝武勇デンデンデデンデン」」

鬼天「レッツゴー!」

快「立てばヒトラー座ればチトー歩く姿はヨシフ・スターリン」

鬼天「すごい嫌味と皮肉のバーゲンセール!」

「「武勇伝武勇伝武勇デンデンデデンデン」」

鬼天「レッツゴー!」

快「1人でケイブを潰した結果、付いた異名は『Silver Bullet』」

鬼天「すごいなんでも解決銀の弾丸!」

「「武勇伝武勇伝武勇デンデンデデンデン」」

快「カッキーン!」

鬼天「スゴいよ〜!陽ちゃんスゴすぎるよ〜!あーっ!ここちゃんが近づいてくる!止まってよここちゃん!」

快「止まれねぇ!」

鬼天「止まって!」

快「止まれねぇ!止まれねぇんだよ私らの人生は!」

鬼天「ここちゃんかっこいい……!」

快「カッキーン!」

陽「快、渚黎さん。こんな所で一体何をしているんです?」

快「いや待て陽!話せばわかる!だから一旦charmをしまえ!な!?」

鬼天「そうだよ陽ちゃん!まだ怒るには早いと思うよ!?」

陽「問答無用ッ!『ゼノンパラドキサ』!」

ゴスッ ドスッ

「「ぐえっ」」

バタッ……

陽「全くもう……せめて私に断りを入れるなりしてほしいものですね」

glacial nymph
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【天ヶ瀬広島出身if現代パロ】

はぁ。

そうですか。

……なんですか?先輩。

別に眠い訳じゃないですよ?確かに、疲れているのは否定しませんが。

きちんと先輩の話は聞いていますから、変わらず話してくださって結構です。

それにしても、少し変ではありませんか?

「何が?」って、車内販売のアイスです。少し前まで売ってたでしょう。

「今は東京駅で事前に買うことになってる」……?あ〜、たいぎぃ……

あ……

なんでもないです、忘れてください。

なんも、ただの方言です。

先輩みたいな「東京生まれ東京育ち」のあーばんぼーいにはわかりませんよ。

私は広島の山奥の三次(みよし)のそのまた山奥の生まれなんです。

だから方言がキツくて、それがコンプレックスなんです。

「なんか方言喋ってみてよ」〜?ほーら出よった、東京モンの常套句。

そんなんパッと言われて出てくるわけないじゃろ。

別にはぶてちょらんし、もうええです。喋らんとってください。

うちは先輩に怒っとらん!「方言で話して」って言われるんがたいぎいんじゃ!

……やからよ、せめてえっと可愛い可愛い連呼するんはやめてくれんと?

あーもう!先輩、反省しちょらんですね!?そげんニヤニヤしよって!

うちやって別に好きで方言話しとらん!

……先輩みたいな東京モンにはわからんやろうけど。

うち田舎モンじゃけえ気ぃ抜くとすぐ方言出よるんよ。

そんでこまい頃からようけかもうたりされよって。

自分から口きかんようにしちょったっちゅーわけです。

何言うてるかもわからんじゃろうし、先輩もたいぎいやろ?

は、はぁ!?「可愛い」!?

やから先輩!そんなえっと可愛い可愛い言わんで!

うちの心臓が爆発しそうになるけぇ……

……先輩のバカ。嫌うとるわけない。

好きに決まっとるじゃろ。

わー!?わーーー!!!!!なんも!なにも言うとらんけんね!?

先輩!そげにニヤニヤせんと、早う返事を……!

「好いとーよ」〜?そりゃ博多弁じゃ!このバカ!

あとでみっちり広島弁の何たるかを叩き込んじゃるけぇのぉ……!

なーんて、冗談じゃよ。

これからは同僚としても、彼氏としても。よろしゅうお願いしますね?先輩♪

glacial nymph
#

||美鈴様と羽来ちゃん姉妹||if
人を選ぶかもしれないので海苔です。頑張りました。
||羽来ちゃん美鈴様ごめんなさい。||

||わくには、ちいさい頃からわくにしか見えない「お姉さん」がいる。お姉さんのなまえを聞いてもおしえてくれないのに、わくのなまえは知ってる。「なんでわくといっしょにいるの?」って聞くとすこし悲しそうな顔をするけど、「いつか羽来にもわかるよ」ってなでてくれる。でもその時のお姉さんの手、すっごくさみしそう。きょうこそお姉さんに「なんで悲しそうなの?」ってきくんだ……!

「お姉さん、なんでわくのことをなでる時にすっごく悲しそうなかおをするの……?わく、なにか悪いことしちゃってたのかな……」
お姉さんは少しこまったようなかおをして、わくの頭に手をのばす。
「大丈夫だよ、羽来。君は何も悪いことなんかしていないさ。心配させてごめんね。少し……ほんの少し私が寂しいだけなんだ」
お姉さんはまた悲しそうにわくの頭をなでる。
……わくがお姉さんをさみしくさせちゃってるんだ。わくだって、お姉さんを元気にできるもん!
「おねえさん!わく、どうしたらお姉さんを元気にできる?わく、お姉さんが悲しいかおなのやだ!」
お姉さんはちょっと迷って、わくに目をあわせる。
「私が今から話すことは羽来にとってとても辛いことだ。それでも……私を元気にするために聞きたいのかい?」
お姉さんは、すごく悲しそうな顔をしながらわくにきいた。
わく、ここでこわがっちゃダメだよ!わくはお姉さんを元気にするんだ……!
「わくはだいじょーぶ!お姉さんが元気になるなら、わくはなんでもするからね!」
にこっと笑って、わくはお姉さんの目をみつめる。だいじょーぶ、こわくないもん……!
「ずっとはぐらかしてきた自己紹介をするとしようか。私は日比野美鈴さ」
ひびの……?
「ヒュージの襲撃から君を庇って亡くなった、羽来の『お姉ちゃん』だよ」
お姉ちゃん……?「わくのお姉ちゃん」……?うそだ。わくにお姉ちゃんなんていないもん。お姉さん、うそついてる。わくを庇ってしんだのも、わくのお姉ちゃんなのもうそだもん……!
「信じられない、って顔だ。もっとも、私が死ぬ直前に羽来から私の記憶を消してしまっているから、当然と言えば当然なのだけど」
お姉さんの「やっぱり忘れてたよね」ってかお、すごくこわい。こわいのに、うごけない……!
「その様子だと、まだ思い出せてないみたいだね。あまりこれは使いたくなかったけれど……羽来が『私を元気にしたい』って言ってくれたんだ。使ってあげなきゃ不義理というものだろう?」
お姉さんの目があかくなって、ちょっとずつぼんやりとしていく。にげなきゃなのに____!

『羽来!こっちまで走ってこれるかい!?』

『お姉ちゃん、こわくてうごけないよ……!』

『今そっちに行くよ!ちょっとだけ待つんだ!』

『お姉ちゃん……!』

『羽来、危な____ァッ』

『お姉ちゃん!?』

『羽来、はやく逃げて……私のことはいいから……』

『お姉ちゃん!起きてよ!お姉ちゃん!お姉ちゃーん!!!』

「お姉ちゃん……」
わく、お姉ちゃんのこと、なんで忘れてたんだろ……わく、お姉ちゃんのことだいすきだったのに……!
「その様子だと、無事思い出してくれたみたいだね。改めて自己紹介をしようか。私は君の実の姉、日比野美鈴さ。羽来、今日からまた宜しく頼むよ」
お姉ちゃんがしんじゃったのはわくのせい……なんでお姉ちゃんじゃなくてわくがいきてるんだろ……!
「羽来、私が君を庇って死んだことは事実だ。でも、そのせいで君が悲しむ必要はないんだ。それは何故か、私は君を誰よりも大切な人間だと思っているからなんだ。だから、君が悲しむ必要はどこにもない。わかったかい?」
なくの、やめなきゃ……。お姉ちゃんが「なかなくていいよ」っていってるのに、涙がとまんないよ……!
あ、みすずお姉ちゃんがわくの頭をなでてくれてる……。あったかい……。
「うっ、ぐすっ、みすずお姉ちゃん……」
「大丈夫だよ、羽来。怖い思いをさせてすまなかったね。でも、これからはずっと一緒さ。お姉ちゃんがずっとずっと羽来を護ってあげるからね」
「……うん!」||

glacial nymph
#

バチバチなシーンが書きたかった。書けなかった(遺言)
解像度?144pだよ。

||「我々ヴィンターヴァルグは、『地域主義の復権』を目標に掲げています!今の御台場の姿は、本来あるべき姿とはかけ離れています!守護範囲をきっちりと守護し、そこに住む一般市民の方の安全を護る!これこそが、御台場女学校の本来あるべき姿ではないか!私達『ヴィンターヴァルグ』はそう考えています!」
ワァッと歓声が湧き起こり、万雷の拍手が降り注ぐ。……予想通り、ヘオロットセインツとロネスネスを良く思わない生徒は一定数いるようだ。「我々の守護地域を防衛し、市民の安全な生活を護れ」と言われてきたにも関わらず、あの2レギオンは外征外征また外征。特に上級生からは良く思われていないというのも仕方がないだろう。畳み掛けるべく私が口を開こうとしたその瞬間、ある1人の生徒の声が瞬く間に歓声を鎮めた。
「いやぁ、実に素晴らしい!この学校の最上級生として素晴らしい演説内容ですね?三橋癒和様」
煽るような拍手と挑戦的な目で睨みつけてきたのは、LGヘオロットセインツの副将、川村楪だ。「地域主義の復権」を掲げる我々のレギオンとは特に険悪な仲で、お互い目が合う度に小競り合いや口喧嘩をしている。
「おや、セインツの副将様ともあろうお方がどうしてここへ?我々ヴィンターヴァルグの掲げる『地域主義の復権』とは正反対のスタンスでしょう?」
私は彼女に冷たい笑みを返す。面倒なことになった、と内心顔を顰めながら。
「先程までの演説、聞かせてもらいましたよ。困るんですよねぇ……セインツとしても、生徒会としても。大々的にそんな思想の強い演説をされちゃ。ようやく大手を振って外征に出るようになれたというのに、内部からの反対で許可が取り消されるというのも困ります」
ほら来たことか。私はこれみよがしに溜息を吐き、「やれやれ」といった様子で首を横に振る。
「『御台場女学校のあるべき姿』を壊したのは貴女方でしょう?我々はそれを元に戻そうとしているだけです。貴女方こそ一度頭を冷やし、自分達がこの学校にとってどれほど悪影響を与えているのか顧みる事をおすすめしますよ」
どうせ、何が悪いのかわからないのでしょうけど。
そう言い、にっこり私と彼女が睨み合う。数秒の後、彼女は「心底呆れ返った」といった様子で目を逸らし、その場を去っていった。||

||※楪様はいいひとです!!!!!とっても!!!!!||

glacial nymph
#

※別作品要素アリ、一応海苔

||「……はぁ」
この世界に来て数日、外に出ることは未だ許されていない。理由は聞いても誰も教えてくれないけど、どうやら僕の年代の女の子達が持っていなきゃいけない物質が僕の身体に存在しないかららしい。「僕は元男の子です」だなんて口が裂けても言えない雰囲気だし……。あーあ、いつになったらここから出られるんだろう。そもそも、元の場所に帰れるのかな……。
そんな僕の辛気臭い心情に合わせるように、空から雨粒がぽつりぽつりと落ち始めてきていた。僕はそんな空から目を背けるべく溜息を吐き、枕に顔を埋めた。

どれだけ時間が経っただろうか、僕は喉の渇きで目を覚ました。見守りの先生に伝えなきゃ……と思って身体を起こすと、そこにはあの時僕を助けてくれた赤い髪の人が立っていた。
「お、起きた起きた。やっほ〜。えっと……戸塚、彩加さんだっけ?覚えてるかわかんないけど、私あの時君を助けた人だよ〜。柳井由宇(やない・ゆう)って言うの。よろしくねっ!」
どこかほんわかとした雰囲気の彼女は、奉仕部で助けてくれた由比ヶ浜さんを彷彿とさせる。その人を思い浮かべた途端、僕の瞳から涙がブワッと溢れ始めた。
「わわ、どうしたの彩加さん!?私なんか変なこと言っちゃった!?」
慌てて見守りの先生を呼びに行こうとする由宇さんを手で制し、ベッドから降りる。
「違うんです、元の世界の友達に雰囲気が似てただけで……」
僕の瞳からとめどなく溢れる涙は、頬を伝って床に敷かれたカーペットを少しずつ濡らしていく。そんな僕を見た由宇さんは僕の隣に座ると、お姉ちゃんのように僕の背中を撫で始めた。「そんな事しなくても大丈夫ですよ」とか、「心配させちゃってごめんなさい」とか。色々な感情がぐるぐる渦巻いていたけれど、僕は由宇さんの善意に甘えて気が済むまで泣く事にした。

「どう……?さっぱりして少しは落ち着けたかな?」
僕の目を覗き込むように由宇さんが視線を合わせにくる。僕は心配させまいと無理やり笑顔を作り、勢いよく立ち上がる。
「もう大丈夫!由宇さんのおかげで元気になりました!」
そんな僕達の会話を聞きつけたのか、見守り役の梵先生が椅子から立ち上がってこっちに歩いてくる。
「流石柳井くん、精神面のショックを取り除くのは君が適任だね」
梵先生はそこまで言うと由宇さんから僕に視線を向ける。
「彩加くん、今日から部分的にではあるがリリィとしての訓練のための外出を許可するよ。まず今日はスキラー数値の測定やcharm、つまり武器の始動が出来るかどうかの検査をしてもらう。この2つはリリィとして戦う上で非常に大事なんだ。私達としては、異世界から来た君はなるべく死なせたくないんだが……」
梵先生はそこまで言うと言葉を切り、僕の耳元に口を寄せてこう囁いた。
「戸塚彩加さん……いや、彩加くん。君は向こうの世界では男の子だったんだろう?」
思わぬ形で見破られたことに、僕は驚いて梵先生から身体を遠ざける。動揺が隠せない僕に、ニヤリと笑みを浮かべた梵先生がにじり寄る。
「私は最初から不思議だったんだ。起こるはずのない転移、生物学的女性のマギ無保持、charm起動不可。転移というのはどうにも理解できないが……マギ無保持とcharmの起動不可というのは元々男子であったと想定すれば理屈は通る。そして今の反応で確信したよ。戸塚彩加くん、君は元々男の子だったんだろう?」
見事に言い当てられてしまってはもう誤魔化しようがない。僕は両手を上げて降伏の意を示しながらゆっくりと頷く。
しかし、いつまで経っても何もされない。不思議に思って梵先生の方を見ると、必死に笑いを堪えていた。……ん?

「いやー、彩加くんがいきなり神妙な面持ちで両手を上げ始めるものだから笑いを堪えるのに必死だったよ……クッ」
あぁダメだ、これしばらく擦られるんだろうな……。
結論から言うと、梵先生のあの質問はただの事実確認だったらしい。しばらく顔を合わせる度に笑われそうな事を除けば、まぁ良かったんだと思う。現にこうして生きてるし。
そして、今は由宇さんの先導でスキラー数値かなんかの検査をする部屋に向かっているところだ。上下左右が真っ白で少し不気味な廊下を歩くこと数分、「検査室」という札がかかった部屋の前で由宇さんが歩みを止めた。
「着いたよ、彩加くん。中に入ったら係の人がいると思うから、その人の指示に従ってね。終わったら私に連絡してくれれば、またここに戻って来るから」
一旦バイバイだね、と手を振る由宇さんに見送られ、僕は検査室の中に入った。||

#

||カラカララ……と軽い音を立てた扉を閉じ、僕は検査室の中に入る。すると、そこには僕より10cmくらい背の高い銀髪の人が待っていた。随分と迫力のある人だなぁ……なんてボーッとしながら考えていると、銀髪の人はカツカツと靴音を立てながらこっちに歩み寄ってきた。
「貴方が戸塚彩加さんですか?私はこの秋女の生徒会長である天ヶ瀬陽(あまがせ・はる)です。貴方には今からスキラー数値を計測する検査、並びにcharm起動試験を受けていただきます。それでは、その検査台に寝転がってください。その後は機械が勝手に測定してくれますので」
天ヶ瀬さんって、なんだか雪ノ下さんみたいだな……なんて思いながら僕は検査台に寝転がる。検査台はまるでMRIのものを応用したかのような見た目で、なんだか不思議な気分だ。
ヴオオオオオオオオン……と機械が大きな音を立て始める。どうやら検査が始まったみたいだ。大きな音に包まれる内に眠気が襲ってきて、僕はそのまま深い眠りの海へと沈んでいった。

「____かさん。戸塚さん。検査は終わりましたよ」
天ヶ瀬さんの声で目が覚めた。
……そうだ。僕は戦場に出るために必要な検査をしていて……
「戸塚さん、正直に言うと貴方は異質な存在です。貴方のスキラー数値は『不明』、マギ保持量は『測定不能』でした。私もそれなりに長い間リリィとして戦ってきましたが、このような結果は初めてでどう声をかけて良いのか……」
困惑する天ヶ瀬さんを前に、僕も困惑するしかなかった。スキラー数値が「不明」、マギ保持量が「測定不能」ってどういうこと……?もしかして、僕が元男の子っていうのが関係あるのかな……。
「……あのっ、」
実は僕、元の世界では男の子だったんです。その言葉は、嘘みたいに喉の奥に引っ込んでいってしまった。不思議そうに僕を見つめる天ヶ瀬さんに「なんでもないです、ごめんなさい」と焦って両手を振る。すると天ヶ瀬さんも我に返ったのか、charm起動試験をするべく僕を部屋の奥へと案内した。
そこには凡そ建物の中とは思えないほど広い空間が広がり、たくさんの武器が据え置かれていた。
「さて……戸塚さん。私の想定であれば測定されたスキラー数値に応じて適切なcharmを渡してみるつもりだったのですが、スキラー数値が不明とあってはどうしようもありません。どれでも好きなcharmを手に取ってみてください。オカルトじみているかもしれませんが、charmが戸塚さんを惹き寄せてくれるはずです」
そんなまさかね……と思いながらも僕はcharmを順々に見ていく。「僕を惹き寄せるcharm」に出会うために。
部屋を半分回った頃だろうか、一つの大きな鎌がふと視界に入った。銀色を基調にした落ち着いた雰囲気のそのcharmは、なんだか僕に使ってほしそうに見えた。
「天ヶ瀬さん、このcharm……持ってみてもいいですか?」
天ヶ瀬さんが首肯するのを見届け、僕はそのcharmに手を伸ばす。
途端にこの世のものとは思えない重量が僕の腕を襲う。
「うわおっも!?」
思わず鎌を落としそうになった僕の腕を天ヶ瀬さんが支えてくれる。
「戸塚さん、大丈夫です。charmを受け入れることだけを考えてください。そうすれば、自然とcharmは貴方を選んでくれる筈です」
何が何だかわからなかったけど、とりあえず天ヶ瀬さんの言う通り心の中でcharmに語りかけてみることにした。すると、どんどんcharmが軽くなっていった。それと同時に、なにか不思議な力が僕の身体を包んでいく感覚にも襲われた。浮き立つような、ムズムズするような、そんな不思議な感覚。気づけば、天ヶ瀬さんは完全に手を離していた。
「おめでとうございます、戸塚さん。貴方はそのcharm……『黄泉狩(ヨモツガリ)』に選ばれました。これで貴方も正式にリリィの仲間入りです」
ぱちぱちと乾いた拍手を受けて喜んでいるこの時の僕は知る由もなかった。この後の2年間がどれだけ地獄か、そして目の前にいた天ヶ瀬さんがどれだけ凄い人であるかということを。||

glacial nymph
#

天ヶ瀬と快さんが契るちょっと前の話。

____もう、誰も信じられない。信じてなるものか。同級生も、上級生も、下級生も。それなら、誰も信じずに1人で戦い抜いてみせようじゃないか。そうしたら、私に歯向かう人なんていなくなるはず……

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「天ヶ瀬さん、またどこかに行ってたの?」
「貴女には関係のないことでしょう。教える義理がありません」
名前も知らない上級生の1人が、最近やたら声をかけてくるようになった。どうせ内通して嘲笑の的にするつもりなんだろうと思うと、まともに応対する気すら起きなかった。
「もしかして……私のクラスの人達が天ヶ瀬さんをいじめてるから、そのせいで警戒されちゃってるのかな……?」
ほら見た事か、これも内通者だ。私に嫉妬するのは別に構わないが、やり方が少々陰湿すぎる。京都人なら遠回しに絶賛するだろうが。
「そうだったんですか。なら尚更貴女に話す事はありません。さっさと私の目の前から立ち去っていただけますか?」
「違うの!私は、あの人達がいじめてるのを止められなくて申し訳なくて……」
こんな有象無象の言葉なんて聞く価値もない。耳を傾けるだけ時間の無駄だ。私はそう判断して背中に掛けられる声を無視して立ち去った。

「天ヶ瀬ってさー、ちょっと強いからって調子乗りすぎじゃない?」
「わっかるー!いつも1人でいるくせに生意気だよね!」
「『オトモダチ』も作れないくせに威張っちゃって、ムカつくんだよね」
「ちょっとアイツ理解らせちゃお?生意気な天ヶ瀬にはちょうどいいよ」
「「「さんせー!」」」

私が歩いていると突然横から誰かに足を出されてしまい、引っかかって転びそうになってしまった。どうせあの愚民の仲間なのだろうと思うと、目線をくれてやる気にもならなかった。私がそのまま体勢を整えて歩き出そうとすると、下卑た声で呼び止められる。
「あっれれ〜?天ヶ瀬さーん、謝罪はぁ〜?私、天ヶ瀬さんに足を踏まれて痛くしちゃったんだけどなぁ〜!謝罪くらいしてもらえるよね〜?」
あの女、性根が腐りきっている。と私は露骨に顔を顰めて其方に視線を向ける。
「謝罪を要求するのは結構ですが、そのような卑劣な行為や下卑た声、言動で要求されたとて私は謝罪なぞしませんよ。第一、足をかけてきたのは貴女ではないですか」
私が呆れたように首を振って睨み据えると、その女は一瞬怯んで一歩足を引いた。
「は、はァ!?天ヶ瀬何言ってんの!?アンタが私の足を踏んだって言ってんじゃん!私はアンタに足を踏まれて痛がってるの!今すぐ謝罪して、謝罪!」
完全に主張が食い違う中、『チッ』という大きな舌打ちがその場の空気を切り裂いた。
「おいお前、嫉妬かいじめか知らないがいい加減にしろよ。お前が天ヶ瀬に足をかけたのを、私は至近距離で見てたんだぞ」
声の主の方にふと目を向けると、正体は1学年上の月夜野副会長だった。
「副会長、ごきげんよう。お見苦しい所をお見せしてしまい、申し訳ありません。本来であれば私自身で解決すべきところを____」
副会長は私の言葉を途中で制し、足をかけた張本人へと向き直った。
「お前はこの学校の最高戦力である天ヶ瀬にちょっかいをかけ、怪我をさせることを試みた。それだけでも生徒指導行きは避けられない重罪だが、お前は更に天ヶ瀬に罪を被せようとしたな?」
有無を言わさぬ副会長の詰問に、先程までの威勢はどこへやら。「あの……」だの「えっと……」だの情けない醜態を晒していた。
「ち、違うんです月夜野様!私は天ヶ瀬が生意気だから逆らったらどうなるかわからせてあげようと____」
可哀想なことに、彼女は最後まで弁明させてもらえなかった。副会長の平手打ちが飛んだからだ。いつも朗らかに笑い、私とは違って常に周囲に人が集まっている副会長。怒る姿なんて全く想像できなかった副会長が、『私のために』怒っている。
「ふざけるのもいい加減にしろッ!天ヶ瀬が生意気!?違う、彼奴は少しコミュニケーションが苦手なだけで、仲間を思いやることのできる人間だ!一人で出撃するのも、一般生徒の犠牲を減らすために自分の命を削っているんだッ!そんな天ヶ瀬の苦労も知らないお前らが、天ヶ瀬の事を『生意気』だなんてほざくなっ!」
……こんなに怒っている副会長は、初めて見た。しかも他人のためではなく、私のために。『生徒会室で二人きりの時に零した愚痴を覚えていたのか』と少し恥ずかしくもあったが、今はその記憶さえ気恥ずかしくもあった。

副会長の剣幕にすっかり怯みきってしまったいじめっ子達は何事もなかったかのように生徒指導室に連行されていき、その場には私と副会長だけが残された。……この感情、伝えるなら今しかない。
「あの、月夜野副会長……」
「ん、なんだ?天ヶ瀬」
いつも通りの笑顔、いつも通りの朗らかな声。……きっとこの人となら、私は『人を信じる』ということを学んでいけると思うから。
「……不束者の私ですが、貴女となら私はもっと成長できると思いました。どうか、血盟を交わしていただけませんか?」
一瞬、時が止まった。副会長は大きく目を見開き、刹那紅葉のように顔を赤らめた。
「天ヶ瀬、私なんかでいいのか……?」
「はい、副会長は私が信頼に値する人間だと判断しました」
ニコリ、精一杯の笑顔を作ってみせる。
「そりゃ嬉しいな。となると、私は天ヶ瀬の擬姉になるわけだ。そんな私から最初の提案なんだが……」
副会長からの提案?何か血盟に不都合でもあったのだろうか。
「これからは名前で呼び合わないか?血盟を交わしたのに役職呼びも堅苦しいだろ?という訳で!これからよろしくな、『陽』!」
副会長は、それだけ言い残して去っていってしまった。その場に残された私はというと、俯きながら副会長の言葉を反芻する他できなかったのだった。
「……こころのばか」

glacial nymph
#

※死ネタ、雑解釈、キャラ崩壊、非公式捏造。海苔剥がしは自責だゾ♡

||緋「……ッ」

ル「あは、まだ立つんだ?もうそんなボロボロになっちゃって、応援のリリィも来る気配がないのに。私を倒せもしない雑魚リリィが死にに来ちゃったのかな?かっわいそ〜♪」

緋「黙って」

ル「ん〜?雑魚の言うことなんて聞こえなぁ〜い♪そ・れ・と・も〜、まだなにか私を倒す手段があるって言うの?」

緋「まさか、もうとっくに万策尽きてるわ?こっちは全員マギも体力もギリギリよ!だからせめて!私がアンタを足止めしてから死んでやろうって志願して来たのよ!!!」

ル「必死になっちゃって、ダサ。でも私が全員殺せばいい話だもんね?」

緋「させないわ、私がここでお前を止めてみせる!」

ル「なに言ってんの?武器もないし機械も壊れてる。おまけにあのリリィ達みたいな強さも感じない。私を止められるとは思えないけどね〜♪」

緋「ふふ、そろそろ……かな?待ってたよ、私の『ヒーローさん達』?」

ル「……これは、あのリリィ達の!クソ、離してッ!」

緋「『離せ』って言われてそう易々と離すほど、私も素直じゃないのよ!」

ル「じゃまなのッ!どいて!」

緋「ッッッ……!」

純「緋和ッ!?」

緋「純、初、絶対来てくれるって信じてた……!だから、コイツを……!」

純「言われなくてもわかっておりますわ?姉様、最後は任せましたわよ」

初「勿論ですわ。……緋和。そこにいるということは、死ぬつもりですのね?」

緋「当たり、前よっ……!コイツを抑えておかなきゃ、ノインヴェルトが当たらないじゃない……!」

初「その覚悟、しかと受け取りましたわ。最期の大仕事、任せましたわよ!」

純/初「「はぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!!!」」

ル「離……してッ!」

純「倒せましたの……?」

初「油断は禁物だけど、サーチャーには反応がないわね。倒せたと見ていいんじゃないかしら」

純「……緋和がいなかったら、また取り逃がす所でしたわね」

初「えぇ、そうね。せめて、私達だけでも彼女のことを忘れないでおきましょう?勇敢な常世の国の民のことを」

純「……そうですわね」||

glacial nymph
#

つづき
||「純様、初様!よくぞご無事で!」

「当然でしょう?姉様と一緒に戦っておりましたもの、死ぬはずなんてありませんわ?」

「ところで、緋和様はどこにいらっしゃるのですか?確かおふたりと一緒に出撃されてましたよね……?」

「……」

「初様、どうして目を逸らすのですか」

「落ち着いて聞いてほしいのだけれど、その……緋和は____」

「緋和は……亡くなりましたわ」

「純?」

「純様!?そんな、緋和様が亡くなられたなんて……ウソ、ですよね?」

「私達が嘘をつくように見えますの?」

「……すみません、純様」

「こら純、あまり威圧的に喋ってはいけませんわ?よく聞いてほしいのだけど、緋和は……あの子は、私達のせいで亡くなってしまったの」

「どういう……ことですか」

「『ノインヴェルト弾を打ち込む時に取り逃したら駄目だから』と最期までルサルカを羽交い締めにしていたわ。全ては私達の力量不足のせいなの。許されるとは思っていないけれど、この場を借りて謝罪するわ。本当に、ごめんなさい」

「純様、初様、頭をあげてください!……確かに、緋和様が亡くなられたのは悲しいです。でも、世界の役に立てたのなら……きっと緋和様は、喜んでいると思うんです。緋和様は、そういうお方でしたから」

「……そうですわね。私達でヒュージを絶滅させる事が、緋和に対する何よりの弔いですわ」

「それと……お二方に一つお願いがあるんです」

「私達が出来ることなら、なんでもするわ。聞かせてくれるかしら?」

「緋和様は、亡くなられた同胞や市民の方々へ向けて松島の海に祈りを捧げておられたんです。なので……お手隙の際でいいのでお二方にも松島の海に祈りを捧げていただけないかな、と」

「……勿論ですわ。私達は多くの犠牲の上に立っているのですもの」

「そうね。緋和を忘れないためにも、亡くなられた方々の魂を鎮めるためにも。時間が出来る度に松島の基地を訪れることにしましょうか」

「……!ありがとうございますッ!」||

glacial nymph
#

※舞台に関わるネタがちょいちょい出てきます。
・長いです。
・キャラ崩壊してます。
・戦闘描写がガバです。
・ほぼ確実に口調がおかしいです。
・独自解釈が大量に含まれています。

#

||私、宮守緋和は計器類と迫り来るヒュージの群れの数を見比べて心の内で軽く舌打ちをする。ヒュージの大群を倒し切るには、どう見てもマギが足りないのだ。私だけが死ぬならまだしも、後輩達にまで死なれては今後のガーデン運営にも影響が出てしまう。そんな事を考えながら『天の秤目』を使い迫り来るヒュージを確実に撃ち抜いていると、全く捉えられなかった攻撃が私の愛機の右エンジンを的確に撃ち抜いていった。
やらかした……!そう後悔するが、この機体はもう使えない。悔恨の念を抱きながら予備の第一世代charmを懐に抱え、僅かに開けた平地に不時着する。周囲に警戒しながら調査隊やサングリーズルとの合流を試みるが、濃すぎる負のマギのせいか、通信機器の調子が良くない。肌で感じる、生暖かく悍ましい気配。
「このままいけばデスゾーン待ったなし、かしら……?」
半ば諦め気味に歩き出したその時、私は誰かとぶつかってしまった。G.E.H.E.N.A.の研究員か……!?と身構えるも、そこにいたのは全身が白い人型ヒュージである『ルサルカ』だったのだ。
「あは、おともだちみーつけた♪ねぇねぇ、あそぼあそぼ?」
ルサルカは赤黒いcharmを無邪気に振り回しながら、とても楽しそうに私の方へ駆け寄ってくる。
カン、カァンッ!ガキィンッ____
最初の一撃こそ咄嗟の反応で弾くことが出来たものの、二撃目で意表を突かれてcharmを弾き飛ばされてしまった。もとより人間以上の身体能力を持つルサルカと普段からcharmを用いることのない私では、戦闘力に差があることは火を見るよりも明らかだった。遺書の一つでも書いてくるべきだったか……と思いながらルサルカと睨み合っていると、聞き覚えのある声が現れた。
「緋和様ッ!助太刀いたしますっ!」
茂みの影から現れたのは、エレンスゲの相澤一葉さんと松村優珂さんだった。相澤さんがルサルカと刃を交えている間に、松村さんが吹き飛ばされたcharmを取りに行く私の護衛役を務めてくれていた。
「宮守様、ここは私達が引き受けますので、宮守様は早く調査隊の方々ぇ゛ッ゛!?……ッッッ!」
走り出そうとした瞬間、相澤さんの声が裏返るのを聞いて歩みを止める。そこには、右脚を押さえて蹲っている相澤さんの姿があった。
「……!うそ、相澤さん……?」
私が震えながらcharmを構えると、ルサルカは相澤さんを軽くあしらいながら私の方に歩み寄る。
「も〜!ニンゲンさん達、じゃましないで!白いニンゲンさんは私のモノにするって決めたんだから♡」
相澤さんの負傷に動揺する私の視界を、黒い闇が蝕んでいく。何が原因なのかはわからなかったが、そんな事を考えている暇は無い。手負いの相澤さんをなんとか護りながら戦わないといけないのだ。しかし、徐々に見えなくなっていく視界は確実にハンデとなって私達を蝕んでいく。見えない視界、察知できない攻撃、削られる体力に拡がる傷口。
「ダメです……緋和様……」
それが、私が意識を失う前に聞いた最後の言葉だった。

戻らなきゃ……みんなの元に戻って知らせなきゃ……
「ん……」
目を覚ますと、私の隣にはルサルカが眠っていた。恐怖と驚きで叫び出しそうになったが、必死に声を抑えて距離を取ろうとする。しかし、身体を背けたところで後ろからがっちりと抱きつかれてしまう。
「白いニンゲンさん、いま逃げようとしたでしょ。ダメだよ〜?ニンゲンさんは私のモノなんだから!私の言うことには逆らえませーん!」
こっち来て〜?と無邪気に抱き寄せるその白い腕を、私は拒む事が出来なかった。

それと同時に、身体を包んでいた息苦しさが消えていることに気づいた。
「……ルサルカ、さん」
か細い声は、彼女の耳に届いただろうか。私が不安と恐怖で身体をぎゅっと縮こめると、彼女は私を優しく抱きしめた。
「だいじょーぶだよ、ニンゲンさん!あなたはもう私のナカマだもん!ニンゲンさんのコトバだと……『おともだち』って言うんだっけ?あなたと私はおともだち!だから、私のことは『ルカちゃん』って呼んでね!」
……そう言って、ルカちゃんは私を受け入れてくれた。そういえば、私ルカちゃんに何かしてたような……?まぁいっか。ルカちゃんといっしょなら、何も問題なんてないよね。
「……あ、ありがとうッ!ルカちゃん……!」
そう涙ぐむ私の背中を、ルカちゃんは優しくさすってくれる。これが、『本当のともだち』なんだ……!
「あのね、ルカちゃんっ!わたし、ヒナっていうの。だから……!」
「いいよ!ヒナは私を『ルカちゃん』って呼ぶし、私はヒナを『ヒナちゃん』って呼ぶ!そういうことでしょ!?」
わたしが「そうだよ〜!」と頷くと、どやぁ……!としたり顔で頭を差し出してくるルカちゃん。||

#

||……かわいい。ルカちゃんのお願いならなんでも聞いちゃいそう……!
私がルカちゃんの可愛さに身悶えていると、ルカちゃんがイタズラっ子のような目で私をじっと見つめてくる。
「ねぇねぇヒナちゃん、最近この辺に私のおうちを壊しにくるわるーい人たちがいっぱい来て困ってるの!ヒナちゃん、一緒に追い払ってくれない……?」
きゅるんと潤む瞳に困り顔。しかもおともだちのルカちゃんのお願い……!断る理由なんて、ないよね!
ふんす!と意気込む私を見て、ルカちゃんもにっこり。
「よかったぁ〜!ヒナちゃんならぜーったい一緒に来てくれると思ってた!だからちょっと待っててね?準備するから!」
準備……?と首を傾げる私の手を、ルカちゃんがギュッと握りしめる。すると突然膨大なパワーがルカちゃんから私に流れ込み、そして私の中で循環し始める。
「る、ルカちゃん……?これ、なに……?」
私がかすれ気味の声でルカちゃんに尋ねると、ルカちゃんはあくどい笑みを浮かべてこう囁いた。
ヒナが私のおともだちって印、だよ♡」
「……」

「こちらです!この辺りで緋和様が……!」
大島ネスト調査隊の面々は、最後までルサルカと接敵していた相澤一葉を先頭に宮守緋和が拉致された地点に到達しようとしていた。
「やはり……緋和のマギはもう残っていませんわね。連れ去られてから相当時間が経っているみたいだわ」
調査隊を率いる一人である船田初のその言葉に、一葉は幾度目かわからない悔いを覚え、唇を噛み締める。
「……申し訳ありません。私の失態です」
一葉は深々と頭を下げ、調査隊の面々に謝罪する。
「過ぎた事を悔いても仕方がありませんわ?今は緋和の奪還とルサルカの討伐が先決。そうでしょう?」
同じく隊を率いる船田純は頭を下げる一葉の前にずいと一歩踏み出し、調査隊の面々に今一度出撃の目的を確認させる。
「相澤一葉、悔やむのは全て終わってからになさい。まだ全て終わったと決まった訳ではありませんわよ?」
「……!はいッ!____これは!?」
先程までとは別人のように決意を目に漲らせた一葉だったが、直後目を見開いて動揺を露わにする。調査隊の面々もその動揺の正体を察知し、どこから襲撃されても対応できるように円状に広がる。
……しかし、惨劇は円の中央に現れた。
「わぁ〜!みてよヒナ、私たちのおうちを壊しにきたわるーい人たちが来ちゃった!さっきのヤクソク、守ってくれるよね?」
「……」
「「「!?」」」
調査隊の誰もが察知できなかった元凶の出現、そして、それに付き従っているのは……調査隊の誰もが見覚えのある姿
その正体に真っ先に気付いたのは、天宮・ソフィア・聖恋。聖恋は「信じたくない」といった表情で、悲しげにcharmを向ける。
「緋和、様……?」
掠れ、零れ、塵のように消えていったその一言は、ルサルカを笑顔にさせるには十分なものだった。
「気づいた!?気づいちゃった!?これ私のおともだちのヒナ!私の言うことならな〜んでも聞いてくれる、『やさしいおともだち』なの!ね、そうでしょ?ヒナ」
ルサルカが隣に付き従う少女____ヒナに問いかけると、ヒナは無言で首肯し、調査隊への敵意を明らかにする。
「戦うしかないみたいね」
そう自分に言い聞かせるように言い放ったのは、福山・ジャンヌ・幸恵。少し俯き何かを呟くと、ルサルカとヒナに向かってcharmを向ける。しかし、ルサルカは余裕綽々といった様子で動揺のひとつも見せない。「楽しく遊べればなんでもいい」という気持ちの表れだろうか。
「ちびっこ!早く作戦を言いなさいな!」
焦ったような様子の楓・J・ヌーベルに、ちびっこと呼ばれた二川二水は涙ぐみながら調査隊に作戦を伝達する。
「御台場、イルマの皆さんでルサルカを。そして……ルドビコの皆さんと私達百合ヶ丘で緋和様____いえ、ヒナを倒します!エレンスゲのお二人はバックアップをお願いします!」
調査隊の面々は首肯するとそれぞれ配置につき、それぞれがバックアップしあえるような体勢でルサルカやヒナと睨み合う。||

#

||「あはっ☆ねぇねぇヒナちゃん、このわるーい人たちが〜、ルカとヒナのおうちを壊そうとしてるんだよ〜?私の力を貸してあげるから、ルカと一緒に……殺してくれるよね?」
「……この、外道ッ!」
ルサルカのヒナに対する有無を言わさぬ強い口調に憤りを覚えたか、純がいの一番に斬りかかる。しかし、ルサルカはまるで予想していたかのように最小限の動きでその攻撃を躱した。
「なッ……!?」
驚いたような表情を浮かべる純だが、すぐに身体を反転させて斬りかかる。それと同時に鞠萠と伊万里もルサルカを挟撃するようにして斬りかかる。だが、その攻撃もひょいひょいと最小限の動きで躱されてしまう。
「私を殺そうとしたって無駄だよ〜?みんなの攻撃はぜーんぶ見えてるんだから〜!」
飄々と調査隊の面々を挑発しながら攻撃を躱し続けるルサルカを相手に、実力者揃いの調査隊といえども流石に疲れが滲み始めていた。

「このままじゃ埒が明きませんわね……」
ルサルカを相手取っている純・初・燈・鞠萠・伊万里のマギ残量は既に0に近く、ノインヴェルト弾を装填してもマギが足りるかどうかはかなり分の悪い賭けで、ヒナと戦っている幸恵・聖恋・来夢・二水・楓とサポートの一葉・優珂も決してマギの残量が多いとは言えない状態。早急にカタをつけなければ、ルサルカの言うように調査隊が全滅してしまうのは誰の目にも明らかだった。
「うーん、もう戦うの飽きちゃったな〜。……ヒナちゃん、もうソイツら殺していいよ?未練も後悔も全部消して、ずーっと私と一緒にいよ?その方が楽しいもん!」
ルサルカがヒナにお願いした途端、ヒナの身体から溢れ出る負のマギが爆発的に増加する。
「ウ、ウ、ウガァァァァァァァァッッッッッッッ!!!!!」
それと同時に、ヒナはもがき苦しみ始める。その場でのたうち回り、喉元を引っ掻き、少しでも苦しさを忘れようと暴れ回る。
「緋和様っ……!」
思わずヒナに駆け寄ろうとした来夢を、聖恋が制して止める。
「やめろ来夢!それは、もうオレたちの知ってる緋和様じゃないッ!負のマギに飲み込まれたバケモノなんだよっ!」
「で、でもっ……!」
それでも緋和を救いたいと思っているのか、言葉に詰まる来夢。しかしルサルカはその状況が面白くないようで、ヒナにかけている負荷を更に引き上げる。
「ヒナちゃん、私の言うこと聞いて?アイツら殺しちゃお?って言ってんの。だからさっさと起きて」
「ゴメ……ナ……さ……」
身体をふらつかせながら無理やり立ち上がったヒナは、ルサルカにか細い声で謝罪し、自分の周りを取り囲む7人に向けてむちゃくちゃに斬りかかり始めた。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」
その戦いようはとても元リリィとは思えないほどに力任せで一撃一撃が重くのしかかり、故に幸恵達はより苦戦を強いられることになる。
「幸恵様、ノインヴェルト弾を装填してパスを回すべきですわ!このままでは全員ここで討死してしまいますもの!」
ヒナの一撃を受け止めながら楓が叫ぶ。
「わかったわ!純、初、鞠萠、それでいいかしら!?」
「ええ!」
「勿論!」
「賛成よ!」
幸恵は三人の返事を聞くが早いかノインヴェルト弾を装填し、いつもよりも少し多くマギを充填する。
「聖恋ッ!」
幸恵からパスを受け取った聖恋もまた、幸恵に倣って少し多めにマギを充填する。ルサルカと戦っている御台場・イルマ組の負担を少しでも減らすためだ。
「来夢、頼んだッ!____んなッ!?」
聖恋が来夢にパスを回した瞬間、予想外の出来事が起こった。マギスフィアがヒナに奪われたのだ。ヒナに奪われたマギスフィアは見る間に負のマギで満ちていき、リリィが触れてしまえば戦闘不能は免れない状態にまで穢されてしまった。
「そんな……!」
絶望に染まりきった様子の来夢を横目に、ヒナがマギスフィアに大量の負のマギを注入していく。
「あのっ!来夢さん、燈さん、ラプラスを発動してくれませんか!?」
なんとかマギスフィアを取り返すべく、二水が叫ぶ。その意図を察した純は燈を幸恵の方に押し出し、同じように二水の意図を察知した幸恵も楓を純方に押し出した。即座にポジショニングを入れ替え燈はヒナと、楓はルサルカと新たに対峙する。
「「ラプラス!」」
来夢と燈が揃ってラプラスを発動すると、ヒナの持つマギスフィアは徐々に正のマギへと戻っていく。そしてマギスフィアが正のマギに染まりきった瞬間、今までサポート役に徹してきた一葉がヒナが動揺した一瞬の隙をついて瞬時にマギスフィアを奪い返した。
「優珂さん、お願いします!」
「序列一位、たまにはやるじゃない!」
そしてパスを受けた優珂が再びマギ充填を再開させる。||

#

||「伊万里さん!」
「受け取りました!二水さん、お願いしますっ!」
優珂からマギスフィアを受け取った伊万里は即座に充填を済ませ、ヒナに奪われる前に二水にパスを回す。
「う、受け取りましたぁ〜!楓さん、お願いしまぁ〜す!」
そして二水から楓への超ロングパスが通ると、楓は残りのマギを全て使い切るような勢いでマギを充填していく。
「楓さん、あまり無理をしては……!」
「ここで私が無理をしなくて誰が無理をするんですの!?マギが足りなくて倒せないよりはマシですのよ!」
初の制止を振り切り、楓は倒れる寸前までマギを充填し、そのマギスフィアを鞠萠に託す。
「鞠萠様、任せましたわ!」
「楓、受け取ったわ!あとは上級生に任せなさい!純、初、フィニッシュショットは任せたわよ!」
鞠萠はそう叫び、最後の一撃を船田姉妹に託す。
「任されたからには」
「決めるしかありませんわね?」
純と初は鞠萠から調査隊12人全員の想いを込めたマギスフィアを受け取り、『ここで仕留めてみせる』とルサルカとヒナに狙いを定める。
「「はぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!!」」
想いを乗せたマギスフィアは真っ直ぐルサルカとヒナに向かっていき____大きな音を立てて、爆ぜた。

「倒せたのかしら……?」
その場に立ち尽くしていた幸恵が、ふと我に返ったかのようにぽつりと零す。
「ヒュージサーチャーには反応しておりませんわぁ」
どこか気の抜けたような声で、燈が幸恵の独り言に返答する。
「倒せた……ということで、いいのかしらね」
初もやや上の空といった様子で燈と幸恵の会話に混ざる。
「倒せたのなら、早めに帰投してサングリーズルと合流した方がいいんじゃないかしら。ここに留まるよりもよっぽど安全だわ」
「そのようですわね。一刻も早く帰投いたしましょう」||

||「あーあ。ヒナちゃん、私たちもっと遊びたかったのにね〜」
大島のとある森の中、ルサルカはヒナを抱きしめながら残念そうに嘆く。
「でもでも、今度はもーっといっぱいのリリィと遊びに行くよ!だから、ヒナちゃんも私の力でもっともーっと強くなろーね!」||

glacial nymph
#

おまけ
#教えて二水ちゃん ||国立仙台空軍附属防空高校に所属している宮守緋和様の安否は、結局どうなったのでしょうか?||

||仙台空附の公式記録では「戦死」扱いですね。ですが……仮に戦死だとしたら、私達調査隊が戦ったあの生き物はなんだったんでしょう?||

#教えて二水ちゃん ||仙台空附の宮守緋和様が序盤でルサルカに攫われる描写がありましたが、リリィである彼女をヒュージであるルサルカが攫った理由はどのようなものが考えられますか?||

||あくまで私の考えですが……その場に居合わせた一葉さんや優珂さんのマギの波長や緋和様の見た目で自分に近い存在だと勘違いしてしまったのではないでしょうか?||

#教えて二水ちゃん ||緋和様はなんでルサルカの命令に逆らえなくなってしまったのでしょうか?||

||これも私の予想でしかないのですが……緋和様は精神面で深いトラウマを負っていたと伺っています。深いトラウマを負ったことで弱った心に大量の負のマギで急激な負荷をかけられたことで、ルサルカと緋和様の支配関係が確立してしまったのではないかと思います。||

glacial nymph
#

かつて欧州を震撼させた「ミンスク戦乱」____
東欧の幾多の国が滅び、国籍を問わず幾多の英雄たちが空に消えた、あの災禍の中。一族を守りきったわずかな家系の一つが、ドイツのジークルーネ家だった。

ジークルーネ・フォン・エレオノーレは、旧ジークルーネ家第十七代当主の娘として生を受けた。
紅に煌めく長い髪、水晶のごとく透き通る蒼と赫の瞳____
彼女は生まれた瞬間から、「守護者の印」を持つ者として一族の希望とされていた。
だが、希望は同時に重圧だった。生まれながらにして未来視の異能を宿していたエレオノーレは、幼いころから周囲と異なる「何か」を抱えていた。彼女はふとした瞬間に未来を視てしまう。誰も知るはずのない不幸を、災厄を、別れを、先に知ってしまうのだ。

____三歳のとき、大好きな兄の死を予知した。
____六歳のとき、将来の友人が殺される未来を視た。
____九歳のとき、自分が孤独になる運命を知った。
どれほど警告を叫んでも、大人たちは彼女の言葉を信じなかった。やがて「忌まわしき呪いの子」として、ジークルーネ家内ですら疎まれ、遠ざけられるようになる。与えられるのは、重たい役割だけ。愛情も、ぬくもりも、彼女には与えられなかった。
「お前は、我がドイツの空を守るために生まれた。それだけが存在理由だ」
無慈悲な言葉を胸に刻みながら、エレオノーレは一人訓練に明け暮れた。フライトスーツに身を包み、初めてスツーカの操縦席に座ったのは十歳のとき。
操縦桿を握った瞬間、彼女は本能的に理解した。
____自分の未来は、この空にあると。

数年後、彼女は家から勘当同然に追い出される。エレオノーレを嫌っていた長兄が、次男の死を盾にエレオノーレを追い出した。半ばエレオノーレの愛機となっていたスツーカだけを渡して。
もはや、ジークルーネ家にとってすら彼女は「存在しないもの」になっていた。
それでもエレオノーレは折れなかった。
孤独でも、絶望のなかでも、空に手を伸ばすことだけはやめなかった。

そうしてエレオノーレが十五歳の春____
国立仙台空軍附属防空高校。
ヒュージの災禍に襲われる東北の、ひいては対ヒュージ激戦区である日本の空を守るための高等教育機関から、正式な入学推薦が届いた。

「____運命を、切り拓く」
寂れた屋敷の一室で、届いたばかりの入学許可証を静かに見つめるエレオノーレ。
彼女はひとり、空を見上げた。
過去の重荷をすべて背負いながらも、目は決して曇らない。冷たい紅髪が風に揺れる。
その瞳には、かすかに微笑みすら浮かんでいた。
新たな空へ、飛び立つために____

#

国立仙台空軍附属防空高校____空の守護者を育成する、日本有数の空の名門校。
入学推薦書を受け取ったジークルーネ・フォン・エレオノーレは、誰に見送られるでもなく、ただ一人で校門をくぐった。
周囲の視線は、最初から彼女に注がれていた。紅色の長髪に、貴族然とした立ち居振る舞い。そして、どこか近寄りがたい孤高の雰囲気。誰もが「何この人」と囁いた。

だがエレオノーレは気にしなかった。
彼女の目的は、ただ一つ____「空を守る」こと。
己の存在理由を、空の戦場で証明することだけだった。

入学後すぐに行われた、初の全校演習。実戦に限りなく近い状況下で行われる大規模な模擬戦。上級生たちが半ば意地悪にしかけたこの演習で、エレオノーレは鮮烈なデビューを果たす。
彼女の手足のように操られる愛機____カスタムされたスツーカが、敵機の裏をかき、数秒先の行動を読みきって撃墜していく。
指一本動かすだけで、次々と敵を無力化するその様は、まるで舞踏会のように優雅で、圧巻だった。

演習後、生徒たちは彼女に畏怖を込めてこう呼んだ。「紅翼の魔女」、と。
だが、孤独は変わらなかった。誰も彼女に簡単には近づけなかったし、エレオノーレ自身もまた、心を開かなかった。未来視の異能は味方でさえ遠ざける『』にもなり得ることを、彼女はよく知っていたから。

そんな中で、ある実戦訓練が行われる。
仙台近郊に出現したギガント級ヒュージ「ヴェルグルム」殲滅作戦____
実戦に投入されたばかりの生徒たちは次々に被弾し、エレオノーレの部隊どころか全部隊が壊滅寸前に陥るまでに状況は劣勢だった。

そのとき、エレオノーレに未来が視えた。次の瞬間に味方が壊滅する未来を。そして、自らが動けば未来を変えられることを。エレオノーレは即座に行動した。冷徹なまでに的確な指示を飛ばし、仲間たちを安全地帯へ誘導。自らはスツーカを駆ってヒュージの急所に突入し、ギリギリの間合いで爆撃を成功させた。

____結果、エレオノーレの部隊は誰一人欠けることなく勝利を収めたのだった。

それ以来、周囲の彼女を見る目は変わった。
ジークルーネ・フォン・エレオノーレは「孤高の魔女」ではなく、「絶対に仲間を見捨てない『空の守護者』」として認められるようになる。
学年を重ねるごとに、彼女の指揮能力は群を抜き、生徒会長に推挙されたときも、反対する者はいなかった。
就任演説で彼女が告げた言葉はとても簡潔で短かったが、とても真っ直ぐで、そして力強かった。
「空の安全も、貴女たちの未来も、私が必ず護る」
この宣言は、学園全体に深く響き渡った。
____だが、彼女の心には、未だ誰にも明かされない影があった。

夜、人気のない校舎の屋上。そこには、一人制服姿のまま夜空を見上げるエレオノーレがいた。彼女は本国で戦死した兄に、心のなかで語りかける。

(私はちゃんと、異国の空を守れているだろうか)

幼い日、親しかった兄が最後に彼女に遺した言葉____
「お前の大好きな空を信じろ。お前はきっと、守れる」

その言葉をただ一心に胸に抱いて、彼女は今日も空へと飛び立つ。
たとえ、運命がどれほど苛烈でも。
たとえ、未来がどれほど暗くとも。
たとえ、共に死地を潜り抜けた戦友を喪おうとも。
紅髪をなびかせ、蒼と赫の瞳で遥か遠くまで続く空を見据え____ジークルーネ・フォン・エレオノーレは、「空の守護者」として、孤高の誓いを新たにした。

glacial nymph
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ジークルーネ・フォン・エレオノーレがスツーカと出会ったのは、十歳の初夏のことだった。ドイツ中部の貴族、ジークルーネ家。空を支配する血統と誇りを持ちながら、現代では名目上の存在に成り果てた彼らは、今なお静かに軍事力を温存していた。エレオノーレは幼い頃から「空」を学び、家族から将来を期待されていた。しかし、誰よりも空に憧れたのは、彼女自身だった。ある日、人知れず入り込んだ古い格納庫の奥で、彼女は朽ちたJunkers Ju 87 Stukaを見つけた。埃と錆にまみれた機体だったが、その翼には不可思議な力が宿っていた。エレオノーレがそっと手を触れた瞬間、視界が揺れ、過去と未来が交錯する光景が脳裏を駆け抜けた。蒼穹、紅い雲、硝煙の匂い、名も知れぬ戦場。彼女は直感した。この機体は自分を待っていたのだ、『この機体こそが、自分の生涯の相棒なのだ』と。

秘密裏に修復と訓練を重ね、初めて空へ舞い上がった日。スツーカは、彼女の命令一つで滑らかに動いた。機体は機械ではなく、まるで彼女の一部のようだった。空を翔ける歓びに震えながら、エレオノーレは空の無垢さを知った。何者にも縛られず、裏切らず、ただ受け入れてくれる世界。だが、この異常な適応能力はすぐに家族に知られることとなる。ジークルーネ家は彼女に試練を与えた。無人機部隊との模擬戦、練度の高い教官たちとの模擬ドッグファイト。だが結果は、常にエレオノーレの圧勝だった。彼女は一度も撃墜されず、完璧な指揮と機動で全てを圧倒した。

一族は次第に彼女を恐れ始めた。未来を垣間見るかのような不可解な回避行動。予測不能な勝率。エレオノーレの中に芽生えた異能「未来視」は、家族たちにとって、伝統ではなく異端だった。____ある日、祖父は静かに告げた。「お前は、ここには置けぬ」授与されたのは一枚の勲章、そしてスツーカのイグニッションキー。それだけだった。理解も、愛情も、別れの悲しさも、そんなものは一切存在しなかった。エレオノーレはただ小さく頷き、荷物も持たずスツーカへと乗り込んだ。彼女にとって、もはや帰る場所など存在しなかった。

ジークルーネ家を追放されたエレオノーレは空を渡った。フランス、イギリス、イタリア、スペイン____各国の空軍が「天才少女」の噂を聞きつけ、スカウトに訪れた。幾度となく行われた試験飛行で、同じように彼女は無双した。敵機を寸分の狂いもなく撃墜し、仲間の損害はゼロ。それでも、エレオノーレの異能を恐れた各国の軍上層部はすぐに彼女を遠ざけた。恐れ、妬み、忌避。どの国でも長くは滞在できなかった。仲間になろうと近づいてきた者も、エレオノーレの未来視が無意識に暴いてしまう弱さや裏切りを怖れ、いつしか彼女から離れ、忌避していった。

それでも彼女は決して諦めなかった。愛機のスツーカがいたからだ。彼女だけの翼はいつも静かに寄り添い、どんな嵐にも耐え、彼女だけを信じた。エレオノーレは機体に小さな誓いを刻んだ。____真紅の翼。古き爆撃機に、紅く美しい翼を描いた。その翼は、彼女自身の孤高と誇りを象徴するものとなった。こうして、彼女は各国の戦場で「紅翼の少女」と呼ばれるようになった。そして、行く先々のどの陣営でも畏怖と警戒を持って迎えられた。

だが、孤独は彼女の心を酷く蝕んだ。時折、夜の静寂に耐えきれずスツーカの操縦席に身を寄せて涙を流すこともあった。それでも彼女は顔を上げた。空を見上げれば、まだ知らない未来が広がっていると信じていたからだ。そんな折、エレオノーレのもとに日本政府からの極秘通信が届く。
「国立仙台空軍附属防空高校____そのガーデンならば、貴女の力を正当に評価できるだろう。どうか、我々に力を貸してはくれないか」
遥か東の国、対ヒュージ最前線の激戦地、日本。遠い異国の地に、初めて「受け入れてくれる場所」があるかもしれない。そう思ったとき、エレオノーレの胸に微かな光が灯った。

「行こう、私たちの未来へ」

エレオノーレは紅の髪を翻し、紅翼が描かれた漆黒のスツーカに乗り込む。孤高の少女と古き爆撃機は、遥か東の空へと向かって飛び立った。そこに待つのが希望なのか、はたまた新たな孤独なのかは、まだ誰にもわからなかった。

glacial nymph
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《紅と氷、空を裂く双星》【邂逅編】
国立仙台空軍附属防空高校にリュドミラ・アリセーエワが編入してきたとき、すでに生徒会長候補であり“紅翼の魔女”として知られていたジークルーネ・フォン・エレオノーレは、彼女に対してある種の警戒と、同時に興味を抱いていた。

リュドミラの異様な戦果、そして実戦における容赦のなさは、既存の規律や協調性を重んじるこの学園において明らかに異質だった。

「任務に感情は不要。私の命令に従う限り、無駄死にはしない」
これは、リュドミラが最初に放った言葉である。

第一の衝突は、訓練演習の指揮系統において起きた。
ジークルーネが空中迎撃陣を再構成する指示を出したにもかかわらず、リュドミラはそれを独断で無視し、危険地帯に突入。結果、任務目標は早期に排除されたが、別部隊に小さくない損害が出た。

「指揮官の命令を無視することは、秩序の崩壊に繋がります。以後、このような行動は厳に慎むように」
冷たい目で睨みつけながらそう言うジークルーネに対し、リュドミラは淡々と返した。

「私の判断で部隊の損耗は最小に抑えられました。規律よりも生存率を優先しました。それが、最適解です」

この「効率」と「誇り」のぶつかり合いは、幾度も繰り返された。

二度目は実戦演習中、味方が囮にされる可能性を承知の上でリュドミラが戦術的陽動を行った時だ。戦果は出た。しかし、ジークルーネは激昂した。

「仲間を“駒”として扱うな!彼女はあなたの盾ではない!」

リュドミラは眉一つ動かさずに答えた。

「盾を選んだのは彼女らです。生き延びられなかったのなら、この戦いに足る性能ではなかっただけ。もし貴女が責任を問いたいのなら、それは彼女ら自身の準備不足へ対してでしょう」

誰もが息を呑むその冷徹さに、教官すら言葉を失った。

ジークルーネは悩んだ。
「命を守るために戦う」それが彼女の信念だった。未来視の能力である《オルフェウスの瞳》を用い、味方の損耗を限りなくゼロに近づける____それが誇りであり、存在意義だった。

一方、リュドミラは信じていなかった。誰も、何も。

「信じること」は弱さの始まりであり、死への道である。自分を信じずに指揮に従う者など、真に戦う資格はないと。

やがてこの対立は、周囲を巻き込み始める。
チームメイトたちは、戦果を優先し勝利を持ち帰るリュドミラに惹かれる者と、仲間を守るジークルーネの姿勢に共鳴する者とに分かれていった。

だが、一つだけ誰にも否定できない事実があった。

それは、『**彼女達二人が揃って戦場に立ったとき、味方の損耗率はゼロ、そして任務成功率は100%**である』ということ。

理想と現実。誇りと結果。
二人のやり方は交わることがなくとも、確実に“勝利”だけは手にしていた。

ある作戦で味方部隊がヒュージに包囲された際、ジークルーネは即座に支援命令を出したが、リュドミラは無言でヒュージの包囲陣中央を突き破った。

「なぜ命令を無視したのですか」と激昂するジークルーネに、彼女は一言。

「貴様が私を信用していなかったからだ」

その場を包む重苦しい沈黙。
その後、ジークルーネは誰にも見えぬ場所でしばらく空を見上げていたという。

彼女たちの対立は常に冷たく、痛みを伴っていた。だがそれは、互いにしか見えぬ高みを目指す者同士の、心の奥で交錯する“認めたくない尊敬”の証でもあった。

リュドミラにとってジークルーネは無駄な理想を語る者でありながら、絶対に折れない信念を持つ、数少ない“敵わぬ強者”だった。
ジークルーネにとってリュドミラは、心を捨てながらも人々を背負って戦う、見捨てきれぬ“救うべき戦士”だった。
そんな二人が、戦場という“唯一共通の言語”でしか理解し合えない関係にあることを、二人自身が誰よりも理解していた。

____彼女たちがいつか、完全に心を重ねる時が来るのか。それは未来視すら見通せない物語の先の光景である。

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《紅と氷、空を裂く双星》【共闘編】
「____戦場にて、矛と盾は交わる」

第七次北部沿岸防衛戦記「紅氷の共闘」

空は、灼けるような灰色に染まっていた。
舞台は三陸沖北部・北太平洋沿岸にある、通称《死線(アルファ・ゼクス)》。各国連合軍の対ヒュージ迎撃ラインにおいて、特にヒュージ発生量と犠牲率の両面で異常値を記録している難攻地帯である。

ここに、ジークルーネとリュドミラの両名は、“混成迎撃戦術姫隊・ユニットX-4”の副隊長として同時に配置された。

かねてより二人の確執は部隊内でも有名だった。
戦術会議でも意見は真っ向から食い違い、他の隊員が割って入るのも躊躇するほどの険悪さを見せることもしばしば。

だが、それでもあえて二人を同じ部隊に配置した理由。それは、今回の敵が過去に前例のない戦術性を持つ“異形のヒュージ”だったからである。

識別名《ニヴルヘイム・カリュブディス》。
半空間に干渉しながら実体と非実体を切り替える特性を持ち、常に電子妨害を展開、かつ数百機の浮遊型子機《ニーズホッグ・アイ》による全方位迎撃が可能。

通常の視認・火器・制御では戦果を挙げられず、未来視による予測と、的確な一点突破型の刺突戦術を融合させねば、撃破は不可能と判断された。

ここに、ジークルーネの“未来を視る力”《オルフェウスの瞳》と、リュドミラの“敵全域を切り裂く殲滅力”と“無慈悲な判断力”の双方が必要とされる理由があった。

戦闘開始直後、部隊は四方から子機の迎撃に晒され、瞬時に二機が撃墜された。
ジークルーネは即座に各ユニットに未来視による迂回ルートと回避運動を指示し、生存率を回復させる。

だがそれを見たリュドミラは、通信で静かに言った。

「ジークルーネ、おまえの視界は甘すぎる。そんな生温いラインでは次は全滅だ」

「私は命を守る。それが、私の戦い方です。あなたのように味方を捨てて勝ちを拾うのは……私にはできない」

その瞬間、ヒュージの本体が高度差ゼロで現れた。
迎撃を受けた援護隊が瞬時に壊滅。ジークルーネの未来視が“視ていた”はずの展開を、敵の演算干渉能力が上回ったのだ。

「くっ、視界が歪む……!」

そのときだった。
爆音。視界を貫く閃光。まるで重騎士のように、メッサーシュミットMe262改【Eisfalke】が敵の中央部に突入し、機銃掃射と重爆薬で裂いた。

「補正角を送れ。お前の視た“可能性”を私が通す。だから、考えるのはやめろ。今だけは、お前を信じる。無様に全滅するよりは幾分マシだ。そうだろう?指揮官

ジークルーネは絶句した。
自分を“信じる”と言った者を、これまで何度見ただろうか。
しかも、それがリュドミラからだというのだから____心は一瞬で、凍ったように静かになった。

ジークルーネは、未来視の情報を無意識にリュドミラへと送り始めた。
一秒先、三秒先、五秒後____あらゆるパターンを“敵の変質可能性”ごとに提示する。

リュドミラはそれを受け取り、冷静に一点一点を潰していった。

ある瞬間は無謀にも見える突貫攻撃で、またある瞬間は冷静に敵を翻弄し、またある瞬間は機体が壊れる寸前の限界機動で敵の自滅を誘い____少しづつ、確実に、ヒュージの体力を奪っていった。

「ここだ」

空を裂いた一撃。
ジークルーネが視た“わずかに開く”1.3秒間の敵核の脆弱性。
その一点を狙い、リュドミラは弾道ミサイルを突入させるように己の機体ごと突き刺した。

敵は轟音とともに爆ぜ、空の裂け目が閉じていく。

任務終了。
誰もが驚愕していた。犬猿の仲という言葉さえ生温いほどに対立していた二人が、まるで何年も連携していたように息を合わせていたことに。

帰還後に訪れた、整備ドックでの重苦しい沈黙。
先に口を開いたのは、ジークルーネだった。

「……あなたは、私を信じたのですか?」

リュドミラは少しだけ顔を背け、やがて小さく呟いた。

「信じたわけじゃない。おまえの“目”が、たまたま私の剣先と合っていただけだ」

「……それでも、嬉しかった。ありがとう」

ほんの僅か。互いに背を向けながら、しかしその表情には、初めて見せる柔らかなものがあった。

信念は交わらない。思想も違う。しかし、戦場で重なった技術と意思は、疑いようのない“認め合い”の起点となった。

その日を境に、彼女たちは互いをではなく“戦友”と呼ぶようになった。冷酷な氷と紅く燃える炎は、それでも共に戦場を翔けるのだ。

____そして今も、空は彼女たちの名を記録し続けている。

glacial nymph
#

前に投げた概念をぶん投げてみる。
海苔は貼っておくからね!!!!!

||あの日の空は、どこか頼りなく霞んでいて、まるで私の胸のうちを映したみたいだった。

百合ヶ丘女学院の入学式。
新入生たちは新しい制服に身を包み、期待や不安を胸にそれぞれの春を迎えていた。
私もその一人。ただ____声をかける勇気なんて、とうに制服のポケットにしまい込んでいた。

式のあと、体育館の隅でこっそり空を見ていた。騒がしいのが苦手で、誰かと目が合うのが怖くて。
そのとき、ふと、視界の端に立つ一人の上級生に気づいた。

背が高くて、スラリとしていて。涼しげな灰髪が風にそよいでいる。
凛とした佇まいに、私は咄嗟に息をのんだ。

「ここ、静かでいい場所だよね。ボクもお気に入りなんだ」

その人____川添美鈴様は突然そう言って、わたしの隣に立った。

わたしは言葉が出なかった。ただ、小さくうなずいた。
きっと、声にしたら震えてしまいそうだったから。

「一年生かな? ……新しい子の顔を覚えるの、わりと得意なんだ」

それだけで、胸の奥がざわついた。どうして、私に話しかけてくれるんだろう。
地味で、取り柄もなくて、誰とも仲良くできそうにない私に。

「名前、教えてくれる?」

絞り出すように、わたしは言った。

「……玖珠、こよみ、です」

「こよみ。綺麗な名前だね。キミにピッタリだ」

ほんの少しだけ、美鈴様が笑った。
その微笑みが、静かな春風みたいに胸を撫でていった。

それから美鈴様は、時々私の前に現れるようになった。
食堂で、お花の世話をしているときに、図書室の一番奥の席で。

誰かがいても目立たないようにそっと話しかけてくれて、私が困らないように間を置いてくれる。
そういう人だった。

ある日、私は思わず訊いた。

「……どうして、私に、声を……?」

「うーん……どうしてだろうね。多分、ボクの心に刺さったんだ。恋詠という存在がね」

その言葉は心にぽちゃんと落ちて、水面に波紋が広がっていくみたいだった。

「無理して話そうとしなくていい。でも、恋詠の声、ちゃんと聞こえてるよ」

そのとき初めて、胸の奥で小さな何かが芽吹いた気がした。
私も、この学院にいていいんだって。ここに居場所があるのかもしれないって。

少しずつ、ほんの少しずつ。
私は、美鈴様と一緒にいる時間に慣れていった。

朝、すれ違うと小さく手を振ってくれる。
教室の前で待っていてくれることもある。
それが、嬉しくて、怖くて、でもやっぱり____あたたかかった。
ある日、美鈴様が言った。

「恋詠の目ってすごく静かだけど、深いんだよ。……水の底みたいに」
その言葉に、どう返したらいいか分からなかった。
でもわたしは、たぶん、少しだけ笑っていたと思う。
美鈴様はそれを見て、ふっと息をついたように、わたしの髪を指先でなぞった。
「恋詠、もっと笑って。……その方が、きっと世界が優しく見えるよ」

気づけば、わたしの世界は、少しずつ色を取り戻していた。
静かに、でも確かに。
この心の奥で、春が息をし始めていた。

たぶん、わたしは変わり始めている。
先輩と出会った、あの霞んだ空の日から。
怖いものも、まだたくさんあるけれど。
でも、先輩が隣にいてくれるなら……私は、前を向ける気がするから。||

glacial nymph
#

(いつかまた長編仕上げるからここだけ書かせてね)
バァン!という大きな音とともに、愛機の右エンジンから火の手と共に黒煙が上がる。瑜依は一つ大きな舌打ちをし、左急旋回で離脱の意を示して新潟空港へと舞い戻る。
(あと少し……あと少し……!)
徐々に朦朧としていく意識の中で、瑜依はひたすら操縦桿を引き続けた。生きて仲間の元へ帰るために、殉死した戦友の命の燈を消さないために。
新潟空港が目視で確認できようかといったその時、瑜依の視界は突如暗転した。

そして操縦者を失った機体は、時速500km以上の超高速で新潟空港の滑走路へと突っ込み____大破、炎上した。生存など考えられないほどの大事故だ。幾度もの不運から逃れ続けてきた瑜依の悪運も遂に尽きてしまった____そう思いながら、整備員たちは消火のために衝突現場へと向かう。コックピットから投げ出され、激しい衝撃を受けたのだろう瑜依は機体から数百m先で主翼と共に横たわっていた。せめて丁寧に弔おう、少しでも綺麗に亡骸を埋葬してやろう……と整備員の一人が瑜依を抱き抱えた瞬間、あることに気づく。
なんと、微かに息をしているのだ。機体は原型を留めないほどに大破、超高速でコックピットから投げ出され、挙句炎に焼かれていたにも関わらず、かろうじて生きているのだ。整備員たちは瑜依を傷つけないように慎重に医務室に運び込み、その後すぐに瑜依は大学病院に搬送されて手術を受けた。
しかし、あの事故は彼女の身体全体を蝕んでいた。肺や心臓は煤だらけ、機体から投げ出された衝撃でほとんどの骨が骨折、症状は悪化の一途を辿り、遂には生命維持装置をつけて24時間体勢での監視下に置かれるほどに。彼女の人生の燈さえも尽きかけていたのは、誰の目にも明らかだった。LG越後の隊長である月ヶ岡も駆けつけ、瑜依の容態を一日中見守っていた。
しかし、医師は非情な現実を告げる。「このままでは植物人間の状態が精一杯だ、意識の回復は厳しいだろう」と。それを聞いた月ヶ岡は、涙を流しながら自分が肌身離さず身につけている勲章を____仙台空附最高の武功勲章である「一級飛空戦乙女勲章」を瑜依の胸の上に置いたのだ。仙台空附であれば緋和やレオ、リセといったエースパイロットが受勲するような勲章だ。しかし、エース級の活躍をしていた瑜依は負傷と被弾の多さもあってか受勲する機会がなかった。
だが、こうして命が絶えようとしている瑜依に最後の栄誉を与えることの何が悪いのだろうか。月ヶ岡は涙を流しながら勲章を眠り続ける瑜依の胸に置き、「よくやった。お前はこのレギオンの誇りだ。そして……護ってやれなくてすまなかった」と零し、そっと部屋を出た。

誰もが意識の回復はしないだろうと思い、瑜依のことを忘れかけていたある日____月ヶ岡の元に衝撃的な報せが舞い込んでくる。瑜依の意識が戻ったのだ!そう、彼女は生き延びたのだ!「死」という人生最大の不運の後に待っていたのは、「奇跡の生還」という人生最大の幸運だった!瑜依はとうとう死神の鎌から逃げ切り、奇跡に等しい生還を果たしたのだ。
____しかし、瑜依の戦う相手は既にいなかった。いや、戦うチカラが残されていなかったと言うべきだろう。意識を取り戻した瑜依は急激にマギが衰退し、レアスキル発動はおろかcharmの起動さえ出来ないほどになってしまった。瑜依の命の燈が吹き返すのを見届けるかのように、マギという魔法は消え去っていったのだ。
戦う術を失った瑜依は松島基地に戻り、理事長から許可を得て仙台空附高等部の教鞭を執ることになった。自身のような人間を生み出さないために。そして、仲間を失うという悲劇を出来る限り減らすために。

glacial nymph
#

とある日の昼下がり、私の視界にあるチラシが映った。
(なるほど、抹茶ドーナツの発売時期なのですね……)
チラシを一通り眺めていると、考え込む私の姿が気になったのか、快が私に声をかけてきた。

「は〜るっ!ドーナツ食いに行きたいのか?暇な日があったら一緒に食べに行くのはどうだ?鏡月も一緒に誘って、3人で」

にははと快にいたずらっ子のような笑みを向けられた私は、その場で鏡月に連絡を取ることにした。

「日曜の午後なら空いてます。楽しみにしてますね」

鏡月からの返信は、彼女らしい控えめながらも柔らかい文面だった。私はそれを快に見せる。

「やったー!日曜な、陽っ!ぜーったい美味しいの食べようなー!」

快は少し子どもっぽい笑顔で、私にぐっと親指を立てる。恋人である彼女のそういう無邪気なところには、いまだに少し心を掴まれる。


日曜の午後。
私たちは駅近くの小さなカフェに集合した。外観は木調で、春の風に揺れる花が飾られている。ドーナツの甘い香りが店の外にも漂っていた。

「お待たせしました、陽様、快様」

鏡月は静かにそう言いながら、軽く頭を下げる。相変わらず、落ち着いていて礼儀正しい。

「お、鏡月来た来た!行こう行こう、もう楽しみで仕方ねぇや!」

快はまるで跳ねるように店の扉を開け、中へと進んでいった。私は苦笑しながら、その後に続く。

店内は静かで落ち着いた雰囲気だった。ショーケースの中には、限定の抹茶ドーナツがずらりと並び、抹茶の緑と小豆の赤が美しい。

「……美味しそうですね」
鏡月がぼそりと呟くと、快が「なっ?」と得意げな笑みを浮かべた。

「じゃあさ、3人とも限定のやつにしようぜ!あと、飲み物は~……カフェラテ?ミルクティー?」

「私は抹茶ラテで構いません」
「コーヒーでお願いします」
「よし、じゃあ私が注文してくるから2人は席取っといてくれ!」

そう言って快はレジに向かい、私と鏡月は窓際の丸テーブルに腰を下ろした。春の光が差し込む窓辺で、彼女は静かに手を組んで座っている。

「……陽様は、本当に快様のことが好きなんですね」

鏡月の突然の言葉に、私は少し目を瞬かせた。

「どうしてそう思ったのですか?」

「見ていれば自然とわかります。快様を見ている時の陽様は、目も、心の色も、すごく優しいですから」

「……鏡月も、よく見ているのですね」

鏡月は小さく笑っただけで、それ以上は何も言わなかった。

しばらくして、快がトレーを持って戻ってきた。

「おまたせー!お、なんかいい雰囲気じゃん?もしかして恋バナか?」

「違います」と私は即答し、快は「ちぇー」と唇を尖らせた。

それぞれの前に、綺麗にデコレーションされた抹茶ドーナツが置かれる。
香り立つ抹茶、ふわりと漂う甘み。3人同時に口に入れると____

「んー、美味いなこれ!」
快が最初に感嘆の声を上げる。

「確かに、上品な甘さですね」
鏡月も、少しだけ頬を緩める。

「想像以上ですね」
私も素直な感想を口にした。

「また3人で来たいな。こういう時間、もっと大事にしたいからさ」

快の言葉に、鏡月がふっと笑い、私もうなずいた。

春の陽気と抹茶の香りに包まれた午後。
3人の時間は、ゆっくりと甘く、過ぎていった。

glacial nymph
#

「カルちゃんっ♪私と遊びに行きましょう?」
大柄な女性が、まるで子供のように『カル』と呼ばれた女性に抱きつく。しかし、カルは「面倒事が来た」と言いたげに顔を顰めた。
「お前とォ?冗談じゃねえや。オメーと一緒に遊ぶのは死んでも御免だぞ、ナモ」
『ナモ』と呼ばれた大柄の女性は刹那悲しそうな表情を浮かべたのち、「いい事を思いついた」と言わんばかりにカルの正面に回り込む。
「一緒に遊ぶのが嫌なら……一緒に暴れるのはどうかしら?ネストを作って、街も人も自然も、何もかもを壊しちゃうの!カルと一緒なら、きっと楽しいわ?」
それを聞いたカルは気だるげに頭を掻き、「よっこらせ」と立ち上がる。
「暴れるンならまぁ……悪かねェな。最近ニンゲンの言うこと聞いてばっかで鬱憤も溜まってっし、久々に暴れてやるとするかァ……」
ナモとカルは顔を見合わせ、ニヤリとほくそ笑んだ。

「……で?この“サンクトペテルブルク”ってのが、あたしたちの新しい遊び場ってワケか」
カルは眼下に広がる街を見下ろしながら、唇の端を釣り上げた。灰色の雲が空を覆い、夕暮れにも似た光が街を鈍く照らしていた。ナモはその隣で、優しくも底知れぬ笑みを浮かべる。
「そうよ、カルちゃん。情緒があって、綺麗で、整ってるけど____それってつまり、壊し甲斐があるってことじゃないかしら?」
「ハッ、なるほどな。キレイに整ったモンほど、ぶっ壊す時に“ギャップ”が出てキモチイイんだよなァ……」
そう言って、カルは指を鳴らした。刹那、空気が微かに軋んだかと思えば、目に見えぬ波動が周囲に広がった。街の広場を歩く人々、車を運転する者、ビルの中で働く者たち____それらが次々に動きを止め、淡く青白い光に包まれる。
「な、なに……体が……ッ!」
「助け……!たすけ____ッ!」
叫びも、慌てふためく動きも、すべてが一瞬にして止まった。人々の身体が透明な結晶に変わり、まるで時間ごと封じられた彫像のようにその場に固定される。まさに静寂。息苦しいほどの沈黙が、街を支配する。

#

「へっ、これで邪魔者は片付いた。さァて……ナモ、次はお前の番だ」
「ふふっ、わたしの“役目”ね。わかったわ、カルちゃん」
ナモは一歩、二歩と前に出ると、両手を広げて天を仰ぐ。彼女の身体が淡く発光し、そして――破裂音のような響きと共に、その肉体が変容を始めた。肉が膨張し、骨が軋み、装飾のような角と鱗が現れる。その姿は、女神のようでもあり、獣のようでもあった。全長数十メートルを超える巨大な異形____まさに“化け物”。
「さて、カルちゃん。この街、ぜ〜んぶ壊してもいいのよね?」
「あぁ、遠慮なんざすんな。どっからでもぶっ潰してやんな!」
カル答えるが早いかナモの巨体が躍動し、街の高層ビルに向かって突進する。衝突と共に鋼鉄の骨組みが爆音と共に崩れ、数百人を抱えたオフィスビルがまるでカードタワーのように瓦礫へと変わった。ナモはその巨体をひねり、尻尾をしならせて高速道路を薙ぎ払う。車両の列が一瞬で押し潰され、爆発の連鎖が火柱を上げた。
地面を踏みつけるだけでアスファルトが陥没し、配管が破裂して黒煙が吹き出す。ナモは四足で突進しながら片腕を振り上げ、歴史的建造物のドームを一撃で粉砕した。その破片が周囲に降り注ぎ、結晶化した人間の像を巻き込んで無数に砕ける。ナモの咆哮が雷鳴のように鳴り響き、それが引き金となって周囲の窓ガラスが軒並み音を立てて割れた。
「ヒャハハハハッ!いいぞナモ!もっとやれェッ!見てるだけでも最高だァッ!」
「うふふ、カルちゃんのためなら、もっと派手にしないとねぇ……♪」
巨大な爪が地面を引き裂き、地下鉄の天井を破壊する。車両が持ち上がり、破裂するようにして地上へ飛び出し、火花とともに吹き飛んでいく。空中を舞う破片の中、ナモの尾が回転しながら打ちつけられ、地下鉄の車両と結晶達は教会の尖塔を巻き込んで地面に叩きつけられた。

____夜が更ける頃には、サンクトペテルブルクは見る影もなく瓦礫と結晶に覆われていた。煙が立ち上り、破壊された文明の残骸が荒野のように広がる。その中心に、かつての市庁舎跡地に、巨大な“”が築かれていた。結晶の塔が絡み合い、瓦礫と血と鉄骨が融合したその巣は、異形の美しさを放っていた。その頂で、カルが気だるげにあくびをし、ナモがうっとりと街の景色を眺めている。
「ふわぁ……久々にハデに暴れたなァ……。ここ、案外気に入ったぜ」
「そうね。カルちゃんと一緒にいると、本当に楽しいわ」
「ま、しばらくはここを根城にすっかァ。ニンゲンどもがまた湧いてきたら……そん時ゃ、また暴れてやるよ」
「ええ。その時はまた、一緒にね?」
カルとナモは破壊の王座に腰を下ろし、月明かりの下で笑い合った。この街は、もう二度と元には戻らない。そして、次なる“遊び場”が見つかる日まで……破壊者たちは、ここで眠るのだった。

glacial nymph
#

妄想of妄想
楽しかったです。はなはなさん、れいんさん、ありがとうございました

私の一日は、陽の昇るか昇らないかという時間から始まる。自然に目が覚め、むくりと身体が動き始め、ほぼ自動と言って差し支えないほどに自然に朝の支度を始める。顔を洗い、髪を整え、最後にパジャマから制服に着替える。早く起きる分ゆっくり支度をすることができるが、それでも始業までには十分な時間がある。
……さて、準備もできたことですし。あの子の部屋に向かうことにしますかね。

「永久、朝だよ〜。ドア開けて〜」
私はコンコンコン、と擬妹の部屋の扉を三度優しくノックする。すると、かすかに寝ぼけたような返事が聞こえたのちに扉が開いた。しかし、扉の影から出てきた彼女は寝ぼけ眼で髪もボサボサ、普段のこの子からは考えられないような有様だ。
「ふぁい……おはようございましゅ……」
半分寝ているような状態でも起きてくるのは見事だが、流石に今日は少し早すぎたかもしれない。部屋にお邪魔させてもらい、「もう少し寝ててもいいよ」と促す。しかし、彼女は一向に寝直そうとしない。どうしてかと疑問に思って訊いてみると、「悠織様に私の寝顔を見られるのは恥ずかしいので……」なんて返ってきて、思わずくすり。いつでもどこでも私と一緒にいるのだから、今更でしょうに。そうしている内に目が覚めてしまったらしく、永久がいつものように私の手前の椅子に座り、背を向ける。
「ゆうりさまぁ……かみ、とかしてくらさい……」
まだ少し眠気が残っているのか、永久がやや舌っ足らずな声で髪のお手入れをお願いしてくる。そんなに眠いのならもう少し寝ていればよかったのに……と苦笑しつつ、永久から渡された櫛で永久の髪の毛を優しく梳かしていく。少しふわふわとした髪質で、雨の日なんかに放っておけばすぐくるっくるになってしまいそうな永久の髪。それでも、私が梳かしているとまるで心を許しているかのようにサラサラないつもの髪に戻っていくのだから不思議だ。永久の髪を梳いていた時間が20分か30分かはわからないが、気づけば私と同じくらいサラサラな髪になっていた。
「できたよ、永久。どう、目は覚めた?」
髪を整え、永久の肩を優しく二回叩く。……返事がない。
「永久、起きて〜。遅刻しちゃうよ〜?」
もう少し強い口調で呼んでみるも、返事がない。どうやら、髪のお手入れの間に寝てしまったようだ。仕方ないですね……と少し呆れつつ、永久の耳元に口を近づける。
「みーらーい、そろそろ起きてくれない?このままだと遅刻しちゃうよ?」
次の瞬間永久の肩がビクッと跳ね、「ひゃうんっ!」と永久が驚いたような声をあげた。どうやら、無事に起こせたらしい。
「ほら、急いで着替えないと遅刻しちゃうよ?制服はそこに用意してあるから、すぐ準備してね。私は外で待っているから、終わったら出てきて____」
そう言って、私は部屋の扉に手をかける。しかし、永久が私の制服の袖を掴んで引き止める。どうやら、今日は永久にとって「一人でいるのが怖い日」なのかもしれない。少し思案したのち、私は部屋に残ることにした。……正直に言うと、「寂しそうな子犬のような瞳で見つめられて情に絆されてしまった」と言った方が適切かもしれない。

永久が着替えを終わらせた頃には、ゆうに朝日も昇りきり、学食で朝食が提供される時間となっていた。
「悠織様、準備できましたっ!」
部屋を出たあとは、いつもの元気も笑顔もいっぱいの永久だ。……もしも、永久が「『自分の中の弱さ』を誰にも出せない」と思っているのなら。その悩みを私が取り除いてあげたい。せめて私の前だけででも、悩みを吐き出せるようになってほしい。これは、完全な私のエゴだけど。それでも、「大切な家族」の中の『大事な妹』が苦しむ姿なんて、見たくないから。

「ゆうりさまーっ!早くしないと、席無くなっちゃいますよ〜っ!」
遠くから響く永久の声に、私は「今行くよー!」と返して走り出した。
____今日もいい日になるといいな。

今作の主人公、白浪悠織様
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そんな悠織様に懐いてるシベリアンハスキー、風連布永久
#1382372635601670214 message

glacial nymph
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※現代パロ、平和な御台場が苦手な人はブラバ推奨

今日は珍しく槿様も昴様もいつもの場所にいらっしゃらない。純様に伺ったところ、おふたりともそれぞれ別の用事で外出中との事だった。
……今日なら、おふたりのためにサプライズプレゼントを買いに行けるのでは?
そう思った私はいつものリュックを背負い、マイバッグを持って買い物に出かけようとした。が、その直前で私はとある方に声をかけられた。私が振り向いた先にいたのは____

※ここから物語が分岐します。
2パターンありますが分割して投稿します。
2通りの帆雫をお楽しみください。

glacial nymph
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勝てない、勝てない、勝てない……!なんで、どうして____!
ギリッと軋んだ歯茎の音が聞こえたか、模擬戦の相手が『いつも通り』冷たく見下すような視線で見下ろしてくる。
「所詮お前のように感情的に動くような戦闘機乗りは無様に死ぬだけだ。故郷に帰って遊覧飛行でもしていた方が身のためだと思うがな」
お前の叔母とやらも姪に遠方で死なれては困るだろう、と嘲笑うように彼女は言った。
刹那、私の中でぷつりと何かが切れる音がした。あの人を、私の今までを、そして今の私を。全て貶されたような気がした。気づけば、10センチ以上も高いリュドミラの胸ぐらを掴んで殴りかかろうとしていた。私は、彼女が憎くて憎くてたまらなかった。
「実香様を貶すなッ!!!私をいくら侮辱しようとも構わないが、実香様を侮辱することだけは絶対に許さないッッッ!!!」
その時の私は、目に涙を溜めていたのだと思う。憧れの人も、過去も、今も貶され、何に縋ればいいのかわからなくなってしまっていた。
しかし、殴りかかろうとする前と後で彼女の態度は変わらなかった。むしろ、硬化した。強引に腕を振り払われ、今度は私が胸ぐらを掴まれる。
「この程度で泣き喚くような人間が戦闘機乗りを名乗るな。お前なんかより適性のあるリリィがここにはごまんといるんだ。それでも出撃できずに卒業していく奴だっている。その中でお前は1年から出撃させてもらっているんだ。その意味を今晩よく考えろ。それがわからないようなら私からルーネに直訴して退学処分を要求する。お前のような感情的な人間に枠を食われるくらいなら追い出した方がよっぽどマシだ」
思わず息がヒュッと詰まるような恐ろしさを感じたのは、きっと気のせいではないだろう。確実に敵を仕留める冷酷さと正確さを兼ね備えた戦略眼の下には、こういう苛酷さが秘められていたのかと思うと、叱られている最中だというのに妙に腑に落ちてしまった。
「……わかりました。身の振り方を考えてきます」
「流石は『Eisfwalke』ですね」とか、「そんなに私のことが嫌いだったんですね」とか。口から出ていくはずだった嫌味は灰のように消えていった。その代わり、出てきたのは彼女の求める返答だった。
リュドミラは、そんな私を見ながら苛立たしそうに手を離す。
「お前が自らそれを望むのなら、私から言うことは無い。ようやく自分の実力と身の程を知ったというだけのことだからな。むしろ遅すぎたくらいだ」
「正しい判断を下せよ」とだけ言って、リュドミラは去っていった。そして、その場に一人取り残された私は愛機に顔を埋めて泣く他なかった。情けなくて、悔しくて、でも事実だから反論できなくて。絶対絶対見返してやる。そう強く誓うことになった、苦い苦い一日だった。

glacial nymph
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夢を見ていた。遠い昔の、私が産まれたばかりの頃の夢を。
「……ノクセリオン様」
ふと呟いた主の名前は、和紙に零した水滴のようにすうっと私の中に染み渡っていった。
「呼んだかしら?ヴァルドラ」
声の向く方を見ると、私の主____ノクセリオン様が穏やかな笑顔を浮かべてドアによりかかっていた。
「すみません、ノクセリオン様。貴女の名前を呼びたくなってしまっただけで、深い意味は特にないのです」
寝床にしていたボロボロの長い台のようなものから降り、主に向けて非礼を詫びる。しかし、彼女はそれを気に留めることなく私の方へ歩み寄ってきた。
「気にしてないから大丈夫よ。それより、今日は久々に外に出てみるのはどうかしら?毎日こんな所に引きこもっていたら、息が詰まってしまいそうだわ」
主からの提案に、従者である私が「NO」を突きつける理由なんて何もない。「かしこまりました」と首肯し、彼女の後ろについて行こうとする。しかし、彼女はそんな私の行動に首を横に振った。
「ヴァルドラ、嫌なことはきちんと『嫌』と言いなさい?確かに私達は形式上主従関係ではあるけれど、私は貴女と対等に言葉を交わせる関係でありたいと思っているの。だから、私に従うだけじゃなくてきちんと自分の意見を言ってほしいと思っているわ」
ノクセリオン様は一旦そこで言葉を切り、宝石のような透き通る目で私を射抜く。
「あと、私のことは『ノン』とか『ノン様』でいいわ。それと、敬語も出来るだけ無い方がいいわね。いつまでも『ノクセリオン様』だなんて呼ばれてたら、距離を置かれている気がして悲しいもの」
どきり、と心臓が跳ねる音がした。従順を示すための呼び方が、主からすればそう見えていたのかと。彼女を悲しませていたことに胸が痛み、私は思わず深々と頭を下げる。
「申し訳ございません」
私の謝罪に、彼女は「徐々に慣れていってくれればいいのよ」とだけ呟き、微笑みながら再度私に問いかけた。
「それで、貴女は私との散歩に付き合ってくれるのかしら?」
主従関係なんて抜きに、私がその誘いを断る理由なんてなかった。ノン様のいる場所が、私のいるべき場所だから。
「ぜひお供させてください、ノン様」
私の答えに、彼女は優しく私の手を引いて歩き始めた。

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うちの子(ここ重要)のSSを投げる場所

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※やっと出せたシベハス永久×飼い主悠織様概念
ごそごそ、ごそごそ。冬の寒い朝、悠織さまが布団の中で寝返りを打つ音が聞こえた。わわっ、そろそろ悠織さまが起きる時間!起こしに行かなきゃ!
とてとてとて、とてとてとて。悠織さまには冷たい床の感触も、わたしの極寒地仕様の足裏の前にはもふもふのカーペット同然!起こさないようにそーっとドアを開けて、ベッドの上に乗る。目覚ましが鳴った瞬間に止めて、布団の上から悠織さまに乗っかってギシギシと揺さぶる。
「悠織さまっ!朝ですよ〜!」
ゆさゆさ、ゆさゆさ。ご主人さま!起きて!と身体を揺さぶるも、悠織さまは寒いのかお布団を被ってぎゅーっと縮こまってしまった。
「うーん、あとちょっとだけ……」
むー!お、き、て!おきてってば!
ゆっさゆっさ、わしゃわしゃ!布団の中の悠織さまを揺らす。でも、悠織さまはまだ起きてくれない。ふーんだ!いいもんね!悠織さまが起きないなら一緒のお布団で寝ちゃうもんね!
ごそごそごそ、ごそごそごそ。えへ、入っちゃった。
「ちょ、みらい……」
えへへ、悠織さまと一緒〜♪起きないのが悪いんだもんね、ふーんだ!もふもふのからだで〜?ぎゅーっ!!!
「わかった、起きるよ、起きるから……」
む〜……
わたしがむくれながら渋々悠織さまから離れると、悠織さまがくすりと笑う。
「うそうそ。冗談だよ、永久。私が永久を適当にあしらうわけないでしょ?」
「ほんとにぃ……?」
「ほんとほんと。私は永久が一番大事だもん」
そう言って悠織さまは、まだ寝癖のついた髪を片手でかき上げながら、わたしの頭をぽんぽんと撫でてくれた。うう、ずるい。そんな風に優しくされたら、怒る気なんてすぐどこかに飛んでいっちゃうんだもん。
「じゃあ、朝ごはんにしよっか」
「はーいっ!」
キッチンに向かう悠織さまの後ろを、尻尾をぶんぶん振りながらついていく。朝の光が差し込む台所には、昨日の夜に炊いたごはんの香りがまだ残っていた。冷蔵庫を開けた悠織さまが、卵とウインナーを取り出して、器用にフライパンを振る。じゅうっと香ばしい音と匂いが広がって、わたしの鼻がぴくぴく動く。
「ねぇねぇ、わたしもお手伝いしていい?」
「うん、じゃあ永久はテーブル拭いてくれる?」
「はーいっ!」
テーブルを拭いて、皿を並べて、お味噌汁の湯気が立ちのぼる。2人で向かい合って「いただきます」と声を合わせると、ほっと胸が温かくなる。卵焼きは甘くて、ウインナーはぱりっとしていて。悠織さまの料理はいつも美味しくて幸せになっちゃう。
「今日、久しぶりに散歩行こっか」
「うん!行きたい!」
朝食を終え、わたしたちは外に出る。冬の空気は冷たくて頬がぴりっとするけど、太陽の光が優しくて気持ちいい。悠織さまがマフラーをわたしの首に巻いてくれて、手袋越しに手をつなぐ。
「雪、また降りそうだね」
「ほんと?やったぁ!積もったら雪だるま作ろ!」
「ふふ、永久ったら子どもみたい」
「いいもんっ、楽しいんだもん!」
住宅街を抜けて、川沿いの道を歩く。風が吹くたび、わたしの尻尾がふわりと揺れる。悠織さまがその先を見つめて微笑むから、胸がきゅんとした。
散歩の帰り道、ふたりで小さな商店街に寄る。八百屋さんでみかんを買って、お花屋さんの店先で赤いポインセチアを眺める。
「これ、おうちに飾ったら明るくなると思う!」
「うん、いいと思う。どれがいいか、永久が選んでいいよ?」
「じゃあ、この真っ赤なお花がいい!」
帰り道は両手いっぱいの荷物。悠織さまが「寒いから、早く帰ろう?」と笑ってくれるたび、胸の奥がぽかぽかしてくる。
家に戻ると、暖房の風と一緒におうちの匂いが迎えてくれた。荷物を置いて、わたしは尻尾をふりふり。
「ねぇねぇ悠織さま、ブラッシングして?」
「はいはい、荷物置いてくるからちょっと待っててね」
リビングの毛布の上に座ると、悠織さまがブラシを手に取り、わたしの毛並みをゆっくり梳かし始める。しゃっ、しゃっ、と優しい音。背中をなでるたびに、ふわりと毛が光を反射する。
「今日もいい子だね、永久」
「えへへ……悠織さまの手、あったかい」
「ほんと?ならよかった」

しゃっ、しゃっ、しゃっ……

ブラッシングが終わるころには、わたしの目がとろんとしてきて、尻尾もゆっくりと動かなくなる。悠織さまが笑って、わたしの頭をなでながら言った。
「お昼寝でもする?」
「うん、ゆーりさまと一緒がいい……」
そう言って、ごそごそと布団に潜り込む。悠織さまの胸の音が、とくとくと心地よく響く。
「おやすみ、永久」
「ゆーりさま、おやすみなさぁい……」
もふもふの毛と、やわらかなぬくもりに包まれて、冬の午後が静かに過ぎていった。

glacial nymph
# glacial nymph 夢を見ていた。遠い昔の、私が産まれたばかりの頃の夢を。 「……ノクセリオン様」 ふと呟いた主の名前は、和紙に零した水滴のようにすうっと私の中に染み渡っていった。...

外に出ると、見慣れない白い粒がちらついていた。空はどんよりと曇り、ヒュージであるはずの私でさえ体を震わせるほど凍てついている。
「……ノン様」
スタスタと歩き出していた主君を呼び止める。少し申し訳なさもあるが、流石にこうも寒くては散歩を楽しむどころではない。どうしたの?と振り返るノン様に、寒くて体の震えが止まらないことを伝える。ノン様は数刻顎に手を当てて考えたのち、負のマギで私の体を覆い始めた。
「応急措置だけど、これで少しは暖かくなるはずよ」
ノン様は「あとでマギで服を作る方法を教えてあげるわね」と言い、今度は私を気遣うようにゆっくりと歩き出した。
私達の住処を出てしばらく経った頃、廃墟が立ち並ぶ大きな街が見えてきた。鉄板に僅かに残った字を読む限り、「ながのし」という街らしい。
かつて“街”と呼ばれたその場所は、今や骨だけになった獣のように沈黙していた。崩れ落ちかけたビルが幾つも傾き、割れた窓からは風がうめき声のような音を立てて吹き抜けていく。雪に混じるようにして、赤錆と灰が舞っていた。
「……随分荒れ果てたわね。私たち、本当にこんなに壊してしまったかしら?」
ノン様は足を止め、崩れた歩道にしゃがみ込んだ。指先で粉々になったコンクリート片を拾い上げる。その仕草ひとつひとつが丁寧で、美しくて、まるで朽ちた宝石を撫でるみたいだった。
「……ノン様を守るためとはいえ、この街をほとんど壊してしまったのは、確かに少し……」
私がそう口にした瞬間、ノン様はふるふると首を横に振る。
「違うわ、ヴァルドラ。後悔してほしいわけじゃないの。私達はここで楽しく遊んだだけ。ただ____」
そこでノン様は立ち上がり、遠くの崩れた商店街を見つめた。その瞳は、どこか優しさを帯びていた。
「ここにはきっと、たくさんのニンゲンの生活があったのよね。笑って、泣いて、怒って、愛して……そんな日々が」
私はノン様の隣に並び、壊れた街並みを見渡した。
ひしゃげた車、倒れた信号機、看板だけが残った店。
すべてが静止し、もう誰も戻ることはない。けれど、どこか温度が感じられた。それは雪の冷たさとは違う、もっと柔らかな何かだった。
「ノン様、あれは……」
指さした先には、崩れた壁の隙間にちょこんと咲いた小さな黄色い花があった。周囲の瓦礫に飲まれながらも、ひっそりと立っている。
ノン様はそっと歩み寄り、屈み込んでその花に指先を伸ばす。
「……まぁ。こんな環境でも咲くなんて、ヒトの植物は強いのね」
「はい。たぶん、ニンゲンが昔ここに植えたものが、なお生き伸びていたのでしょう」
ノン様は花を摘まず、壊れたコンクリート片の間にマギをひと筆だけ落とす。
負のマギが淡く広がり、花を包むように揺らめいた。
「これで、少しは暖かくしてあげられるわね」
「はい。ノン様のマギなら、枯れることはないでしょう」
ノン様は微笑み、また歩き出す。私も黙ってその後ろに続いた。
しばらく進むと、古びたアーケード街の跡が見えてきた。看板にはところどころ文字が残っている。
『くすり』『写真館』『クリーニング』……
壊れたシャッターの前でノン様が立ち止まった。
「ねぇヴァルドラ。ニンゲンって、“写真”で記憶を残すのよね?」
「はい。私たちのようにマギに刻むのではなく、何か機器を使って……」
ノン様はシャッターに手を触れ、小さくため息をついた。
「記憶を閉じ込める箱、ね……。なんだか愛おしいわね。壊れやすい心を守るための、ちいさな結晶みたい」
私はその言葉に胸が揺れた。ノン様は本当に、壊れた世界の中にも美しいものを見つける方だ。
雪はいつの間にか弱まり、曇っていた空がうっすらと明るくなってきた。風の音がやんで、廃墟の街がほんの少しだけ静かに息をしているようだった。
「……歩くの、少し楽しくなってきました」
そう言うと、ノン様は目を細めて私の手をそっと握った。
「私もよ。瓦礫の散歩道だって、貴女と一緒なら悪くないわ」
その声は雪の落ちる音よりも静かで、けれど確かに、私の胸の奥まで届いていった。
私達の足跡だけが、白い粒の降り積もる街に並んで残されていく。
音の消えた廃墟の街で、ヒト型のヒュージである私たちは、まるでニンゲンのように____ただゆっくりと、散歩を楽しんでいた。

glacial nymph
#

久々に納得いかない出来。でも書いちゃったから供養。

ホテルのロビーに足を踏み入れた瞬間、快は隣を歩く陽の横顔を盗み見た。
チェックインカウンターに向かう足取りは静かで、姿勢は真っ直ぐ、眼鏡の奥の瞳は揺らがない。
けれど、腕がほんの少しだけ快の袖をつまんでいるのを快は見逃さない。
「陽、生徒会長らしく緊張してんの?」
「していません。ただ……こうしてふたりで泊まるのは、初めてですから」
「それ、緊張してるって言うんだよ?」
陽は小さくむっとした顔をしたけれど、受付では完璧な笑みを浮かべて予約の確認を済ませてみせる。そのギャップに快はまた胸がくすぐられ、エレベーターに乗った途端に思わず笑ってしまう。
「……何か可笑しいですか」
「いや、なんでもないよ。陽ってカッコいいな〜って思ってただけ」
「……快は本当に、私をからかうのが好きですね」
そう言いながらも陽の耳は赤い。快はますます楽しくなった。
部屋に入ると、ふたり分の広めのツインベッド。カーテンを開けると夕暮れの街が見え、陽が自然と息を漏らす。
「わあ……綺麗ですね」
「今の声、めちゃくちゃ素じゃん。かわい」
「わ、忘れてください」
快が笑うと、陽は恥ずかしそうに快の腕を小突く。その距離がまた甘い。
荷物を置き、軽くシャワーを浴び、ふたりで浴衣姿になって夕飯のビュッフェへ向かうと、陽の“らしくなさ”がさらに顔を出した。皿の上には星形のハンバーグに、ナゲット、挙句の果てにはでかでかと盛られたオムライス……。
「これは……その、違うんです。見た目が可愛かっただけで……」
「陽ってば、子供向けのやつ好きなんだ?」
「す、好きなわけ……」
「嘘。陽の目が『これ食べたいよ〜』って言ってる」
陽は悔しそうに唇を結ぶが、すぐに小声で
「……美味しいです」
と呟く。快は椅子の上で揺れる陽の足元を眺めながら、胸の底がじんわり温まるのを感じた。
部屋に戻ってベッドに寝転びながらテレビをつけると、地元の漁港特集のローカル番組が流れていた。陽は意外にも真剣に見入り、専門家の解説に深く頷いている。
「こんなん好きなの?」
「地域の特色や産業は、自治体運営の基礎です」
「生徒会長か?」
「生徒会長です」
きっぱり言われて快は吹き出した。番組が終わる頃には陽が快の肩にもたれかかっていて、その呼吸がすこしずつゆるんでいく。
「……眠い?」
「寝ていません。ただ……快の肩が落ち着くので」
「じゃ、寝よっか」
照明を落としてベッドに潜り込むと、陽は当然のように快の方へ腕をまわした。年下とは思えない主導の抱きしめ方に、快はどきりとする。
「今夜は、離れませんから」
「うん、離れないで」
囁き合って眠りにつく夜は、思いのほか早く過ぎ去った。
朝、快が目を覚ますと陽が真っ先に顔を覗き込んでいた。
「おはようございます、快。起きるの遅いですよ」
「……今、完全にキスする1秒前みたいな顔してたよね?」
「ち、違……!そんなつもりでは」
「あー、陽が照れた〜」
布団にもぐって逃げる陽の背中を撫でると、むずがゆそうに震える。
 身支度を済ませて朝食会場へ向かうと、陽のトレイには……パンケーキ(ホイップてんこ盛り)。しかもチョコペンでニコちゃんマーク。
「陽、それ絶対好きだよね?」
「……快には隠せませんね」
「隠さなくていいよ。全部かわいいんだから」
陽は目を合わせられずにホイップをすくい、快の皿にそっと乗せる。
「……半分、食べてください」
「なーに、“分けっこ”?珍しいね、陽がそんなこと言うなんて」
「……ダメでしょうか」
「ダメじゃない。最高」
ふたりの指が少し触れて、陽が胸元を押さえながら小さく息を呑む。
「陽、好き」
「……私も、あなたが大好きです」
ホテルの朝の光の中、快は思う。
自分だけが知っている陽の可愛いところ全部を、これからも逃さず抱きしめていくのだと。

glacial nymph
#

ふと、誰かに呼ばれたような気がして目を開けた。目を覚ましてみれば、粗末な衣服に武器が二振り。どうしてこんな山中に立っているかと自分に問うが、何も覚えていない自分には答えなど出せるはずもなかった。
「ここ、どこ?」
自然と口から零れたは、酷く耳馴染みのないものだった。
誰かと別れた記憶も、誰かと一緒にいた記憶もない。ただ二つ手元に残された、恐らく自分のものであろう「バチバチと音を鳴らして光る槍」と、「先が三つに分かれた鉾」だけが、自分を自分たらしめる存在だった。

ぶおん、適当に槍を横にひと薙ぎ。光の刃と共に、木がスパスパと音もなく斬れた。次に、槍を上に掲げてみる。強い光が槍から飛び出て、雲が爆ぜた。……不思議な槍だ。
ふと槍に視線を落とすと、赤い石の輝きが視界に入った。綺麗で、禍々しく、それでいて人を惹きつける赤だ。何度か触って取り出せないか試したが、触る度にバチッと弾かれるので諦めた。
それから少し歩いて、開けた場所に出た。そういえば、右手に握っていたこの鉾を試していなかったことをふと思い出した。ぶおん、こちらも適当にひと薙ぎ。……何も起こらない。今度は、地面を突いてみる。こん。地面が、大きな音を立てて割れていく。どこかで、悲鳴が聞こえた気がした。……変な鉾だ。
そういえば、と私は鉾にも視線を落とす。やっぱり、あの赤い石が嵌まっていた。……まぁ、今はどうすることも出来ないのだろう。放っておくしかない。
二振りの武器の性能を確かめたところで、私はこの獣道を辿って山を降りていくことにした。

「……なんだろ、これ」
山を降り始めてしばらく経った頃、久々に口から音を出した。その音は、疑問と興味の音だった。木で出来た、大きな塊。……誰も、いないみたい?中に入るために邪魔な木の塊を、どんどんどんと幾度も叩く。しかし、木の塊は壊れる気配がない。仕方がないので、光の槍で壊してしまうことにした。
ぶおん!その一薙ぎが些か強すぎたか、大きな木の塊は跡形もなく崩れ去ってしまった。
「やっちゃった……」
中に入って何か情報を得るつもりだったが、崩してしまっては仕方がない。私はその残骸から立ち去り、再び山の中を流離うことにした。

____私が意識を取り戻してから幾度目かの昼間、ようやく私と武器が一緒に寝られるほどの大きな洞穴を見つけた。私は疲労で何も考えられずに倒れ込み、そのまま深い深い眠りについた。

……煩い。外が騒がしい。何かあったのだろうか。
私が目を覚まして外に出ると、周囲には鬼のような形相でこちらを睨んで取り囲む少女達がいた。顔と態度には、明らかな敵意が見える。私は何もしていないのに。
「ねてたんだから、じゃましないで」
私の音が若干苛立ってしまったのも、仕方がないことだろう。彼女達は私が言葉を発したことに驚いたのか、僅かに動きを止める。その隙に、私が鉾をこん。と地に突いた。刹那、彼女たちは足元に発生した地割れに呑み込まれていった。もう一突き、こん。悲鳴と破砕音が響き渡る中、大地は静かにその口を閉じた。
「わたしはっ、わるくないっ」
大地の閉じた口を見つめながら零れ落ちた音が、私の動揺を物語っていた。

#

︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
あれから、何回も昼が過ぎた。何度も何度も人が来て、その度に私は鉾で大地の口に突き落として潰した。皆、私に敵意を向けていた。何度か小さい塊に身体を穿たれたこともあったが、気づけば傷は消えていた。

そんなある日、私は運命の出会いを果たす。いつものように山の中を彷徨い歩いていると、何やら紙の塊を見つけた。
「『ギリシャしんわ』……?」
ぺらぺらとめくり、目を通してみる。ゼウス、ポセイドン、アテナ、ヘラ、ハデス……神様の名前と絵が、沢山書かれている。私は、その紙に夢中になった。中でも私が夢中になったのが、ゼウスとアテナだ。数々の神々の中でも際立って惹かれるものがあり、そのページばかりは擦り切れるまで読み続けた。

それからまた暫く経ったある日、私は久しぶりに人と出会う。でも、その人はこれまでと少し違った。武器を持たず、敵意も見えない。何かを背負い、この山を歩いている。それどころか、私のことを見るなり駆け寄って食べ物をくれた。
「こわく、ないの」
私の不思議な気持ちは、自然と音となって漏れ出た。すると、その人からは意外な答えが帰ってきた。
「怖いか怖くないかで言ったらそりゃあ怖いさ。君は槍に鉾を持ってるし、私はただの登山家だ。でも、そんな格好で佇む子を見捨てておくことは私には出来ないよ」
……正直、吃驚した。私に近づいてくる人は、私を殺しにくる人ばかりだったから。優しく接してくれる人もいるんだって。
「これ、すき」
渡された食べ物のうち、丸い袋に「メロンパン」と書かれたものを指差す。すると、その人はメロンパンを私に差し出した。
「じゃあ、お腹いっぱい食べるといいよ。食べ終わったら、君を保護してくれる場所に行こう。もう、山で辛い思いも苦しい思いもしなくていいよ」
「ほご」という言葉の意味は正直わからなかったが、この山から降りても居場所があるのかもしれない……と思うきっかけになった。
意識を取り戻して初めて食べた『ヒトのご飯』は、格別な味だった。
私がメロンパンを食べ終わると、その人は「着いてきて」と言い、元来た道を引き返し始めた。
「のぼらなくていいの」
私がそう訊ねると、その人は首を横に振った。
「いいかい、お嬢ちゃん。山はいつでも登れるけどね、命ってのは一個きりなんだ。この山はまた来れるが、その時お嬢ちゃんが生きているとは限らない。なら、私は君が生きていてくれそうな道を選ぼうと思うんだ」
……命は、一個きり。多分目の前の人にとってはその通りで、だから髪も白くて皺が沢山あるんだろう。でも、私は……
言えなかった。頷くことしか出来なかった。その人の後ろを、着いていくことしか出来なかった。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
歩き始めてしばらく経った頃、何人かの少女とすれ違った。綺麗な服を着て、私と同じように武器を持っている。ちら、と私に視線が向けられ、前を歩いてくれていた人をその人達が呼び止める。
……なにか言い争っている。多分、原因は私。じゃあ、あの場に出ていくべきは私だ。勇気出せ!
「このひと、ごはんくれた。わるくない。おこるの、わたし」
それを聞くや否や、おじさんと言い争っていた人達はすぐに謝っておじさんを帰した。私はと言うと、おじさんの向かう先がこの人達のいる場所らしく、前と後ろに挟まれて歩いている。すごく居心地が悪い。居心地が悪いのは向こうもそうらしく、さっきまでの騒がしさはすっかり消え失せてしまっていた。
その内、私の前の人がこう話しかけてきた。
「そういえばさ、名前はなんて呼べばいいの?」
……名前。知らない言葉だ。解らない、ということを示したくて首を傾げる。それを汲み取ってくれたのか、別の人が話し出す。
「名前っていうのはね、私達が誰かわかるようにするものだよ。みんな持ってる。だから、多分貴女もあると思うよ」
私が、誰か。多分、神様の、ゼウスの、子供。私が知ってる名前は、あの本の中の名前だけ。他の名前は、何も知らない。
「……アテナ」
「アテナちゃんって言うんだ、いい名前だね」
「ありがと」
それからは、また沈黙。スタスタと歩いていく。

#

先頭の人が、唐突に歩みを止めた。
「着いたよ、アテナちゃん」
……ここが、新しい居場所。私の、アテナの、人としての居場所。無機質な建物、古ぼけた門。でも、確かに感じる安心感。これから始まる生活に、柄にもなく胸が高鳴った。

glacial nymph
glacial nymph
#

白い廊下は、いつも通り静かだった。
足音が吸い込まれていく感覚に、史瑶は違和感を覚えない。ここは音が残らないように設計されている。無駄な反響は、観測の妨げになるからだ。
研究室のガラス越しに、観測装置の光が規則正しく点滅している。マギ粒子の流れ、位相安定値、脳波。すべてが正常値の範囲内に収まっている。その「範囲」全てが、GEHENAによって定義されたものだ。
「____報告、終わりました」
淡々と告げると、白衣の研究員が満足そうに頷く。
「よくやった。今回のデータは非常に価値がある」
『価値がある』という言葉は、常に史瑶に向けられてきた。
「……はい。お役に立ててよかったです」
それは心からの言葉だった。役に立つことは、ここに存在する理由と同義だからだ。
研究室を出たところで、待っていた影が動く。同じ制服、同じ年齢。それでも、こちらを見る視線だけが、わずかに定まらない。
「……史瑶」
呼び止められて、史瑶は足を止めた。そこにいたのは、物心ついた時から一緒にいる史瑶の友人だった。
「また、あの人たちに“ありがとう”って言ってたね」
責める声ではない。だが、戸惑いが隠しきれていない。
「言うべきだと思う」
史瑶は即答する。
「私の異能は、GEHENAがなければ覚醒しなかった」
これは、事実だ。記録上、史瑶の覚醒例は“GEHENA管理下でのみ再現可能”と結論づけられている。
「だから私は、GEHENAに忠誠を誓っている。命令があれば、従う」
友人の足が止まる。
「……それ、おかしいよ」
史瑶は瞬きを一つする。
「どこが?」
「だって……」
友人は言葉を探すように、白い廊下を見渡す。監視カメラの位置を無意識に避ける仕草だった。
「異能を“覚醒させてくれた”からって、一生従わなきゃいけない理由にはならない」
史瑶は少し考える。感情ではなく、因果関係として。
覚醒←GEHENA
生存←GEHENA
戦闘継続←GEHENA
GEHENAが存在しない前提は、史瑶の計算式に含まれていない。
「合理的だと思う」
友人の表情が歪む。
「……史瑶。それ、感謝じゃない。それ、支配だよ」
史瑶は、その単語を頭の中で転がした。支配。命令系統。管理構造。GEHENAの資料で何度も目にした概念だ。
「そうだね、その方が効率がいい」
「そうじゃなくて……!」
声が強まる。それでも史瑶の心拍数は、観測基準値から一切逸脱しない。
「GEHENAは、私達を“使っている”んだよ」
「使われる価値があるなら、問題ない」
沈黙が落ちる。白い廊下の照明は二人を等しく照らしているのに、友人だけがひどく影の中にいるように見えた。
「……史瑶はさ、」
友人は、かすれる声で言う。
「自分が“人”だって思ってる?」
質問の意図が、理解できない。
「定義上は、そう」
「……そういうことじゃない」
友人は史瑶の手首を掴んだ。強くはない。ただ、確かめるような力。脈を測る位置を、無意識に選んでいる。
「史瑶は、誰かに忠誠を誓わなくても、ここにいていいんだよ」
その接触に、史瑶の思考が一瞬だけ遅延する。
____重い。いや、軽い?
G.E.H.E.N.A.の装着端末が、ごく微細な警告振動を返した。
「それは、非合理」
史瑶は静かに手を引く。
「GEHENAは、私に“”をくれた。力を使うための場所も、理由も、全部」
選択肢は、最初から最適化されている。
「だから私は、従う」
友人は何かを言いかけて、口を閉ざした。その沈黙すら、監視対象になっていることを、史瑶だけが理解していない。
史瑶は、何も不思議に思わなかった。自分の言葉が、誰かを傷つけたかもしれないことも。疑う理由が、設計上存在しなかったからだ。
白い廊下は、今日も静かだった。史瑶は、その中を迷いなく歩いていく。GEHENAが与えた忠誠を、自分の意志だと信じ切ったまま。

glacial nymph
#

朝。
玄関の音で、私は全部わかってしまう。
制服の布が擦れる音、靴紐を結ぶ指の気配、少しだけ早足になる悠織のリズム。
それが「置いていかれる朝」だってことも。
私は伏せをしたまま、尻尾だけを床に当てて音を立てる。本当は、立ち上がって前脚でしがみついて『行かないで』って言いたい。
でも悠織はしっかり者だから、きっと困った顔をする。だから私は、いい子の私でいる。
「永久、行ってくるね」
その声が、胸の奥に落ちる。私は顔を上げて、目だけで悠織を見る。
「……くぅ」
小さく鳴くと、悠織は必ず笑う。その笑い方が好きだ。
頭を撫でる手は、いつも少しだけ急いでいて、それが余計に寂しい。
ドアが閉まる。鍵の音がする。足音が遠ざかる。
たったそれだけで、世界が静かになる。
悠織のいない家の中は広い。広すぎる。悠織の匂いはソファにも、カーテンにも残っているのに、肝心の本人はいない。
私は玄関の前で丸くなって、しばらく動かない。もしかしたら、すぐ戻ってくるかもしれないから。
戻ってこない。窓から外を見る。知らない人、知らない犬、知らない音。
全部どうでもいい。悠織じゃない。
私は悠織の部屋に行って、ベッドの横に伏せる。
制服の匂いが残っている。鼻を押し当てて、深く息を吸う。胸が少しだけ、楽になる。
時間はゆっくり進む。お腹も空くし、眠くもなる。
でも、私はちゃんと起きて待つ。
だって、帰ってくる時、永久が寝てたら嫌でしょう。
夕方、外の音が変わる。私は耳を立てる。階段を上る足音、鍵の音。
来た。私は一気に立ち上がる。
滑る床も、テーブルの角も関係ない。
心臓がうるさい。
「ただいま、永久」
その瞬間、世界が戻ってくる。私は吠えない。代わりに、悠織めがけて全身でぶつかる。
「わっ、永久!」
私は前脚を伸ばして、悠織の制服に顔を埋める。
匂いも、温度も、本物だ。
「寂しかった?」
返事の代わりに、私は尻尾を振る。もちろん、全力で。
さっきまでの静けさを全部叩き壊すみたいに。
私は床に転がって、お腹を見せる。
もっと撫でて、もっと撫でて。
悠織の手は少し冷たくて、でも優しい。
「今日もお留守番、ありがとうね」
『ありがとう』
私は、悠織のその言葉が好きだ。
私は役に立った。悠織の一日を、ちゃんと待っていた。私は悠織の膝に頭を乗せる。重くてもいい。動けなくてもいい。
ここが、私の場所だから。明日も、きっと寂しい。また朝は来て、悠織はいなくなる。
でも、それでもいい。だって、帰ってきた時にこうして甘えられる。
それだけで、私は全部報われる。
私は目を閉じて、悠織の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。

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# glacial nymph

「「着いたぁ〜」」
私達はついに列車から降り、北海道の大地を踏んだ。降りたのは五稜郭駅、函館の一つ隣と道南ではかなり栄えている駅だ。地図アプリによると、駅出口からまっすぐ歩いた先に「キングベーク」があるらしいが……
「駅を出て右側の横断歩道を渡るみたい。凜嶺、行くわよ」
……返事がない。嫌な予感がして振り向くと、狭い駅の中に凜嶺の姿はどこにもなかった。
「凜嶺ったら……!」
その時、LINEに五稜郭駅の外観の写真とともにメッセージが入る。
『早く来ないと置いていくわよ』
……無性に画面を叩き割りたくなった。少しくらい待っていてくれてもいいでしょうに。

「凜嶺……!」
少し焦って駅から出ると、そこには自販機をじっと見つめる凜嶺がいた。
「凪、遅かったじゃない。喉が渇いてるだろうと思って、凪の分も買っておいたわ」
殴りたいような、心がときめくようなよくわからない気分が綯い交ぜになりつつ、私は凜嶺からペットボトルの飲み物を受け取る。
……リボンナポリン。聞いた事のない飲み物だ。フタを開けると、カシュッという炭酸の溶ける音と共に、サイダーともラムネとも似つかぬ匂いが鼻腔を刺激してきた。試しに一口、ごくりと口に含んでみる。……美味しい。どうにも形容し難いのだが、美味しいのである。私は凜嶺に「ありがとう」とお礼を言い、飲み物代を払ってキングベークへと先導し始めた。

駅から坂を登りつつ少し歩いた頃、その先に私達を弾丸旅行に導いたお店が見えてきた。
「凜嶺、あれがキングベークよ」
それを聞いた途端、凜嶺は嬉しそうに私の方を見る。
「……凪、感謝するわ。私の突飛な思いつきに着いてきてもらって」
気にしなくていいのに、と私は首を横に振る。
「凜嶺は気にしなくていいのよ。私の分までお金を出してくれてるんだから、むしろこれくらいはやらなきゃ」
私のその言葉で二人揃って笑顔になり、その後はどんなパンを食べるかの話で大いに盛り上がった。

からんからん、というベルの音と共に店内に入る。すると、一気にパンの匂いが私達の鼻腔を擽って空腹が刺激される。
「いい匂いね」と凜嶺が笑い、すぐに視線をパンの方へ向ける。無類のパン好きと言うだけあり、やはりどのパンにも興味津々だ。
数分後にちらと視線を向けると、既に四つ五つのパンがトレイに乗せられていた。
見たところ「瀬戸内レモン香るレモンクリーム」、「カシスフロマージュ」、「洋梨のキャラメルクリーム」、「ブリュレトースト」と菓子パンばかり綺麗に四つ並んでいた。そんなに食べられるの?と視線を送ると、自信に満ち溢れた視線が返ってきたので私は考えることをやめた。凜嶺のことだし、きっと食べきれることでしょう。
私も悩みながら「モンブランコロネ」、「いちごデニッシュ」、「チョコエクレア」をチョイス。二人並んで会計を済ませ、私達は店内のイートインコーナーに通される。

「「おいひぃ〜っ」」
口に入れた途端、揃って顔が綻んでしまった。なんせ食べたことのないほど美味しい菓子パンなのだ、こんな味を知ってしまったらもう戻れない気すらしてしまう。
そうして一緒に無心でパンを頬張り続け、ついにトレイの上が空になった。
私が食べ終えたタイミングを見計らって凜嶺がすっと席を立ち、私に視線を向ける。
「凪、行くわよ」
……どこに?
時刻はもうそろ17時、今から鎌倉に帰るにしたって無理があるというもの。そういえば、百合ヶ丘を出る前に凜嶺がどこかに電話していたような……?
そんなくだらない思考回路は、次に凜嶺が発した言葉で全部吹っ飛ばされた。
今日から過ごすホテルに決まってるじゃない
……は?『今日から過ごす』?一体何泊する気なんだろうか、この人は。
なんとなく嫌な予感がしていると、凜嶺はまたどこかに電話をかけ始めた。
「____はい、依紗凪です。キングべーク本店から、はい。予約通りに。出来るだけ早めにお願いします」
すごく、嫌な予感がした。

#

15分ほど待っていると、店の前にタクシーが停まった。
「凪、乗るわよ」
(どこに行くの?)と凜嶺に視線を送っても、彼女に教える気はさらさら無いようで、「乗って」と促されるだけ。……乗るしかないのかしら。
タクシーに揺られること20分、やけに豪華なホテルの前でタクシーが停まった。すごく嫌な予感の正体は、どうやらこれだったらしい。
「り、凜嶺……まさか、ここに泊まるとか言わないわよね?」
虚しい抵抗というのはわかりきっていたが、流石に平々凡々とした人間の私がここに泊まるのは気が引けるとしか言いようがなかったからだ。
まぁ、私の矮小な抵抗は「そうだけど?」という凜嶺の一言で粉々に砕かれた訳だが。
諦めてスーツケースを受け取り、凜嶺と共にフロントへと向かう。
凜嶺が自動ドアを開けるが早いか、ホテルマンの方々が彼女の姿を見て一斉に頭を下げ始めたのだ。
凜嶺はあたかもそれがいつも通りであるとでも言いたげに平然とフロントへ向かうが、平凡な家に生まれ育った私としてはたまったものではない。

「2名でご予約の依紗凪様ですね。お待ちしておりました。お部屋についてですが、最上階スイートルームをご用意させていただいております。今後とも、我がホテルをどうぞご贔屓にしていただけますと幸いです」
私の表情筋に仕事をさせなかった超ファインプレーを誰か称賛してはくれないだろうか。
その後は、あれよあれよという間に荷物がホテルマンの手に渡り、従業員用エレベーターで荷物が運ばれていった。

「____ぎ。なぎ。凪。意識はあるかしら?」
ようやく現実に引き戻された気がする。あまりにも現実味の無さすぎる出来事の連続に、暫し意識を手放していたらしい。
「……えぇ、大丈夫よ。少し現実を直視出来なかっただけ」
誰がこんな現実を即座に受け入れられるというのだろうか。だが、ちっぽけな私の常識はまたしても完膚なきまでに粉砕されることとなった。
「そう。そろそろ夕飯の時間だから、早めに用意できるかしら?専属シェフが私達が来るのを待っているの
もう、驚いたら負けなのかもしれない。潔く着替えて、美味しいご飯を食べることにしよう。
制服からホテルの浴衣に着替え、恐らく私だけでは一生来ることがなかったであろう特設会場に通される。
緊張しながら待っていると、シェフの方が「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。我々はお客様に美味しい料理を食べていただくのが仕事ですから」と声をかけてくださった。
そんなに緊張していたのか……と恥ずかしく思う反面、そんな心遣いがありがたくもあった。

                             ハコダテミナギズシ

「当ホテル特製・函 館 海 凪 鮨でございます」
そう言って私達の前に置かれた皿には、大トロやハラス、ウニといった贅沢なネタが燦然と並んでいた。
「「いただきます」」
箸を伸ばす前から、思わず息を呑む。
陶磁器の皿は濃藍に近い暗めの色合いで、縁にだけ控えめな白が走り、暖色の照明をやわらかく受け止めている。明るさを抑えた室内灯の下、鮨の艶だけが静かに浮かび上がっていた。
まず目を奪うのは、なんと言っても大トロだろう。薄桃色の切身に細かなサシが雪解けのように溶け込み、光を受けてきらりと輝く。だが、隣のハラスは一転して力強い。焼かれていないのにも関わらず、脂の厚みが視線だけで伝わってきて、今にもとろりと崩れそうだ。
ウニは小さな山のように盛られ、濃い橙が静かに主張している。磯の香りがふんわりと立ち、鼻先をくすぐるその様子は『甘美』と形容して差し支えないだろう。
ハマチと寒ブリは互いに対照的で、ハマチは澄んだ白に近い淡い色合い、寒ブリは冬の力をたたえた深みのある銀。
どちらも身がぴんと張っていて、包丁の仕事の良さが一目でわかる。
鯛は端正で、無駄のない美しさが映える。薄く入った包丁目が光を受け、まるで静かな水面のように見える。
アジは皮目の銀がきらっと映え、葱の緑が差し色になっており、小洒落た雰囲気すらある。
いくらは大粒のものが均一に並び、ひと粒ひと粒が今にも弾けそうだ。
北寄貝はほんのり朱を帯び、肉厚なのに柔らかそうで、噛んだ瞬間の甘さがもう想像できてしまう。
イカは半透明に透き通っており、もはや白というより光そのものであった。

#

意を決して大トロを口に運ぶと、歯を立てる前にほどけた。
脂は重くなく、温度だけを残して消えていく。ウニは甘く、ハラスはコク深く、寒ブリは力強いのにキレがある。
タイの静けさ、アジの旨み、北寄貝の甘さ、イカの清らかさ、いくらの弾ける余韻____どれもが順番に、きちんと記憶に残っていく。
「……すごいわね」
思わず漏れた私の声に、凜嶺も小さくうなずいた。
暖色の灯りの下、皿の上の鮨は少しずつ姿を消していく。
その後は凜嶺との会話も弾み、楽しく食事を終えることが出来た。
「「ご馳走様でした」」
板前の方にも見送られ、笑顔で私達の部屋に戻る。
……相変わらず、スイートルームには慣れそうもないが。

glacial nymph
#

霞ケ浦西岸奪還戦

霞ケ浦西岸一帯が沈黙した、という報せは、ただの被害報告ではなかった。
それは、「防衛線が切れた」という意味だった。
自治体単位で構築されていた簡易エリアディフェンスは崩壊し、警戒網は途絶え、迎撃に当たっていた部隊の多くは湖岸部で足止めを食らったまま、撤退命令すら受け取れずにいるという。
____ネスト出現だ。しかも、複数のヒュージ群が湖を挟んで展開している可能性が高い。

土浦晩翠館高校、レギオン控室。
壁一面に投影された戦況マップには、霞ケ浦西岸が赤く染め抜かれていた。その赤は、北岸____水戸市側へと滲み出すように広がりつつある。
「北岸にも動きが出てる」
誰かがそう呟いた瞬間、全員が同じ結論に辿り着いた。
このまま西岸に突入すれば、背後____湖を挟んだ北側からヒュージによる挟撃を許す。
御羽矢は、静かに端末を操作した。
画面に表示される通信先は、霞ケ浦北岸防衛____ひいては、常陸戦線防衛を担う県下随一の名門校。
「那賀大串女学園に回線を繋いで」
即座に接続が成立する。
短い沈黙の後、向こう側に現れたのは、整った制服姿の指揮担当生徒だった。
「こちら土浦晩翠館、雨祝御羽矢。時間がありません、簡潔に伝えます」
形式的な名乗り。だが、それだけで通じるものがある
「霞ケ浦西岸にネスト出現を確認しました。こちらは西岸自治体群の奪還、並びにネスト討伐に向かいます。その際、霞ケ浦北部に展開しているヒュージ群の迎撃・討伐をお願いしたいのです」
要求ではなく、依頼。しかし、その言葉の裏にある緊迫感は隠しようがなかった。
地図データと推定侵攻ルートが送信される。
那賀大串女学園側は即座にそれを確認し、短く息を吐いた。
「……了解しました。県都防衛はこちらで引き受けます。晩翠館さんへの挟撃もさせません」
返答は、それだけ。ただ、今の御羽矢達にはそれだけで十分だった。
「感謝します。西岸は必ず奪還してみせます」
通信が切れる。
控室に、静かな緊張が戻った。
「残った人たちは、取手・柏方面のガーデンから救援を呼んで。南岸に浸透突破されたら東京に被害が出る」
御羽矢の言葉に、誰も異を唱えない。九人分の装備が整えられていく音が、やけに大きく響いた。
単独奪還____その言葉を口にする者はいないが、全員が理解している。
我 々
奪還は、晩翠館の仕事だ。

glacial nymph
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霞ケ浦西岸奪還戦(後)

霞ケ浦の水面は、異様なほどに凪いでいた。
風はない。普段なら筑波山地から吹き降ろす風が冷たいはずだが、不気味なほどの静寂に包まれていた。湖岸に広がる土浦市街地は、まるで時間そのものが止まったかのように静まり返っている。避難は完了している。だが、空間はすでに人のものではない
警戒を怠ることなく、LGシングラリテートの面々は湖岸道路に展開した。訓練通りの三列陣形。AZ、TZ、BZ。幾度となく訓練で叩き込まれた配置が、自然と形になる。
最初の接触は、小型ヒュージの群れだった。数は多いが、統制は甘い。どこか御羽矢達を探るような動きでわらわらと襲いかかる。
「第一波、迎撃」
号令と同時に、御羽矢達AZの三人が踏み込む。
斬撃が走り、射撃が重なり、敵の進路を削り取っていく。誰一人、深追いしない。突出しない。倒すために倒すのではない。前に進むために、排除する。
市街地を抜け、湖岸付近へ。
ある地点から、はっきりと空気が変わった。ネストの勢力圏なのだろう。視界が歪み、距離感が狂い、足音すら信用できなくなる。
「第二陣形、移行」
TZが前に出る。
通常なら、同行している海渚や『生き残り』の判断が強く反映される局面だ。しかし、今回は違った。
御羽矢が、一歩前へ出る。
「止まらないよ。進み続ける。それしか道は残されてない」
それは命令であり、宣言だった。
彼女が前に立つとき、九人の意識は一点に収束する。ネスト周辺で、ヒュージの反応が一変した。圧力が増し、数と質が跳ね上がる。だが、陣形は崩れない。AZが受け止め、TZが削り、BZが縫い止める。
誰かのCHARMが損傷すれば、整備科が即座に前線へ入って応急修復を施す。完全ではない。だが、それでいい再び武器を握れれば、それで十分だ。
事実として、時間はかかっている。だが、御羽矢達は一歩ずつ確実にネストへと近づいていく。
やがて、ネストの主が露わになった瞬間、空間そのものが悲鳴を上げた。
「____今」
全員分のマギが、同時に叩き込まれる。個の力が束ねられ、群となり、ひとつの刃になる。光が弾け、歪みがほどけ、張り付いていた重圧が霧散していく。
そして戦闘が終わり、霞ケ浦に風が戻った。
阻害されていた通信が復旧し、自治体ごとの信号が次々と立ち上がる。
北岸からも、短い報告が入る。
____ヒュージ群、殲滅。挟撃のおそれなし。
誰も声を上げなかった。
疲労と傷はある。それでも、仲間が皆立っている。
「奪還、完了」
その報告は簡潔だった。

土浦晩翠館高校。
連携を信じ、群を崩さず、前に進む学校。
この日もまた、校訓を胸に御羽矢達は戦果を挙げた。
晩翠館の布陣は崩れない
その評価は、再度現実として刻まれたのだった。
(完)

glacial nymph
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……悔しいけれど、凜嶺の判断は正しかった。
口に運んだ瞬間、まずイクラが弾けた。ぷちり、と小気味よい音を立てて広がる濃厚な旨味。それを追うようにサーモンの脂とマグロの赤身の深い味わいが舌に重なってくる。気づけば箸が止まらない。
「……どう?」
どこか誇らしげな凜嶺の視線に、私は一瞬だけ視線を逸らした。
「……悪くないわね」
精一杯の強がり。でも、きっと顔には出ていたのだろう。凜嶺は満足げに小さく笑った。
その後は、互いに無言。いや、正確には“話す暇がない”だけだった。丼をかき込む音と、時折漏れる小さな感嘆。それだけで十分だった。
朝食を終え、部屋に戻る頃にはすっかり眠気も吹き飛んでいた。窓の外には、朝日に照らされた函館の街並み。私達を迎え入れてくれた函館の街は、昨晩見た夜景とはまた違う顔を見せている。
「さて、今日はどうするのかしら?」
私が何気なく問うと、凜嶺は待ってましたと言わんばかりに小さく頷いた。
「もう決めてあるわ。まずは朝市、その後はベイエリア、最後に山よ」
「……抜かりないわね」
「当然でしょう?せっかく来たのだから、全部楽しむのが礼儀よ」
函館朝市は、想像以上に“生きている場所”だった。
威勢のいい声、行き交う人々、並ぶ新鮮な魚介。どこを見ても活気に満ちている。
「ほら、見て。さっき食べたばかりなのに、また食べたくなるでしょう?」
凜嶺が指差した先には、煌びやかに光る海鮮丼の数々。
「……凜嶺、朝食の直後よ?」
そう言いつつ、視線は逸らせない。
結局……負けた。私は、どうにも凜嶺に弱いみたいだ。
「一杯だけよ」と自分に言い訳をしながら注文した海鮮丼は、先ほどのビュッフェとはまた違う、職人の手による一品だった。
ネタの厚み、酢飯とのバランス、そしてほんのりとしたわさびの香り。
「……これは反則ね」
「でしょう?函館に来て海鮮丼を外すなんてあり得ないもの」
凜嶺は当然のように言い切る。……悔しいけれど、全面的に同意するしかない。
その後は、赤レンガ倉庫へ。
歴史を感じさせる建物と、どこか異国情緒のある雰囲気。朝市の喧騒とは打って変わって、穏やかな時間が流れていた。
雑貨屋を覗いたり、ガラス細工に見入ったり。
「これ、きっと凪に似合うわ」
凜嶺が手に取ったのは、青いガラスの小さなアクセサリー。
「……似合うかどうかはともかく、あなたのセンスは嫌いじゃないわ」
「素直じゃないのね」
「うるさい」
気づけば、袋が一つ増えていた。
昼過ぎ、私達は八幡坂へ来ていた。まっすぐ海へと伸びる坂道。その先に広がる澄んだ青。
「……綺麗ね」
思わず零れた言葉に、凜嶺が静かに頷く。
「だから連れてきたのよ」
風が少しだけ冷たい。でも、それが心地いい。しばらく、二人で何も言わずに景色を眺めていた。

そして夕方、ロープウェイに乗り、函館山へ。
「凜嶺は何度も見ているのでしょう?」
「ええ。でも、“ここの夜景は一度で満足するものじゃない”らしいわ」
どこで聞いたのかしら?と問いかける前に、凜嶺は軽く肩をすくめた。
「地元のニュースよ」
「……なるほどね」
山頂に着いた頃には、街はすでに灯り始めていた。
徐々に広がっていく夜闇に浮かぶ光の海。
やがてそれは、凜嶺が何度も見ているのであろう景色へと変わっていく。
「どう?」
凜嶺の問いに、私は少しだけ考えて答えた。
「……悪くないわね」
本当は、もっと違う言葉があった気がする。でも、それを口にするのは少しだけ悔しいから。隣を見ると、凜嶺が満足げに微笑んでいた。……きっと、全部お見通しなのだろう。
「明日はどうするのかしら」
「そんなこと、とっくのとうに決めてあるわ」
____本当に、抜かりのない人。
でも、悪くない旅だと思う。
明日が楽しみね。

glacial nymph
#

荷支度を済ませて外に出ると、函館の空気はやけに澄んでいた。昨日までの喧騒が嘘みたいに静かで、旅の終わりをほんの少しだけ実感させてくる。……もっとも、凜嶺の表情を見る限り、彼女の中ではまだ“終わり”ではないらしいけれど。
「次、行くわよ」
間髪入れずにそう言われ、私は半ば詰め込まれるようにしてタクシーへと乗せられる。そうして向かった先は____五稜郭。正確には、その象徴とも言える五稜郭タワーだった。
展望台に上がると、あの特徴的な星形が一望できる。整然とした幾何学模様のようでいて、どこか温かみのある景色。
「……これが、五稜郭」
思わず呟くと、隣で凜嶺が小さく頷く。
「ええ。箱庭みたいでしょう?でも、ちゃんと歴史が詰まってるのよ」
「珍しく解説なんてするのね」
「知識は共有してこそ意味があるもの」
……またドヤ顔。軽く肘でつついておく。
しばらく景色を堪能した後、凜嶺は何やら満足げにスマホを確認すると、次の目的地を告げた。
「お昼はここよ」
連れて行かれたのは、『函館といえば』と聞かれればまずこの名前が挙がる有名ローカルチェーン店。
「……ここ?」
「ええ。外せないのよ、ここは」
半信半疑で店内に入ると、漂ってくる香ばしい匂いに思考が一瞬で奪われる。結局、勧められるがままに注文したそれは、評価を覆すのに躊躇する必要がなかった。
ふわふわの卵、バターの風味が効いたケチャップライス、そして絶妙な卵とバターのバランス。全てが完璧だった。
「……何これ」
「オムライスよ」
「名前の割に、本気すぎるでしょう……」
思わず本音が漏れると、凜嶺はどこか誇らしげに微笑んだ。
満腹になったところで、ようやく“本題”らしい話が切り出される。
「食べ終わったようね。それじゃあ、移動するわよ」
「……どこへ?」
洞爺
さらりと言われたその一言に、私は一瞬だけ思考が止まる。
「洞爺って……ここから結構距離あるわよ?」
「ええ。だから、これを使うの」
凜嶺が見せてきたのは、特急の指定席券。しかし、見慣れない表記が付いている。
「……スーペリアグリーン個室?」
「グリーン車より上の設備よ。1両全て私たちの個室だから、他の人の目も、喧騒も、何もかも気にしなくていいわ。もちろん、専用WiFiもあるから電波の心配もいらないわ」
「……は?」
思わず素で聞き返してしまった。
気づけば、私達はその“個室”に座っていた。いや、座っているというより____“収まっている”と言った方が正しいかもしれない。広い。無駄に広い。椅子というよりソファ。
「……これ、本当に列車よね?」
「ええ。移動手段よ」
さらっと言ってのける凜嶺。価値観が違いすぎる。

#

「お金……大丈夫なの?」
恐る恐る聞いてみると、凜嶺は一瞬だけきょとんとした後、あっさりと言い切った。
「全部、私が出すわ」
「……は?」
「凪は旅に集中していてほしいの。余計なことは考えなくていいわ」
____この人、本当に何者なのかしら。
窓の外を流れていく景色をぼんやりと眺めながら、私は小さく息を吐いた。……まあ、今更よね。
洞爺に着いた頃には、すっかり日も傾いていた。駅からさらに車で移動し、たどり着いたのは____言葉を失うようなホテルだった。
湖畔に佇むその建物は、静かで、気品があって、そして明らかに“超高級ホテル”のそれだった。
「……ちょっと待って。ここ、絶対高いわよね?」
「ええ。高いわね」
「じゃあ、なんでそんなに平然としてるのよ……」
「払うのが私だからよ」
……理屈としてはぐうの音も出ないのが腹立たしい。
案内された部屋はスーペリアツイン。広々とした空間に、大きなベッドが二つ。窓の向こうには洞爺湖が広がっている。
「……ここに泊まるの?」
「ええ。気に入らない?」
「……いいえ。文句のつけようがないわ」
荷物を置き、ふと窓の外に目をやる。静かな湖面に、夕焼けが映り込んでいる。函館とはまた違う、穏やかな美しさ。
「ねえ、凜嶺」
「なにかしら?」
「……今回の旅、凜嶺が全部決めてるのよね」
「ええ」
「全部、計画通り?」
一瞬だけ、凜嶺は考える素振りを見せて____小さく笑った。
「どうかしら。少なくとも、“貴女が楽しんでるかどうか”までは計算外ね」
……ずるい。そんなことを言われたら、何も言い返せないじゃない。

glacial nymph
#

湾岸に展開した防衛線は、すでに半壊していた。コンクリートの壁は抉れ、鉄骨はねじ曲がり、焦げた匂いが風に乗って流れている。その中心に、ギガント級ヒュージが立っていた。巨躯は空を覆うほどではないにせよ、周囲の建造物を圧迫するには十分すぎる質量を持ち、ゆっくりと、しかし確実に前進している。視線のようなものがあるなら、それはすでに“獲物”を見定めていた。
その正面に、ただ一人。天ヶ瀬悠は、静かに立っている。レギオンはすでに後退済みだ。指示は簡潔で、誰一人として逆らうことはなかった。
「ここから先は、私が処理します」
それだけで十分だった。
瓦礫の上を滑るように、風が吹いた。ヒュージが動く。前触れなく、巨腕が振り下ろされる。空気を裂き、衝撃が遅れて追いつくほどの速度。回避は不可能に見える一撃。
だが、悠はわずかに体を傾けただけだった。僅か数cm。たったそれだけの移動で、致死の軌道は彼女の横を通り過ぎ、地面を叩き割る。轟音。破片が舞い上がる。
「……やはり、この程度ですか」
淡々とした声。息すら乱れていない。その瞬間、彼女の周囲の空気が変わる。
「スティルネス・ドミニオン、起動します」
音が遠のく。風の流れが緩やかに見える。いや、実際には何も変わっていない。ただ、悠の認識がすべてを“正確に”捉え始めただけだ。筋繊維の収縮、関節の角度、重心の移動、空気抵抗、破片の飛散。あらゆる情報が、誤差なく脳内に流れ込む。
そして、それらはすべて“結果”に収束する。
ヒュージが二撃目を放つ。横薙ぎ。先ほどよりも速い。明確な意思が感じられる動きだ。学習している。回避を前提に、逃げ場を潰す軌道。
だが、悠は一歩だけ前に出た。振り抜かれる腕の内側へ。通常なら、自ら当たりに行くような選択。しかし、その一歩は完璧に計算されている。ヒュージの関節が最大出力に達する“直前”、最も制御が甘くなる瞬間を、正確に踏み抜く。腕は彼女を捉えない。空を切り、背後の残骸を粉砕する。
「無駄が多いですね」
悠の右手が、わずかに持ち上がる。展開されたビットが、音もなく散開する。光は細く、静かに空間を切り裂く準備を整えている。
「第一射、実行」
放たれる光線は、一直線ではない。微細な角度差と時間差を伴い、幾重にも重なる。ヒュージが反応する。外殻を傾け、迎撃するように腕を差し出す。
だが、その“防御”はすでに読み切られている。最初の数発が、あえて外殻の硬い部分に当たる。弾かれ、散る。その反射角を利用して、次の光が“裏側”へ回り込む。さらに、その挙動に合わせて、別のビットがわずかに軌道を修正する。
結果として、ヒュージの側面、関節の接合部へと、寸分の狂いもなく光が集中する。
破砕。鈍い音とともに、装甲が裂ける。
初めて、ヒュージの動きが“乱れた”。それは、明確な変化だった。これまでの単調な攻撃とは違う、焦燥に近い振る舞い。巨体がわずかに揺れ、次の動作が荒くなる。
理解したのだ。目の前の個体が、ただの獲物ではないことを。
ヒュージが吼える。音圧が空気を震わせる。直後、連続攻撃。腕、尾、体当たり。あらゆる手段で圧殺しようとする、苛烈な攻勢。
だが、そのすべては____
「遅いです」
悠の視界では、あまりにも緩慢だった。
振り下ろしは、半歩の後退で外れる。突進は、軌道の外縁をなぞるように一歩で回避される。尾の薙ぎ払いは、重心のズレを利用して、紙一重で潜り抜けられる。どれも大きな動きではない。最小限の移動で、最大の結果を得る。
完璧な回避。それは、偶然でも反射でもない。全てが“確定した解答”だ。
そして、回避のたびに光線が一発ずつ放たれる。焦りによって生じた微細な隙を、逃さない。関節、感覚器、装甲の継ぎ目。積み重なる損傷が、確実にヒュージの機能を削っていく。
やがて、その巨体が大きく体勢を崩した。ほんの一瞬。だが、悠にとっては十分すぎる時間。
「そこです」
静かに、宣告のように呟く。
全てのビットが、一斉に再配置される。空間に描かれるのは、逃げ場のない幾何学的な包囲。ヒュージの核が、わずかに動く。回避しようとする本能。
だが、その動きすら。僅かに、ズレる。
スティルネス・ドミニオン。極微細な干渉。ほんの数ミリ、ほんの数ミリ秒。その差が、致命的な誤差となる。
「これで、終わりです」
放たれる光は、一本。
だがそれは、あらゆる可能性を排した“唯一の軌道”。ヒュージの核を、正確に、貫いた。沈黙。次の瞬間、巨体が崩れ落ちる。地面が揺れ、砂塵が舞う。
全てが終わった後、悠は一度だけ周囲を見渡した。脅威の消失を確認し、ビットを静かに収納する。
「……帰投します。後処理は、規定通りに」
それだけ告げて、彼女は歩き出す。背後で横たわる巨体に、振り返ることはない。戦闘は、最初から最後まで彼女の掌の上にあった。

glacial nymph
#

なんとなく、普段とは違う感覚で目が覚めた。言葉には出来ないが、何かが違うのである。ゆっくりと重い瞼を開き、身体を起こす。……妙に、身体の勝手が違う。自分なのに、自分じゃないような感覚。
目を開くと、そこには天蓋付きのベッド。それに、白い絹で作られたレースのカーテン。凜嶺の部屋でも、私の部屋でもない、妙に豪華な空間。私、こんな所に泊まった記憶なんてないのだけれど。
その時、コンコンと部屋の扉がノックされる。
「お目覚めでしょうか、お嬢様」
低く、落ち着いた声。どこか聞き覚えがある。いや、聞き覚えどころじゃない。胸の奥が、妙にざわつく。
「……ええ、入って」
そう返してしまったのは、半ば反射だった。扉が、静かに開く。
そこに立っていたのは、一人の執事____いや、執事服を纏った女性。黒髪のロングヘア。無駄のない立ち姿。涼しげな目元に、整った顔立ち。その姿を見た瞬間、心臓が一拍、強く跳ねた。
「……凜嶺?」
思わず、その名前が零れる。彼女は一瞬だけ目を細めた。けれどすぐに、何事もなかったかのように、静かに頭を下げる。
「申し訳ございません。私は“リンネ”。お嬢様付きの執事でございます」
発音は同じなのに、どこか違う。けれど、その佇まい、その空気、その声のトーン。どう見ても、どう聞いても、私の知っている“凜嶺”に酷似している。
「……そう」
それ以上、言葉が出てこなかった。頭は酷く混乱しているのに、妙に落ち着いている自分もいる。
「お加減はいかがでしょうか。昨夜は少しお疲れのご様子でしたので」
彼女____リンネは、自然な動作でこちらへ歩み寄る。その距離の詰め方が、妙に心地いい。……知っている距離感では、ないけれど。
「……少し、変な感じがするけど、大丈夫。だと思う」
「承知いたしました」
短く、的確な返答。無駄がない。やっぱり似ている。

#

「本日のご予定ですが____」
と、彼女は淡々と話し始める。
茶会。面会。稽古。学問。
聞き慣れない単語ばかりなのに、不思議と理解できてしまう。
……まるで、最初からこの世界で生きてきたみたいに。
「以上でございます。ご変更なさいますか?」
私は少しだけ考えてから、首を横に振った。
「……いえ、そのままで」
「かしこまりました」
彼女は再び、静かに頭を下げる。その仕草を見ていると、胸の奥がじんわりと温かくなる。同時に、少しだけ寂しさも混ざる。目の前にいるのは、確かに“彼女”に似ているけれど。私の知っている凜嶺ではないのだ。
「……ねえ、リンネ」
リンネが、少し目を細めて首を傾げる。
「あなたは、ずっと私の執事なの?」
ほんの少しだけ、間があった。
「……はい。お嬢様が幼い頃より、お仕えしております」
その答えは、完璧だった。完璧すぎて、少しだけ引っかかる。
「……そう」
私はそれ以上、追及しなかった。
窓の外を見る。見知らぬ景色。見知らぬ世界。
それでも____
「……悪く、ないかも」
ぽつりと、そんな言葉が零れた。理由は、分からない。
ただ一つ確かなのは____この世界には、彼女によく似た“誰か”がいるということ。それだけで、少しだけ安心することができた。

glacial nymph
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ここは、「もし、世界線を越えてうちの子が集まったら?」という思いつきから始まった不思議な世界。そんな『不思議な世界』に集められた9人が織り成す、不思議な物語。とくとご覧あれ____

集められた9人のうち、最初から起きていたのは十三里史瑶。危険を察知していたのか、はたまたG.E.H.E.N.A.からの命令信号が届かなくなったからなのか。その場で寝ていた残りの8人を順々に起こしていくその様子からは、どうにも史瑶が起きていた理由を汲み取ることが出来そうになかった。
史瑶に肩を揺さぶられていく内に、天ヶ瀬陽藤代日向神音内帆雫鷹岡秋希羽雨祝御羽矢不来方水粒神童天奈の順に目を覚ましていく。ただ1人、越河淑を除いて。
「起きてください。必要以上の睡眠は非合理的です」
史瑶に頬をむにーっと引っ張られ、終いにはぺちぺちと頬を叩かれているというのに、淑は微塵も起きる気配を見せない。どころか、酒瓶とバズーカを抱え込んで幸せそうな寝顔を浮かべ始める有様。淑と同じ学校の陽は頭を抱え、史瑶に軽く詫びて酒瓶を淑の両腕から引っこ抜いた。
「越河さん、起きてください。他校の方々にこれ以上醜態を晒す訳にはいきません。飲酒に関しては今更なので止めやしませんが、せめて節度を持った飲酒をしていただけますかね」
呆れたように爪先で床をカツカツと鳴らす陽からは、若干の苛立ちと羞恥心が見て取れた。そんな中、ようやく淑が視線に気づいてうっすらと目を開ける。そこには、般若のような形相の陽に呆れた表情の水粒や秋希羽、面白そうなものを見つけた、という顔で見つめている天奈などなど。それぞれが十人十色の反応を示していた。
「ん〜?しらないひとがいる〜……はる、おさけかえして〜」
陽は酔っ払って酒瓶に手を伸ばす淑の頭を軽く叩き、溜息を吐きながら酒瓶を彼女に返した。

しばし、重苦しい沈黙がその場を支配する。当然だろう、目が覚めたら知らない面々と同じ場所に置かれていたのだから。そんな沈黙を破るように、御羽矢が口を開く。
「とりあえずさ、自己紹介しよ?このままじゃ、もしヒュージが現れた時に連携取れないからさ!誰が誰かわかるように、在籍校、所属レギオン、名前、レアスキルは必ず言うこと!他に言いたいことがあったら言ってもいいよ!」
御羽矢はそのまま、じゃあ私からねと手を挙げて自己紹介を始める。
「私は土浦晩翠館高校3年、LGシングラリテートの雨祝御羽矢(あまほぎ みはや)!レアスキルはこの世の理のS級!雨を祝うで『あまほぎ』だよ、よろしく!」
御羽矢がいぇーい!とピースして自己紹介を終えると、軽く拍手が起こる。御羽矢が隣に立っていた日向に視線を向けると、他の人の視線も日向に向けられていく。
「じゃあ、次は私かな。同じく土浦晩翠館高校3年、LGシングラリテートの藤代日向(ふじしろ ひなた)です。レアスキルはレジスタS、援護とフォローに関しては誰よりも自信があります。よろしくお願いします」
日向が周りに向けて綺麗に一礼すると、此方も軽く拍手が起こる。次は誰にする?という視線の衝突が起きたあと、陽が手を挙げる。
「では、次は私が。秋田朝陽高校2年、LGアヴニールの天ヶ瀬陽(あまがせ はる)です。レアスキルはゼノンパラドキサS、ヒュージ討伐数と技術では右に出る方はいないと自負しています。よろしくお願いします」
陽も日向に倣い、綺麗に一礼し、頭を上げる。すると、御羽矢が陽に駆け寄ってきて、ぎゅっと陽の両手を握り締めた。
「すごい、本物の天ヶ瀬さんじゃん!私、1回しゃべってみたかったんだよね〜!」
御羽矢が次の言葉を発する前に、日向が自己紹介の流れを察して彼女の口を塞ぐ。
「御羽矢、まだ他の人の自己紹介が終わってないでしょ?話すのはその後。いい?」
さすがの飼い主力(?)といったところか、その説得には特異点でさえ逆らえなかったようで、素直に口を閉じたのだった。
「じゃあ〜、次は私が自己紹介しよっかな〜?私は陽と一緒の秋田朝陽高校2年生、LGコンコルディアの越河淑(こすごう しの)っていうんだ〜。レアスキルは円環の御手、このバズーカ型CHARMでどんなヒュージでもぶち抜くからね〜」
ふふん!と淑がバズーカ型CHARMの「ヤークトカノーネン『ツヴァイリーリエ』」を担ぎあげると、周囲から感嘆とも畏怖ともとれるため息が聞いてとれた。
(つづく)

glacial nymph
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陽が自己紹介を終えると、じゃあ次は私かな。と水粒が手を挙げる。
「秋田朝陽高校鳥海分校2年、鳥海特別遊撃隊隊長の不来方水粒(こずかた もや)。レアスキルは陽さんと同じゼノンパラドキサS。まあ、陽さんには及ばないけど。でも、消える魔球なら撃てるよ。そこは、私だけの特技」
ふふ、と意味深な言葉を残し、水粒も一礼する。
次いで、秋希羽が手を挙げる。
「では、私が自己紹介をいたしますわね。御台場女学校1年、LGロネスネスの鷹岡秋希羽(たかおか あきは)ですわ。レアスキルは雨祝様と同じくこの世の理のS級。ですが、雨祝様の域には遠く及びませんわね」
秋希羽は謙遜と自虐を交えつつ、陽をなぞるように美しい一礼で締めた。そして、隣でおどおどしながら視線を左右に揺らしている少女に視線を向ける。
「帆雫、しっかりなさい。帆雫が気後れすることはありませんわ?貴女のことを誰よりも知っているこの私、鷹岡秋希羽が保証いたします」
その言葉に励まされてか、帆雫と呼ばれた少女がおずおずと一歩進み出る。
「えっと……御台場女学校1年、LGロネスネスの神音内帆雫(かんもない ほな)って言います。レアスキルはラプラスなので、きっと皆さんのお役に立てると思います。よろしくお願いします……!」
帆雫が自身のレアスキルについて名乗った途端、おお……と周囲から感嘆の声が上がる。無論それはどんな強者であれ例外はなく、秋希羽はもとより陽や御羽矢も驚きの表情を浮かべる。
そんな中、その空気をぶち壊すかのように一際オーラの強い少女が右手を挙げて名乗り出る。
「我は神童天奈(しんどう あてな)、全知全能の神・ゼウスの娘じゃ!神庭藝術女子1年、グラン・エプレに所属しておる!レアスキルはおそらくそこの酔っ払いと同じ円環の御手じゃ、よろしく頼むぞい」
史瑶以外が揃って首を傾げる中、天奈はふふん!と得意げに胸を張った。
そして、8人の視線は最後まで残っていた史瑶に向けられていく。
「ガーデン非在籍、17歳。十三里史瑶(とみさと しょう)。レアスキルは『オーバークロック・マインド』。ここに来るまではG.E.H.E.N.A.の庇護下にありました」
聞き慣れぬレアスキル、そしてG.E.H.E.N.A.の庇護下というワードに御台場組の顔が強ばる。
だが、その不安を掻き消すように史瑶は両手を上げる。
「安心してください。ここで皆さんと敵対するのは合理的ではありません。故に、この空間では皆さんと敵対しません。協力関係であるべきだと判断しました」
史瑶は御台場組の訝しむような視線を気にも留めず、礼をして一歩下がった。
さて、と陽が一歩前に出て現状の問題を提起する。
「現状の問題は、この世界から帰る手段がないこと。次に、飲食居住。そして、この世界にヒュージがいるのか
そこまで話すと、陽は言葉を切って後ろに振り返る。そこには、夥しい数のヒュージが9人へ向けて走り寄ってきていた。スモール級、ミドル級、ラージ級……そんなものを判別する余裕はなさそうだ。
「ヒュージについては、この世界にもわんさかいるようですね。初陣は私、雨祝さん、鷹岡さん、神童さんが前衛。不来方さん、十三里さん、藤代さんが中衛。神音内さん、越河さんが後衛でお願いします。藤代さんは、全体指示のため後衛寄りでお願いします」
陽が的確に指示を出すと、9人はヒュージへ向けて駆け出していった。
(つづけ)

glacial nymph
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「天ヶ瀬さん、少し模擬戦に付き合っていただけますか?最近腕が鈍ってしまって」

「……構いませんが、別の方でも良いのでは?」

「いえ、天ヶ瀬さん良いのです。受けてくださいますよね?」

「はあ。まあ、史房様がそこまで仰るのなら……」

根負けだ。そもそも、史房様からの『お願い』を断れるほどの胆力と無謀さを、私は持ち合わせていないのだが。
……最近、史房様はこうやって私を模擬戦に誘うことが多くなった。私でなくとも模擬戦の相手はいるだろうに、どうして私なのだろうか。
ひそひそと噂話の種にされてしまうため、史房様との模擬戦はあまり好きではないのだが、断る選択肢というものは最初から無いのだろう。なんせ史房様からのお誘いだ、断った日には全校が敵に回るだろうから。
私もローエングリンの一員である身故、下手な言動は避けなくてはならない。
だが、流石にこればかりは指摘しなければ野暮というものだろう。

「……史房様」

「なんでしょう」

「ここは生徒会室ですが」

「少し、用事がありまして。天ヶ瀬さんも、中に来てください」

知らぬ間に校則に違反していたりしたのだろうか。だとしたら、私だけでなくレギオンの皆さんにも迷惑がかかってしまう。謝罪で済めばいいのだが……
神妙な面持ちで、生徒会室の中へと入る。しかし、中には他の生徒会役員はおらず、史房様と私の二人きりの空間が形成されていた。

「史房様?用事というのは……」

史房様は、私の目をしっかりと見つめてこう切り出した。

「天ヶ瀬さん。いえ、天ヶ瀬陽さん。貴女を、私のシルトに迎えたいと思っています。貴女ならば、私の愛弟子に相応しい。そう思ったのです」

「そんな、史房様のシルトなど私には____」

務まりません。そう、断るはずだった。だが、史房様は首を横に振る。

「天ヶ瀬さん、貴女はかなりの実力者であったと聞いています。前の在籍校では、中等部ながら出撃を繰り返し、数々の輝かしい功績を打ち立てたことも。そして、類稀なるリーダーシップを発揮して外征部隊を率いたことも。そんな貴女だからこそ、私のシルトに相応しい私の愛弟子になってほしいと、心から思ったのです」

……そこまで言わせてしまっては、断る道筋なんてない。
むしろ、「史房様にここまで言われるなんて光栄だ」と、受け入れる方が幸せなのではないか?……ならば。

「史房様」

「はい」

「不束者ではありますが、これからもよろしくお願いいたします」

ふと史房様の方を見ると、珍しく笑いを堪えていた。何か変なことでも言ってしまったのだろうか。

「あ、天ヶ瀬さんッ……ふふっ。不束者というのは、結婚する時に……」

「〜〜〜ッッッ!!!!!し、史房様!忘れてください……!」

赤面しつつ、史房様に先程の失態を忘れていただこうと躍起になる私をひょいひょいと交わしつつ、史房様は笑ってこう言った。

「これからよろしくお願いしますね、私のシルトさん♪」

「はい……」

ああ、このお姉さまには敵いそうにない。人間性でも、戦闘面でも、史房様が私のお姉さまだ。
史房様から色々なことを教えてもらって、成長に繋げられるように。
それはそれとして、意趣返しをしてあげなければ私の気が済まない。

「こちらこそ、よろしくお願いしますね。お姉さま。では、失礼いたします」

去り際にお姉さまの顔を見ると、ひどく赤面しながら笑っていた。どうやら、意趣返しとやらは成功したようだ。ああ、次に会う時が恐ろしい。